[断章]〜「未来を垣間見たカリスマ 〜 スティーブ・ジョブズ」はなぜ小説なのか

今回は「[小説]未来を垣間見たカリスマ ~ スティーブ・ジョブズ」を一回お休みにして、なぜ小説技法も身についていない奴が小説といった形をとって、それも陳腐とも言えるタイムワープまで使いスティーブ・ジョブズの若い頃の姿を描こうとしたのか、断章としてお話ししてみたい。ちなみに「断章」だが、作家:陳舜臣は「小説のある段落で、進行中の物語から少しはなれて、作者が読者に説明したいことを挿入する部分」と書いている。


※本編の小説はフィクションです※
小説でスティーブ・ジョブズの人生やAppleの歴史を表現してみたいというアイデアはすでに15年も前から温めてきたことだった。しかしこれまでなかなか機が熟さなかったというべきか。やっと頭の中でスティーブ・ジョブズを始めとする人物たちが動き始めたような気がしたのだ…。
ではなぜこれまで小説など一度も書いたこともなくその技法やテクニックについて勉強したこともしようと思ったこともない者が小説の体でスティーブ・ジョブズの若い頃を描きたいと思ったのか、その点を自分自身を鼓舞する意味も含めてまとめておきたい。

当ブログにしばしばお立ち寄りいただいている方ならご存じの通り、これまでにもAppleやスティーブ・ジョブズにかかわる多くの記事を書いてきた。それぞれはご紹介した時点において可能な限り一次資料や信頼できると思われる書籍などを基に史実に忠実な描写をしたいと考えた。

そもそもそれぞれのアーティクルは当然のことながらその都度のテーマに沿った内容だ。例えば「2人のスティーブが出会ったきっかけは?」「Apple 1とはどのようなコンピュータなのか」「そもそもAppleという会社を創業するに至る動機は?」あるいは「スティーブ・ジョブズとはどんな男なのか」といったように...。
そして事実を伝えるためには「誰が、いつ、どこで、何故、何を、どのように」といったフレームワークを明確にする必要があるというが、一般的な記事ではこれらを立体的に網羅するのは難しい…。無論私自身の力量の問題も否定できないが。

しかし長い間Appleの歴史やそれにかかわる群像を調べていると単一のテーマに絞ろうとしてもそれらにまつわる多くのエピソードやきっかけがまとわりついていることを知る。そもそも狭い範囲の事実だけを検証しようとすればするほど直接間接に様々な要因がかかわっていることに気づかされるし我々の人生とはそうしたものに違いない。ともかくそうした要素をひとつひとつ取り上げれば散漫なものになりがちだし焦点はボケてしまう。

さらに小説の形をとってみようと考えた一番の動機は、司馬遼太郎が小説「空海の風景」の中で執筆の動機を「空海を肉眼でみたいという筆者の願望」と書いたように、私もこの眼を持ってスティーブ・ジョブズの若い頃に接したいと思ったからに他ならない。
ちなみに私が生身のスティーブ・ジョブズに出会った最初は1989年7月10日、幕張の東京ベイNKホールにおけるNeXT発表会だった。さらにステージにあがる前にホテルの通路ですれ違ったこともよい思い出だ。

さらにアップルジャパンのデベロッパーとなったこともありスティーブ・ジョブズが復帰後はMacworld Expo/サンフランシスコの会場でジョナサン・アイヴと一緒にいる姿を多々目撃したし、一度はExpo/Tokyoなどで彼のキーノートを見たり、デベロッパーの代表たちがホテルのレセプションルームで談笑していたときプレゼン姿のままのジョブズが部屋に入ってきたこともあった…。

それと私がAppleの歴史に興味があるのは自分が夢中になったApple II やMacintoshという素晴らしいパソコンを生んだ企業を知りたいと思ったことは当然だが、それ以上にそこで働く人たちの情熱や思いがどういうものであったかに強く引かれたのだった。
Apple II がAppleという企業で生産されたという事実より、なぜそういうことになったのか、誰の意志なのか、どのような思いで開発したのか、時代背景は…等などの方に興味が向かったのである。

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※主人公の加賀谷友彦は40年前のスティーブ・ジョブズ自宅前にタイムワープしてしまった!。加賀谷は私自身を仮託した人物だ


こうした興味に沿った記事を書きたいと思ったら、もう通り一遍の記事ではそれらにまつわる人々の思念といったものを伝えることは難しい。しかし小説の体をとれば表現の幅が大きく広がるのではないかと考えた...。
なぜ小説なのか…前記と重複する部分もあるが思いついたことを以下にまとめてみた。

1)史実に基づいてが基本だが、多くのミッシングリングを状況証拠やフィクションとして埋めればストーリー性が増すと考えた。ひとつテーマを決めた記事だとどうしても立体的な描写がやりにくく平面的な解説になりがち。小説の体を取れば情景描写や人と人との感情のぶつかり合いも描け、多面的/立体的な表現が可能になると思った。

2)三人称の上に神視点、さらに断章も入るというなんでもありの書き方は素人丸出しだと自覚しているが、なにかの賞を狙うつもりはないし(笑)、読んでくれる人たちが楽しんでいただければそれでよい。というか書いている本人が一番楽しんでいるしなによりも数編書き出してみると面白い事に主人公たちが理屈でなく一人で動き出すようにも思えて小説家の性を垣間見る思いをしている。

3)ありきたりではあるがタイムワープで主人公(私を仮託)をその時代に立たせ、実際に私が体験・経験した時代の空気を主人公の目で表現したいと思った。文字通り肉眼でスティーブ・ジョブズを見、その空気感を少しでもお伝えできたら嬉しい。そしてスティーブ・ジョブズが真のビジョナリーになり得た理由だが、天性の聡明さは当然としても40年後の未来からやってきたひとりの男の影響が強かったのだというストーリー展開にも興味を持った次第。

4)米国のニュアンスを借りつつ表現はあくまで日本人に無理なく通じるようにと考えた。例えば「第5話 株式会社になる」でジョブズの養父が登場し「なあマイク、君たちが苛つくのもよくわかるが、”色の道” は息子に任してくれや」という台詞はまったくもって日本語だ(笑)。ただし養父のポール・ジョブズはガレージ時代、仲間たちがイライラし険悪な状態になると実際に中に入り、雰囲気を和らげたという。
ちなみに「色の道」だが、私は若かりし頃に東証一部上場の顔料・染料メーカーに6年ほど勤めたが、その色作り…カラービジネスを極めるという意味で創業者の社長は興が乗ると自社のビジネスは「色の道」と称して悦に入っていたことに所以する。

5)本編を楽しみながら読んでいただければスティーブ・ジョブズという男の素顔と黎明期のAppleがよく理解できるというものを目指したい。無論小説としてのフィクション部分は別にしてだが、これまでスティーブ・ジョブズについて書籍などを通じ、何らかのイメージを持っていた方ほどリアリティを感じていただけるに違いない。また本編は特にどこがフィクションなのかについては明記しない。

6)最初からストーリー、構成、内容的に完璧を求めずストーリーを進めていく過程で矛盾点や間違いを正し、話題も追加していくつもりだ。これもブログだからできることに違いない。

7)まずまずの結果が出せたら電子書籍化をめざしたい。ホントカ(笑)。

というわけだが、どこまで続くか書いている本人も分からない。できることならMacintoshをリリースした翌年、Appleを追われるところまで続けたいと思っているのだが…。しかしそれでは私自身を仮託した主人公、加賀谷友彦は丸9年間も現代に戻れないことになってしまう。それでは家族も心配だし(笑)、何らかのきっかけで一, 二度現代に戻したいとも思うが、さてどうなりますやら。
興味を持っていただければ幸いである。


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Author:appletechlab

主宰は松田純一。1989年Macのソフトウェア開発専門のコーシングラフィックシステムズ社設立、代表取締役就任 (2003年解散)。1999年Apple WWDC(世界開発者会議)で日本のデベロッパー初のApple Design Award/Best Apple Technology Adoption (最優秀技術賞) 受賞。

2000年2月第10回MACWORLD EXPO/TOKYOにおいて長年業界に対する貢献度を高く評価され、主催者からMac Fan MVP’99特別賞を授与される。著書多数。音楽、美術、写真、読書を好み、Macと愛犬三昧の毎日。マネキン造形研究中。日本シャーロック・ホームズクラブ会員。日本リュート協会会員。ゆうMUG会員