1967年、旧ソ連時代の映画「妖婆・死棺の呪い」と再会

高校生の頃だったと記憶しているが、自宅のテレビで洋画劇場とでもいった番組だったのだろうか、たまたま見てから忘れられずに探しに探した人魚映画については以前「念願の『彼と人魚 (Mr. Peabody and Mermaid)』を入手」でご紹介したことがあるが、もうひとつ違う意味で強烈な印象を受け、これまた後年になってもう一度見てみたいと考えていた作品があった...。


タイトルも分からずにいたので探せなかったが、これまた先日偶然にもDVDが出ていることを知り早速手に入れた。それは旧ソ連時代に作られた初のホラー映画「妖婆・死棺の呪い」(原題 = ВИЙ)という1967年の作品で、ドストエフスキーなどその後のロシア文学に多大な影響を与えたといわれているロシアの文豪ニコライ・ゴーゴリの短編「ヴィイ(妖女)」を基にした映画だった...。

というわけで、今般その全容を初めて知ったが、意外に知られている作品のようで、ホラー作品とはいえ単に怖がらせるといったストーリーではないのが興味深い。いわば恐怖と笑いが交差するといったらよいのか…。
そもそもホラー映画は嫌いな私が再度見たいと探していた作品なのだから、いま風にいうなら「ゆるキャラ妖怪映画」といった感じでもある…。

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※「妖婆・死棺の呪い」(原題 = ВИЙ)1967年製作のDVDパッケージ


ともかく強烈に記憶に残っているシーンはラストシーンだったようだ。神学生の主人公が礼拝堂の中央に結界として魔除けのサークルを描き、その中で祈祷するものの四方の壁から手が伸び、骸骨が躍り出てまるでインクブスあるいはスクブスといった感じの魔物や妖怪が壁から滲み出るように主人公に襲いかかる場面だった。
余談だが "ふなっしー" を最初に見たとき、悪いけどその時の魔物を思い出したっけ(笑)。
さらにどういう経緯かは覚えていないが、やはりというか…少年の私がボーっとするほどの美少女が登場していたはずなのだ...(笑)。

どうやらストーリーの後半を偶然に見たらしいが、好奇心旺盛な年齢でもあったからか、あるいはそうした物を好む性向だったのか、結界としての魔法のサークルというものに興味を持ち、一時は数種それらを描けるまでに至った。思えば変な少年だった(笑)。

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※エミール・グリヨ・ド・ジヴリ著/日夏響訳「悪魔の書」にある典型的な魔除けのサークルたち


魔除け/魔法のサークルなどといえばファンタジーあるいは戯言のように思われるだろうが、実在の人物でありエリザベス朝時代の高名な占星術師で錬金術師だったジョン・ディ博士が後にイカサマ錬金術師といわれたエドワード・ケリーと中央ヨーロッパを巡る流浪生活を送っていた際には度々降霊すなわち死人を甦られる口寄せの魔法を行ったという。
そのイメージは当時の版画で残されているが、霊媒となったケリーと松明をかざして臆しているようなディが魔法のサークル内で死者と対峙している姿が描かれている。

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※ジョン・ディとエドワード・ケリーが死人を呼び出している図。2人の足元には魔除けのサークルが描かれている


さて話しは映画に戻るが、あらためて確認してみると、そのあらすじは…神学校が夏休みとなり新学生たちが悪ふざけをしながら帰省するシーンから始まる。
一人の若い神学生が帰省途中に泊まった宿で事件が起こる。老婆に背中に乗られたまま空中浮遊をした神学生は魔女に違いないと老婆を滅多打ちにすると美少女に変身し、結局神学生自身は望まない形ではあったが為に死んだ若い娘の祈祷を頼まれ、起き上がる娘の死体および妖怪たちに襲われるという怪奇幻想譚であった。

死んだ娘を供養するため、無理矢理頼まれ鍵をかけられた礼拝堂で三日三晩祈祷するはめとなった主人公を阻止しようと、悪霊たちが次から次へと現れる……。
主人公は神学者とはいえ神学校で哲学を学んでいる青年で、どうやら出来も悪くガラも悪いしまだまだ未熟だった。最初の晩で怖さを紛らわそうと礼拝堂のあちこちに蝋燭を灯して昼間のような明るさにするが、死んだはずの娘が起き上がる。神学生は夢中で自分の周りに魔除けのサークルを描いて神に祈るが、娘は結界を壊そうと飛び回る…。

2日目が何とか終わると恐ろしさに神学生の髪は真っ白になってしまう。試みた逃亡にも失敗した最後の3日目、恐怖を紛らわすために酒に酔っていたこともあってか、神学生は見てはいけない最強の妖怪ヴィイを見てしまったことで結界は破られ、翌朝死体で発見される...といったお話しだった。また記憶の底にあった美女だが、魔女役の女優(ナターリヤ・ウァルレイ) は記憶に残っていたとおり確かに神秘的な超美女だった(笑)。

ただしまるでファンタジーというか牧歌的な美しい音楽(カレン・スレノヴィチ・ハチャトゥリアン)といい、映像といい、怖がらせようという意図はほとんど見えず、まだCGといった技術もない時代だったし特撮もどこか稚拙でおとぎ話でも見ているような感じを味わわせる。さらにこの映画はてっきりモノクロだと思っていたが入手したDVDはカラーだった。

私の記憶違いなのか、あるいはそのテレビ放映を見たときのテレビがモノクロだったのか…。いまとなっては検証のしようもないが(笑)。それに高校生のときに見た...と思っていたが、本作品の制作が1967年とのことなので、考えてみるに少々時期的に不合理だ(笑)。制作公開された早々にテレビで放映されたとしても多分にもう少し後で見たと考えた方が合理的かも知れない。
まあ45年ほど前に偶然に、それも1度だけ見た記憶がすべて正確であるはずもないが、記憶の不確かさをあらためて認識した...。

ともあれ後年魔法だの錬金術あるいはカバラなどなど妖しいあれこれを澁澤龍彦などの著作を機会に好むようになったが、それはこの映画の影響かも知れない。
そういえば澁澤龍彦著「黒魔術手帖」桃源社刊(1971年)やエミール・グリヨ・ド・ジヴリ著/日夏響訳「悪魔の書」大陸書房刊(1975年)には死者を呼び出す口寄せの具体的な方法と手順も載っているが、意気地のない私はいまだに実験したことはない…(笑)。
本作品、話のネタに是非1度はご覧になることをお勧めしたい!

【作品データ】
・原作:ニコライ・ゴーゴリ
・総監督:アレクサンドル・プトゥシコ
・監督:コンスタンチン・エルショフ/ゲオルギー・クロパチェフ
・脚本:アレクサンドル・プトゥシコ/コンスタンチン・エルショフ/ゲオルギー・クロパチェフ
・撮影:フョードル・プロヴェロフ/ウィクトル・ビシチャリニコフ
・音楽:カレン・ハチャトゥリアン
・出演:レオニード・クラヴレフ/ナターリヤ・ヴァルレイ/アレクセイ・グラズィリン/ニコライ・クトゥーゾフ他




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主宰は松田純一。1989年Macのソフトウェア開発専門のコーシングラフィックシステムズ社設立、代表取締役就任 (2003年解散)。1999年Apple WWDC(世界開発者会議)で日本のデベロッパー初のApple Design Award/Best Apple Technology Adoption (最優秀技術賞) 受賞。

2000年2月第10回MACWORLD EXPO/TOKYOにおいて長年業界に対する貢献度を高く評価され、主催者からMac Fan MVP’99特別賞を授与される。著書多数。音楽、美術、写真、読書を好み、Macと愛犬三昧の毎日。マネキン造形研究中。日本シャーロック・ホームズクラブ会員。日本リュート協会会員。ゆうMUG会員