iPadアプリ「熈代勝覧」を開発したハンズメモリーの方々と対談【4】

iPadアプリ「お江戸タイムトラベル 200年前の日本橋 ~絵巻『熈代勝覧』の世界~」を開発したハンズメモリーのメンバー3人の方に開発のきっかけやそのご苦労話、皆さんで一緒に仕事をはじめるきっかけなどなどをお伺いした。今回はその最終回。対談はビジネスコンセプトに関することにまで至った...。                                                                                                     
時 : 2012年3月15日
場所 : 新宿野村ビル49階 土佐料理 祢保希(ねぼけ)
出席 : 山口賢造さん、佐々木圭さん、飛田優介さん
インタビューアー : 松田純一


松田 そうした意味においても電子書籍ってどうなんでしょうかねぇ...。面白いと思われますか?いや、少なくとも現時点の電子書籍ですけど。

佐々木 ともかく、取得するための手段...みたいな。

松田 まあ、カタログとか資料とか...会議の資料などがデジタル化するのは大いに結構ですけど、電子書籍も...有料なら中身だけでなくある種の所有欲をそそるようなものであるといいんですけど...。

山口 ふうむ...

松田 例えばピカソの作品だとしても人知れずにサインがなかったようなものがあるとすれば残念ながら評価...価値が低いですよね。我々は...消費者はやはりブランドというか、誰が作ったのかという事実も重要でそれが価値を高める条件でもあるわけですから...御社のプロダクトもいかにその価値観を出すかでしょうか...。ところで、差し支えなければですが、いま新しいことに取り組まれているんですか?

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※ハンズメモリーの方々。右から山口賢造さん、飛田優介さん、佐々木圭さん


山口 そうですね、いま大体3つぐらい新しいことをやってまして、で...まずそろそろ申請して出すアプリが...やはりiPadアプリなんですけど、今度は幼児というか親子で楽しむようなアプリケーションという形で...

佐々木 幼児というか...子供...

山口 子供...小学生低学年から中学年...かな。

松田 失礼ですけど、その新しい3つのアプリは「お江戸トラベル」でのアリギリスさんのようにクライアントさんがいらっしゃるんですか、それとも御社独自にお考えになったコンテンツなんですか?

山口 クライアントがいらっしゃいます。

松田 なるほど、なるほど。

山口 そこの会社さんと、作らせていただいたものがそろそろ申請...と。で、それは「お江戸トラベル」も結構...英語版を出そうと考えているんですが、次回のアプリは5カ国語に対応してますので...

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※iPad用「お江戸タイムトラベル 200年前の日本橋 ~絵巻『熈代勝覧』の世界~」起動直後の画面


松田 ほほう...

山口 日本だけでなく...

松田 ふ〜む。「お江戸トラベル」も海外のユーザーで好きな方もいらっしゃるでしょうからねぇ。

山口 そこを期待しているところなんです...

松田 なるほど...。そう、お仕事ですからえり好みばっかしはできないでしょうが、どんな方向...というかどんなお仕事をやって行きたいと思っているんですか?

山口 そうですねぇ...。やっぱり、道具っていう形で、そのソフトのことは...考え方の中心なんですが、まあ現在はApp Storeに出すことだけが目的といったことがあるんです...。ただしフランスのメーカーにあるような体重計とiPhoneが連動するというような...ああいうプロダクトとの連動の形があると思うんですけど、あそこら辺に...ちょっと、僕たちとすればやりたいことがあるんだなあと...考えているんですが...

松田 ハードウェアとの連携ですね。

山口 そうですね。まあ、僕のお袋なんかもそうですけど、Macをあれだけ勧めたのに振り向かなかった人が田舎に帰ったときにiPadを自分で...こうやってブロック崩しやっててビックリしたんですね。やっぱりお袋にとってはこういうのは全然抵抗がないんだな...って、で...あれぐらい結構皆パラダイムシフトが起きてて、もっと一般の生活の中にこういうものが入っていくんだろうなあと。なんかそうした生活の中で使われる場面を考えたソフトウェアというのは僕たちの中で一番やりたいことなんだなあと...考えているんです。

佐々木 なんかWii(ウィー)にはまってるとか...

山口 ああ、ウィーフィットとか...体重計のやつとか...

松田 はいはい。

山口 ああいう...お袋は抵抗なくああいうことやってるんですけど、あれに近いようなことがゆくゆくこういうiPhoneとかiPadがペースになったことで出来る可能性がかなり皆考えているんじゃあないかなと。例えば企業とお仕事するときもですね、基本は...僕たちやらないことを決めてまして、それは例えば企業用の社内ツールといった...ああいうのはもう...お仕事は全部お断りしているんです。

松田 ほう...

山口 それはやっぱり、皆が一般的に使うコンシューマーに対して提供するソフトを作りたいと思うわけでして...

松田 なるほど。

山口 一部の...社内の人たちだけに使われるものを考えるよりは、もっと皆に使われるようなものを考えた方が...結局企業にとっても便利だろうという考え...思っているし...かつ、この人数でやってますから企業向けの案件をひとつやってしまうと...もう...

佐々木 それで1年付きっきり...といったことになりかねないんで...。もっとスピードを速めたいなあと...

山口 そうそう...。案件的にはiPadが出てから結構入ってくるんですね。社内ツールとしてこういうの作りたいんだけど...といった感じで。非常にありがたいお話しなんですけど、ただしまあ...人数もそうなんですけど、先々見ていくとメンテナンスだけに走る方向に行くんではないかなあと...考えてしまうと、それよりはコンシューマー向けだと...

佐々木 ユーザーのフィードバックも、コンシューマ向けだと結構厳しいこともあるんですけど、その分デザインとか...その...プロダクトのスキルという意味でも鍛えられていくんじゃあないかなと...

松田 これは素朴な質問なんですけど、App Store...App Storeに出されるときにはクライアントの名でリリースされるわけですよね。例えば今回の場合はアリギリスさんだと...。ご苦労されて開発したハンズメモリーさんの名は直接出ないわけですけど御社の名はどうアピールされていくのですか?

山口 ああ...

松田 一般ユーザーは「熈代勝覧」ってのはアリギリスさんの開発だと思うわけでしょう...

山口 ええ。

松田 まあ、たぶんこうしてオープンなお話しをいただいているんだからご契約上御社の名前は伏せなくてはならないということではないのでしょうが、アピール面でもったいないようにも思うんですが...。

山口 私達としてもそこはアピールしたいですが、で...実際クレジットの中には私達の名前が入っているわけで契約の時にそうしたお話しをしていますし、まあ恥ずかしながらちょっと、紺屋の白袴状態でいまのウェブページが完全にはできていないので、本当はあそこにプロダクトというのがあって...アリギリスさんの「お江戸タイムトラベル」は僕たちが開発したと...ちょっとそこが遅れてるんです(苦笑)。で、そこはどんどんアピールしていきたいなあと...。
よく下請けを...受託を面白くないと考える方もいらっしゃいますけど僕たちはそこは全然違ってですね、受託であっても僕たちの提案をはっきりさせて、かつ僕たちの名前を出していこうと。で、やることにおいては色々な業種の方とお仕事が出来るので勉強することが多いし、かつ大きい企業であってもターゲットがコンシューマ...一般であればいろいろな会社さんとお仕事しようと...

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※「お江戸タイムトラベル 200年前の日本橋 ~絵巻『熈代勝覧』の世界~」のクレジットページ


松田 なるほどね。

佐々木 そうですね、あと...作った物を通して直接使っている人と会話できるようなプロダクトを作ろうというのを...一応ルールとしているんです。

山口 そう...先ほど松田さんが言われたように進化していくプロダクトというのは僕たちも同じなんですね。基本的に...大げさかも知れませんがユーザーと僕たちの間で信頼関係が構築されていくような、やっぱり手法というかやり方を本願としておきたいな...と。まあ、いろいろな方法があると思いますけど、そこをプロダクト毎にどういう風にやっていくか...

松田 やはり私らの時とは時代が違いますが、代表者として当時一番苦心したことは...無論仕事を取ることですよね(笑)。で、仕事をいただくためには会社の名前を含めて「ここにこういう会社があります」という告知をしなくてはいけない...知っていただかなければ始まらない。しかし当時はインターネットもなかったし予算を膨大にかければともかくその手法がなかなかないわけですよ...。

山口 はい。

松田 で、どこの馬の骨か分からないような連中に、その数百万...数千万といった仕事をボンとくれる上場企業がどれだけいるか...と 危惧しましたが...。しかし逆に利用されて終わりと思われるような仕事は沢山来るんですよ。まったく見聞きしたことのないところからの話で...それは今の言い方だとブラック企業ですかね。

山口 ふ〜む。

松田 そういう相手を選別...より分けるのも私の仕事でしたが、面白いもので決してお金をかけたり実力以上の企業に見せようとしたことは一度もないんですけど、少人数でやって...非常に...その存在価値を認めてもらうのはやり方次第だと思いましたね。大風呂敷で法螺を吹いたわけでは決してありませんが、良い意味でイメージが先行していくれたんでしょうか、行く先々で少なくともコーシングラフィックシステムズは5,6十人の規模だと思ってくださる方が多かったですね。
まあ、景気がよい時代でもあったからExpo/Tokyoなどには無理をして可能な限り良い展示を心がけましたけど、やはりお客様にこの会社が作ったものは他社のものとはちょっと違うんだぞ...と。それがブランド力になっていくんですね。
ですからハンズメモリーさんも良いお仕事を...えり好みしてですね(笑)。とはいえ良いお仕事の話が来るというのが重要なことではありますし作ったものは売れないと...。したがって微力ではありますが、この対談もきちんとアピールしましょう。そしてアピールしたから終わりというのではなく...そう例えば「お江戸タイムトラベル」も半年たったらまた別なアピールを考えるというか、勿論バージョンアップの機会を使ってできたらもっといいかも知れませんね。

山口 はい。

松田 そして長くよいお仕事をしていただきたいと思いますが、まあピークを継続することは難しいですけどね。

山口 .....

松田 会社だけではないんですけど、自分たちのピークをリアルタイムに見極めるのは難しいですね。過ぎ去った後から振り返れば「ああ、あの時がピークだった」と分かるんですけどね(笑)。そのピークで辞めておけばよかったと(爆)。

一同 (笑)

松田 皆様方には釈迦に説法でしょうけど、例えピークを長く保つことができたとしても僭越ですが10年もの長きにわたり、やっていることやポリシーを変えないというのは危険だと反省していますけどね...。同じ組織でやっていたとしても意図的に新しいこと、新しい方向に転換する...意図的に変えることが大切のように思いますね。

山口 なるほど。

松田 例えば現在のiPadに対する思い入れのまま...7インチのiPadに向かおうとすると...

一同 (爆笑)

松田 冗談はともかく、時代の変化は本当に早いですからね。やはりソフトウェアというプロダクトも時代を反映したものでなければ売れようもないでしょうしねぇ...。それを読むのは容易いことではありませんが、同時に技術担当の方は常に新しいことを会得していかなければなりませんしね。

山口 ほんとですね...

松田 ところでやはりホームポジションというか事務所的なものはお作りになりたいですか。

山口 そうですね。一応...やっぱりカフェに行ったりして話し合いをするんですが、まあなんだかんだといってもひとつの場所があった方が...そこに定時にいくとか...ではなく別の形でも場所というのを考えたいなあと...思ってます。

松田 コミュニケーションは基本中の基本ですからねぇ。

山口 そうですよねぇ...。結構これまでにも一緒にやってきた人たちもそうですけど...

佐々木 かなり短い経験ですけど(笑)。

山口 やっぱり、どちらかというとプログラマの方はそういうの(コミュニケーション)嫌いな方が多い...。話し合ったりするのが...。で、そのコンセンサスを取るのにとても時間がかかったり...どうしてこんなに話し合いがむずかしいのかと言うぐらいに...非常に理解して貰えなかったですね。そして自分が興味を持てることだと「やるよ」というけど、興味がなくなると...

佐々木 もうパッと...(笑)

山口 そういう意味では飛田さんは神さまみたいな存在だと(笑)

佐々木 (笑)

松田 そういえば...今回の iPadアプリ「熈代勝覧」は...堅い話ですが...売り上げの目標値というのがあるんですか? 実数値はオフレコで結構ですけど(笑)。

山口 ...一応思っていたとおりの数字が...

松田 そうですか、それはそれは...

山口 お陰様で。今回非常に面白かったのは...松田さんに書いていただいことは大変ありがたかったですが...

松田 いえいえ...

山口 あと、APPLE LINKAGEさん...と松田さんとこだけが取り上げてくれたんですね...。で、他の有名なレビューサイトというのはまったく取り上げてくれなかったんですよ。で、面白いことにリリースした時には結構30位くらいまでパア〜っと上がって調子いいなあと思いましたが、やはりコンテンツものなんで落ちるのも早かったと。そして松田さんに取り上げていただいてからまたバアっと...。そして取り上げていただいた翌日に「ニュースリリースと注目作品」としてApp Storeに置いていただけたので...10番くらいまでにズ〜っと上がりまして、やっばりiTunesを皆見てるんだなということが良く分かりました。

松田 そうですか。ある意味で先のお話しの通り、連続でピークが作れたということなんでしょうか...。

山口 そうですね。そこが一番、まずは助かったということですね。やはりiTunesのランキングはかなり影響すると...

松田 私のサイトも、たまたまアクセス内容を分析してみるとiOSからのアクセスがすでに上位3番目ほどになっているんですね。

山口 ほお...凄い。

松田 余談ですけど、私のサイトで...いまだとアクセス数が多くなるのはSiriの話題と...スティーブ・ジョブズに関しての話題ですね(笑)。

山口 (笑)

松田 私もアップルジャパンにはデベロッパーとしてお世話になりましたが反面、ひどい会社だなあと思う数々のトラブルにも遭遇しました。山口さんは一時期アップルジャパンにいらしたとのことですから、言いにくいですが...(笑)。
いろいろとビジネス面では苦労もしましたが、まだまだ問題点はあるにしろユーザー直結の...ある意味では...無論了承された後だとしても一応App Storeで公に評価されるというのは良い時代になったということなんでしょうね。

一同 ええ...。

松田 ...今回はこんなところでお開きにしましょうか。また機会があったら宜しくお願いします。これからも応援しています。ありがとうございました。

山口、佐々木、飛田 ありがとうございました。

[完]

お江戸タイムトラベル 200年前の日本橋 ~絵巻『熈代勝覧』の世界~ - Arigillis Inc.
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Author:appletechlab

主宰は松田純一。1989年Macのソフトウェア開発専門のコーシングラフィックシステムズ社設立、代表取締役就任 (2003年解散)。1999年Apple WWDC(世界開発者会議)で日本のデベロッパー初のApple Design Award/Best Apple Technology Adoption (最優秀技術賞) 受賞。

2000年2月第10回MACWORLD EXPO/TOKYOにおいて長年業界に対する貢献度を高く評価され、主催者からMac Fan MVP’99特別賞を授与される。著書多数。音楽、美術、写真、読書を好み、Macと愛犬三昧の毎日。マネキン造形研究中。日本シャーロック・ホームズクラブ会員。日本リュート協会会員。ゆうMUG会員