WATCHに見る腕時計型ガジェットの使命とは

(Apple)WATCHが発表された。相変わらずではあるが早速デザインが女性的だのセックスアピールが足りない、あるいは斬新さがなく当たり前の形だというような批判が出ている。そしてそもそも腕時計など必要ないし、Appleも今更腕時計など開発してどうするのか…といったネガティブな意見も目立つ。


先般私は「遂に登場したWATCH、まずは腕時計としての第一印象は?」と題した話題をアップしたが、腕時計好きの1人としてまずは気になった点を記してみた。ただしWATCHをただ最新のテクノロジーを駆使して開発した “腕時計” といった意味だけで捉えるのは正しくないことを知るべきだろう。
WATCHは、腕時計の姿を持った最新鋭のガジェット、極小の端末だというのが真のとらえ方に違いない。したがって自分は腕時計などしないし、今更腕時計でもないだろう…という評価は短絡的すぎると思う。

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※先のスペシャルイベントでApple Watchを発表するティム・クック CEO


ではなぜいま、AppleはWATCHを開発したのか。確かにその名には時計という名が付いているものの、Appleは決して腕時計メーカーを目指しているわけではない。
Appleは、iPhoneと連携させて使う新しいコンセプトを持った極小デバイスを開発し、近未来を想像するならそもそもiPhoneは不要となり、WATCHだけで事が済む時代を想定しているのかも知れない…。

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※WATCHは、しばらくの間iPhoneと共に活用すべきデバイスだが、そのうちこれ単独で用が足りる能力を持つかも知れない


そもそも時計のようなアイテムを腕に巻くということにどのような意味があるのだろうか。腕時計の歴史を見てみるとそもそもはブレスレット同様高貴な女性たちの宝飾品だったようだ。無論現在のように小型のものが作れたわけでもなく大量生産も不可能だったから、それらは一品物であり非常に高価なものであった。そして実用的な腕時計の発祥はといえば、他の多くのアイテム同様軍事に関わる話となるようだ…。

当時からいまのような腕時計があったわけでもなく、小型化され持ち運べる時計といえば懐中時計だった。とはいえ1900年代の軍隊ならずとも正確な時間を計り、物事のタイミングを図ることは特別な使命を帯びていた人たちには重要な意味を持っていた。
当時砲弾を発射するにも懐中時計を見ながらタイミングを図らなければならなかったし、パイロットたちは時間経過を正確に捉えていなければ安全を確保できなかった。したがって高度な戦略が必要な砲兵や歩兵の将校たちにとって時計は欠かせない存在だったのである。

しかし砲弾を発射するタイミングにしろ、飛行機を操縦しながらにしても懐中時計を取り出して確認するといった行為は非常に不便だったし危険も伴った。したがってそれらの人々の中には懐中時計を革バンドなどを使い、自分の腕に縛り付け、それを確認しながら命令を実行する人たちが見受けられたという。

その後、とあるパイロットが友人の時計職人に懐中時計に変わる戦時に便利な腕時計を作ってくれと依頼した話なども伝わっている。そして1879年、ドイツ皇帝ヴィルヘルム1世がドイツ海軍用としてジラール・ペルゴに腕時計を2,000個製作させたという記録が残っているそうだが、この時計は文字盤を保護する網目状の金属製カバーを備えていた。

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※ジラール・ペルゴがドイツ海軍将校用に製造した史上初の量産型腕時計。ウィキペディアより転載


ともあれ手首に巻き付けた時計は申し上げるまでもなく両手でなんらかの作業をしながらも確認できる点がポイントだ。なぜなら手による作業のほとんどは手を胸の前に突き出して行う。したがって自然に手首に巻いた時計に視線が向くし、作業に集中していても時計は視野に入る…。
いちいちパンツのポケットやジャヶットのポケットから時計を取り出すのではチャンスを逃したりタイミングを不明確にする。その点手首に巻いた時計はなんとも使いよいわけだ。
当時腕に巻かれた腕時計は無論ゼンマイ式だったが、その時代としては最新のウェアラブルなマシンだったのだ。

勿論いまは1900年代と違い、時計の役割はかなり違ってきた。いや、時計というか時間が我々の生活に果たす役割に大きな違いはないものの100年前よりずっと短い時間に追われて生活していることも確かだ。また私たちは100年前よりずっと時間にしばられているともいえよう。
ただし大草原のまっただ中といった場所でない限り、どこにいてもどこかに時計があり時間を知ることが可能だろう。したがって都会であれば手首を圧迫する時計など不要だしいまの我々にはスマートフォンがあるではないか…という意見も多い。

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※WATCH SPORTのバリエーション


しかし繰り返すが100年前の軍人たち以上に現在の我々は好むと好まざるとを問わず、時間だけでなく桁違いに多くの情報を得ながら生活していることを再認識すべきだろう。
そのために iPhoneを鞄から取り出す、iPhoneをポケットから取り出すことはある意味、懐中時計を取り出すに等しいことになる。腕にWATCHがあればMacの前に座りキーボード入力中でも、あるいは走っていても、車に乗っていても自然体で情報を受けることが出来る。無論懐中時計とは違い、WATCHは情報発信もできるし扱える情報は量・質共に桁違いだが、手首に巻いているというその事が新しい利便性を生むのではないか。

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※Apple WatchのDigital Touch機能は新しいコミュニケーション手段となる


したがってWATCHを新しい時代の腕時計としてだけ捉えて評価批判するのはピントが外れていることになる。WATCHはその名やデザインは時計であることを主張しているが、手首に常駐することで、そしてiPhoneと共に活用することでこれまでにない新しい世界観を私たちに見せてくれるような気がするのだ。これは時計型のウェアラブル情報端末なのである。
それにWATCHは登場したばかりだ。iPodが登場したとき、iPhoneが登場したときも「こんなものは売れない」といったネガティブな意見が多々飛び交ったことを忘れてはならない。

ただしApple側にも不用意な言動があるように思える。あのジョナサン・アイブが、WATCHの登場でこれまでの時計メーカーが嫉妬困惑するだろうという意味の発言をしたらしい。それはセールストークとして捉えればどうという事もない話であるが、アイブ自身がWATCHを腕時計としてこれまでの時計メーカーを刺激しているのは幼稚ではないか…。
そうした話に引きずられ、WATCHの登場で旧来の腕時計メーカーが不振となる…といったことも危惧されているようだが、確かに他社のスマートウォッチはもしかすると全滅かも知れない。しかし時計好きの1人としてアイブの話は逆ではないかと思っている。

すなわちWATCHは時計業界にとってよい刺激であり朗報になるかも知れないということだ。なぜならこれまでに述べたように近年時間を確認する方法は多々あるだけでなくスマホや携帯電話の台頭で腕時計を使う人は激減した。しかし腕時計は本来ある意味装飾品でありブランドを楽しむアイテムでもある。
例えば高価な超精密機械式腕時計を腕にはめて楽しむのは、それがステイタスであるばかりでなく人類の叡智と高い技術の結晶だからだ。だとすればWATCHはそのデジタル版ととらえることもできるだろう。
もしWATCHが多くの人たちの腕を飾るようになれば、人々は再び腕時計というものの利便性とその楽しみに気がつき、再び時計を腕に着け始めるかも知れないではないか。まあ、かなり楽観的な考えだとは思うが…(笑)。

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※Appleのプロモーションビデオの一シーン


ともあれ、WATCHは腕時計であることも確かだからして、個人的に夢見ていることは来年のバーゼル・フェアにWATCHが展示されると楽しいと考えている。優れた腕時計として、そして世界を変えてきたAppleというブランド名が世界中の時計や宝飾品のデザイナーたち、あるいはマニアやバイヤーたちにもアピールできる最良の場だと思うからである。

しかしこれほど手にするのを待ち遠しいと思う製品はiPhone以来だ。そういえば、WATCHは来年早々に発売と発表された。その予定通りであれば 2015年の3月とか遅くとも4月でなければならないが、個人的には発売がWWDCの時期あたりに遅れるのではないかといった危惧を持っている。はっきりした根拠があるわけではないが、バッテリー周りはまだまだ未完成のように思えるし、キラーアプリもいまひとつ有益で面白いものがあって良いと思うからだが、さて私の危惧が外れてくれればよいのだが…。





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Author:appletechlab

主宰は松田純一。1989年Macのソフトウェア開発専門のコーシングラフィックシステムズ社設立、代表取締役就任 (2003年解散)。1999年Apple WWDC(世界開発者会議)で日本のデベロッパー初のApple Design Award/Best Apple Technology Adoption (最優秀技術賞) 受賞。

2000年2月第10回MACWORLD EXPO/TOKYOにおいて長年業界に対する貢献度を高く評価され、主催者からMac Fan MVP’99特別賞を授与される。著書多数。音楽、美術、写真、読書を好み、Macと愛犬三昧の毎日。マネキン造形研究中。日本シャーロック・ホームズクラブ会員。日本リュート協会会員。ゆうMUG会員