音楽は良い環境で、そして良い音で聴きたいと誰しもが思うに違いない。しかし現実問題として室内外を問わず、私たちの周りは騒音に充ち満ちている。私は2001年にBOSE社のノイズキャンセリング・ヘッドフォン「QuietComfort」を手に入れたことがあったが、今回はその新型のレポートだ。


■QuietComfort 2(クワイアットコンフォート2)とは
「QuietComfort 2」の外見は一般の密閉型ヘッドセットと変わったところはない。しかしその使われているテクノロジーは通常の密閉型のそれとは大きく異なる。
「QuietComfort」のコンセプトを一言でいうなら「必要な音を聴くために、周りの音を消す」という発想である。
いうまでもなく私たちは常に騒音のまっただ中で生活している。ただ私たちの聴覚はよくできており、目的の事に集中するとその他の騒音・雑音は気にならなくなるという性格を持っている。だからこそ毎日多くの騒音の中でもそうそうストレスなく生活ができるわけだ。したがって何かの機会があり、街中の様子を録音してそれをプレイバックすると「こんなにうるさかった?」と驚く経験をする。とはいえ、音楽を理想的な状態で聴きたいとなると話は違ってくる。
いくならんでも我々は聴きたい音だけを選択して聴く能力は持っていないから、例えば電車の中で騒音が気になるときはイヤーフォンやヘッドセットのボリュームを上げることになる。しかしこれでは難聴を作り出すようなもので決して耳によい事ではない。

BOSE社はいわずと知れた音響機器の世界的なメーカーでありその製品のクオリティには定評がある。
BOSE社は1978年からヘッドセットの基本研究に着手し、米軍をはじめとする航空機産業向けに製品を納めてきた。そして1995年には米国飛行機所有者・パイロット協会より€"Product of the year€"を受賞し1996年にBOSE社初の一般向けアクティブ・ノイズ・キャンセリング・ヘッドセットをアメリカン航空のアッパークラス専用のヘッドセットとして納入実績を果たしたという。

民間のプロパイロットは勿論、空軍パイロットや飛行場などで働く人たちにとって騒音を軽減し的確で正確なコミュニケーションを行うことは重要なことであると同時に非常に高いレベルの騒音下に置かれるために聴覚を守る必要もある。したがってすでに20年以上にも及ぶ研究・開発の成果が「QuietComfort 2」なのだ。

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※BOSE「QuietComfort 2」のソフトケース(上)と、その同梱品(下)


さて「QuietComfort」は別に飛行機や新幹線の中だけでなく、日常の自宅でも純粋にリラックスして音楽を聴きたい場合に効果を発揮する。
先にも記したように私たちの聴覚は聞こえている騒音を感じさせないようにする感知抑制機能を持っているが長時間そうした抑制努力を続けていると大きな疲労の原因となるという。また「QuietComfort 2」自体、他のオープンタイプのヘッドフォンと違って音漏れが少ないため、周りに迷惑をかけることもなく必要なボリュームで音楽や他のソース(英会話の勉強など)に集中できる。
ところで製品名「QuietComfort」の「Quiet」は静けさ、「Comfort」は快適さという意味だから、そのまんまじゃん(笑)。

■QuietComfort 2 〜ノイズキャンセリングの仕組み
通常のヘッドフォンは当然の事だがヘッドセットを通して周りの騒音も耳に達し、一般的な密閉型でも騒音は多少軽減されるもののそれには限界がある。
さてノイズキャンセリングの仕組みだが、まず「QuietComfort 2」はイヤーカップの中に装備されているマイクロフォンでカップの中のすべての音をリアルタイムにモニターする。そして聴こうとする音楽ソースと比較しその差を騒音としてとらえ、それと正反対の位相を持つアンチ・ノイズ信号を作りだして音楽などの聴こうとする信号と一緒にイヤーカップ内のスピーカーに送り出す仕組みである。

その結果、ノイズ信号とアンチ・ノイズ信号はお互いにうち消し合って私たちの耳には聴こうとする音楽だけが伝わるということになる。実際にはこうしたプロセスを高速で繰り返し変化を続けるノイズにリアルタイムに対応し処理し続ける。ただし無音の状態になるわけではなく、安全性などを考えて人の話し声などの帯域はキャンセルしない。

■QuietComfort 2の仕様とQuietComfortとの違い
以前の「QuietComfort」より「QuietComfort 2」の方がそのイヤーカップのデザインが一段とスマートになった。またイヤーカップ部分が90度回転でき、本体をフラットに収納することができるようになったことも携帯時には嬉しい。

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※2000年発売の「QuietComfort」(上)と2003年発売の「QuietComfort 2」(下)


以前の製品との一番の違いはバッテリーパック部分が無くなり、バッテリーはイヤーカップの中に収まるように設計された点にある。
実は「QuietComfort」最大の欠点がこれだった。このバッテリーパック部分が実際の使用時にかなり邪魔だったのだ。
さらに取り外しが可能な片出し型ケーブルの採用により、音源と接続せずにノイズキャンセリング機能のみを使うときにはコードレス...すなわちヘッドセットのみで利用できるようになった。ただし「QuietComfort」はバッテリーをOFFにすることができたが、「QuietComfort 2」はスイッチを切るとノイズキャンセリングが利かないのは当然だが、音楽ソースと接続しての利用もできなくなる。すなわちノイズキャンセリング効果を使わないで音楽ソースを聴くという機能はなくなった。なおバッテリーは単4アルカリ乾電池1本で約35時間使えるという。

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※「QuietComfort」のバッテリーパック(上)と「QuietComfort 2」のバッテリー装着部分(下)


■QuietComfort 2の感想
肝心のノイズキャンセリング機能だが、確かに民生用の製品では「QuietComfort 2」が一番優れていると思う。以前に国産メーカーの製品を使ったことがあったが個人的にはそれよりずっと良いと思っている。まあ価格もまったく違うのだが...(笑)。
さて実際に「QuietComfort 2」を使ってみた感想を述べたい。

テストというほど大げさではないが、比較として一般的な密閉型ヘッドフォンと比較をしてみた。部屋は2台のPower Macintoshが起動し、ウィンドウ型のエアコンが唸りを上げている。そこにAMラジオ放送を流し、かつ1メートルほど離れたところに携帯電話を置き、そこに電話をかけてみるといった実験をしてみた。ただしヘッドフォンに音楽はまだ流さない状態である。
まず一般的な密閉型ヘッドフォンを装着するとマシンのファンの音は軽減されるような気がするものの、エアコンの音はイヤーカップに反響し、その音域が多少変わるが軽減された感じはしない。ラジオのパーソナリティの声もよく聞こえるし電話の音も聞こえる。ここで音楽を流せばそのボリュームで他の音が聞こえづらくなる程度だ。したがってもしノイズが大きいとソースのボリュームを上げざるを得なくなり、耳に悪いばかりか疲れる原因にもなる。

次に電源を入れた「QuietComfort 2」を音楽を流さず同じように装着してみた。
その瞬間、まったく違う世界に入った感じだ。まずマシンのファンといった音は聞こえない。ただしエアコンの唸りは大きく軽減されているものの、ラジオからの人の声はまずまず聞こえるのが面白い。また携帯電話が鳴ってもその着メロに集中しないと分からない。無論その音量にもよるのだろうが...。
ここでiPodから音楽を流してみると、エアコンの唸りはほとんど気にならなくなるし他の音らしきものは聞こえない…。

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※「QuietComfort 2」のスイッチはイヤーカップ右にある


ところでその音質だが一般的にこの種の製品は通常の同じスペック製品と比較して音質は犠牲になる傾向があるがこの「QuietComfort 2」はとても良いのではないか...。iPod mini付属のイヤーフォンと比較すると構造上の違いもあるわけだが、音のバランスや臨場感は格段に「QuietComfort 2」の方がよい。
ただ面白いのは通常マニュアルなどに記述のある周波数特性などというデータ記述が「QuietComfort 2」にはないことだ。これは先に説明したノイズキャンセリングの働き、すなわちノイズの状態などによりその特性は変化せざるを得ない。このためあらかじめ定めた通りのスペックが持続できないことが理由なのではないだろうか。
ともあれ実際に音をモニターしてみると音の抜け、高低音のクリアさは以前の製品よりずっと良くなっている感じがする。

また外観の感想を記すなら、そのカップの大きさも一般の同種のタイプと比べて大きくはない。作り、材質ともに見るからに良いものを使っているので現実に装着感も大変よい。
ただし「QuietComfort 2」は街中で歩きながら使うと安全性に問題があるので十分注意をする必要があるだろう。特に車の音をはじめとして周りの音を消してしまうので、運転時などには決して使ってはならない。そして歩いている時でも周りの状況をよく把握していないと危険な場合があるので承知しておくべきだ。
さらに「QuietComfort 2」は音楽を聴くだけでなく「静かな場を欲しい」といった時にも活用したい。例えば仕事で集中したいとき、あるいは本を読みたいときなどは効果絶大である。もしかしたらこちらの需要の方も大きくなるのではないだろうか。

■エピローグ
あらためて今回「QuietComfort 2」を使ってみて感じたが、「ノイズを軽減して音楽を純粋に楽しく聴く」ことは勿論、瞬時に理想に近い環境(音だけに関してだが)を作り出してくれると考えればその価格も納得せざるを得ないのではないか。
事実「QuietComfort 2」は読書をするとき、仮眠をするときなどにもケーブルを外してヘッドセットだけで使うこともできるわけで、掃除機や洗濯機の音、猫の鳴き声、窓から入ってくる車の音などを遮断してくれる。
私自身、自宅のマッサージチェアにふんぞり返りながらこれを使うと短時間で失神できる(笑)。
さて、冒頭に記したように2001年に最初の「QuietComfort」を使い始めたとき、私の周りの反応は「なに...それ?」といった感じで鈍かった(^_^;)。しかしいまではApple Store GinzaのiPodあるいはiPod miniの試聴コーナーにはこの「QuietComfort 2」がずらりと並んでいるのを見ると隔世の感がある。

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※現在のApple Store Ginza店頭


確かに「QuietComfort 2」は決して安くなくそしてまた市場にはノイズキャンセリングを唱える安価な製品も登場しているから選択は迷うに違いない...。しかし単なるヘッドフォンを購入するというより「本物の快適さを求める」ことを追求するなら、自ずと選択はこの「QuietComfort 2」に向かうのではないだろうか。

●ボーズ株式会社

●Apple Store


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Author:appletechlab

主宰は松田純一。1989年Macのソフトウェア開発専門のコーシングラフィックシステムズ社設立、代表取締役就任 (2003年解散)。1999年Apple WWDC(世界開発者会議)で日本のデベロッパー初のApple Design Award/Best Apple Technology Adoption (最優秀技術賞) 受賞。

2000年2月第10回MACWORLD EXPO/TOKYOにおいて長年業界に対する貢献度を高く評価され、主催者からMac Fan MVP’99特別賞を授与される。著書多数。音楽、美術、写真、読書を好み、Macと愛犬三昧の毎日。マネキン造形研究中。日本シャーロック・ホームズクラブ会員。日本リュート協会会員。ゆうMUG会員