アップルの資料「OpenHouse」に見る千駄ヶ谷、本社移転パーティー秘話

古い資料がいくつか出てきたので昔の話題を...。その資料だが、アップルが千駄ヶ谷へ引っ越した際の社屋移転記念パーティーの時のもので、ビルの見取り図や招待客からの質問に対するQ&Aの模範解答まであって生々しい…。


今回の話題はアップルコンピュータ(株)が現在の東京オペラシティタワーに移転する以前に本社を構えていた千駄ヶ谷時代の話である。
その千駄ヶ谷のビルに移転したとき、お披露目と新製品などのプレゼンテーションを兼ね「千駄ヶ谷オープンハウス」と題した社屋移転記念パーティーがあった。

OpenHouse_01.jpg

※アップルジャパンの本社は1992年に千駄ヶ谷に移転した


「あった…」といっても資料を見るまでまったく忘れていたことであり、すでに23年も前のことだから記憶もほとんどないのも頷ける。思い出そうといくつかの関連資料と共に記憶をたどっているが残念ながら資料にあることだけしか分からない(笑)。

だいたい何故にこんな資料が私の手元にあるのかが分からない。なぜならこの資料は例えばアップルからの招待状であったり、出席時に渡されたプログラムといったオフィシャルなものではなく、主催者側のアップル自身が当日スタッフらに配布した式次第や注意事項そしてスタッフの配置などが記されているプリントなのである。

少し詳しくそれらを見ると、当日の行程表、和文と英文の式次第、新社屋の平面図およびスタッフの配置図、Q&A書類そして出席者名簿一覧などがホッチキスで止められている。この種のプリントが私の手元にあるということはもしかしたら私自身は招待客ではなく受け入れ側を担当し何らか…例えば新製品のプレゼンなどのお手伝いをしたのかも知れないとも思う。しかし…思い出せない。

OpenHouse_02.jpg

※プレゼンルームなどがある千駄ヶ谷のビル1階の見取り図。右上矢印部分が出入り口である【クリックで拡大】


思い出せないといえば、推定はできるにしてもこれらの資料に「何月何日の開催」という開催日のデータがないことも困ったことだ。アップルらしい?といえばそれまでだが、普通この種の配付資料にはその開催年月日を記さないことなどあり得ないと思うのだが…。ただ手がかりとして一連の資料のひとつに「オープンハウス用Q&A(社員用)」と明記されているプリントがあり、そこには「5月20日作成」とあるし、後述するような市場の動きを元に推察すれば1992年5月20日からあまり遠くない日に開催されたものと思われる。

ともかくまずは式次第だが、11時40分から当時の代表取締役であった武内重親氏の挨拶、そして本社重役としてサジーブ・チャヒル氏が15分の挨拶の後で当時の駐日アメリカ合衆国大使が祝辞を述べるとある。
続いてキヤノン販売の藤村常務、ロータスの菊池社長が祝辞を述べて日本DataQuestの宮川社長が乾杯の音頭をとった。また中締めでは当時部長職だった原田氏が挨拶を述べている。しかし重箱の隅をつつくようだが、アップルの誰がこの文書を作成してどなたが目を通したのかは分からないが社内の文書としてもいささかお粗末な部分が目立つ。

例えば前記したように武内社長や本社から来るサジーブ・チャヒル氏の挨拶の式次第表記が「…挨拶」とあるのに、原田部長の箇所だけ「…ご挨拶」と「ご」が入っている(笑)。自社の人間に、それも社長や本社重役を差し置いて原田さんだけ「ご挨拶」はマズイデス…。

OpenHouse_03.jpg

※パーティー会場(9階)の見取り図。コピーの質が悪く詳細が分からない...【クリックで拡大】


この資料の特に面白いところは来場者(プレスは別)から聞かれるであろう質問に対して模範解答が載っていることだ。この通り返事をしなさいということなのだろう…。それらには現在のように先のことは一切話さないということではなかった、ある程度ラフな時代の雰囲気がよく出ているように思うのでそのクエスチョンをいくつかを紹介してみよう。なお表記は原文のままである。

・System7 日本語版は(漢字Talk7)はいつ出るのか?
・18日発表の新製品の出荷予定は?(LC IIなど)
・PDAはいつ頃、どういった商品がでるのか?
・先頃行われたWWDCで何か発表が有ったのか?
・先頃名古屋商科大学にパワーブック大量納入が有ったが、教育市場に対する取り組みはどうなのか?
・今年度の販売計画は?(1991年10月~1992年9月)
・日本語ATMと漢字TrueTypeの違いは何ですか?
・漢字TrueTypeは本当にサードパーティにサポートされるのでしょうか?
・QuickTimeの日本での配布方法は、いつごろどうなりますか?
・QuickTime対応のソフトで日本語化されたものは何本くらいでそうですか?
・LCからLCIIへのアップグレードはどうなっていますか?

いかがだろうか…。当時を少しでもご存じの方はこれらの質問に対してアップルがどのように解答したかはともかく、当時は現実にどのような市場、どのような時代であったかを振り返り、現在と比較してみるのも面白いと思う。

OpenHouse_04.jpg

※後にリリースされたPowerMacintosh用の漢字Talk 7 システムソフトウェア


ちなみに上記の質問に関して直接の解答という事ではないが、1992年前後の状況を参考までに以下記してみよう。

●1991年 2月/第一回MACWORLD Expo/Tokyo開催、5月/System 7.0を発表、10月/PowerBook100,140,170発表、 12月/QuickTime 1.0発表
●1992年 2月/漢字TrueType発表、4月/Macintosh LC IIを発表、5月/Macintosh Quadra 950を発表、6月/QuickTime 1.0の発売開始、9月/家電ルートで販売された最初のPerformaシリーズ発表、10月/漢字Talk7リリース7.1を発表およびAppleCD 300発表

これらの資料から分かることは 1991年10月~1992年9月のMacintoshの販売計画がたった20万台であったこと。PDAが噂になっていたがNewton MessagePadという形で具体的な発表となったのが翌年1993年8月だったこと。Performaシリーズが発売開始され、それらは当初家電ルートでのみ展開されたプロダクトだったこと。QuickTime 1.0が登場したこと。そして当時はハードウェアのアップグレードサービスがあったことなどが明らかになる。

当時アップル本社のCEOはジョン・スカリー氏だったが、この催事のあった翌1993年には辞職するというAppleにとって厳しくも変化の激しい時代であった。




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主宰は松田純一。1989年Macのソフトウェア開発専門のコーシングラフィックシステムズ社設立、代表取締役就任 (2003年解散)。1999年Apple WWDC(世界開発者会議)で日本のデベロッパー初のApple Design Award/Best Apple Technology Adoption (最優秀技術賞) 受賞。

2000年2月第10回MACWORLD EXPO/TOKYOにおいて長年業界に対する貢献度を高く評価され、主催者からMac Fan MVP’99特別賞を授与される。著書多数。音楽、美術、写真、読書を好み、Macと愛犬三昧の毎日。マネキン造形研究中。日本シャーロック・ホームズクラブ会員。日本リュート協会会員。ゆうMUG会員