Apple 「Xgrid Preview 2」でクラスタリングを試す

私はAppleがプレビュー版として発表しているクラスタリング技術の「Xgrid」に期待している一人だ。本文に記す通り今年3月に来日した米AppleのWWRD担当副社長、ロン・オカモト氏にもXgridへの期待を伝えたが、今日は思いついたので「Xgrid Preview 2」を試してみた。


今年の3月11日、東京国際フォーラムにおいてアップル主催の「アップルデベロッパブリーフィング&QuickTimeモバイルコンテンツセミナー」が開催されたとき、来日した米AppleのWWRD担当副社長 ロン・オカモト氏にインタビューする機会を得た。
その模様はMac Fan誌(May 2004) 5月号の巻頭に掲載されたが、誌面の都合でかなりの部分は割愛されているので、まずはそのXgrid に関する部分のフルインタビューをご紹介してから実際に「Xgrid Preview 2」を試したレポートを見ていただこう...。

【松田】 個人的にXgridに大変期待しています。このクラスタリング技術を特別な市場向けとしてではなく一般ユーザー向けにサポートして欲しいと思っています。一台より二台、二台より三台の方が効率が上がるならクリエータやデザイナー、DTPなどの分野でも喜んでよりMacを買うでしょう(笑)。
現在Appleはβ版を独立したアプリケーションという形で提供していますが近い将来...Mac OS Xの一機能として組み込まれていくのでしょうか?。

【Okamoto】 あの、まず最初にクラスタリングの話をさせていただきたいと思います。あなたのお話のようにクラスタリング技術はある特定の市場セグメントだけでなく、非常に多くの分野で使われる可能性を秘めていると思います。
現在のβ版は、デベロッパーが試し・評価をしてどのようなソリューションが構築できるのかを見ていただくためのものです。

例えばいま私たちが提供しているXgrid、OS Xといったような...テクノロジーと、ハードウェア、例えばG5プロセッサとかPowerMac、XserveそれからXserve RAID、こうしたハードウェアをすべてひっくるめて見ていただくと、これまでのようにクライアントのみのアプリケーションではなくなっていると思います。

私たちRDの役割として、いまデベロッパーの方々がいま何を考え、どのような作業をしているかを考えた場合に明らかなことは、クラスタリングは非常に重要だということ。それからクラスタリングというのはデベロッパ自身に対してもコスト効果や効率の高い...パフォーマンスの高いソリューションとして必ずや活用すべきものだと思います。
そしてあの...(笑)ご質問(Mac OS Xの一機能として組み込まれるか)に関してですが、私からいまどのような方向性に行くというお話はできません(笑)。


…とまあ、こんなやり取りがあったわけだが、本来Xgridのターゲットは膨大な数値計算を高速で行うためのものであり、並列や分散といった高性能なコンピューティングを実現しようとするものだ。ただし、実際にXgridによるクラスタリング...すなわち複数台のコンピュータを連携させ、ひとつのシステムとして利用することで作業のスピードアップを図ることが容易にできるなら、そのテクノロジーは近い将来必ずや単に一部の研究機関や大学といった場所だけでなく、我々一般ユーザーをターゲットにすべきものとなるだろう。

なぜならロン・オカモト氏へのインタビュー時に発言したように、複数台を活用することで効率を上げることができるなら、これからますます高度な画像処理などが必要となる分野のクリエーターたちにとっても必要で現実的な技術だと考えるからだ。
無論これまでというか、現実に活用されているクラスタリング技術はパソコンユーザーが手軽に扱えるものではない。しかしXgridはまだプレビュー版ではあるものの、Appleらしい大変簡単な設定でクラスタリングが実現することが我々を刺激するわけだ。

■Xgridのインストール
では早速大変おおざっぱではあるが、2台のMacintoshを使ったXgridによるクラスタリングの実際を見てみよう。
まずXgridは現在Preview 2がここからダウンロードできる。そして対応OSはMac OS X 10.2.8以降とされており、CPUはG3, G4そしてG5のいずれにも対応している。
早速私はPower Mac G5 Dual 2GHz のマシンとPower Mac G4 867MHz (QuickSilver) の2台でXgridを試してみた。
まずダウンロードしたXgridを各マシンにそれぞれインストールする。インストールが完了するとアプリケーションフォルダに「Xgrid」と「Xgrid BLAST」のアプリケーションが、そしてシステム環境設定パネルにXgridアイコンが追加される。

page2_blog_entry138_1.jpg

page2_blog_entry138_2.jpg

※インストールされたXgridのアプリたち(上)と「システム環境設定」に追加されたXgridアイコン(下)


■システム環境設定のXgrid設定
まず双方のシステム環境設定からXgridを起動し、そのダイアログから「Agent」タブの一番下にある「Choose when the agent may accept tasks:」を「Always」にする。

page2_blog_entry138_3.jpg

※XgridダイアログのAgentタブ表示。「Xgrid agent service on」と現在サービスが稼働していることを示している


続いてこの「Xgrid agent service off」下の「Start」ボタンをクリックして起動させ、次に「Controller」タブの「Xgrid Controller service off」下のボタンもクリックしサービスをスタートさせる。

■Xgridアプリケーションの起動とクラスタリングの実際
次に一方のマシンのアプリケーションフォルダにインストールされた「Xgrid」を起動する。
ここで接続可能なMacintoshの一覧が表示されるが、具体的に記せばこのテスト例だとPower Mac G5 とPower Mac G4がリストアップされるはずだ。ここでアプリケーション側のMacintoshを選択すると「New Job」ウィンドウが表示しジョブ待ちとなり、その右側にはデモとして使えるいくつかのジョブタイプが表示される。

page2_blog_entry138_4.jpg

※「New Job」ウィンドウ。右側には利用可能なジョブタイプがリストアップされている


この「New Job」ウィンドウのRendezvous 部分をダブルクリックすると、現在エージェントとして利用することができるMacintoshが表示されるが、そのStatusが Availableであれば問題なく動作していることになる。

page2_blog_entry138_5.jpg

page2_blog_entry138_6.jpg

※「Cluster Nodes」ウィンドウには現在利用可能なマシンリストが表示される(上)。後述するように稼働させるとPowerBookアイコンにニュートンアイコン?が表示され、StatusがWorking表示となる(下)


取り急ぎ、「New Job」ウィンドウの「Mandelbrot」を選んで「OK」ボタンをクリックするとMandelbrotのフラクタル幾何学描写が始まり、別途CPUのクロックを示すタコメータが表示されるはずだ。このタコメータの単位は合計の周波数如何でその単位がMHzやGHzに自動的に変わる。実際にそのタコメーターの動きを見ると、その周波数のピークは約4.8GHzあたりを指す。無論これは動作させているマシン、すなわちG5 Dual 2GhzとG4 867MHzのCPU合計値であることは申し上げるまでもない。間違いなくXgridは動作しているのだ。

page2_blog_entry138_7.jpg

※タコメータの周波数表示をご覧いただきたい


Appleらしいところは、ネットワーク上の利用可能なエージェントマシンを探すためにRendezvousネットワーク技術を利用している点だ。したがってユーザーは本来大変面倒になりがちなネットワーク設定を行わずにクラスタリング技術を活用できる。
しかし、現在のXgridによるプレビューは「クラスタリングでこのような可能性がありますよ」という事実を容易に見せてくれるためのデモンストレーションであり、一般ユーザーにとって実用レベルのものではないことは申し添えておく。

■結び
可能な限り単純に説明したつもりだが、Xgridの仕組みは作業を要求する「クライアント」、クライアントから指示のあった作業を配分する「コントローラ」そして現実に作業を推進する「エージェット」からなり、本来はそれぞれの存在意味を理解しておく必要がある。しかしこれまで見ていただいたように複数台のMacintoshのCPUパワーを結合する様を確認するだけならXgridはとても簡単にクラスタリングが可能になる。
米バージニア工科大学において1,100台のPower Mac G5とクラスタリング技術を用いて、世界で3番目に速いスーパーコンピュータを構築したというニュースは記憶に新しい。
1,100台はともかく、近い将来Xgridの技術が私らが予測・希望するようにMac OS X に統合される形になるなら、個人でも手近にある複数台のマシンを結合したコンピュータパワーを手軽に活用できるはずだ。
クラスタリング技術は、生命工学・地球環境シミュレーション・宇宙誕生を探るような分野だけに留まらずその規模はともかく、より我々の身近なものになってくるに違いない。


関連記事
メイン広告
ネットショップ先行販売
ブログ内検索
New web site
[小説]未来を垣間見たカリスマ  スティーブ・ジョブズ
ジョブズ学入門
WATCH 講座
大塚国際美術館ひとり旅
ラテ飼育格闘日記
最新記事
お勧めの新旧記事
カテゴリ
リンク
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

プロフィール

appletechlab

Author:appletechlab

主宰は松田純一。1989年Macのソフトウェア開発専門のコーシングラフィックシステムズ社設立、代表取締役就任 (2003年解散)。1999年Apple WWDC(世界開発者会議)で日本のデベロッパー初のApple Design Award/Best Apple Technology Adoption (最優秀技術賞) 受賞。

2000年2月第10回MACWORLD EXPO/TOKYOにおいて長年業界に対する貢献度を高く評価され、主催者からMac Fan MVP’99特別賞を授与される。著書多数。音楽、美術、写真、読書を好み、Macと愛犬三昧の毎日。マネキン造形研究中。日本シャーロック・ホームズクラブ会員。日本リュート協会会員。ゆうMUG会員