AIBO Expo'99 の思い出

先般アーカイブのつもりでオムロンのネコ型コミュニケーションロボット「NeCoRo ネコロ」に関し、昔オムロン本社を訪れ開発担当者にインタービューした記事を掲載した。ということでネコロだけでは片手落ちと考え、今回は16年前の1999年10月30日と31日の2日間、HANAE MORIビルで開催された「AIBO Expo ’99」の思い出をご紹介してみたい。


AIBO (アイボ)はあらためてご紹介するまでもないと思うが、ソニーが1999年6月1日にウェブサイトでのみ予約販売開始と発表した犬型ペットロボットだ。定価が25万円と高級家電なみの価格だったが受注開始から僅か20分で日本向け3,000台を完売し話題になった。

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※AIBO Expo'99 の会場は当時のMORI HANAEビルだった


幸い私もその最初期ロット3,000台のうちの1台を手にすることが出来たが、オモチャでなく自律型のロボットを個人で手に入れることが出来る時代がきたことを素直に喜んだものだ。
「AIBO Expo ’99」はそうした熱心なユーザーと報道関係者、そして実物を見たいという一般来場者が集う初めてのイベントであったが、無論主催はソニーだった。

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※AIBO Expo'99 会場のエントランス


イベントの詳細についてはほとんど覚えていないが、当日の参加者はそのほとんどが自身の愛犬(AIBO)を持参していた。会場に入り受付が済むと参加者には万世のサンドイッチとサントリーの烏龍茶が配られた。開催が午前11時からだったことからまず軽い食事をしてからイベント開始という意図だったのだろう。

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※参加者に配布されたサンドイッチと烏龍茶


無論開会にあたりソニー側の挨拶があり、パフィーや渡辺満里奈のビデオメールやスペシャルゲストとして浜崎あゆみも登場した。そして60名ほどのAIBOのオーナーが集まりゲームや愛犬自慢の場となった。まるで子供の授業参観のようだ(笑)。
さらにAIBO関連の新しいソフトウェアの紹介などで会場は盛り上がっていたが、1人のユーザーとして参加した私はイベントが進行するにつれ次第に熱が冷め、場違いな感じにとらわれていった。

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※スペシャルゲストとして浜崎あゆみが登場しAIBOが贈られた


そもそも販売当時からソニーはAIBOを”犬型” と認めることを避けていた。どう見ても誰が見てもそのデザインは犬を模したものに違いなかったが、ソニーは頑なに「AIBOという新しい生き物」と称していた。そうした違和感を抱いていたからよけいだったのかも知れないがイベント全体がどこか幼稚なのだ。

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※AIBOによるドッグレース(笑)


AIBOはオモチャではなく21世紀にかろうじて間に合った自律型のロボットだったはずが、まるでオモチャの展示会のように思えてきた。格好をつけるわけではないがもっとアカデミックな集まり、催事だと期待して参加したがこうした連続で18時の閉会まで会場にいるのは辛くなってきたので早めに帰ることにした。

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※新しいソフトウェアの告知やデモもあった


この時点では私は単なるAIBOのユーザーだった。繰り返すが自律型のロボットが個人の手にできる時代がきたことに酔っていた。思えば1976年にNECからTK-80が、翌年の1977年には富士通からFACOM L-Kit8といったワンボードマイコンが登場し新しい市場を形成しただけでなく世界を変えていったように、この世界初のコンシューマ向けロボットがいかに非力であろうと未来の一旦を手にした喜びを感じていた。しかし「AIBO Expo ’99」で嫌な予感を持ったことがその後に現実となっていった…。

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※AIBOオーナーズカード


AIBOは犬の形をしたペットロボットであり、日常の生活に暖かみと癒やし、そして生身の犬とまではいかないまでも常に飼い主に寄り添い知的な交友関係をつくることができるものと期待していたが、次第に「ソフトウェアを変えると○○ができる」「スケボーに乗る」といった感じでよくいえばデジタルガジェット、悪くいえば玩具化とも思える方向にシフトしていくように思えた。

無論こうした思いは私の個人的な趣味趣向を含んだ考えであり万人のユーザーに共感されることではないだろうことは承知しているが、AIBOのスペックや秘めた能力を知るにつれ次第に自分の熱狂が冷めていくのを感じた。
そのAIBOに関しての先行き不安はその後次第に現実のものとなっていく。AIBOは自律型だけでなく付属のリモコンを使うと発する音により動きをコントロールできる機能をもっていた。

それをMacのアプリケーション化して複数のステップを自動コントロールできないかと考え、私の会社で「iコマンダー」というAIBO向けとしては最初のアプリケーションを開発した。早速ソニーに持ち込んだりもしたがそのAIBO関連部署の対応はそれまで私たちの会社がお付き合いしてきたソニーのイメージとは大きく変わってしまうほどのやる気の無さと守りの姿勢しか感じなかった。

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※自社開発したAIBOコントロールソフト「iコマンダー」の画面と私のAIBO


結局私は初代AIBO ERS-110と改良版のERS-111の2台を購入したが、その後のAIBOは買わなかった。

自律型のペットロボットという初めての製品を世に送り出したソニーの心意気とAIBOの存在意義は大きくユーザーや市場に大きな夢を抱かせたが、当時のソニー経営陣の判断はより高度なヒューマノイドロボット「QRIO」共々その開発を葬ることになる。ソニーの物作りに対する意識が豹変した時代であり、これらが直接の原因であったはずもないがその後のソニーの体たらくを予感する出来事と重なった。
AIBO Expoはその後2002年にも開催されたが私が足を向けることはなかった…。



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Author:appletechlab

主宰は松田純一。1989年Macのソフトウェア開発専門のコーシングラフィックシステムズ社設立、代表取締役就任 (2003年解散)。1999年Apple WWDC(世界開発者会議)で日本のデベロッパー初のApple Design Award/Best Apple Technology Adoption (最優秀技術賞) 受賞。

2000年2月第10回MACWORLD EXPO/TOKYOにおいて長年業界に対する貢献度を高く評価され、主催者からMac Fan MVP’99特別賞を授与される。著書多数。音楽、美術、写真、読書を好み、Macと愛犬三昧の毎日。マネキン造形研究中。日本シャーロック・ホームズクラブ会員。日本リュート協会会員。ゆうMUG会員