Macintosh開発者たちにとって大切だった?髭物語

先日、スティーブ・ジョブズの若い頃の映像を整理していたとき1980年の映像をみつけ、見入ってしまった。1980年といえば彼が25歳のときだったが、その口ひげを蓄えて眼鏡をかけた姿は近所の工場から駆けつけた兄ちゃんといった感じもする。まだどこかヒッピーの性根が抜けきらない印象も受けるが、すでに彼は注目を浴びていた。                                                                                                  
このプレゼンテーションが1980年のいつ行われたのかは不明だが、1980年といえばApple III を発表した年だし同年12月にAppleは株式を公開しスティーブ・ジョブズは2億5.600万ドルの資産を得ることになった。そうした計画が着々と進行していたのだろう、どこか余裕も感じられる。



※1980年のスティーブ・ジョブズ。彼は当時25歳だった


ところでジョブズの髭に注目してみたい。いや、髭そのものを考察するつもりはないが時代や文化の違いにより様々な評価や変遷があったようだが、一般的に「なぜ男が髭を生やすのか?」といえば私の知る限り「男らしさのアピール」そして若いときの髭は「若造に見られたくない」といった意志があるようだ。
私の回りにも昔、そんな男性が数人いたが本人たちから聞いたので間違いはない(笑)。まあ心理的に背伸びをしていたのだろう。

話をAppleやLisaあるいはMacintoshの開発者たちに限っても実に髭を生やしていた人たちは多い。
スティーブ・ジョブズは勿論だが、思いつく人物をリストアップしてもスティーブ・ウォズニアック、ダニエル・コトケ、ビル・アトキンソン、スティーブ・キャップス、マイク・マレー、キット・プランク、ジェフ・ラスキン、ジェリー・マーノック、ポール・バーカー、リック・ペイジ、ジョン・カウチなどなどが思い浮かぶ。そう、アラン・ケイも髭はトレードマークだ。

StiveJobs19771.jpg

※1977年4月に開催された「第1回WCCF」の時期に撮られたスティーブ・ジョブズのスーツ姿。当時はこんな髭を生やしていた (以前入手した紙焼写真より)


またAppleを離れてもパソコンの発展に関与した人たちの中には時代背景もあるのだろうが髭を蓄えた人物は多い。
例えばバイト誌の最初の編集者のカール・ヘルマーズ、ニュージャージーで最初期のコンピュータ・ショウPC-76を計画したジョン・ディルクス、ドクター・ドブズ誌の編集者でWCCFの主催者だったジム・ウォーレン、製造番号4番のAltair 8800を組立てラジオでメロディーを奏でさせたスティーブ・ドンビア、別名キャプテン・クランチと呼ばれたジョン・ドレーパ、ビル・ゲイツと共にマイクロソフト社を起業したポール・アレン、ビジカルクを開発したダン・ブルックリンなどを挙げれば十分だろう。

それぞれの人物が当時何歳だったかを調べるのは難しくはないが、スティーブ・ジョブズを含めて確実なことは1980年当時一部の人たちを除けば皆若かったということだ。20歳代がほとんどだったのではないか。
そんな彼らが髭をはやすようになったのはカウンターカルチャー精神やヒッピーの魂をまだ失わずにいたこともあるだろうし、寝る間も惜しんで働いていたこともあり髭を剃るのも面倒だったのかも知れない。しかしそうした若者たちが精神を高揚し、ぶつかり合いながらも過ごした当時のAppleではやはりどれほど自分の存在をアピールできるか、主張ができるかが肝だったに違いない。したがって意識的、無意識的にも自己アピールを髭というものに託していたと考えても無理はないと思う。

事実Macintosh開発者のひとりだったアンディ・ハーツフェルド著「レボリューション・イン・ザ・バレー」には面白いエピソードが紹介されている。
Macの開発チームのひとり、ビュレル・スミスについての考察」というアーティクルで紹介したビュレル・スミスは1979年2月にAppleの中でも最も給料の安い職種である下級サービス技師として雇われた。ただしビュレル・スミスはMacintoshのハードウェア設計者としてすぐ頭角を現し天才的な手腕を発揮していたという。またApple II 関連の開発では一部スティーブ・ウォズニアックの代役まで務めるほど技術力は確かだったものの、本人の要求があったにもかかわらず正式なエンジニアには昇格できず不満をつのらせていた。

彼はどうしたら認めてもらえるのかを真剣に考えたという。しかし問題は才能とか技術的なスキルではないことは明らかだった。彼は他の技術者より抜きんでて熟練していたし勤勉さでも劣っていなかった。
そしてついに、他のエンジニアたちにあって自分に欠けているものに気がついた…。それは彼らの多くは皆立派な髭を蓄えていたがビュレル・スミスにはなかったという事実である。
スミスはすぐに口ひげを生やし始めたが完全に生えそろうまでに1ヶ月ほどかかった。そして自分でも完璧と思われる髭になったと考えたその日の午後、彼は技術担当副社長(立派な髭を生やしていた)に呼ばれてエンジニアとして技術スタッフのメンバーに昇格した。一人前に髭が生えそろった男として認められたのである(笑)。

SteveJobs0605_02.jpg

※スティーブ・ジョブズのひげ面は語り継がれるアイコンとなった


すでに30年以上も昔の話だが、その後スティーブ・ジョブズ自身も立派な髭を生やすこともあったものの近年はご承知のようにあの無精髭スタイルで通した。ときが経ち、面白いものでスティーブ・ジョブズの無精髭スタイルはひとつのシンボル…アイコンとなった。
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主宰は松田純一。1989年Macのソフトウェア開発専門のコーシングラフィックシステムズ社設立、代表取締役就任 (2003年解散)。1999年Apple WWDC(世界開発者会議)で日本のデベロッパー初のApple Design Award/Best Apple Technology Adoption (最優秀技術賞) 受賞。

2000年2月第10回MACWORLD EXPO/TOKYOにおいて長年業界に対する貢献度を高く評価され、主催者からMac Fan MVP’99特別賞を授与される。著書多数。音楽、美術、写真、読書を好み、Macと愛犬三昧の毎日。マネキン造形研究中。日本シャーロック・ホームズクラブ会員。日本リュート協会会員。ゆうMUG会員