イライザに浴衣を着せる!

当研究所の専属モデル(造形マネキン)の名はイライザ(ELIZA)と名付けることにした。その名の意味についてあらためて述べる必要はないと思うが、本来のミッションはすでに終わったものの私が造形したボディと両腕もそろったイライザは極狭い範囲ではあるもののモデルとしての依頼が入っている(笑)。まあ半分遊びのようなものだが、今回そうした依頼の中から季節感もある浴衣を着せた例をご紹介したい...。


「浴衣を着せたイライザを人物モデルとして配した写真を撮ることにした」とはいうものの、依頼者も私もその難しさを理解していなかった...。ひとつには近年浴衣を着ることも手にすることもなかったことがひとつ。そしてなによりも浴衣を着た女性は夏場になれば多々目に入るものの女性物の浴衣そのものは勿論、着付けといった類のあれこれに関してまったく知識がなかったことを…忘れていた(笑)。

いやはや目的達成のためにはまず浴衣と最低限必要な小物を揃えなければならない。ただネットの時代はありがたいもので、昔では考えられないような安価なものが手軽に手に入れられることだ。そして着付けや帯の締め方といった情報と共に最低限必要なアイテムもけっこう安く販売されている。分からないところは女房に手伝ってもらえばなんとかなるだろう...。

ともかく私たちが目指すのは整った美しさの中に和装の色気を出したいということだった。それもこうした試みはある意味虚構の世界、作られた世界であるからして、写真に封じ込めたビジュアルが美しければOKであり、屁理屈はどうでも良いと思ってはいる。

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しかしこれでも人生長くやっているとシンプルな美しさを表現するのは物事の基本を知っていないとどうにもならないことも理解しているつもりだ。したがって我流だけで済むはずもなく周りに教えてもらいながらこれまた試行錯誤するしかない。
そういえば先に宣言しておくが、こうしたことをご紹介すると「ついに人形愛も着せ替えの世界に入ったか」と危ぶまれるかも知れないが、残念ながら?メイド服やセーラー服を着せるつもりはないので念のため(笑)。

クライアントと私の一致したコンセプトだが、例えば帯を締める位置ひとつをとっても最近のギャルが装う浴衣姿の傾向は却下だということ...。やはり古い人間の好みが出ているのかも知れないが、浴衣は昭和レトロ、大正モダンというか、どこかノスタルジーを感じるデザインが理想であること。そして着せるモデルが青い目のブロンド女性ということで(Wigはどうにでもなるが)、ぴったりはまった着こなしというより、外人さんが初めて浴衣を着たどこかぎこちなさ、新鮮さが出せればいいね...ということになった。こりゃあ本物のモデルさんをお願いしても実現してみたい企画である(笑)。

ELIZA_yukata_04.jpg

さて浴衣といってもやはりピンキリだ。浴衣と帯、そして下駄の三点セットで4,000円...などというものから浴衣だけで数万円というものまである。しかし志は高くても予算は低いのが我々の常だから、そこは工夫しなければならない。結局2種類の浴衣を購入し、別途1種類はレンタルを試みた。

着付けも難しいが現実問題として一番の難関は写真撮影時のポーズだ。ご承知のとおり一般的な洋装の場合に良いといわれているポーズは和服の場合には当てはまらないことが多い。
例えば和装の場合、真正面からのアプローチは着物姿を綺麗に見せないといわれている。ファッションショーでモデルが大股で歩いて来てポーズを決めた後にターン...といった見せ方があるが、あれでは興ざめだ(笑)。着物姿の美の代表的なものといえば菱川師宣(ひしかわもろのぶ)による「見返り美人図」が知られているが、その好きずきはともかくそれこそ和装ならではのポーズであることは誰しもがわかるだろう。

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ただし当研究所の専属モデル嬢ならずとも、首や腰などが自由に動くマネキンはほとんどないからポーズを取らせたくても無理なのである。幸い我が専属モデル嬢は自作の両腕が多少の可動範囲を持てるので限られた範囲ではあるものの演出ができた。後はカメラのアングルで多少でも思い描く動きが表現できるように工夫することになる。

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専属モデル嬢に浴衣を着付けしたとき、これまでの洋装とは雰囲気ががらりと変わった姿を見て、面白いもので大昔の記憶がスイッチを入れたように宿った...。
それは高校の謝恩会かなにかのときだったが、女子の同級生数人が寸劇のようなことをやるため着物姿で登場したとき、毎日隣の席で顔を合わせている子が急に大人の女性になったように思えて「女性とは不思議」といった感慨を深めた記憶がある。

今回ご紹介した写真はテスト撮影時のものだが、マネキンとて浴衣を着せると印象がまったく違うのが面白い。
とはいえ生身の人間に着付けをしたこともない奴がおくがましいが、人間に着付けするよりマネキンへの着付けはより難しいように思える。なにしろ帯締めにしろ帯にしてもボディに弾力がないから締めるということ自体がぴったりといかない。ともあれ、これまた得がたい体験をさせてもらった...。


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主宰は松田純一。1989年Macのソフトウェア開発専門のコーシングラフィックシステムズ社設立、代表取締役就任 (2003年解散)。1999年Apple WWDC(世界開発者会議)で日本のデベロッパー初のApple Design Award/Best Apple Technology Adoption (最優秀技術賞) 受賞。

2000年2月第10回MACWORLD EXPO/TOKYOにおいて長年業界に対する貢献度を高く評価され、主催者からMac Fan MVP’99特別賞を授与される。著書多数。音楽、美術、写真、読書を好み、Macと愛犬三昧の毎日。マネキン造形研究中。日本シャーロック・ホームズクラブ会員。日本リュート協会会員。ゆうMUG会員