ラテ飼育格闘日記_829

ヒヤリ・ハットという言葉をご存じだろうか。これは、重大な災害や事故には至らなかったものの、直結してもおかしくない一歩手前の事例のことをいうそうで、文字通り「突発的な事象やミスにヒヤリとしたり、ハッとしたりする」という意味だそうである。


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ラテと日々一緒に生活した15年3ヶ月という長い年月の中でオトーサンが凍り付き心臓が一瞬止まるほどの事例がいくつかあった。今回は「ラテのヒヤリ・ハット8撰」と題して文字通り8つの…いまでも思い出すと心穏やかはいられない出来事をご紹介してみたい。

① 首輪が切れた
ラテを我が家に向かえた直後の出来事だったのでオトーサンのトラウマとなった感があるできごとになった。
2006年12月のある日、女房の出勤とともに駅まで見送りに出かけたときのことだ。さてこのまま散歩を…と考えていたとき駅改札前でラテの首輪が切れたのだ。
オトーサンはホールドしようとしたがラテはそれをかいくぐり通勤客の中にまぎれるように走りはじめた。なにしろ我が家に来てから2週間も経っていない時期だったからこのままでは家に戻れないだろうし、なによりもオトーサンらに愛着も薄いだろうから確保できなければ行方不明となり車にでも撥ねられるに違いないと体が凍り付いた。
オトーサンが駆けだして追いかければ余計に逃げるだろうからと咄嗟に切れたリードを右手で高く上げ「ラテ、ラテ」と大声を出し続けて口笛を吹いた…。
ラテがどう思ったかは不明だが、不思議なことにラテは大人しくオトーサンの元に戻ってくれたので大事にならなかった。

② TULLY'Sで若い女性と抱き合ってた
2007年4月のこと。カフェのテラススペースの一郭にラテを繋ぎ、オトーサンは店中に入り、飲み物などを持って外に出ようとすると女子大生か就活の女性か、若い女性ととラテが抱き合っているのが見えた。
初めての大人に対しては必ずといってよく吠えるラテだったから女性に怪我をさせてしまっては大変と一瞬息を飲んで慌てて駆けつけたオトーサンだったが、ラテはひと言も吼えることなく大人しく女性とハグしているではないか。

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※以前の住居のときは度々ラテを連れてTULLY'Sに出入りしていた


「大丈夫ですか、噛んだり引っ掻いたりしませんでしか?」と思わず声をかけると女性は「犬、大好きなんです」と彼女はハグを続けている。
無論その女性とはまったくの初対面であり、挨拶を交わしたこともない。その後何ごともなく女性は笑顔で我々を後にして出て行かれたが、ビギナー飼い主だったことでもあり文字通り肝を冷やした出来事だった。

③ ノーリードのコーギー犬に前足を噛まれた
2008年1月のこと、毎日通ってる広い公園でいきなりノーリードのコーギー犬にラテが左前足を噛まれた。かなりの出血でもあり側にいた別の飼い主さんらが病院へ連れて行くべきだと進言してくれたのでラテを抱き上げ動物病院へと向かったが徒歩20分ほどかかる道のりを抱いたままでは無理だった。
オトーサンにとっても初めてのアクシデントであり涙ながら仕方なくラテを降ろしたが、ラテは一言も発せず足を庇いながら、地面に血の跡を残しつつ病院まで歩いてくれた。
レントゲンの結果、幸い骨には異常なく安堵したが、当のコーギー犬の飼い主はノーリードにしていたことも問題だが、後に知ったがラテを噛んだことを知らなかったというのだから呆れた…。飼い主失格である。

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※噛まれた傷を消毒するのもなかなか大変でした


④ ゴムボールを噛みきって飲んでしまった
これまた気がついたとき、事の重大性に気づいたときには身が凍る思いだった。それは2008年12月のこと、朝起きたら床に伏せているラテの足元にゴムボールの堅い笛部分が転がっていた…。
あわてて周りを確認したが、ボール本体の姿はなく、音が鳴る笛の部分と小さなプラスチック製の部品みたいなものが残っているだけだった。
考えたくないことだが、遊んだ後にオトーサンがボールを片付けなかったのが原因としても状況は明らかにラテがボールを食べてしまったことを示していた!
もし目の前でボールを食べたのなら、すぐに病院に駆け込んで吐かすこともできるだろうが、どう考えてもラテが食べてから時間はすでに7時間を過ぎている。だとすればすでに胃の中にはなく腸に回っているかも知れないし、素人考えながらそれを無理矢理取り出すためには外科手術するしかないと思われる...。

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※ラテが飲み込んだものと同じボール(右)。左が残っていた笛部位で後は飲み込んでしまった…

医者に運び込もうと考えたが当のラテはいつも通りに元気な様子なのでオトーサンは腹を据え様子を見ようと決めた。排泄で出てくるかもしれないことを期待したし万一具合が悪ければすぐ病院へ担ぎ込もうと観察を怠らないようにしていたが翌日も翌々日も排泄の様子はなくオトーサンは気が気ではなかったが幸いなことに嗚呼…4日後の午後にいくつかにちぎられたすべてのパーツが出て来た。
オトーサンは雑林の中で思わず声を上げ、記念にその💩の写真を撮った(笑)。

⑤ TULLY'Sで老人が突いていた杖の音に驚いたラテが吠え、老人が腰砕けに
2012年の夏…確か土曜日の朝だったか、女房とTULLY'Sに行った。テラスの入り口付近の席に陣取ったオトーサンらだったが女房はオーダーのために席を離れたものの我々の他に客は一人もいなかった。そしてラテは大人しく伏せていた…。
暫くして「コツン、コツン!」と大きな音がした瞬間にラテが伏せたまま「ワン!」と大きく吠え、すぐに「ドン!」と鈍い音がした。
オトーサンが視線を上げると年の頃なら80歳前後だろうか、老齢の男性がカフェのエントランス入り口で膝を折り四つん這いになっていて、そばに杖が転がっていた。どうやら男性はラテの吠え声で驚き膝をついてしまったようだ。
ラテとしては木製の床に伏せていただけに…男性の突く杖の音と共に振動が身体に響いたのだろう、驚き「ワン!」と吠えてしまったわけだが、決して飛びつこうとしたわけではなく腹ばいのままだった。しかし男性が吠え声に驚いたのは間違いない。
オトーサンはラテを回りの鉄柱に縛ってから男性に駆け寄り「大丈夫ですか?」と起こそうとしたが男性はゆっくりとオトーサンの手を振り払い身体を起こしながらも「犬はあんたの犬か?」と不機嫌そうに聞く。オトーサンは「そうですが…」と応える。
それでもオトーサンは男性を近くの椅子に座らせながら、もしかしたらこれは厄介なことになるかも知れないと覚悟をしながら「この店は犬を連れてきても良い場所なのでよく立ち寄るんですよ」と柔らかくいった。男性は「しかし吠えたから驚いて転んだのは事実だ。ズボンも汚れてしまった」と怒りが納まらない様子。どうしようかと思いあぐねた瞬間、驚いたことに瞬間…男性の態度ががらりと変わった…。
「そう、うむ…そう…私は犬が嫌いでは無く好きだったんだ…」と自分にいい聞かせるようにつぶやきながらオトーサンに手を差し出したのだ。無論握手のためである…。
あまりの変貌にというか予期しない展開にオトーサンは逆に警戒したぐらいだが、続けて男性は「私も不注意だった。驚いてきつい言葉を吐いたがいまのは忘れてください」とにこやかにいう。
オトーサンも反射的に「驚かして申し訳ありませんでした。今後はより気を付けます」といいながら差し出されたその手を握り返して和解は済んだ。
その後男性とは同じ場所で出会うこともあるが、軽い会釈をするようになったし、確かにワンコ好きなようでワンコが集う公園のベンチに座っている姿を見かけることもあった。

⑥ 近所の三匹ワンコがノーリードで突進してきた
2015年の10月のことだった。ラテを連れ近所で3匹のワンコを飼っている家の前を通ったとき、たまたまなのかも知れないが庭でノーリードで遊んでいたその3匹ワンコが歩道に飛び出しラテに吠えかかった。
その飼い主さんとはこれまでお話しをしたこともないのでワンコたちがどのような性格なのかは知らなかっただけに大惨事になるかと体が冷たくなる思いをした。なにしろ相手は三匹だ。その気ならラテに勝ち目はないし具体的な触れ合いもなかったワンコたち故にオトーサンが割って入ってもオトーサンが噛みつかれるかも知れない…。
ただし幸いなことに三匹ワンコには攻撃の意志はなかったようで興味本位で飛び出したらしく、すぐに飼い主さんが出てきたこともあって噛み合いをするといったトラブルには至らなかったが、そのとき三匹に囲まれたラテは側にいた女房に抱きついた(笑)。
それから散歩途中でそのワンコたちに出会うとき、ラテは猛烈に吠えるようになった。

⑦ 大型のゴールデンが飼い主の手を振り払ってラテに唸り飛びかかってきた
この出来事も無事だったからこうして気楽にお話しができるがその瞬間オトーサンは大事になることを覚悟した…。
2018年3月の午後、散歩途中の公園脇をラテと歩いていたとき、公園の周りを取り囲む高さ1メートルほどの石垣の上から大型犬…ゴールデン・レトリバーが飛び降り歯をむきだしたままラテに突進してきたのだ。要は飼い主(女性)がリードを持ち公園の端を歩いていたときゴールデンがラテに気づき石垣を飛び降りたため飼い主の力では制御出来ず手を離してしまったらしい。
オトーサンは肩に斜めがけしてあるバッグと手に持った傘はもとより、オトーサン自身を盾にしてラテを守ろうとしたが、本稿③の事件の教訓で得た、必要以上にラテのリードを制御せず反撃し動き回れる余裕を持たせた。

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※飛びかかってきたゴールデン。身に着けていたアクションカメラが撮影


まさか一般的に人間好きのゴールデンだからオトーサンを噛んでまでのことをするとは思わなかったからオトーサン自身の身を案じるつもりはなかった。ただただラテに傷を負わせないようにと奮闘し続けたがその時間は10秒とか15秒程度だったに違いないが、オトーサンには至極長く感じた。
幸い飼い主がゴールデンのリードに手を掛け静止させたので結果双方に何ごともなく済んだが恐ろしい一瞬だった。
いくら訓練済みのワンコだとしても子供や力のない女性が大型犬を連れて散歩するのは危険だと思う。

⑧ 大好きなNちゃんに飛びかかり顔に傷を付けてしまった
ヒヤリ・ハットにも色々な事例があるが、この件は飼い主ではなく馴染みの小学女子の顔に傷を付けて仕舞ったというオトーサンにとって絶望感一杯の出来事だった。
Nちゃんはこの地に来て最初に仲良くなったお子さんで当時幼稚園の年長だった。ラテはNちゃんをとても好きなようで近所の公園に毎日のようにでかけて遊んでいた。このNちゃんとの出会いが現在Nちゃんのご家族と、特にそのオカーサンと親しくさせていただく機会となった…。
Nちゃんに尻尾を引っ張られようと馬乗りされようとラテはご機嫌だ。そしてNちゃんは何度か我が家に遊びに来てくれた。
そんな2018年8月のある日、その日もNちゃんが遊びに来てくれ楽しい一時を過ごしたが、和室に常設していたラテの寝床に腹這いになっていたラテの真似をしてその隣にNちゃんも這いつくばった。共に笑顔だからと写真を撮った刹那「ガウウウッ」とラテが野奈ちゃんに飛びかかった。その様はまさしく襲いかかったように見えた。
オトーサンは咄嗟にラテを両手で払いのけたが見ればNちゃんの頬など三箇所に小さな傷があり血が滲んでいるではないか。オトーサンは血の気が引いていくように感じた。
女子の顔に小さいとは言え傷を付けてしまったことは取り返しがつかないしお詫びのしようもない…。ただしラテも「ガブッ」と噛んだ様子は無く歯を当てに行った感じだった。なぜ数多くの子供たちの中でも一番好きなNちゃんを攻撃したか…。後から思うにラテと並んで…というシーンはこれまでにも多々あったしそれでも今回のようなことはまったくなかった。

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※この直後、ラテはいきなり唸りNちゃんに飛びかかった


ただ今回が特別なのは「ラテのホームポジション」であった一点だ。
オトーサンの油断と言ってしまえばそれまでだが、ラテは己の守るべき聖地を犯されたように思ったのかも知れないし、嫉妬深いこともあってその場を奪われるかも知れないと考えたのかも知れない。
ともかく傷を消毒し公園にいらしたNちゃんのオカーサンに状況をご説明し謝罪したが「いつもどこかに傷つくっているので大丈夫ですよ」と言ってくださった。
そしてNちゃん自身、もう怖くてラテとは遊ばない…と言うのではないかと心配したが、有り難いことに尻尾が下がっているラテを「大丈夫だよ」と撫でながら慰めてくれたのには驚いたし有り難かった。勿論幸いなことにその後もNちゃんとは良好な関係を続けている。

【最後に】
ともあれ、それぞれが本当に大事に繋がらなくてよかった。やはりオトーサンはラテを信頼してはいたがそこはワンコであり、我々人との考え方や喜怒哀楽に違いがあるわけで飼い主はどのような時にも油断してはならないことを多々学んだ。

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ただし15年3ヶ月の間、こうして難がなかったわけではないが繰り返すが大事に至らずに済んだし、アレルギーの発症時期の苦悩や末期に首の腺腫が破裂したことなどはラテにとってもオトーサンたちにとっても大変な出来事だった。にも関わらず医者曰く老衰で亡くなる最後の瞬間まで痴呆は見受けられず視覚や聴覚もまずまず正常だったし手術を必要とするような大病を患わなかったことは喜ぶべきことなのだろう。
また特筆すべきは老犬になっても…いや、なってからこそ愛すべき存在であったラテというワンコの一生を託されたオトーサンたちは実に幸せな飼い主であった。


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Author:mactechlab
主宰は松田純一。1989年Macのソフトウェア開発専門のコーシングラフィックシステムズ社設立、代表取締役就任 (2003年解散)。1999年Apple WWDC(世界開発者会議)で日本のデベロッパー初のApple Design Award/Best Apple Technology Adoption (最優秀技術賞) 受賞。

2000年2月第10回MACWORLD EXPO/TOKYOにおいて長年業界に対する貢献度を高く評価され、主催者からMac Fan MVP’99特別賞を授与される。著書多数。音楽、美術、写真、読書を好み、Macと愛犬三昧の毎日。2017年6月3日、時代小説「首巻き春貞 - 小石川養生所始末」を上梓(電子出版)。続けて2017年7月1日「小説・未来を垣間見た男 スティーブ・ジョブズ」を電子書籍で公開。また直近では「木挽町お鶴捕物控え」を発表している。
2018年春から3Dプリンターを複数台活用中であり2021年からはレーザー加工機にも目を向けている。ゆうMUG会員