1993年発行大型本「再現江戸時代料理」小学館刊が素敵

江戸中期を舞台にした時代小説を書いているとその時代の食文化に触れなくてはならなくなる。いや、食文化などというと大層なことのように思えるが、何をどのようにして食していたかという至極当然の疑問だ。一汁一菜が基本中の基本で現在の視点からすれば至極貧しいことのように思えるが奥が深いのもこの時代特有のことなのかも知れない。


江戸中期の武士や町人達がどんなものを食べていたかについては様々な資料があるので理解はしやすい。武士にしても白米を漫画みたいに大盛りにし、後は汁物と漬物といった極質素な食事だったようだ。
例えば将軍だとしても朝食を例にすると、おかずは梅干しや煮豆、それに焼き味噌などの一汁二菜で味噌汁には落とし卵といった程度。昼も同様で、急用の政務があれば昼抜きとなる。そして入浴後に夕食となるも、朝昼のメニューにちょっとした煮物や焼き魚が加わる程度だったという。
その上に飯は水洗いした米を湯で煮上げ、笊ですくって蒸したパサパサ状のでオカラ状のもの。魚だって入念に水洗いして脂を抜き去ったデガラシ状だというからご相伴は遠慮したい(杉浦日向子著「一日江戸人」新潮文庫より)。

そうした意味では落語の「目黒のサンマ」ではないが庶民の食文化の方が自由で工夫が工夫を重ね、独特の江戸料理ともいえる食文化が育っていく。
勿論江戸時代と一言でいっても1603年から1867年までという約260年と長く、料理の材料も調理法もその間大きく変化している。
とはいえ普段料理といったものに縁遠い私などには文章で説明されてもイメージがまったく浮かんでこない。そこでいろいろと書籍類を探してみた結果たどりついたのが本書「再現江戸時代料理」小学館発行だった。編集は松下幸子/榎木伊太郎である。

再現江戸時代料理_01

※「再現江戸時代料理」編集:松下幸子/榎木伊太郎(小学館発行)


江戸時代の料理を再現するといった出版物はいくつかあるが、原典の文章が載っていること、家庭で作れるように作り方の過程をカラー写真で示し、分かりやすく解説されているものは本書がはじめてのようだ。
ちなみにな本書は「週刊ポスト」に平成2年4月13日号から翌3年4月19日号まで連載したものを根幹としたもので、江戸時代に刊行された22冊の料理書から、四季の味覚や色彩を生かして作られた50品をオールカラーで再現し、現代栄養学からの検証も紹介。ヘルシーな和食の原点を探求した一冊でもある。

再現江戸時代料理_02

※豊富なカラー写真も秀悦。食器にも注目!


再現料理の一例を記すと、まながつおの生ずし、巻卵、うに田楽、むし茄子、蛤わら煮、かれい大つみ入、はもの刺身も焼松茸、てんぷら焼さんま、蕪風呂吹、ひじき白合などなどだが、巻末には大名の正月料理も紹介されている。

とはいえ本書は1993年3月20日初版の大型本であり手に入れようとすれば中古本となるかも知れない。しかし時代小説でも書こうと思わなければこのような書籍とも巡り会わなかったわけで、そうした意味において個人的には忘れられない一冊になりそうだ。




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主宰は松田純一。1989年Macのソフトウェア開発専門のコーシングラフィックシステムズ社設立、代表取締役就任 (2003年解散)。1999年Apple WWDC(世界開発者会議)で日本のデベロッパー初のApple Design Award/Best Apple Technology Adoption (最優秀技術賞) 受賞。

2000年2月第10回MACWORLD EXPO/TOKYOにおいて長年業界に対する貢献度を高く評価され、主催者からMac Fan MVP’99特別賞を授与される。著書多数。音楽、美術、写真、読書を好み、Macと愛犬三昧の毎日。2017年6月3日、時代小説「首巻き春貞 - 小石川養生所始末」を上梓(電子出版)。続けて2017年7月1日「小説・未来を垣間見た男 スティーブ・ジョブズ」を電子書籍で公開。また直近では「木挽町お鶴捕物控え」を発表している。
2018年春から3Dプリンターを複数台活用中であり2021年からはレーザー加工機にも目を向けている。ゆうMUG会員