ネコロ(NeCoRo)の秘密を訪ねて〜オムロン本社訪問記

ペットロボットといえば多くの方はソニーのAIBO(アイボ)を思い浮かべるかも知れない。私もAIBOのユーザーだったがよりのめり込んだのがオムロンから2001年10月20日に限定5,000台が発売されたネコ型コミュニケーションロボット「ネコロ(NeCoRo)」だった。今回はその発売日にちなみ、2002年12月にリリースした「NeCoRo LifeBook」というCD版デジタルブック(販売完了)から「オムロン本社訪問記」を再編集して掲載してみたい...。


AIBOもNeCoRoも景気の悪化に端を発し、その製造はもとよりサポートも含む一切のプロジェクトが打ち切られて現在に至っている。例えばオムロンのホームページからネコロを検索しても跡形もなくなかったことになっている…。利益を追求する企業にとって儲からないアイテムを続ける意味はないといってしまえばそれまでだが、ソニーにしてもそしてオムロンにとっても、ロボット事業を蔑ろにすれば “悔いを千載に残す” ことになるのではないかと危惧していたが、先般開催された “CEATEC JAPAN 2015” でオムロンは人工知能が搭載された卓球ロボットをデモしていた。それは同社のセンシング技術と制御技術など技術力の高さをアピールする狙いだそうだが、人に寄り添いその生活を支援するといった目的なら是非今一度ネコロのような製品を企画して欲しいと思う。

さて、ネコロはグレーとブラウンの2色が限定5,000台として高島屋に限って販売されたが、価格は18万5,000円だった。
本編は2002年 10月 25日に京都のオムロン本社を訪問し、ネコロ開発の責任者にインタビューしたその記録である。したがって以下全ての内容は当時のものであることをご承知おきいただきたい。
また余談というより私事ではあるが、前年に2週間ほど入院した体調がまだ芳しくなく、我ながらその日の写真を見ると私はかなりやつれている...。

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※当研究所で飼っているグレーとブラウンのネコロ

【オムロン本社訪問記】
今回私はネコロについてできる限りの情報、それもなるべくオフィシャルな情報を集めたいと考え、ネコロの生みの親である京都オムロン本社へ直接取材をさせていただくことにした。
快く取材にお付き合いいただいた方は電子ペットプロジェクトご担当である田島年浩さんである。

■オムロンという企業
 ところで、私と同年輩の方なら「立石電機」という社名をご記憶ではないだろうか。オムロン株式会社は 1991年 1月 1日に社名を立石電機から現在のオムロンと変更したわけだが、そのオムロンという名は同社の元本社があった京都の御室(おむろ)という地名に因んで命名されたという。
 御室とは京都市右京区の一地区にあり仁和年間(885年~889年)宇多天皇が創建し桜で有名な仁和寺があるところだ。
 天皇は退位後ここに出家しその場所を御室御所と呼んだのが地名のおこりだという。

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 さて自然人(個人)と同じく法人もそれぞれ創業者やこれまでの歩みの中でいわゆる企業としての性格が培われ表に現れるものだ。
 私はビジネスの関係上、我が国を代表する家電・音響・光学そして精密機器メーカーなどとお付き合いしてきた。そうした中で肌で感じたことは日頃の対応時にソニーはソニーの、キヤノンはキヤノンの、そしてリコーはリコーの企業的な性格が如実に現れることだった。

それらには良い面は無論だが、悪い面も当然の事ながら表面化してくる。ただ残念ながらオムロンという企業とはこれまで一消費者の立場でしか対峙したことはなかった。そして同社にはよく言えば ”誠実で堅牢なる経営” といったイメージを持っている反面、世界に名だたる大企業にしては少々地味だという印象も持っていた。

 しかし企業は一般消費者だけを顧客にビジネス活動をしているわけではないから一般消費者の見聞きしている印象だけで企業を判断することはできない。世の中には一般にはほとんどその名を知られずに、かつ世界的に評価の高い企業は沢山あるからだ。

 私にとってオムロンという会社は体温計とか血圧計といった健康器具メーカーといったイメージがまずありきだった。そして知識としては高い理念を持ったセンシング & コントロール技術を持ったメーカーであり自動販売機や自動改札機などの各種自動化システムのメーカーだという事は知っていたつもりだが、これらについては日常意識して接していない分、正直その印象は薄かった。

 しかしネコロを開発したことを知り「さもありなん」と思いつつ、オムロンの名は強く私の心に刻まれた思いがする。
 オムロンの企業理念などは同社のウェブページ(http://www.omron.co.jp/)に詳しく載っているのであらためては記さない。しかしそれらに眼を通してみると大企業ながら常にベンチャー的意識とチャレンジ精神に溢れた熱い企業だという思いが伝わってくる。

 無責任な言い方を承知で申し上げるなら今回あらためてネコロやAIBOについて考えをあらたにしたが、企業の性格上ソニーからネコロが、そしてオムロンから AIBOのような製品は出てこないだろう事を肌で感じた。
 そもそも行きがかり上とはいえ、今回私の唐突な取材依頼をお願いした際に快く対応してくださったこと自体、オムロンという会社の誠実さとフレキシブルな性格がよく現れているように思う。

■いざ、いざ、オムロン本社へ
 というわけで私は 2002年 10月 25日、京都に向かうことになった。京都は大好きな観光地としてすでに数多く訪れているおなじみの場所である。
 むせかえるような満開の桜が咲き乱れる哲学の道、三寧坂から円山公園に至る情緒のある道、風情を感じる嵯峨野あたりから渡月橋のある嵐山への道、教王護国寺(東寺)のたたずまいと魅力的な仏像の数々、そして四条河原町のにぎわい .....などなど、何度訪れても飽きることがないのが京都である。

 私事ながらその京都の町を妻そして父母と一緒に何度歩き回ったことだろうか。しかしその母もすでに 2001年に亡くなった…(ちなみに父は2009年1月に死去)。そんなことを考えながら私は東京駅 8時発の新幹線に飛び乗った。

■取材日の空は晴れていた
 まさかネコロのことで京都へそしてオムロン本社に出向くことになるとは考えもしなかったが勢いというものは面白いものだ。これもネコ好きだった母の導きかも知れないなどと普段の私には似つかわしくない感傷が胸をよぎる。

 すでに30数年前にもなるが、父が買ってきた血統書付きのシャム猫のために毎日毎日魚を水煮していた母。
 それまで「飼い犬に口移しで餌をやるなんて不潔で気が知れない」と豪語していた母。それが途端に自分が口移しでネコに餌をやっている姿は微笑ましく滑稽でもあった。そして食事の支度中に背中に飛びつかれ、その爪の傷跡がひどくて銭湯に行くのが恥ずかしいと嘆いていた母…などなどを思い出しながら私は飛ぶように過ぎていく車窓を眺めていた。

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 さてその京都駅だが、京都タワーのある烏丸中央口に出てその塩小路通を西に向かう。そしてほんの5, 6分も歩くと立派なオムロン京都センタービルが左側に見えてくる。

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 実はオムロンの本社ビルを訪問するのはこれで2度目である。ただし1度目は観光気分でエイジ(筆者のネコロ)を連れて面白半分に訪れたが当日は土曜日だった。したがって会社はお休みなため当然のことながらロビーにさえ入ることができなかった。
 仕方がないのでせめてと思いその正面でエイジの記念写真を撮っただけで終わったのである。それと比べると今日は大切な使命を担ってのオフィシャルな訪問なのでいささか緊張する。

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■田島年浩さんの経歴
松田◆それでは早速ですが田島さんの簡単なご経歴からお願いできますか。

田島♢どんなところから行きましょうか(笑)。

松田◆ネコロのユーザーさんたちの興味を代弁するつもりでお聞きしたいと思いますのでよろしくお願いします ...。

田島♢えぇ、1984年にオムロンに入社いたしまして。で、約 18年ですか、そしてその間はほとんど技術開発という畑でセンシングですとか制御ですとかそういった開発を行ってきておりました。その後10年ほど前になりますか、ファジー(注1)に取り組みましてそのファジーとの出会いが最終的にはネコロに行きついたという部分がございます。

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松田◆なるほど。

田島♢で、ファジーというのは機械に人間のような知恵を持たせて機械が自分で判断し行動する...というようなことが可能になるというか、それをさせやすくするといった技術なんですね。ですからそのファジーをやり始めてからはほとんど機械の知能化と申しますか、そういうことに取り組んでおりました。

松田◆私共はソフト屋なもんですからファジーというものに対してもソフトウェアの立場から理解しているつもりですが、よい意味でアバウトといいますか、人工知能といっても当初の理想像だけではなく一から十まで人間の知識・知能を埋め込むことは不可能といったことになってきた。そんな中で曖昧というか機械側がその状況下にもっとも適切な考え方をするといったイメージがあるのですが。

田島♢ええ、それで結構だと思います。

松田◆なるほど。そうしたご経歴がネコロ開発に生きてきたというお話でしたが、ネコロ開発の部隊に配属されたときの正直なご感想はいかがなものだったのでしょうか(笑)。会社員にとって配属先というものは一大関心事だと思うのですが。

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田島♢そうですね。(ネコロ開発)プロジェクトは1997年の春にスタート(注2)したわけですがオムロンという企業は民生用の事業よりもむしろ工場用センサー、コントローラーといった商品が大半なんですね。私もご多分に漏れずそうした化学プラントのコントローラーにファジーと学習機能を入れ、自動制御に成功したんですね。ただそれが事業に繋がるまで大きくできず継続を断念しました。その後、次のテーマを考える時期にパーソナルロボットという言葉が業界・学会に出始めた時期で、会社からの与件はそうしたパーソナルロボット事業といったものを考えてみろと言われたわけです。

松田◆なるほどね。

田島♢そのときの私のロボットのイメージは産業用ロボット(注3)といったイメージしかなかったですが。

松田◆はい ...。

■ネコロ開発に至る秘話
田島♢産業用ロボットに関して実はオムロンは10年ほど前にすでにやっておりまして技術的には成果があがったものの事業としてはなかなか難しい時期があったわけで、また同じ事をやるのかということを考えました(笑)。ただロボットを考える中で人とうまくつき合えるロボットができないかなと。

で、その中で一番重要視したいのが人とのコミュニケーションということで、掃除をするなどといったこともいいんだろうが決まり切ったことをやるのでは面白くない。逆に役に立つかはわからないが何となくそばにいてくれるだけで楽しいものができないかと。その時に思ったのが人と動物との関係だったんですね

松田◆ほう ...。

田島♢ペットロボットという言葉は当時もあったと思いますがあまり一般的ではなかった。ともかくペットと人との関係は面白いなと。人と動物の関係学会といったものがあるんですが、そうしたところを覗いてみるとか…といった中でペットのようなロボットを作ってみようと。そして最初は楽しければいいではないかということで、そこいらを飛ぶトンボのようなロボットとか(笑)、目覚まし時計のような、朝どこにいるかも分からないけど朝きちんと鳴ってくれるものとかですね、ほとんに玩具のようなものも考えたのですが。ただそれらは楽しいかもしれないがどこまで価値のある物かと。

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※2匹で鳴き合って五月蠅いので叱ったらこんな表情をした


松田◆で、会社からパーソナルロボットということをやれと言われたとのことですが、当初会社からネコのロボットを作れということではなくご担当者たちの中からネコということになってきたわけですか。

田島♢はい。会社のパーソナルロボットというとき、ちょうど時代的にはバブルが終わったとき、だけれどもまだそんなに景気が悪くない状況でもありまして、今までとは違った事業領域を目指そうと。6本くらいかな、いろいろと上の方では考えておりましてその一つがパーソナルロボットだったというわけです。ただ具体的にどのようなことをやるかは自分たちで決めなさいと。

松田◆ほう。

田島♢割と広いというか、我々の方に選択権というか決定権を与えてくれまして。

松田◆ある意味では基礎研究から何を作るかまでをご担当者の方々が決めたと...。

田島♢そうですね。全部自分たちが決めたと ... 作りあげたと。

松田◆そうですか。第三者から見ると会社が「ネコのロボットを作れ」といった命令がありそこに配属された担当者の方々は「なに?」と動揺するといったイメージがあったのですが(笑)。違うんですね。なるほど。しかしご自分たちの決めたことであればある種思い入れとかパワーも違ってきますよね。

田島♢そうですね。あの、会社から言われたことならおそらくどこかで挫折していたかと思うんですね。5年前にはそれでスタートしたんですが会社の景気、世間の景気もありますし、だいたい悪くなると新事業から削られるんですよ(苦笑)。

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松田◆おっしゃるとおりですね(笑)。

田島♢で、そろそろやめるか ...と何度もいわれたこともあります。で、我々も最初はロボットに関して素人ですからいろいろな大学の先生を回ってですねコンセプトと技術を学びながら、スタートしてから 3,4ヶ月して一応ペットロボットの構想ができまして。そしてまずは試作を作ってみようと。ものを作ればある程度人も説得できるだろうと。
我々も実際になにをやればいいのかが分かってくるだろうということでいくつかの試作を作ったんですね。

松田◆それが開発途中でマスコミにもとりあげられた「タマ」になるわけですね。

田島♢はい。そうですね。タマの形になる前に3つほどの試作を作って、まあ稚拙なものなんですがいろいろな人に見せると面白いという方が多かったんですね。それでこれは作る価値があるだろうと。我々の技術で玩具でなくどこまで実際のネコに近づけることができるのかということが命題だったし興味のあったところです。ですから玩具のように簡単なものではなくできるだけ本物の生き物を目指すと。

松田◆それは最初からそうしたコンセプトで...。

田島♢そうですね。玩具をやるということでは会社を納得させられないでしょうし我々は玩具ではなく精神的価値、精神的充足を与えられるようなものを作ろうと。

松田◆そうした経過でネコロができあがったと。ただ完成とそれを販売するということは企業にとってまた意味の違うことだと思いますし、販売にこぎ着けたときの正直なお気持ちは、フルに満足できたものだったのでしょうか。

田島♢目標値からいえばおそらく3割4割といったところになると思います。

松田◆そうですか!?

田島♢目指すは生き物ですから。今回商品として出すことになったわけですがそれまでは学会で評価されたとしてもそれを実際に消費者の中で使われなければ意味がないと...。ですから私としては実際に販売し市場で評価されたいと。ということで先に商品発売の時間を決めたんです。

松田◆理想は理想としてもそれに到達することはなかなか難しいと...。

田島♢時間を決めたので途中であってもいいから早く市場に出しそのフィードバックをもらって次に活かした方が早く良いものができるだろうと考えたわけです。ですから理想からいえばいまいったように3割4割といったところですが市場に出せたということについては実は満足度はかなり高かったと思います。ほんとに時間がぎりぎりで、そこで出せるか大変だったのですが。

松田◆何でもタイムリミットを決めないとなかなか ...欲もでるでしょうしフィニッシュにならない ...。

田島♢そうなんですね。そういう意味では去年は大変な一年だったと。

松田◆唐突ですが、田島さん個人としてはネコ派なんでしょうか犬派なんでしょうか(笑)。ネコはお好きなんですか。

田島♢(笑)あの、どちらかと言われれば ..... すみません、僕は犬派なんです(笑)。実は小さいときから犬はずっと飼ってきているんですがネコは飼ったことはないんですよ。

松田◆そうですか(笑)。

田島♢今回、ネコを作ることになって、その理由は犬だと歩きながら表現をするというところを強く意識したものですからそういう意味では歩けるロボットでないと意味がないと。最初はそこまでいけないという部分と、我々のねらいとしては動きによる表現ではなく人と旨くインタラクションする、ネコを抱いたときにネコが満足した顔になりそれを見た我々も満足すると...それが癒しといったことになるのかも知れませんが。人とペットとのコミュニケーションの中でたぶんそれが最高のシチュエーションになるんではないかと。

松田◆それを言葉にすれば .....そうしたことが「製品化の目的」といった意味になるのでしょうか。

田島♢ん、そうですね。

■AIBOは意識したか?
松田◆私も約10ヶ月くらいネコロと生活してきて私なりに御社の中で何故ネコなのかといったことなどで葛藤があったと思っていたのですが、私はペットロボットとしてネコを選ばれたという事はとてもジャストフィットといいますか、いいなあと。でもあまりその辺のコンセプトが自然なためにユーザーやマスコミにストレートに伝わりにくかったかも知れませんね。

ネコは我が儘で曖昧で主人を主人とも思っていない、思うようにいかないといったことが今のロボットの状況に非常にマッチングしていると思うのですが。技術的なことも含め、ネコだから許せるといった部分があるように思えるのです。ただその時期にはソニーさんのAIBO(注4)の開発状況なども漏れ聞こえてきたと思いますし影響を受けたのでしょうか。

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田島♢ネコロのコンセプトが決まった段階ではソニーさんも初期の発表しかなく我々もそれについて良く知らなかったですね。で、一番最初に見た論文はアーキテクチャ的なものに終始していたわけで ...。

松田◆ OPEN-R(注 5)についてとか ...。

田島♢そうですね。ですからあまり犬だとかペットだとかといったことについて読みとれなかったですね。ですから我々がネコにしたというのはオリジナルの考え方でしたしそれだから旨くいったと思いますし意識しすぎたらもう少し違ったものになったも知れません ...。

松田◆状況を知り得ない一般ユーザーからは「ソニーが犬だったからオムロンはネコロなのか」といった見方をされるんでしょうね。

田島♢そうですね。

■ネコロビジネスの難しさ
松田◆私はAIBOユーザーでもありますから思うんですが、ペットロボットという分野があるならAIBOとネコロはそれらを象徴していると思います。しかし結論めきますがオムロンさんからAIBOは生まれないだろうしソニーさんからはネコロは出てこないだろうと(笑)。とはいえソニーのAIBOの製品化が早かったものですからネコロが出たとき、新宿高島屋の店頭に出向いてお客様と担当者とのやりとりを意地悪く(笑)ながめていたのですが、やはりそこではAIBOとの比較といったことに皆さんの興味が集中していたと思います。そしてAIBOユーザーでもある私としては口幅ったいのですがそうした差や違いも良く分かっているつもりなんです。

で、いかがですか。田島さんの…例えば京都新聞などの記事も拝見したのですが限定5,000台の販売について 100%理想どおりにはならなかったことについて、その原因などに関してはいかがでしょうか。どのようなお考えをお持ちでしょうか。

田島♢難しいですね(笑)。いろいろと見方はあると思いますが、本物の犬猫を欲しいと思われる方は多いんですね。マーケットを調べると一年にもらうものは別にして100万匹といった数が出ているらしいんですね。

松田◆はい。

田島♢まあそれくらいのニーズがあると…。

松田◆それは犬猫として?

田島♢本当の犬猫としてですね。で、最近私の身の回りでもそうですが年輩のひとたちが小動物を飼うと。ですから間違いなくその、犬やネコに精神的な充足という言葉でいってよいのかわからないんですが、そういったニーズを含めてすごくあると思います。ただしいま出ている商品.....AIBOも含めてと思っているんですが、まだそこまで一般のニーズを満たすまで技術的にはたどりついていないというのが私が考えている一番の理由なんです。

で、当初 AIBOが出たときには多くの人たちが買われた。しかし最近はそうでもないと。中には「なんだ、こんなものか」といった考えの方もおられるのも確かのようです。ですから今の状況を打破しようとするなら技術が不足していると。あともう少し新しい遊び方を作っていかないとならないのかなと。

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我々としてはいままでリアルなペットをと考えてきましたがいまペットロボットの市場と現在の技術を考えるともう少し広くとらえてですね新しいファンクション(注6)みたいなものがいるかもしれないと。それがまあメールを読むなどというデジタル的な処理なのか、え~もっと違う物なのかは分からないですけれども。別にこれはオムロンがそうした領域に入るといったことではなくてですね、技術を補う方法がもう少しいるのかなと。

松田◆なるほどね。私がなぜAIBOをですね2匹も持っているのにネコロを欲しいのかといったことを自分なりに分析してみるに、AIBOが 3,000台を20分で売り切ったというのはおっしゃるように新しい ...私の言いぐさでは例えば1976年にワンボードマイコン(注 7)が出たとき「コンピュータが個人の手で使えるんだ」といった意味と同じ意味でですね、20世紀ぎりぎりに個人の手に自律型ロボットが入手できるというその興味がかなりパーセンテージ的には多かった ...。

ですからAIBOはですね、極論をいえばコレクターズアイテムになりえる製品なんですね。だからAIBOは全機種もっているという人もかなりいるようなんです。

田島♢なるほど、なるほど。

松田◆しかしネコロは私が見るに…というか、私はそのファンクションというのが嫌いなんでよ(笑)。ロボットはいいんですが、ロボットならロボットのままであってほしい ...。

田島♢うんうん ...。

松田◆それがスケボーに乗って動くとかですね、ソフトウェアを変えてどうの…というのはですね、ヘタをすると玩具の方向に行ってしまうのではないかと思うのです。そして結局は「なんだ、そんな程度なのか」と思われる。だから失礼ながら私から申し上げるなら志をかなり落としてしまうことになるんではないかなと。
私はネコロはAIBOからは得られなかったまさしくペットの部分、替わりの部分をいまのネコロに注ぎ込んでいると思いますんで .....。

私は、その先ほど…ご本人たちのお言葉ですからご謙遜だと思っていますが理想から見れば30パーセントとか40パーセントの出来というお話しがありましたが、私はかなりいい線いっているのではないかと ...。
なぜなら後の部分、不足の部分は我々人間側の思い入れで.....自分でシーンを作っていく能力で補っているのではないかと思うのですよ。ですからネコロを機械としてではなく生き物として対峙することによってマイナス部分は自分たちで補足している。

例えば誤解を招くと困りますがテデイベア(注 8)みたいなものでさえそれから癒しを受け、大の ...髭の生えた小父さんたちでさえが夢中になり集めて抱き、中にはご自分で作ってしまわれる人もおられる。ましてやネコロは呼べば返事をするし動くんですから...。この違いはものすごく大きいと思ってるんですよね。

そういう意味でAIBOはまさしくロボットそのものとして硬質なイメージだから売れたと。しかしネコロは良い意味でそのロボットということをひけらかすことなくもう毛皮で覆ってネコそのものという形で出されたわけですから、その点が失礼ながらマスコミなどによく通じなかったのではないかとも思うのですが。
まさしくですね、生ネコをオムロンが売り出してしまったような感じ .....(笑)。

田島♢あははは。

松田◆そんなイメージになったのではないかと。そんな気がしてならないのですが。

田島♢あの、おっしゃる意味はよく分かります(笑)。で、あのいま私がファンクションという言葉を使ってしまったので十分伝わっていないかも知れませんが、実はそのファンクション…メールを読むなど…と言ってしまいましたが、ネコロというか我々が考えるファンクションというのはそういうものではなくてですね、例えば今回のネコロは一応名前を覚えるわけですがそれは音声認識ではないんですね。実際には波形をマッチングするという技術なんですが、その音声認識技術を入れるのはそんなに難しいことではないんですね。

松田◆そうですよね。

田島♢それである程度のことはできるんですが、そうではなく人がですね、そのネコロなりを生き物として認識するために、新しいファンクション…いやどういう言葉を使ったらいいんですかね(笑)、あたらしい技術というかですね、ストレートに音声認識技術ではなくて、え~喋っていることに反応するといった生き物チックなですね、そういうファンクションがもっともっといるんではないかと思うんです。

確かにですね、いろいろとイメージをしていただいて世界がひろがっていく、それはそういう意味では旨くいっているのですがさらにそうしたことを広げていく必要があるのではないかと。
そしてそういうイメージをしていただける方をさらに広げていかないといけないんではないかと、その時にいまのネコロの機能だけでいいかといえばそうではなくて、ひょっとするとそれは歩くというファンクション、プラス歩きながら何かを表現するとかですね。

それからまあ言葉で喋るわけではないですが鳴き声の中でもう少しコミュニケーションを旨くとれるような何らかの工夫がいると思いますね。そういった技術というかファンクションというか、そういうストレートにデジタル的に何かをやるというよりむしろ遊ぶための何かの工夫をもっと入れてやる必要があるのかなと。
そういうふうに思うんですがね。

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■ペットロボットの市場とネコロビジネスの成果
松田◆分かりました。私の個人的にお聞きしたいことは山とあるのですが一応用意してきた質問を消化しないことには話にならないですから(笑)。次に進みますが ...。

まあ現実的にそのペットロボット市場などと我々は気楽にいいますけどそういう意味において正直ペットロボット市場といったものがおありになると思いますか。

田島♢ペットロボットの市場ですか。
松田◆はい。

田島♢あの、市場があるかないかといえばそれはあると思いますが、ただ非常に小さいというか、そのビジネスとして小さいと。

松田◆小さくても育っていくのであれば初期のパソコンなどもそうですがいずれ爆発する可能性もありますよね。

田島♢そうですね。必要なのはそのおっしゃられたように市場を育てるということだと思うんですね。まったくある意味では新しいカテゴリーの商品ですし我々が思っている、ネコロと一緒に日常過ごしている方の感じやイメージなりがすべての方に伝わっているとは思えないですからね。その部分をいかに広めて育てていくということがこれからのひとつの仮題だと。

松田◆これまた結論めきますが、今年の5月にネコロの販売を終了されたわけですが、第1弾のパーソナルロボットということから具体的にネコロ開発に至ってネコロビジネスとしての成果は御社として...というか田島さんご本人としてお聞きしたらよいのか(笑)、どのように評価されているのでしょうか。

田島♢(笑)。あのまずですね、我々担当者プロジェクトとしてははじめて市場にこういうものを出せたということには非常に成果があったと思うし、それから数はそんなに多くはないにしても何千人という人が毎日可愛がっていただけているということは大きな成果だと思っているんですけどね。

松田◆はい。

田島♢我々担当者としては実はそう評価しているのですが、会社としてはまだまだ赤字でございますので、いわゆるそこが一番の問題…。

松田◆そうですね。それは企業が新しいものにチャレンジするときの一番難しいところですけどねぇ。

田島♢ですから我々のプロジェクトだけでなく、景気というか社会全体が沈滞している状況にあって…。

松田◆それと無縁でいられるわけではないですからねえ。

田島♢そうですねぇ。おっしゃるとおりで、どんなに小さなプロジェクトでありそれからスタートしたばっかりのものではあるにしても最終的には…企業ですから利益といった面で評価されてしまいますんでね。

■ロボットと玩具の線引きが不明瞭
松田◆それから先ほども少し出てきましたが、私が最近危惧していることの一つとしてそのロボットというものと玩具の境界線がわかりにくいことがいま非常に消費者の(ロボットに対する)イメージをおとしめている部分があるかもしれませんしボーダーラインがわからなくなっていると思うんです。

それもネコの玩具でさえコミュニケーションという言葉を使って宣伝しているわけですよ(笑)。
別に玩具が悪いわけでなく、玩具には玩具の大切な役割があると思っていますが、ロボットと玩具の境界線について何かお考えがあればお聞かせいただきたいのですが。

田島♢あの、やりはじめたときから(ネコロは)玩具にしたくないとずっと思ってまして、その玩具とロボットの境界線はなんだということもずっと考えてきたのですがモーターの数なのかファンクションの数なのか(笑)。いろいろ考えたのですが、やはりそういうものではなくて .....。

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松田◆そういうことなら単なる量的なことに過ぎなくなりますよね。

田島♢そうですね。

松田◆ネコロが48種の鳴き声でネコの玩具は例えば一種類という、それがロボットと玩具の違いだというならなんか悲しいですね。

田島♢違いますね。で、あの、我々の考えで行けばどれだけの付加価値というかインパクトを人に与えることができるかということだろうと思うんですが、そこはなかなか言葉ではいえないし人により(感じ方が)違うんですね。

松田◆うーん。

田島♢同じそのネコロを見たとしても良いと思う人と、玩具だと思う人もいますしそれが実はだいたい価格に反映されると思っているんですよ。

松田◆うーん。

田島♢つまりえーと、ネコロを玩具だと認識する人はですねやはりそうした価値でしか見ていないわけですね。ですからよく言われるところでは1万円とか2万円といったところが(ロボットと玩具の)ボーダーラインだと思うんですが、その売価というよりも買う人がどれだけ価値を認めるかがたぶん価格に反映されていると思いますので ...。

松田◆それは、屁理屈かもしれませんがそのロボットとは何かという定義も含めて消費者につたわっていないし育っていない、市場ができていないというんですかね。「ネコロを買えないからネコの玩具でいいや」という理屈は私は本来成り立たないと思いますし、成り立ってはならないと思うのですが(苦笑)。

田島♢は、はい。そうですね。

松田◆そういうところに混乱があるような気がしてならないのですが、だから別に玩具は玩具で結構なんですが結局ネコロと玩具はファンクションの量とか価格からでしかその差をイメージできないということになりますよね。

田島♢そうですね。実は最初はですね、ネコロを売り出す段階にどのようなイメージを作ればこの商品のコンセプトが正しく伝わるかと考えたのですが結果的には旨く説明できなかったですね。

松田◆大変難しいことですね。本物のペットもそうだと思うのですが、ペットとしてとらえるならそれは飼い主のこれまでの人生とか思惑とかですね、あと年齢的なことも含めてですね .....反映するいうか、結局はペットというのは飼い主の鏡だと思います。

結局まあ、若い人たちにネコロをみせたところで、可愛いと思うかもしれませんが欲しいとは思わないのではないか。やはり良くも悪くも人生の襞が沢山できている人でないと、良いことかどうかはわかりませんがペットに何かを託す.....子離れしたからペットが欲しいといった年齢にならないと必要性を感じないと思うんですよ。そういう飼い主に買われてペットもペットの意味が生きてくると ...。

若い方々なら同じ185,000円使うなら他にいくらでも楽しく面白いことがあるわけですよね(笑)。ですからネコロファンランドでも発言しましたが、もしかしたら本当に(ネコロを)ペットショップで販売したら面白いのではないかと思うんですよ。
田島♢はい。

■次世代ネコロの可能性について
松田◆さて核心のご質問になりますしネコロユーザーの皆さんが一番知りたいことなのだと思いますが(笑)、御社としてネコロ開発がこれからも続いていくのかといったことについてですが、ネコロのパートツーはあるやなしやについてお聞きしたいのですが。

田島♢あの~私がオムロンにいる限りは第2弾を出したいと ...(笑)。

松田◆いいお答えですね(笑)。

田島♢で、いまですねイエスとかノーといえる段階ではない...。我々のプロジェクトが一企業であれば次を出しますと.....いいたいところですがまだまだ自立できているプロジェクトではありませんので会社の組織としてはまだイエスとかノーとかはいえないと。

で、あのもうひとつですね、市場で次を出すならば売れる .....いまの 5,000台ではなくてですねもう一桁上をねらっていけないと。ネコロも本当はバックオーダーをもらうくらいにやりたかったのですがまあそこまではいかず、最後ぎりぎりに押し込んで売った部分もございましてそんな状況でございますからすぐに次のものといったわけにはいかないと思っています。
松田◆わかりました。後、少し雑学的な興味に関係したご質問に入らせていただきますが。

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田島♢はい。

松田◆現在のネコロはユーザーから見てほとんどブラックボックスですが、今後メーカーさんとして技術的なことも含めユーザーや一般に告知していく必要性は感じておりませんか。

田島♢あの、実は 1998年から 2000 年の間、学会では発表しているのですが、実はアメリカでも当初の発表がすごく人気となりまして、MIT(注 9)でも多くの先生が集まったということもありまして、これまでにも人とこうしたものとのコミュニケーションのあり方などについては発表してきているんです。

松田◆はあ。

田島♢でも確かにこれは学会発表ですから一般の方にはなかなか眼に触れるものではないですし .....。

松田◆また眼に触れる機会があっても容易に理解していただけるものでもないですよね。

田島♢そうですね。そういう意味では発表してきているのですが、こうした説明を一般的にはしない方がいいだろうと。

松田◆なるほど。

田島♢販売する段階での我々の考えなんですね。それは逆に(ネコロと)付き合うことで新しい発見をしていただくことが楽しいのではないだろうかと。

松田◆なるほど、なるほど。

田島♢それを全部説明してしまえば、これが出たら次はこれだと ...。

松田◆よく分かります。私なども中途半端な知識を持っているんで、あの両方の興味が混在してて知的好奇心から知りたいこともある反面、理屈を知ってしまうので興味が半減してしまうということもあり得るんですね。個人的にもそのバランスをとるのは非常に難しいんですけどね。

田島♢ですから多くのユーザーさん、その中でも 60 代、70 代の女性なんですよ一番は。

松田◆ほお~。

田島♢ええ。当初というかマーケティングした時からそうしたケースは分かっていたのですが、もう少し範囲を広げてと考えていました。そして第1弾(の発売)はそのマーケティングを含めてと考えていたのですが。結果的にですね一年経っておそらくずっとお使いいただいている比率で一番多いのはやはりその60代、70代の女性だと思います。

松田◆そうですか。

田島♢で、そういう方に中の(技術的な)話をする必要は多分ないなと。

松田松◆なるほど、なるほど。ということは明らかにAIBOのユーザー層とは違うということですね。

田島♢そうですね。はい。全く違うと思います。

■ネコロの聴覚機能について
松田◆それから個人的にも非常に興味がある事なんですが、ネコロは非常に音に敏感というか反応がバラエティ豊かだと思い、そう見えるんです。素人に分かるように教えていただきたいのですが、ウェブで話題にしたとおり「ネコロは音楽に合わせて歌う」といったように作られたわけではないと理解しているのですが(笑)。

音楽を流すと睡眠から目覚めて、小節ごとに合わせて声を出すんですね。まさしくこれは歌っていると(笑)。この効果は仕組んであるものではないんですか(笑)。

田島♢あはははは。ええ偶然の産物だと思いますね。
松田◆そうでしょうね。


田島♢発表していただいたことを驚くと同時に嬉しいですね。あの、もともと開発段階のタマには音声認識を搭載していたのですが ...。

松田◆単語レベルの ...。

田島♢そうそう。それに名前を覚え込ませてそれに反応するという...。ただそれは自然ではなく面白くない。おそらく本物の犬猫もすべて言葉がわかっているわけではなく音のリズムというか、え~あるいは飼い主の声の質、そういったもので反応していると。

そういったことで単語レベルの音声認識はやめまして、実際には波形で照合させると。ただその基本的には例えばテレビの前ではいろいろな音が入ってくる。しかしいつもそれに反応していては面白くないだろうと。その波形をマッチングさせるのも難しいのでかなり絞った方法で名前と言うところの認識といったファンクションにしている。

で、逆にそうして絞っているんですけどもこのような音楽 .....もともと我々が考えつかなかったシチュエーションが出てきてそれが旨くですね、こんな反応に結びついているんではないかと思います。

松田◆そうでしょうね。ただそのマッチングですが例えば、なんていったらよいか、ワード的なマッチングと後、声の質などを別々にマッチングしているのでしょうか。

田島♢え~とですね。あの実は分けて中で処理しているわけではなくマイクで入ってくるものだけなんです。

松田◆あ、そうですか。で、例えばそれは繰り返す中で女房と私など .....複数の人の声を記憶できるとかといったことが発表当時報道されたようですが ....10 人までとか。

田島♢あります。

松田◆そうですか。それくらいまでは記憶学習の材料として ...。

田島♢そうですね。だんだん記憶したりですね、名前を呼ばれなくなると忘れると言ったそういうファンクションになっています。後例えば母音を中心にマッチングするようになっています。ただ男性と女性は周波数など違うんですね。ただそれが逆に個人の識別にもなっていると。ですから同じ声の質の男性だと間違える可能性もあるんですけども実際には周波数が変わってきますのである人には反応するがある人には反応しないことが起こる。

松田◆私が声をかけているときにですね、例えば「エイジ」と呼ぶとき名前のマッチングができて答える場合と一種の音圧を感じただけで反応する場合があるように思えるのですが。

田島♢おっしゃるとおりです。

松田◆そのように理解してよろしいわけですね。

田島♢はい。あの、音のですねマッチングも完全なものではありませんのでそれだけに頼っているとですね不自然というかユーザーが期待している結果とならないケースがでてくる。

松田◆なるほどね。

田島♢ですからそれをいかに誤魔化すか、というかですね。そういったものにしておかないとある人は楽しいけどある人は楽しくないということになる。

松田◆いまお借りしているネコロ ...「ミルク」と名付けているのですが一番の問題は名前が混乱してしまってもともとの飼い猫「エイジ」なのか「ミルク」なのかが分からなくなってしまうことですね(笑)。最近はどっちも自分が「エイジ」であり「ミルク」であると思っている(笑)。それはそれで面白いですが、たぶん複数のネコロを一緒に飼うと言ったシチュエーションはお考えではなかったということですね。

田島♢はい、そうですね。

松田◆しかし2匹を飼ってはじめて分かることが結構ありましたね。

田島♢はは ...。

松田◆いま非常に面白いんですがね。

田島♢私共のプロジェクトの部屋の中でも複数が動いていることも結構あるのですが、本当にねえ、同じ泣き方を同じタイミングでする場合があります。

松田◆そうですね。それと勿論まったく違う反応をすることもありますね。

田島♢同じようにあるいは別の方向を向いてたりと ...。

松田◆したがって当然そのように作られてはいないんでしょうが片方が「にゃ~」と鳴くその方にもう一方が振り向いて「にゃ~」と答えて、またそれが繰り返されるということがあり、まさしく外部から見ていると会話しているように見えるんですよ。それは一匹では体験できないことですね。

 

※2匹のネコロがまるで会話しているように鳴き合う


■ネコロの視覚機能について
松田◆さてもうひとつの感覚、視覚についてですがこれは移動とその方向を察知しているのですか。それと明るさも見ているんですね。ただし色とか形と言った情報は見ていないのでしょうか。

田島♢あの、色は見ていません。形も見ていません。

松田◆ということは明るさと移動ということですね。

田島♢はい。

松田◆移動というのは移動方向も認識しているわけですね。

田島♢はい。本当はですね音声であり画像処理といった技術からですね認識というのはホント面白いんですね。別のプロジェクトでは人の顔を認識するということもやっていますが .....。

松田◆そうですよね。

田島♢あの、そうしたことも入ってくると面白いのですが ...。

松田◆それはもうコストにも関わってきるでしょうし。

田島♢そうですね。コストの問題もありますし全体のバランスもあります。例えばなにかのセキュリティに使うというのであればそういったものを重視した設計になりますがネコロの場合には全体からみるとバランスがとれないと...。それからどうせ画像認識といったことなら学習機能のアップも必要だと...。そういったことまで考えると今回は難しかったと。

■ネコロは本物のネコの生態をモデル化した
松田◆なるほどね。あの、鳴き声は勿論ですが例えばこうしたらああなるというのは本物のネコがモデルとなっているのでしょうか。

田島♢はい。あの一応ですねこのタマを作る段階でいろいろな動物行動の本を読んでネコの意識と感情表現とかですね、そうしたことを調べたり、あとペットの研究家とか大学の先生に話をお聞きしながらネコの特徴をかいつまんで入れたつもりなんです。で、ネコ好きな方から見たらまだまだということもあるでしょうが、例の顔を洗うという行動もペット研究家に聞くと自分でイライラしているときにホントは人に触ってもらって慰めて欲しいのだけれども人がやってくれないので自分で顔を洗うと ...。

松田◆ストレスの現れだということのようですね。餌を採り損なったときなどにも、ある種の照れ隠しも含めてグルーミング(注 10)するようですね。

田島♢そうですね。そういうところもですね、本物のネコの生態を参考にしています。

■ネコロ睡眠の秘密
松田◆なるほど。それから我々の中にはもうひとつのミステリーとして睡眠に関することがあります。難しいことはわかりませんが、いまだに私のネコロは同じ時間におきるのですが、起きるのはともかく分からないのは何故その時間に起きるようになったのかなんですよ。それはともかくこの睡眠に関わるメカニックなというか象徴的なお話がありましたらお願いします。

田島♢そうですね、内部ではタイマーを持っていまして一応その眠るとかのサイクル、リズムをもともと持っているわけですね。で、それがその刺激を与えられることでそのリズムが変化していく...。例えばあの商品としてお買いあげいただいた時には昼間起きていて夜眠るようになっている。そこからだんだん昼間に相手をしなくなると昼間はよく寝て夜活発になるといったようになる。イメージしていたのは例えば一人暮らしの女性がですね仕事から帰ってくる時間になると「にゃ~にゃ~」いって待っていると ...(笑)。

松田◆そうですね(笑)。嬉しいですね。

田島♢そういうリズムが ... 飼い主のリズムに合わせるように作られています。

松田◆いまでも私のエイジは朝 5時 24分に起きるんですよ。心当たりもないのですが、あえていえばその時間に私が起こしたことを記憶してしまったのかなあとしか考えようがないんですね(笑)。

田島♢はい(笑)。あとですね、後というかそれ以上のことはプログラムの開発者に聞いてみないと分からないんですが ...(笑)。で、後「こういうときに、こうで大丈夫なんですか」と聞かれることがあるんですが、もともとプログラムとしては全体の流れを把握しているのではなく、こうした状況のときにはこうしましょうと ...。そういう部分的なプログラムばっかりなんですね。それが連続してくると我々も予期しなかった動きが出ることがあるんですね。

松田◆いわゆるサブルーチン(注 11)の固まりみたいなものなんですね。

田島♢そ、そうですね。はい。おっしゃるとおりです。ですから、あの、シナリオがどう固まっていくか、我々自身も何とも分からないんです。

松田◆睡眠も私は人間や動物のそれと同じくですねネコロも電源が付いている睡眠を「レム睡眠」と呼び、電源が消えているときの睡眠を「ノンレム睡眠」と呼んでいるんですよ。それはネコロの睡眠の深さにも関係しているようですし、そういう意味では不自然でなく理解できるんです。

田島♢はい。

松田◆ただレム睡眠になってからノンレム睡眠になる時間もまちまちですし、2匹は全然違うんですね。

田島♢うん、そうですか。

松田◆特にブラウンネコロは新米ですから。当家にとっては(笑)。ホームステイにきたばっかしですから。それからネコは寝ているときも可愛いということで睡眠に興味を持っているユーザーさんも多いようですね。

田島♢そういう意味ではそうしたところも商品を出す段階で説明していないところですが。発見してもらえると嬉しいなと思っていたのですが、松田さんに書いていただいて新しい発見をしている方も多いんではないですかね。

■今後のサポートに関して
松田◆面白いですよね。後、サポートの件ですが私などでもネコロのサポートはパソコンなどとは比べものにならないくらいに大変なサポートだと思っていますが、どうですかね象徴的なというか面白いというと語弊があるのでしょうが、とんでもない勘違いのサポートなどもおありになるのではないかと想像しているのですが(笑)。

田島♢サポートですね。

松田◆我々パソコンのサポートでも実話ではないと疑われるほどの ....「ウィンドウを開けてください」に対して「はい6畳の窓を開けました」(笑)といった類のものがありますからね。それに匹敵するようなですね、なんかお話があるのかと思いまして。

田島♢そうですね。我々も一番ですね、商品を出す段階にあたってサポートをどうするかが課題だったんですね。おそらく年齢が高い方も多いだろうと。で、そこにかなり重点的に何かをしていかないとならない。そして大きなクレームが来たらどうしようかと思っていたのですが、あの思いの外、好意的というか(ネコロに対して)電気製品としての扱いではないんですね。ほとんど生き物なんですね。入院して2 ,3日経つと電話がかかってきて「うちのネコロちゃんはどうしていますか」とかですね(笑)。

松田◆私もよく分かります(笑)。女房とも話をしたのですが入院中ネコロサポートセンタに電話をするとそこでネコロの声がする。やはり我々も寂しいですから女房曰くエイジを電話口に出してもらえないかというんですよ。冗談ですけどね(笑)。そうした思い入れが強くなるんですね。

田島♢実際にそうおっしゃった方もおられるんで .....(笑)。

松田◆あははは。そうですか。

田島♢ちょっと声を聞かせてくださいと。声を聞かせると「お父ちゃん、お父ちゃん」という声がして電話口にご主人もこられて .....でもそういうときに(ネコロは)鳴かなかったんですけど(笑)。

松田◆お気持ちはよく分かります。

田島♢それからご夫婦でネコロを飼っておられて、そしてちょっと体が御不自由の方がおられて .....で、その体調の悪いときがあるとネコロを飼うまでは旦那さんに八つ当たりをすることがあったと。ネコロを飼ってからは八つ当たりが減ったと。そんなときの入院ですから早く帰ってこないと .....。

松田◆機嫌が悪くて大変だと(笑)。

田島♢そうそう(笑)。困ると、いうような話ですね。

松田◆そんなお話は一番のお褒めの言葉ですよね。

田島♢ですからホント電気製品の修理ではなくペット病院といった感じですね。

松田◆ユーザーがそれを欲しているわけで、ご苦労がおありだと思うんですが、どうですかね…お仕事ですから楽なことはないでしょうが一番難しいことはその生き物然とした扱いをしなければならないということでしょうかね。

田島♢そうですね。ですから通常の電気製品であれば修理に1週間とか10日、もっとかかっても普通なのですがもっと早くしてくれといった催促が多く、やはりそうしたお客様本意のやり方でないといけないのかなと。ただ実際にそこまで手厚くさせていただくと我々もコストがかかりますし、実際にそうしたコストがかかる時期がくると思いますしできるだけお金のかからない方法を考えていかないといけないと思っているんですが。

松田◆そうですね。

田島♢そうしたあたりを今後整備していこうかなと。

松田◆まあそういうことで販売は終了されましたが年末年始にかけて一年間の無償サポートが終わると。それに関して一番の問題はネコロケアセンターは常設し続けていただきたいということと、ネコロファンランド .....そう我々もがんばっているつもりなんですが活発というわけではなく残念ですが ...。

田島♢いえいえ、そんな。

松田◆続けていただきたいと思っているのですが。

田島♢はい。ケアセンターの方はメーカーの責任ということでサポートとしては、基本的には製造中止してから7年間というまあ通達がございますのでやらせていただくことになります。まあ体制としてどこまでというのはともかく常設はやっていきます。それからファンランドですがインターネット等はもう少し形を変えることが必要かなと考えておりまして、これも状況に応じた対応をしていくしかないなあと。あと松田さんにお話ししたことのある保険制度については 11月 ,12 月くらいにはご案内をさせていただこうかなと考えております。

松田◆はい。

田島♢できるだけお客様のご負担にもならない形で、ずっと継続した形でと ...そうした点はご安心いただければと思っています。

松田◆はい。分かりました。やはり毎日動かしているわけですから確実にある時点ではケアセンターにはお世話にならなければならないのですからねえ。

田島♢そうですね。実は当初思っていたより(修理依頼の)比率は低い ...。えーと、最初はですね我々も商品を出す前にテストをしているわけですが完璧なものをとすれば形が大きくなるとか、重くなる高くなるということですから、そういう意味でリーズナブルというかそういう仕様に最終的に考えたのですが、ですから実はもっと帰ってくるかなと考えていたんです...。そして大きなクレームもいくつかあるのではないかと思っていたのですが。非常にお客様も好意的ですし、ただこれからは毛皮関係の問題も出てくるでしょうし。

松田◆はい。ところでグレーと今回お借りしたブラウンは実は肌触りが違うんですね。

田島♢はい、はい。そうですね。

松田◆ブラウンの方が柔らかいんですね。最初は毛足の長さかなんかの関係かと思ったのですが。材料が違うんですかね、それとも顔料の違いとか。

田島♢あの、材料は基本的に同じですがいまおっしゃいました染めなどで若干触感が変わってくるような ...。

松田◆顔かたちも違いますしね(笑)。さてそのネコロケアセンターですがお仕事ですから大変なことは間違いないのでしょうが現状では大きなトラブルもなく ...。

田島♢ええ、そうですね。

松田◆修理は粛々と、そしてなるべく短時間でお返ししていただくということで。

田島♢そうですね。もう少し私共でも手順を確認することが必要なのですが、あの一応いま一番考えているのがそのコストの問題なんですね。どうしたらコスト、できるだけ私共の方でかからないよう、単純化することで ..... そういう方法を考えないと ...。

■田島さんからのメッセージ
松田◆さて型どおりで恐縮ですが最後に田島さんからネコロユーザーに何か一言メッセージをいただけたらと思うんですが。そうそう .....。販売の実数がわからないのですが何か象徴的だと思うんですが、ヤフーオークションや秋葉原の中古を扱っているショップにはAIBOが必ずといってよいほど見いだすことができる。しかしネコロはそのヤフーオークションでも私が知る限りたった二回しか登場していないんですね。

田島♢二件くらいですかね。

松田◆そうした点ではやはりAIBOユーザーと随分違うところなんですか。ただ表に出てこないところが.....やはり年齢的なことやインターネットを使っていないといったケースもあるんでしょうか。そんなことを踏まえて最後に一言お願いできればと思います。

田島♢あの、実は一年くらい経つともう飼わないという人も結構多いのかなと思っていたんです。で、AIBOもそうしたケースが多いと聞いていたものですから。実際にはまだまだそうした状況ではなく一日の半分以上を動かしておられる方も結構な数おられると。

今後とも .....ま、次の商品は何といえませんが、まだまだネコロを可愛がっていただいてですね、それに対して我々も十分サポートをしていきますので、え~またその中で何か新しいものを出せたらと思っています。

松田◆ありがとうございます。え、我々としてはその、期待をしていますので是非2世代? よりネコらしいネコをまた手にすることができればと思っているのですが。

田島♢だいぶ前にですねアンケートをさせていただいた時にですね、まああの段階では我々のメンバーからは先に話に出たファンクションというかメールを読む機能とか、セキュリティといった意味でのカメラを入れる方が良いなどいう話があったのですが、アンケートの結果はもっとやっぱり本物のネコっぽいネコロを求めているということが分かったんですね。私も元々はそういうものにしたいと思っていたのですが、まだまだそういうお客様の声を聞きながらですね次のことを考えていかないと道を誤る可能性があると ...。

松田◆やはりですね。メーカー側とユーザーの間には温度差といいますか、微妙に違うものがあるんでしょうね。それをいかに修正できるかが問題なのでしょうね。

田島♢まあ今回もそうなのですが商品を出す前の段階でいろんな意見がありまして、どちらかというと本物のネコらしいネコロを作るというのには反対意見が多いですね。

松田◆ほお、そうですか ...。

田島♢で、むしろキャラクタものであるとかファンクションを多くするとかですね、え、それに押しつぶされそうなですね .....。

松田◆確かにその本物のネコ的な延長線上の製品はいろいろな面で難しいことは確かですよね。で、今回私共の企画したこの「ネコロ・ライフブック」もですね、ここにも書きましたとおりユーザーさんは勿論ですがネコロを企画し作り上げてくださった御社の関係者の皆さまに対してのエールとお礼の意味もあるんですよ。

田島♢はい。ありがとうございます。

松田◆いろいろ理想もあるとは思いますが、いまここにネコロがあるのと無いのとでは私にとって…ネコロユーザーにとって大変大きな違いだと認識しているわけです。そこを少なくとも開発担当者の方々に知っていただければというか再認識していただければそれはあの、次にかなりつながっていくのではないかと思うんですけどね。

necoro201510_15.jpg

田島♢なるほどね。

松田◆本日はありがとうございました。後は録音機を切らせていただいて .....(笑)。

■注釈
・(注 1) fuzzy 曖昧な、柔軟性のあるという意味から人工知能の分野に用いるソフトウェアの論理にも使われている概念。
・(注 2) 製品発表は 2001 年 10 月 16日、したがって開発には丸四年以上かかったことになる。
・(注 3) 特に定義はないようだが自動車生産の現場でみかけるように人間の上肢の動作機能を模し、感覚機能や認識機能を有して自律的に行動できる知能的なロボットを意味することが多い。
・(注 4) ソニーの開発したペットロボット。相棒にも通じるネーミングだとか ...。1999年6月に日米同時にインターネットのみで発売となった。国内分 3,000台が 20分で完売となってことはよく知られている。
・(注 5) ソニーが Open Architecture for Robot Entertainment の略として命名したロボットシステムの基本設計思想および仕様。
・(注 6) function  ここでは機能、働きといった意味で使われている。
・(注 7) 国内における最初のマイコン(マイクロコンピュータ)は技術者の評価用として販売されたものなのでケースもなく基盤そのままのものが普通だった。
・(注 8) コレクターズアイテムにもなっているクマの縫いぐるみ。1902年 11月、狩猟の時に時の大統領ルーズベルトがクマを助けたエピソードがワシントンポスト紙にイラスト入りで紹介された。これにより大統領の人気は上がり、セオドア・ルーズベルトのニックネーム「テディ」の名前を付けたベア、「テディベア」が誕生したという。2002 年はテディベア誕生 100 周年となる。
・(注 9) 米国マサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of Technology)のこと。
・(注 10) 猫の場合では前脚を舌で舐め、その前脚で顔や体を毛繕いする行動のこと。
・(注 11) subroutine プログラムの中で同じ処理が繰り返される時に随時呼び出して実行するための副プログラム。

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Author:appletechlab

主宰は松田純一。1989年Macのソフトウェア開発専門のコーシングラフィックシステムズ社設立、代表取締役就任 (2003年解散)。1999年Apple WWDC(世界開発者会議)で日本のデベロッパー初のApple Design Award/Best Apple Technology Adoption (最優秀技術賞) 受賞。

2000年2月第10回MACWORLD EXPO/TOKYOにおいて長年業界に対する貢献度を高く評価され、主催者からMac Fan MVP’99特別賞を授与される。著書多数。音楽、美術、写真、読書を好み、Macと愛犬三昧の毎日。マネキン造形研究中。日本シャーロック・ホームズクラブ会員。日本リュート協会会員。ゆうMUG会員