3Dプリンター「FLASHFORGE Inventor」プリント中断と再開プリントについての覚書

3Dプリンター「FLASHFORGE Inventor」を嬉々として使っているが、実戦に使おうとすればそれだけ疑問も出てくる。一応日本語のマニュアルもあるしネットには幾多の使用事例が紹介されてはいるもののその大半は概要であり詳細な点に突っ込んだ情報は多くない。


ここのところ「FLASHFORGE Inventor」の本格利用を前提に自分なりに情報を集め、自身で体験してその妙を追いかけているが自分にとって大切な疑問が多々涌いてきた。
「FLASHFORGE Inventor」に限らず3Dプリンターを本格的に活用したい中にはサイズの大きなプリントが必要となってくる場合がある。

「FLASHFORGE Inventor」は最大で横230mm × 奥行150mm × 高さ160mm までの造形が可能である。そうしたサイズに近いモデルのプリント最大の問題は当然ではあるが "時間がかかる" ことだ。
STLファイルをスライサー「FlashPrint」に渡してGコードを出力すると概略のプリント時間やフィラメントの使用量などが表示される。私の場合でもすでに23時間ほどもかかるGコードデータが存在しているがおいそれとプリンターを動かすわけにはいかない。

何故ならそれは稼働音の問題があるからだ。計測してみるとプリンター本体から1メートルほど離れた場所で63dBから69dBほどのいわゆる騒音が計測される。
当の本人にとっては自身でオペレーションしていることでもあり正直苦にもならないが問題は夜間である。
一戸建ての家なら家族から文句が出なければよいのだろうが、マンションなどの集合住宅では夜間この種の音は意外と伝わりやすいと考えている。したがって現時点で22時を越えるプリンター利用は自主的に控えているのが現状なのだ。

しかし申し上げるまでもなく23時間ものプリント時間がかかるとすれば朝早くから初めても就寝時間までには終わらないわけでこれでは事実上12時間とか14時間程度のモデルまでしか利用できないことになる。
こうした場合に役に立つのが一端プリントを休止させ、朝になったらまた続いてプリントを再開する機能である。製品にはそうした機能を謳ったものもある。
では「FLASHFORGE Inventor」はどうなのだろうか…。

メーカーのウェブページやマニュアルによれば「停電回復機能」を謳っている。例えばウェブページには「プリント中に何らかの操作ミスで電源が切れた場合でも再起動することによって続けてプリント実行できます。」とある。
ではこの「停電回復機能」を意図的に起こし、プリント途中で就寝時間になったときに電源をOFFにした場合、後にその続きから問題なくプリントできるのだろうかと疑問を持った。

無論それまでの経験則から言えば一端電源を切ったら再開はできず、電源を再投入すれば最初からやり直しとなる。では停電などの場合と意図的な電源OFFとどう違うのか、私にとって重要なことなのでメーカーに問い合わせしてみた。
私の質問は2点である。

① 意図的にプリント途中で電源をOFFして再度プリントを続ける方法はあるか
② プリントポーズ状態を翌朝まで続けて問題はないか

数度メールの行き来をしたが、結論として② はノズルに若干悪影響が出る恐れがあるので長時間の場合は電源を切った方がよいということだった。
しかし無論闇雲に電源を切ってもプリント再開はできない。ではやり方があるのか…。ありました!

How to resume a print_00

※まずは「設定」から「再開を印刷」をONにする。表示がOFFならONになっている


「FLASHFORGE Inventor」のユーザー諸氏はユーザーガイドの59ページをご参照いただきたい。なお余談だが本マニュアルには最新のファームウェアには適さない記述や明らかな間違いが多々存在する。
PDFデータなどすぐに書き直しができるのだから是非早々に訂正していただきたいと思う。それだけでサポート担当者への問い合わせ頻度が低くなるに違いない。

さて、59ページにジョブ実行にあたり「コピー」という機能についての記述がある。解説によればコピーとは「USBメモリから本体内蔵メモリへプリントファイルをコピーする」とある。
それ自体の意味は分かるが、何の為にそうする必要があるのかについての説明がない。

要は「FLASHFORGE Inventor」の場合、Gコードをプリンターに渡してジョブ(プリント)を行うのに3種の方法があるとされている。
ひとつはSDカード経由の場合、2つ目はUSBケーブルでパソコンと接続して転送の場合、3つ目はWi-Fiでデータを送る場合である。
しかし厳密に言うともうひとつのやり方があるわけで、それが一端プリンター本体のメモリに常駐させる場合である。
確認すると表示が正しければ「FLASHFORGE Inventor」は約15GBほどの内部メモリを持っているようだ。

すでにお気づきかと思うが、プリント途中で電源を意図的に落とした場合も、あるいは停電などで落ちた場合も前記した3種のファイル転送ではプリント再開はできない。
重要なことだが、電源回復機能はON, OFF可能だ。ユーザーガイド71ページあるとおり、事前にこの機能をONにしておかなければならない。
詳しい説明がないだけに、この「再開を印刷」をONとすればそれだけで機能が働くと考えるのが普通だろう。しかし残念ながらそうではない。

How to resume a print_02

How to resume a print_03

How to resume a print_04

How to resume a print_05

※ジョブを選び真ん中のSDカードアイコンを押し、プリントしたいデータを指定。すると「コピー」ボタンが表示される   

電源が落ちた(落とした)場合、後に再投入してプリントを継続できるのは一端本体メモリにGコードフィルをコピーし、それでプリントさせた場合に限るということになる。しかしくどいようだがマニュアルやウェブページにこの種の記述はなく、停電になったらいつでもプリント再開可能と思って使っているユーザーがいたとするなら(そう考えて当然だが)最悪の事態を招く可能性もあるわけでFLASHFORGE Japanは一連の解説を丁寧に記述すべきであろう。

実際に「コピー」ボタンを押すとファイル容量にもよるが十数秒から数十秒コピーする時間がバーで示される。その後続けてプリント実行すれば馴染みのプリント画面が表示しスタートする。
問題はこの状態で電源を切った場合だ…。果たして上手く再開できるのだろうか。

How to resume a print_06

※SDカード(USBやWi-Fi接続でも)からデータがプリンター本体のメモリにコピーされる。そしてジョブ(プリント)実行


ともかくプリンターの電源スイッチをプリント途中でOFFにしてみよう。
勿論そのときには単に電源がOFFになるだけだ。問題はしばらくして、あるいは翌朝といった数時間後に電源を投入した場合に何が起きるのだろうか。

How to resume a print_09

※プリント実行中にプリンタ本体の電源ボタンをOFFにした状態。プリントが中断される


プリンターの電源をONにすると再開の印刷を促す表示が液晶パネルに現れる。

How to resume a print_10

How to resume a print_11

※プリント再開の確認が表示し「はい」を押すとノズルから垂れているフィラメントを取り去るように指示が出る


無論ここで「はい」を押すと「ノズルから垂れているフィラメントがあれば除去するように」との指示が出て再び「はい」を押せば電源が落ちた直後に続き、正確にプリントを再開してくれる。

How to resume a print_12

※ヘッドやプラットフォームの温度が指定温度になるとプリントが正確に再開される


ただし「はい」を押したらすぐにエクストルーダーが動き出すわけではない。ヘッドやプラットフォームが指定した温度に上昇する時間が必要だからだ。

How to resume a print_14

※完了したモデルは再開時の継ぎ目が分からない


一番心配な点としてプリント途中電源をOFFにすることで本体に問題を起こさないかということだが、サポート担当者からは「そういう設計になっているので問題はない」という解答をいただいた。
FLASHFORGE Japanはもっともっとこの素晴らしい機能をアピールすべきでないか。

「FLASHFORGE Inventor」は実用的で使いやすい3Dプリンターであることは間違いないのだから、こうした現実に即した機能を前に押し出すべきだ。
個人的にはこの件の確認と共に誠実にサポートをしてくれたFLASHFORGE Japan担当者に感謝すると共に「FLASHFORGE Inventor」にして良かったと心底思っている。
ともあれこれで安心して長い時間のプリントも可能になった!

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Author:mactechlab
主宰は松田純一。1989年Macのソフトウェア開発専門のコーシングラフィックシステムズ社設立、代表取締役就任 (2003年解散)。1999年Apple WWDC(世界開発者会議)で日本のデベロッパー初のApple Design Award/Best Apple Technology Adoption (最優秀技術賞) 受賞。

2000年2月第10回MACWORLD EXPO/TOKYOにおいて長年業界に対する貢献度を高く評価され、主催者からMac Fan MVP’99特別賞を授与される。著書多数。音楽、美術、写真、読書を好み、Macと愛犬三昧の毎日。2017年6月3日、時代小説「首巻き春貞 - 小石川養生所始末」を上梓(電子出版)。続けて2017年7月1日「小説・未来を垣間見た男 スティーブ・ジョブズ」を電子書籍で公開。また直近では「木挽町お鶴捕物控え」を発表している。
2018年春から3Dプリンターを複数台活用中であり2021年からはレーザー加工機にも目を向けている。ゆうMUG会員