ビジネス回顧録〜人材募集面接の思い出

時代背景がいまとは違うこともあるが、私自身は起業するまで3つの会社のサラリーマンを経験したものの就活に関する苦労話はない。ただしサラリーマン時代にも数度人材募集をするために面接を任されたこともあって百名ほどの方たちとその機会を持った経験があった。今回は起業時代の面接で印象深いことをご紹介してみる。


先日久しぶりに電車に乗ったら就活に向かうとかで若い女性が二人お互いを励まし合っていた。その姿を眺めていたら20年以上も前に新卒の人材を欲しいと考え面接をしたときのことを思い出した。
私の会社はいま思えば時代に押され、勢いで起業した超マイクロ企業だったから起業時の人事をゼロから求めるのは難しかった。結果、サラリーマン時代の部下や相棒の勧めだったりと縁故同然の人材で固められていた感があった。
無論それが悪いとばかりは言わないが、企業の代表者であった私から見るとお互いの緊張感がなく物の考え方や仕事の進め方に膠着が見られるように思えた。1994年のことだった…。

幸い会社の景気がよかったことでもあり、そして札幌支店の女性が結婚退職することになったためそのポジションに新卒の女性を採用することにした。無論社長たる私の一存だ(笑)。
ソフトウェアという物作り(開発)の面白さに魅せられて起業した私だったが、もうひとつの夢というと大げさだが人材の育成をしてみたいと常々考えていたからである。
マイクロ企業としてはいわゆる経験者、即戦力となる人材の方がメリットがあると考えるだろうし事実社内の空気は新卒に拘る私の思惑をどこか懐疑的に見ていたようだ。

とはいえそうそう時間をとるわけにもいかない。そこで札幌で大学の先生をされているSさんに来年度卒業の方をお一人紹介して欲しいとお願いした。
信頼しているSさんの目にかなった方ならそれで一次選考突破だと考えていたからだ。
幸い大学でもパソコン…S先生のご尽力で…Macintoshも使われていたからまったくのゼロから教える必要はないこともメリットだった。

1994年某日、私は札幌に向かった。この時期は毎月一度は札幌支店に出向くのをノルマとして課していたが、面接という久しぶりのミッションにいつもと少し違った感覚を持っていたように思う。
私の頭にはひとつの理想というか目標があった。
新卒の女性に闇雲に仕事を押しつけるわけではないが、失敗してもよいから単なる内勤というだけでなく積極的に対外的な仕事もやらせてみたいということだ。そうした中から我々自身忘れているなにかに気づかせてもらいたいという期待もあった。
これまでにない、斬新で新しいソフトウェアを作る会社が型にはまった考え方ではどうしようもないからだ。

さて、面接というミッションは嫌いではない。就職を希望するため面接に来られる方は真剣そのものだからこちらも真剣に事を見極めなければならない。それに100人、500人採用する中に一人二人どうしようもない人材がいたとしてもそれは会社としてダメージではないだろうが6人とか7人しかいない我々のような超マイクロ企業は1人に課せられる仕事は結構重いこともありいい加減な対応は出来ようもない。

時間が来て当事者が応接室に待っているというので「それでは面接してくる」と言い残し私は小さな応接室のドアを開けた。くどいようだが信頼しているS先生がご紹介してくれた学生だからよほどのことがない限り採用しようと心に決めていた。
とはいえ人間同士、相性というものがある。何が得意で何が不得手といったことはある意味どうでも良いが一緒に仕事をしていくからにはその人柄を見極めなければならない。勿論それは面接に来る人の側にもあるだろう…。あの野郎が社長ならあの会社には行きたくないということもあるはずだ。
ただし極論に思えるかも知れないが面接は文字通りの第一印象がとても大事だということを経験体験しているから、ドアを開け挨拶をする前の一瞬で勝負が決まるような気もする…。

私が部屋に入ると女性はソファから立ち上がり「○○と申します。よろしくお願いします」といったと思うが。その瞬間私は心の中で「採用」の判を押していた(爆)。
しかし正直驚いたというより面接に来た学生の真剣さをもひしひしと感じた。
男の端くれである私から見ても髪型といい、化粧といい、服装といい良い意味で手をかけた結果だろう、清楚な印象だったが輝いて見えた。いや本当である。
しばらく型どおりの質問をした後に、是非来年卒業の際には我々と一緒に働いて欲しいことをお願いしたが、ひとつだけ希望があった。
それは翌年2月、すなわち卒業前ではあるものの業界最大のイベントであるMacworldExpo/Tokyoが開催される。それにはアルバイトとして参加して欲しいとお願いして面接は終わった。

彼女は間違いなく我々に新風を巻き起こしてくれたと思う。地味な日常の仕事だけでなく札幌支店主催のイベントも彼女が取り仕切ることになった。
短い研修期間は設けたが、正式入社の直ぐ後であったものの、北海道の旧千歳空港跡で3月31日から4月2日までの3日間、「北海道マルチメディアカーニバル'95」が開催され、地元企業として我々も参加することになった。

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※「北海道マルチメディアカーニバル'95」の会場、札幌ファクトリーと会場展示の様子


その一環でアップルコンピュータ社の協力による「マルチメディアキャンプ」という催事中のセッション、「学生バトル・マルチメディアチャ レンジ」に彼女が登壇し卒業したばかりの大学を代表しMacで作成した作品を発表する大役をこなすことになった。

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※Wさん発表の様子


発表は10分程度のものだったが、本人はもとよりだろうが見ている私らも正直いってドキドキで、仲間と「自分でプレゼンした方が緊張しないね」と笑い合ったりもした。
彼女と一緒に仕事をしたのはその後9年間ほどだが、会社はもとより私自身にも少なからず刺激を与え続けてくれた。
幾多の面接をしてきた私だが、この時の面接が一番記憶に残っている…。
その2年後に同じ大学から新卒女子をもうひとり採用することになった。それから様々なことがあったが大げさでなくこの二人の女性が末期の会社を私を支えてくれたのである。




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主宰は松田純一。1989年Macのソフトウェア開発専門のコーシングラフィックシステムズ社設立、代表取締役就任 (2003年解散)。1999年Apple WWDC(世界開発者会議)で日本のデベロッパー初のApple Design Award/Best Apple Technology Adoption (最優秀技術賞) 受賞。

2000年2月第10回MACWORLD EXPO/TOKYOにおいて長年業界に対する貢献度を高く評価され、主催者からMac Fan MVP’99特別賞を授与される。著書多数。音楽、美術、写真、読書を好み、Macと愛犬三昧の毎日。マネキン造形研究中。2017年6月3日、時代小説「首巻き春貞 - 小石川養生所始末」を上梓(電子出版)。続けて2017年7月1日「小説・未来を垣間見た男 スティーブ・ジョブズ」を電子書籍で公開。日本シャーロック・ホームズクラブ会員。日本リュート協会会員。ゆうMUG会員