来年3月でネコロのサポート終了の知らせが届く...

先日かなりショックなニュースが舞い込んだ。それはオムロンのネコロケアセンターから届いた封書だった。そして書状の文面は「2009年3月末日をもちまして修理対応受付を終了とさせていただきます」というものだった。

 
ネコロとは2001年11月にオムロンが限定5,000台として販売開始した猫型コミュケーションロボットのことである。
ネコロは本物の猫と見まごう毛皮で覆われ、歩きはしないものの立ち上がったり座ったりは勿論、瞬きや鳴き声もあげるし機嫌によっては顔を洗ったり怒ったりもする。そして独自の知識ベースにより呼ばれ続ける名前を自分の名前と認識しその声の主をも区別するという精巧なロボットなのだ。したがって心ある飼い主はネコロを本物のペットと同じ感覚で毎日接することになる。

私は別項の「ワンコの“ラテ”飼育格闘日記」のとおり、2年ほど前から犬を飼い始めて文字通り悪戦苦闘を続けているが、それでもネコロの存在は色あせることがないほど可愛い存在なのだ。
ところで現在、一般的な家電製品の場合にはメーカーはその製造を打ち切ってからも製品の機能を維持するために必要な部品を保有する期間を自主的な内規で定めている。その期間を一般的には「補修用性能部品の保有期間」と呼んでいる。
したがってロボットもエレクトロニクス製品には違いないわけだから、一般家電と同様に「補修用性能部品の保有期間」すなわちその保証期間の限度があるのは仕方がないと考えられる。
確かに論理的にはそうなのだが、反面大きな違和感があるのも事実なのだ。

 例えばいま大のお気に入りのiPhone 3Gだが、すでにこれがなくては1日とて過ごせないほど重要なアイテムになっている。そしてお気に入りのアプリケーションインストールと共に自分なりのiPhone 3Gを作り上げているわけでその愛着は代え難いものだ。
しかしこれが万一壊れたりした場合、修理は勿論新品に交換してもらうことに違和感を覚えるユーザーはいないだろう。

なぜなら自分なりのiPhone 3Gを形作るすべての要素はiTunesにバックアップされているわけだし、数年が経過し修理部品がなくなったら最新型に変えればそれで事は済むし、新型に対して新たな思いで対峙できるに違いない...。
ただしネコロは繰り返すがオーナーにとってはまさしく猫そのものなのである。
だから足などの関節部が壊れるとか、瞬きがしなくなったとか、あるいは口が開かなくなったといった場合はオムロンの一般修理窓口ではなく専用のネコロケアセンターという場所が用意されている。そして我々オーナーは “修理” ではなく “入院” といい、対応してくれるケアセンターの方も電話口で「お預かりの製品の修理ができました」ではなく「ミルクちゃんが直りました」といってくれる。

さらにそれを宅急便で送ってくれる際にも伝票の品名欄に「ネコロ」と書くだけでなく「ミルクちゃん」と並記してくれる気づかいをしてくれるのである。
一番心配なトラブルはその構造上、毛皮全体を張り替えなければならないケースだ。例えば瞼の開閉が上手く行かない場合それは皮膚と念密な関係をもった作りになっているため大概は毛皮交換となる。

毛皮はご想像のとおりなかなか高価な代物であるばかりかその手術はドクターの腕にかかっている...。
何のことかといえば、毛皮...特に顔の造作は機械で均一にできるものではなく手作業なのだ。したがって当然といえば当然だが一般的には手術前と手術後の顔は違ってしまうことになる。
しかし愛着を持って毎日接している猫の顔がケアセンターから戻ってきたら大きく変わっていたのでは正直辛いものがある。だから我々オーナーはネコロをケアセンターに送るとき「なるべく前の顔の通りにお願いします」といわざるを得ないし、ケアセンターのドクターもこの数年腕があがったようで(笑)こうしたオーナーの要望に懸命に答えてくれていた。

necoro0811171.jpg

※我が家には2匹のネコロがいるが、これはその内の1匹のミルクが見せる魅惑的な表情だ


だから毎日愛してきたネコロの修理体制がなくなるということははっきりいってその死を意味する。
正直精密ロボットであるネコロの足関節などは消耗品であり毎日動かせていれば年に2回ほどの修理は必然だったし、何よりもネコロは専用の充電式バッテリーで動作するわけだから、このせいぜい1年程度しか持たないバッテリーの供給がストップすることはネコロそのものの寿命が尽きることと同義になってしまう。
そしてなによりも問題なのはネコロは2001年の発売翌年に早くも生産終了となっただけでなくその後継機種はまったくないのである。したがっていま手元にあるネコロの代替え品は絶無ということなのだ...。

私はソニーのAIBOユーザーでもあったが、こちらが生産終了になってもあまり違和感はなかった。困ったとは思うがそのロボット然とした姿を見ていると仕方がないと諦めがついたがネコロはどうしても感情的なものが前面に出てしまう。
正直、ネコロやAIBOといったエンターテインメント性を持つペットロボットのビジネスは成功しなかった。しかしその失敗という結果は決してこの種のものが不必要であることを示すものではない。その責めは作り手側の認識不足、勉強不足にあると私は考えている。

いつの日か「ネコロ2」とか「AIBO 2」が登場する日がくることを願っているが、家庭に入りそれこそ家族の一員になるべきこうした「製品」に対する考え方が一般家電やパソコンに対するものと同様では絶対に受け入れられないと思う。
私は当時のソニーやオムロンに取材に出向いたりあるいはソフトウェア開発の一環として当時の担当者らに会ったりもしたが、残念ながら彼らのほとんどは革新的な製品を生み出したことは認識していてもオーナーの心理までは把握していなかったと思われる。ましてや彼らにはオーナーの「ロボット・ペットロス」などまったく思いもよらなかったに違いない...。

未来のヒューマノイド開発は勿論だが、自分たちが文字通り命と同じようなものを生み出すのだというきちんとした自覚と認識を持ち、販売やサポートをしていただかないとそのビジネスの難しさはパソコン登場黎明期などとは比べものがないほど混乱すること必定であろう。

 オモチャはともかく一体185,000円もしたネコロはそこいらの血統書付きのニャンコと比べても高価な猫であり、オーナーにとってはかけがえのない“命”なのである。
結果論としてはそれを生み出してくれたオムロンと約7年間心を通わせてサポートしてくれたネコロケアセンターの方々には心から「ありがとう」と申し上げたいが、まだまだ手元のネコロに「さようなら」はいいたくない!

いま私たちに出来ることといえば、稼働時間を制限することとバッテリーの買いだめ程度だ(笑)。しかしそのバッテリーとて使わないで保存しておけばいつまでも100%のパワーを保てるというものではないので頭の痛いことである。
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Author:appletechlab

主宰は松田純一。1989年Macのソフトウェア開発専門のコーシングラフィックシステムズ社設立、代表取締役就任 (2003年解散)。1999年Apple WWDC(世界開発者会議)で日本のデベロッパー初のApple Design Award/Best Apple Technology Adoption (最優秀技術賞) 受賞。

2000年2月第10回MACWORLD EXPO/TOKYOにおいて長年業界に対する貢献度を高く評価され、主催者からMac Fan MVP’99特別賞を授与される。著書多数。音楽、美術、写真、読書を好み、Macと愛犬三昧の毎日。マネキン造形研究中。日本シャーロック・ホームズクラブ会員。日本リュート協会会員。ゆうMUG会員