MacPeople誌が休刊!に徒然思うこと

MacPeople誌が休刊だというニュースはさすがに考えさせられた…。これでMac専門月刊誌はMac Fanだけとなってしまった。雑誌だけでなく活字離れの時代といわれて久しいが、売れている本もあるわけでやはり売れない理由をもっともっと精査する必要があるに違いない。


勿論、月刊誌を発行されてきた当事者たちにとっては死活問題だからして日々改善策を模索してきたに違いないし、当初開発者向けの雑誌にシフトする…といった情報があり、その後休刊というニュースが入ってきた。その混乱ぶりは出版の継続実現を含め、現場では様々な思惑と厳しい現実の狭間で苦悩があったであろうことが想像できる。

Mac雑誌とかパソコン雑誌というジャンルに限っていえば、思うように売れない理由はすでにアナログだから…デジタルだから…といった問題ではなくもっともっと根が深いに違いない。
とはいえ、それ見たことかと偉そうな物言いをするつもりもないし、起死回生の奇策があるわけでもないが、Macの黎明期からMACLIFE、MacJapanそしてMac Fan各誌の創刊に立ち会い、お世話になったライターの1人として他人事とは思えないのである。

1冊 800円程度の月刊誌がなぜ売れないのか。その背景・理由は世相の不安や低所得層が増えたという事実をも踏まえて様々な視点から再考する必要があるに違いない。というわけで以下常に考えてきた点について私なりに考察してみたいが、もしかしたら関係者の方々を不快にするであろう物言いもあるかも知れない。事情をご高察いただきご容赦願いたい。

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※MacPeople誌とMac Fan誌、共に2014年10月号表紙


まず簡単にいってしまえば読者も編者側にもまったく余裕がない時代になったことがあげられよう。例えば一昔前の私は一時期、Mac雑誌からパソコンには関係ない話題を書けと依頼され、音楽雑誌からは音楽に関係ない話題を書けとの依頼を受けて連載を続けたことがある(笑)。いまでは考えられないことだが、案の定次第に世知辛くなり、そうした企画は無駄と考えられるようになった…。

企画、コンテンツ、ライターそしてデザインや表紙などなど雑誌を構成する要素はいろいろとあるわけだが、1番重要なのは申し上げるまでもなく記事でありコンテンツだ。しかしユニークで面白く正確な情報を書ける人はそう多くはない。またMac雑誌という枠から外れた企画は前記したようにほとんど実現しないから、ある意味で周知の情報を切り口を変え、書き手を変えて提供することが多くなる。

第一肝心のApple製品情報のあれこれに関しても極一部の開発中の製品は別にして日々多くのメディアやユーザーによって詳細が白日の下にさらされており、そうそう物珍しい話など転がっていない時代となった。
「Mac雑誌はリアルタイムの記事より未来と過去の話題に重点を置いた方が良いのではないか…」と半分本気で思うほど本来貴重なはずの旬の話題・テーマは魅力的でないことが多くなった。

さらにライターや編集側は本来読者よりその分野や仕事について経験と知識など明らかに優れた技量を持っていることは当然だが、昨今は情報過多の時代といわれ、ほとんどの人がインターネットに接続すれば望む情報を即座に得られる時代だ。無論その情報が正確で的確なものであるかは別問題だが…。
その上にプロとアマチュアの間に昔ほど明確な線引きができない時代となり、全てではないもの専門家と素人の間がボーダーレスの時代だともいえる。したがって黎明期と違い読者が「この程度の内容なら金を払う必要がない」と考えてしまう傾向は否めない…。

そうしたあれこれを踏まえ今度はライター側の視点で言わせていただくと、昨今はコンピュータ雑誌に寄稿するメリットというか喜びが薄れてきたと感じる。
その理由のひとつは刻々と新しいニュースが入ってくる時代にひと月一度の発刊では旬の話題ほど出版した際に情報が早くも古びてしまう可能性があることだ。

さらに世相を反映しているといわれれば頷くしかないが、この十数年いわゆる原稿料というものがかなり安くなっている。私自身に提示される例をご紹介するなら20年ほど前と比較して現在の1ページあたりの原稿料は 1/3 近くになっている…。
生意気を申し上げるようで恐縮だが、これではユニークで面白い良質の記事を独占的に提供してもらうことは難しいのではないか。結局経費節減およびタイムリーな書き手が見つからなければ編集部自身で主要な記事を書くはめになる…。

あらためて問うてみるが…読者はMac雑誌になにを求めて購入するのだろうか。無論そのコンテンツであり情報の質の高さと他媒体からでは求められない斬新さとユニークな情報を欲しいからに違いない。しかし矛盾するようだが、基本的に記事の内容だけでは雑誌が売れないことはすでに現実だ。
結局これまでの慣習にとらわれないまったく新しい発想で雑誌作りを考えないと魅力のあるものはできないと思うし申し訳ないことに近年私自身も特別のケースを除いてMacPeopleやMac Fanを買っても読んでいない…。

ではどのような誌面だったら読みたい、買いたいと思うのかを無責任ながら考えてみた。
真っ先に頭に浮かんだことは…例えばの話だが「林信行氏責任編集、丸ごと1冊Mac Fan」とか「月極編集長、大谷和利氏、丸ごと1冊MacPeople」といった雑誌なら内容など確認せずに書店に出向いても買うと思う。いや、「松田純一、丸ごとムックでマック!」というのも勿論ありだ(笑)。しかしそのための雑誌作りには相応のコストがかかるはずだからして残念ながら現行の出版コンセプトでは実現は難しいに違いない。

なにを申し上げたいのかといえば、要はMacPeopleにしてもMac Fanにしてもブランド力が以前と違って薄れてきたと思うのだ。決して昔の方が良かったと単純に申し上げるつもりはないが、黎明期の雑誌作りはどの出版社も編集長を含めた編集部そのものがある種のブランドだったし、無論ライターたちも光っていた。作り手は読者にとって常に憧れの対象だった!

そもそも定期刊行物としての「雑誌」とは一定の編集者と読者を持つものであり、定めた編集方針の元で予定通りの記事が掲載されるのが普通だ。したがって理屈をいうなら読者はライターとか今月号のコンテンツを確認して月刊誌を買うというより、編集部の方針というかその出版コンセプトに信頼と共感を抱き、その技の妙を好むからこそ毎月雑誌を手に取るのである。

したがって本来…といっては語弊があるが、月刊誌の楽しみは手にしてから「今月はどんな記事があるのだろうか?」と期待しながらページを開くものであり、書店で目次を見て、あるいは表紙のタイトルを確認して「今月は買わな〜い」という判断をさせるようなメディアではなかったはずだ。だからこそ年間購読という制度も生きてきた。したがって暴論を吐くなら、私はよく雑誌の最後ページにある「次号予告ページ」など不要と思っているほどだ…。

というわけで簡単に結論が出せるはずもないが、雑誌が売れない理由としてすぐに誌面の刷新が問われるものの、私たちがMacの月刊誌に求め期待しているのは決してコンテンツとかある種のイノベーションだけではなく毎月書店で、あるいは定期購読で送られてくる1冊を手にするときに感じる眩しいような “ブランド力” なのではあるまいか。
是非MacPeopleには復活して欲しいし、Mac Fanにはさらなる飛躍を期待してこの稿を締めくくるとしよう…。

※林信行氏、大谷和利氏のお名前はジャーナリスト、ライターとして大御所でありつとに著名な方々なので好例として使わせていただきました。



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Author:appletechlab

主宰は松田純一。1989年Macのソフトウェア開発専門のコーシングラフィックシステムズ社設立、代表取締役就任 (2003年解散)。1999年Apple WWDC(世界開発者会議)で日本のデベロッパー初のApple Design Award/Best Apple Technology Adoption (最優秀技術賞) 受賞。

2000年2月第10回MACWORLD EXPO/TOKYOにおいて長年業界に対する貢献度を高く評価され、主催者からMac Fan MVP’99特別賞を授与される。著書多数。音楽、美術、写真、読書を好み、Macと愛犬三昧の毎日。マネキン造形研究中。日本シャーロック・ホームズクラブ会員。日本リュート協会会員。ゆうMUG会員