QuickTimeは間違いなくエポック・メーキングな出来事だった

先日アップルから届いたQuickTime Newsを見て思い出したが、手元に1992年制作のCD-ROMがある。題して「The Image Bank Collection」...。ここに収録されている300以上ものQuickTimeによる動画データを見たら現在のユーザーは笑うのではないか...。 


このCD-ROMは1992年にリリースしたデジタル・ビデオツール「DiVA VIDEO Shop」というソフトウェアにバンドルされていたいわばサンプルムービー集であった。 
この1992年という年をあらためて振り返ってみればQuickTimeが登場した翌年である。そして同時にMacintoshファミリーである「Macintosh IIvi」に最初のCD-ROMドライブが搭載された年であり、CD幕開けに相応しいアイテムでもあった。この後にQuickTimeもCD-ROMも急速に普及する。 

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※1992年にリリースされたデジタル・ビデオツール「DiVA VIDEO Shop」(上)と「The Image Bank Collection」CD-ROM(下)


しかし当時Macintoshで動画を快適に動かすということに血眼になった一人として振り返ってみると現在と全く違う環境にあらためて驚く。 
なぜなら「The Image Bank Collection」に収録されているQuickTime Movieはそのサイズが160×120ピクセルといった大変小さなものだったし、そのカラー環境は現在のような1677万色のフルカラーではなく256色が一般的であった。当映像は16bit/32000色で制作されていることもあり現在のフルカラー環境で見るとブロックノイズも目立つし色彩も鮮明ではない。 

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※「The Image Bank Collection」に収録されているQuickTime Movieの一例。160×120ピクセルで作られている


この小さな...ホントに小さな動画を見て「使い物にならない」と言い切った人が多々いた。しかし当時のQuickTimeはいまと違い、映画やテレビの代わりにはならなかったが、例えば私の会社が開発した画像データベースではアナログビデオ映像の検索サムネイルとして活用するなどアイデア次第でもあった。 
なによりもこの小さな動画には近未来のマルチメディア実現の可能性を垣間見せる大きな魅力があったのである。 
まあ、あれだけ騒いだマルチメディアはどこかに行ってしまったが(笑)、この小さなスタートがあったからこそ現在のQuickTime環境が存在することを忘れてはならない。 

素晴らしいことに「The Image Bank Collection」に収録されているQuickTime Movieは現在のQuickTime Playerの最新版でも動かすことができる。14年も前のQuickTime 1.0といまだに互換が保たれていることもAppleの凄いところではないだろうか。 
今となっては何の変哲もない一枚のCR-ROMだが、あらためてそのいくつかを再生すると当時この小さな映像を食い入るように見つめ、目を輝かしていた多くの人たちの姿をまざまざと思い出す。 
無論私自身もそうした一人だった。パソコン...Macintoshの可能性を疑いなく信じてビジネスに拍車がかかりだした当時の自分を..いま脇にいるように思い出す。 
このQuickTimeの登場はパーソナルコンピュータにとって間違いなくエポック・メーキングな出来事であった。 
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主宰は松田純一。1989年Macのソフトウェア開発専門のコーシングラフィックシステムズ社設立、代表取締役就任 (2003年解散)。1999年Apple WWDC(世界開発者会議)で日本のデベロッパー初のApple Design Award/Best Apple Technology Adoption (最優秀技術賞) 受賞。

2000年2月第10回MACWORLD EXPO/TOKYOにおいて長年業界に対する貢献度を高く評価され、主催者からMac Fan MVP’99特別賞を授与される。著書多数。音楽、美術、写真、読書を好み、Macと愛犬三昧の毎日。2017年6月3日、時代小説「首巻き春貞 - 小石川養生所始末」を上梓(電子出版)。続けて2017年7月1日「小説・未来を垣間見た男 スティーブ・ジョブズ」を電子書籍で公開。また直近では「木挽町お鶴捕物控え」を発表している。
2018年春から3Dプリンターを複数台活用中であり2021年からはレーザー加工機にも目を向けている。ゆうMUG会員