VRグラス ヘッドマウント「VR SHINECON」を手にして

VR (バーチャルリアリティ) が人気なんだとか...。特に安価なVRヘッドマウントセットとスマホの組合せでVRを楽しんでいる方が多いと聞いたが、珍し物好きなはずの私は一向に興味を持てないでいた。そんなとき先日「VR SHINECON」というVRグラス ヘッドマウント製品をいただいた...。


バーチャルリアリティ(VR)がもてはやされたのはこれが最初ではない。仕様やコンセプトに些か違いがあるもののMacとQuickTimeが普及し出した1991年あたりからこの言葉が目立った時期がある。
ひとつはQuickTimeの映像のVR版、360°方位を満喫できる写真の「QuickTime VR」が登場して話題になったこと。もう一つは3Dアプリケーションでモデリングした建物や部屋内部を仮想的に動き回ることが出来るコンテンツの登場だった。

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※アップルが1996年に配布した「QuickTime VR - Photography」CD-ROM(非売品)


二次元の写真に飽き足らず、現実の世界を観るがごとく立体視を実現する装置の発明は意外と古い。C.W. ツェーラム著「映画の考古学」(フィルムアート社)によれば1838年、イギリスの物理学者チャールズ・ホイートストン卿が発明したというが、1848年にはディウィッド・ブルースター卿が立体写真を撮影するための二眼カメラを発明している。さらに不完全ではあったが、1852年には帯状の立体写真をドラムに装着し、レンズの付いた立体視鏡を通して覗く立体動画鑑賞装置が発明されている。

さて最近売れているというVRグラス ヘッドマウント類は価格が安価なこと、そしてスマートフォンの普及およびYouTubeなどにそれらのVRグラスで立体視ができる「YT3D」や「360°」といった3D動画のコンテンツが大量に配信されているという事情が関係するものと思われる。

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※VRグラス ヘッドマウント「VR SHINECON」という製品をいただいた


今回とある所からいただいた「VR SHINECON」だが、昔から立体視そのものには興味があり「FinePix REAL 3D W1」といった3Dカメラもいち早く手に入れたもののこの種のヘッドマウントに手を出すつもりはなかった...。
その漠然とした理由だが、この程度のものでは満足できるはずもないと考えていたし、大きなヘッドマウントを使わなくてはならないことにも違和感があった。

そんな良くも悪くも先入観を持って今般「VR SHINECON」という製品を手にしたが、同梱されている説明書が英語というのはともかく実に扱いづらいというのが第一印象だ(笑)。
最初に意欲が減退したのは「VR SHINECON」本体の臭いだ。樹脂特有の臭いが強く、これを眼前と頭に被る気は失せてしまう。ただし一日放置しておいたところ、まあまあ許容レベルに落ちたので使ってみることにした…。

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※「VR SHINECON」本体


まず私の場合はiPhone 6s Plusを「VR SHINECON」前面カバーを開けて装着するもののiPhoneのサイズが大きいこともあって上下にスプリングで広がるストッパー内にiPhoneをはめ込むこと自体がやりにくい。なおこの「VR SHINECON」は3.5~5.5 インチまでのスマートフォンに対応しているとのことだ。

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※フロントカバーを開けてiPhone 6s Plusをセット


次にやることは装着したiPhoneで3Dコンテンツを用意することだ。これは取り急ぎYouTubeに多くの対応するコンテンツがあるというので "YT3D" で検索してみた。誰でもが最初に体験しようとする類のコンテンツだろうがジェットコースターの動画があったのでそれを選択して再生の準備をする。

無論こうした一連のオペレーションはヘッドマウントのカバーを開け、iPhoneをセットしたままで行うことになる。そして映像の準備ができたらそれを再生してからカバーを閉じてヘッドマウントを頭に装着し急いで文字通り眼鏡をかけるように準備する。そう…本製品は眼鏡を掛けたまま使用可能なのは良いが、無論メガネのサイズやデザインによる...。

なお映像をきちんと見るためにヘッドマウント上部にあるダイヤルを左右に回して、自分の左右の目の位置に合うよう2つのレンズ位置を調節することとヘッドマウント左右にあるピント合わせのダイアルを調節することが必要だ。
しかしこうした簡易システムでは贅沢は言えないのはわかるが、iPhoneのコンテンツをカバーを開けず、頭に装着してから再生するすべがないことだ。別途iPhoneをBluetoothなどでコントロールするリモコンといったものもあるようだが、そうした工夫をしないかぎりスマートに楽しむのは難しい...。なおサウンドは一般的にはイヤフォンをiPhoneのジャックに差し込んで使うが、コードを容易に引き出せるスリットがある。

さてこのヘッドマウント「VR SHINECON」で再生できるコンテンツとしては大別して「サイドバイサイド3D」と「リアルビューアー」にわけられる。サイドバイサイドは視差の違う映像を左右に配した映像で、文字通りコンテンツの出来がよくヘッドマウントの調整が良ければ文字通りの立体動画が楽しめる。
また「リアルビューアー」はいわゆる360°の臨場感を得ることが出来、例えばふり向いた方向に映像が動くのであたかも自分自身がそこにいるかのような錯覚を味わうことが出来る。

まだまだ十分に堪能したとはいえないものの数十のコンテンツを観た範囲では、正直「なるほどこれは3D映像で観る価値あり」と納得したものは極僅かだった。結局この安価なヘッドマウントを生かすも殺すも当然とは言え画質の良し悪しも含めコンテンツ次第だということに尽きる。
330 gのその重さも実際に装着してしまえば重いとは感じないが、それでもこんな無骨なものをかぶって立体視するに値するコンテンツって何だろうか…と考えてしまう。

そうなれば、究極の楽しみはお仕着せのコンテンツではなく自分でサイドバイサイド3Dの動画を作ることに違いない。子供が生まれたとき、入学や運動会、旅の思い出はもとより結婚式の映像がリアルに立体視できるなら無骨なヘッドマウントもかぶってみようという気になるかも...。
そこで調べた結果、iOSやOS X用のサイドバイサイド動画変換ソフトというのが存在するのでこれは速攻で試してみた。

例えばOS X用の"3D Converter" というアプリは 2Dから3Dへ、3Dから3Dへ、3Dから2Dへと3つの変換モードを備えている。
肝心の2Dから3DだがMP4,WMV,AVI,MOV,HD VOB,FLVなどという一般的な動画フォーマットのデータをサイドバイサイドのハーフ幅あるいはフルデータとして変換する機能を持っている。

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※OS X用サイドバイサイド3D動画変換アプリ「3D Converter」使用例


変換にはいくつかの設定が必要だが難しいことはないし不明な部分は設定やパラメータを順に変えて自身がウェアブルカメラやデジタルカメラで撮影した2D動画データをサイドバイサイドの3D動画に変換し、それをAirDropを使ってiPhoneに転送の上「VR SHINECON」で視聴することを多々やってみた。
さらにiOS用では "VRPlayer" というアプリでiPhone内のライブラリー内にあった動画のいくつかをサイドバイサイド3Dに変換してみた。

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※iOS用サイドバイサイド3D動画変換アプリ「VRPlayer」使用例


結果だが、ソースにもよるもののYouTubeで配信されている最初から3D動画として制作されているものと比較するまでもなく立体感はあまり感じられなかった。
そもそもサイドバイサイド3Dの場合、立体視を可能にするのは左右の視差だ。手持ちのデジカメでこの平行方や交差法による視差を利用した写真を撮ることは簡単だが、一般的な2Dの動画データから疑似的にも視差を作り出すのはこのレベルでは容易ではないのだろう。ハリウッドの大作映画の中には2D作品を大枚な予算を駆使して3D作品に作り直したものもあるが、今回試したソフトウェア類では左右の視差の違いをフレームの時間差で生み出そうとしているように思えるが、どうなのだろう...。

ともあれ自分の撮った動画(あくまでサイドバイサイド3Dに変換したもの)を観た範囲では「立体的だといわれれば、まあ多少は感じられる部分もある」といった程度だった。立体視には個人差もあるというが私の場合はわざわざヘッドマウントで観るほどではないと思う…。

やはりこれらを極めるにはレベルはともかく最初から3D動画を撮影できる機器が欲しくなってくるが、仕方がないとはいえこのヘッドマウント類が必要となると腰が引けてしまう。となれば少なくとも3Dテレビを買う必要が出てくるが、今のところそこまで意欲をかき立てる魅力が現行の3Dには感じられない。

確かに「VR SHINECON」はスマートフォンユーザーが安価に3Dを体験、楽しむことが出来るデバイスという点においては存在価値があると思うし、ゲームや様々なエンターテインメントに活用されていくのかも知れない。しかしここでもコンテンツに「3Dである意味」が問われてくると思う。

3Dそのものには大きな魅力を感じる人たちは沢山いらっしゃるはずだ。ただしコスト面や技術といった点を考えればコンシューマー向けとしてこの種のデバイスが入り口となるのかも知れなものの、理想的にはSF映画にもあるように裸眼かつ眼前にホログラム的なカラーの立体映像が浮かび上がる...という世界を体験してみたい。しかし、残念ながら私の目の黒いうちの一般化は難しいようだ(笑)。



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Author:appletechlab

主宰は松田純一。1989年Macのソフトウェア開発専門のコーシングラフィックシステムズ社設立、代表取締役就任 (2003年解散)。1999年Apple WWDC(世界開発者会議)で日本のデベロッパー初のApple Design Award/Best Apple Technology Adoption (最優秀技術賞) 受賞。

2000年2月第10回MACWORLD EXPO/TOKYOにおいて長年業界に対する貢献度を高く評価され、主催者からMac Fan MVP’99特別賞を授与される。著書多数。音楽、美術、写真、読書を好み、Macと愛犬三昧の毎日。マネキン造形研究中。日本シャーロック・ホームズクラブ会員。日本リュート協会会員。ゆうMUG会員