テレビ東京「Pコング」出演の思い出

昨年末、とある忘年会で「松田さんテレビに出演したことはあるんですか?」と聞かれた。かつてのマイクロ企業時代は本を出し新聞や雑誌に多々載ったことを知ってのことで、彼はどこか「TVには出てないだろう...」という期待感?があったようだが、残念でした...1992年7月15日にテレビ出演を果たしているのだ(笑)。


えらく昔の話で恐縮だが、そういえば…と後でその番組のことをウィキペディアで調べようとしたが、あらら…マイナーな番組だったのか、あるいはインターネットもない時代の出来事だったからか、記載がほとんどないことに驚いた。何しろ司会の "くず哲也" さんで検索しても彼のテレビ出演番組リストにさえ記載がないのだ。これは記録という意味でも一言残しておこうと今回はその番組出演の思い出を綴ってみる。

時は1992年、起業したばかりのマイクロ会社がやっと丸1年少し経ち、先行きへの道筋が見えてきた頃だったが毎日はとても忙しかった。オリジナル製品の企画から販売はもとより、大企業からの開発依頼への対応、そしてイベントへの出展依頼や雑誌等の取材が切れ目なく続いた。そしてなんとテレビへの出演依頼も舞い込んだのである。友人たちは私がカメラの前で “しどろもどろ” になるのを楽しみにしていたそうだが放映後「何であんなに落ち着いて笑顔なんだ!」と呆れていたことを思い出す(笑)。

時代はパソコンがマニアだけのものでなくビジネスへも浸透し始めた頃だったが、パソコンを題材にした番組が生まれ始めた頃でもあった。確か「パソコンサンデー」とかいう番組が知られていたと思う。
さて1992年6月、テレビ東京の深夜番組だった「Pコング」という番組から出演依頼が舞い込んだ。私はその番組は知らなかったが司会はくず哲也さんだと知り、面白そうだと依頼を受けた。

後で知ったことだが、「Pコング」は深夜番組とはいえかなりマニアックな番組であり、時にAV女優の出演やエロゲーといった話題も積極的に取り上げるというどこか時代というか作り手の実験番組といったニュアンスを感じる30分番組だった。私の役割はその中の「今マックが人気、なぜ」といったコーナーに出演することだった。

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※テレビ東京系で1992年8月まで放映されていた「Pコング」オープニング画面。ビデオ録画からキャプチャした画質があまりにも悪いため見やすいように加工してある


コーナーの放映時間は12, 3分ほどだったが、当時はその番組内容以前にAppleとかMacintoshを知ってもらうのに時間と手間がかかった時代だったから、さてどのように話しを持って行くべきかと考えた。しかし司会のくず哲也さんと話しを持ってこられたディレクター共にMacintoshユーザーだったので基本的な部分は予想していたより楽だった。

私は収録の日、スタッフを1人連れて指定の場所に向かった。収録場所は六本木にある今で言うところの "クラブ" みたいな所で、明るい照明下ではおせじにも奇麗な場所ではなかった。全体的にコンクリート打ちっ放し的な内装、鉄の棒で作った椅子やテーブル、そのテーブルも何やら下手なペイントがあったり、スタッコ仕上げのような粗いコンクリートむき出しの柱だったりと...。勿論開店は夜だそうで照明は暗いしミラーボールが回っているという場所だった。

この出演依頼がまとまり、ビデオ収録日が間近になったとき、会社のスタッフや取引先、そして友人知人達の関心事はどうやらひとつだったようである。
それは初めてのテレビ出演で、私がどれほど緊張するか、そしてしどろもどろになるか...ということだったらしい(笑)。やはり照明とテレビカメラが回ると緊張するし事前に多くの時間を割いて台本が出来ているわけでもなく、すべてが一発勝負の場で緊張しないはずはない...という至極当然の興味だったし、私があたふたしている姿を酒の肴にしようという輩もいた(笑)。

さて、本番前にくず哲也さんとアシスタントの女性、そしてディレクターたちと進行の概略を取り決めて本番収録となった。私がテレビカメラの前でやることはくず哲也さんとの雑談の他、QuickTimeと自社開発のソフトを使い、司会者であるくず哲也さんの姿をMovie化し、それを使ってデジタル名刺を作る実演をやった。またデジタル動画とはどういうものなのかを自社開発のアプリケーションを例にして説明した記憶がある。

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※話題はQuickTimeのことに終始した記憶があるが...


当初まだまだ知られていないQuickTimeとかMacintoshの話しで会話が進むのかと危惧していたが、くず哲也さんはさすがにプロフェッショナル...。カメラが回ると果然饒舌で面白くポイントを付いた突っ込みをしてくれた。結果正味12, 3分のはずが司会者も乗ってしまったのか全部で45分間くらいしゃべってしまい編集が大変だろうなと皆で笑った。

それにカメラは1台だったことをカバーしようとしたのかやたらに動き回るのが少々気になったが、大変気持ちのよい収録が出来た。それにカメラを通すと面白いもので無味乾燥な店内の造作がそれなりに意味のあるように立派に映っていた。

放映は翌月の7月15日(水曜日)だったが数日後、取引銀行に出向いた折に支店長から「テレビ見ましたよ!」といわれたが、なによりも私は友人知人たちの期待を完全に裏切り、「普通、照明がついてカメラを向けられると多少はあがるのに、まあぁ、松田さんったら普段のまんまでしたねっ…!何故?」と文句を言われたほどリラックスした出演だった。

「どうして、何故」といわれても困るが(笑)、私自身は話し自体がMacintoshのことであり自社製品のことだから、曖昧なことや難しい事などひとつもなかったし、好きな話しをくず哲也さんらと楽しく進めただけだから特別に緊張するはずもなかったのである。

その時のテレビ番組を録画したテープも今や行方不明だが、以後「Pコング」は気になって数回ビデオ録画して見ていたものの残念なことにその後番組はすぐに終わってしまったのだった。
とにもかくにも、私は一応...テレビ出演の経験があるのです(笑)。




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Author:mactechlab
主宰は松田純一。1989年Macのソフトウェア開発専門のコーシングラフィックシステムズ社設立、代表取締役就任 (2003年解散)。1999年Apple WWDC(世界開発者会議)で日本のデベロッパー初のApple Design Award/Best Apple Technology Adoption (最優秀技術賞) 受賞。

2000年2月第10回MACWORLD EXPO/TOKYOにおいて長年業界に対する貢献度を高く評価され、主催者からMac Fan MVP’99特別賞を授与される。著書多数。音楽、美術、写真、読書を好み、Macと愛犬三昧の毎日。2017年6月3日、時代小説「首巻き春貞 - 小石川養生所始末」を上梓(電子出版)。続けて2017年7月1日「小説・未来を垣間見た男 スティーブ・ジョブズ」を電子書籍で公開。また直近では「木挽町お鶴捕物控え」を発表している。
2018年春から3Dプリンターを複数台活用中であり2021年からはレーザー加工機にも目を向けている。ゆうMUG会員