アップル最初の純正ハードディスク「ProFile」考

ハードディスクも一時はその容量に限界があるという説があったり不安定度が問題視されたりもしたが、容量的にもスピード的にもそしてコスト面や使い勝手の良さでも一番のデータ書き込み&読み込み装置の座を保っている。今回はApple最初のハードディスク「ProFile」についてのお話しである。

 
ハードディスクという代物は1956年にIBMがはじめて「IBM 350」を発売したときに直径24インチのディスクを50枚使い実用化したもので、その容量は5MBだったのが最初だという。まあ、メインフレームなどの周辺機器はともかくパーソナルコンピュータのハードディスクとなるとやはり1980年代にならないと一般にはお目にかかることができなかった。
本格的なパーソナルコンピュータのApple II 登場が1977年なのだからそれも当然だともいえよう。そしてApple IIが次第にホビーの世界だけでなくビジネスや研究機関などにおいて実用となることが知られるにつれそれまで存在した大型コンピュータやミニコン用のハードディスクをつなぐ工夫をした人たちもいたようだが、対応製品として販売されるのは1980年代であり、特に日本では1984年とか1985年あたりではなかったか...。

なにしろ1980年代前半といえば個人ユーザーにやっとフロッピーディスクが浸透した頃であり、ハードディスクなど夢また夢の世界だった。
私が1984年に当時日本語対応のパソコンとしては最高峰といわれたIBM 5550を購入したときもそのシステムは3台のフロッピーディスクドライブ構成でありハードディスクは装備されていなかった。使う度にフロッピーディスクから日本語MS-DOSを起動させなければならなかった。

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※1984年に購入したIBM5550は5.25インチのフロッピーディスクドライブが3基構成でハードディスクは無かった


とはいえフロッピーディスクに慣れるにつれ、そしてコンピュータを縦横無尽に使いこなそうとすればするほどハードディスクという装置に思いを馳せることになるのは自然なことだった。
結局1985年7月にPC-9801用に10MBのハードディスクを手に入れたのがハードディスク購入の最初だったが、早くもその年の12月にはMacintosh 512K用に「Paradise MAC-10」というこれまた10MBのハードディスクを購入した。価格は35万円前後だったと思う。

その頃はまだSCSIインターフェースはなく無論Appleから純正のMacintosh用ハードディスクもなかった。サードパーティーからMacintoshの内部に無理矢理入れてしまうものなどが登場したが、一般的になったのはやはりSCSIインターフェースが装備されたMacintosh Plusが登場した1986年以降であった。
そのMacintosh Plusに合わせてAppleからも座布団型といわれたMacintosh Hard Disk 20が登場しハードディスクはなくてはならない周辺機器の一つとして認知されるが、何しろ当時はまだまだ高価だったのが記憶に残っている。

ところでそろそろ本題だが、Appleの純正ハードディスクは前記したMacintosh Hard Disk 20が最初の製品ではない。
Apple純正品としての最初のハードディスクは1981年9月に発表された「ProFile」という5MB容量の外付けハードディスクで価格は3.499ドルだった。この製品は前年1980年に発表されたApple III用として開発されたものだったこともあってそのスタイルと大きさは現在の目から見ると異様と思えるかも知れない...。
サイズは横約437×高さ約103×奥行き約220mmといった横長スタイルで当然のことながらApple III本体の上に乗せるとジャストフィットする。ちなみに国内価格を調べてみたが、1985年3月当時の販売価格は374,000円だった...。無論今と貨幣価値はまったく違う。

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※アップル最初の5MB純正ハードディスク「ProFile」

 
Appleはその後1983年にApple II向けとしてPascalとProDOSをサポートしたProFileインターフェース・カードを提供し同年リリースされたLisaの標準ハードディスクとしても販売された。また後に容量10MBのProFileも提供される。
最初のLisaはハードディスクを内蔵しておらず、このProFileをその頭上に乗せ、ビルトインされているパラレル・ポートあるいはオプションのデュアル・ポートを持つパラレル・インターフェース・カードに接続して使われた。
Lisaの写真を見ると本体の頭上に乗っているのがこのProFileなのである。ただし純粋にLisa用として開発された製品ではない弱みで横幅のサイズなども合わず、少々不格好の誹りを免れないがこれがApple純正品だったのだから仕方がない。

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※「ProFile」の内部。左の基板下に電源がある

 
ではなぜ10,000ドル弱といった高価なコンピュータにハードディスクが内蔵されていなかったのだろうか...。その真意は不明だが、コストをこれ以上高くしないためか、あるいはApple IIIの失敗でProFileの在庫が多く残ってしまったために再利用を考えたのか...(笑)。
あのアラン・ケイはLisaにはよいアイデアがたくさん盛り込まれていたと認めながらも、Lisaが5MBの外付けハードディスク(ProFile)を頭上に乗せなければならなかったことは致命的な妥協だと明言している。
しかしもっと深刻だったのは当時の技術的な限界もあってか、このProFileは故障しやすいことでも知られていた。したがってハードディスクというそもそもがデリケートな製品であることも含めてすでに28年も経過した今日、往時のままで完動するProFileが残っているケースは非常に稀だと言われている。さらにProFileにとって頼りのLisaもご承知のように商業的に失敗し、結果として在庫はすべて破棄され埋められたことでProFileの存在も忘れ去られた感がある。

したがってこのProFileの筐体自体がすでにかなりのレアアイテムとなっているようだ。そして現在ではハードディスクシステムをコンパクトフラッシュ化したX/Profileといった製品も知られており、安定かつ高速な利用が可能なようだ。
というわけでLisaの運命と共にこのApple最初の純正ハードディスク「ProFile」は今では知る人が少なくなった。しかし歴史の一コマを飾るに相応しい魅力のある製品だったことは間違いないのである。

 【主な参考資料】

・「マッキントッシュ伝説」アスキー刊
・「アップル・コンフィデンシャル 2.5J」アスペクト刊
・「アップルデザイン」アクシスパブリッシング刊
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主宰は松田純一。1989年Macのソフトウェア開発専門のコーシングラフィックシステムズ社設立、代表取締役就任 (2003年解散)。1999年Apple WWDC(世界開発者会議)で日本のデベロッパー初のApple Design Award/Best Apple Technology Adoption (最優秀技術賞) 受賞。

2000年2月第10回MACWORLD EXPO/TOKYOにおいて長年業界に対する貢献度を高く評価され、主催者からMac Fan MVP’99特別賞を授与される。著書多数。音楽、美術、写真、読書を好み、Macと愛犬三昧の毎日。マネキン造形研究中。日本シャーロック・ホームズクラブ会員。日本リュート協会会員。ゆうMUG会員