今さらではあるが「刑事コロンボ」にはまる!

「刑事コロンボ」と聞いて知らない人は少ないと思うがいかがだろうか...。ピーター・フォーク主演のテレビドラマで日本では金曜ロードショー枠で放映されていた大ヒット番組はリアルタイムで見ていた。よれよれのレインコートに安葉巻をくわえて眠そうに事件現場に現れるあの刑事コロンボだが、最近あらためてはまっているのだ...。

 
ロサンゼルス市警察署・殺人課勤務のコロンボ警部 (正しくは警部補)という人物についてのあれこれをあらためてご紹介する必要はないと思うが、この数ヶ月間シリーズ前に単発として1968年制作され日本で1972年に放送された「殺人処方箋」から第7シーズンと呼ばれている旧シリーズ最後の一編「謀略の結末」まですべてを観ようと少しずつ時間を取っている。
これらの主なソースはTUTAYA DISCASからのDVDレンタルを利用しているが、レンタルがない新シリーズで入手可能な「新・刑事コロンボ DVD-SET」は別途購入してみた。

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※5つのミステリーがDVD3枚に収められている「新・刑事コロンボ」DVDセットのパッケージ


今回あらためて「刑事コロンボ」のシリーズを順に観ていると若いときに観た印象と随分と違うことに気づく。まずはピーター・フォーク演じるコロンボという人物は決して敵に回したくない男という思いが強い(笑)。
例え犯罪を犯したとしてもコロンボのような執拗な刑事には追いかけ回されたくないと思う(笑)。
度々閉めたドアを再度開き「あともうひとつだけ...」などとやられては神経が参ってしまうに違いない。そうしたことは毎回ドラマで殺人犯が味わうことになるわけだが、犯人が心理的に追い込まれていく様はとても見応えがある。

このコロンボシリーズの特徴は視聴者が犯行とその犯人を最初から知っていることだ。したがってドラマの妙は見栄えのしない、そして無害そうなコロンボが執拗な聞き込みや捜査の中から犯人を探り当て、低姿勢に接触しながらも心理戦ともいうべき巧妙な話術で逮捕に追い込むその課程である。またコロンボが相手にする犯人たちは政治家、弁護士、会社社長、医者といった権力と富を得ている人たちであるというのも一貫したテーマになっていて面白い。
そして30数編ほどの作品をあらためて観つつ「刑事コロンボ」が何故こうも魅力的なのかに思い当たった。それは主演のピーター・フォークや犯人役の俳優たちの名演技は勿論だが何といっても脚本が昨今の粗製濫造のものとは違い、素晴らしくよく出来ているということなのだ。

今般、可能な限りの資料を眺めてみたが制作関係者らの熱意はただならぬものでありピーター・フォーク自身が撮影に妥協を許さなかったこともあって制作予算は常にオーバーし局側を悩ませたという。そして彼自身が監督を兼任した「パイルD-3の壁」では必要なエキストラを雇う予算が局側から出ず、ピーター・フォーク自身が自腹を切ったという。
いまのところすべての作品を観たわけではないが、個人的に好きな作品をあげて見ると「パイルD-3の壁」「二枚のドガの絵」「別れのワイン」「歌声の消えた海」そして「忘れられたスター」などが思い浮かぶ。

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※風雅書房刊「刑事コロンボの秘密」(1995年)表紙。各作品のストーリーから様々なエピソードまで詳しく紹介されている


しかし、ふと思い返せば私たちがロサンゼルス市警察署・殺人課勤務のコロンボ自身のことで知っていることは意外に少ない...。
確かによれよれのレインコート、ぼさぼさの髪、安葉巻をくわえ廃車寸前に思えるクラシック・プジョーが愛車だということ。そしてバセットハウンド犬を飼っていることなどが作品から分かる。
拳銃は持ち歩かないだけでなく射撃は下手だとコロンボは自分で言っている。また「うちのかみさんがねぇ...」などというお馴染みの台詞から夫婦仲は良いようだし親戚も多々いるようだ。しかしそうした台詞がどこまで真実なのかは誰も分からないし、コロンボの女房や家庭が映像として表れたことは一度もない。なにしろコロンボ警部のファーストネームも公式には明らかになっていないというありさまだ。
そうしたいくつかのミステリーがあるからこそ私たちの興味を一層煽ることになるのわけだが、ひとついえることとしてコロンボ警部は仲間や上司の信頼が厚いということだ。
殺しの現場にヨタヨタと現れ「マッチない?」とか、ゆで卵を持ちながら「コーヒーないかなあ」などと場違いなことをいっても誰もとがめないし、犯人側から捜査に圧力を加えようと警察の上部に直訴されるケースにもコロンボが実際に罷免されたことはない。
「ロンドンの傘」という作品ではイギリスのスコットランドヤードに出張させられたコロンボに対するスコットランドヤード側の対応を見ても、少々疎ましいとは思われただろうが厚遇されていることは明白で、私たちがドラマで出会う印象より彼には実力ならびに実績があることを伺わせる。

とにかく極一部の作品を除けば、性的描写や惨い殺人シーンは登場しないし激しいアクションもない。コロンボ警部が自分でも言うとおり極々細かな点の辻褄を考えながら矛盾点を追い、インテリたちの犯人逮捕へと導くその様が魅力なのだ。その上にユーモアやペーソス溢れるストーリーは観ていて心地よい。
コロンボ自身は好きな刑事の仕事をこなすだけで裁くのは別の人間だと認識しているようだが極悪卑劣な犯人には怒り、声を荒立たせることもある。しかし例えば「別れのワイン」の殺人犯に同情を覚えるエンディングはコロンボの人柄が伺えて観ている者の心を打つ。

役者冥利という言葉があるが「刑事コロンボ」におけるピーター・フォークほどこの言葉がピッタリとくる役者も珍しい。なにしろ彼はコロンボそのものであり他の役者がコロンボを演じているところなど想像も出来ないほど本人そのものになりきってしまったのだから...。
しかし現実は厳しくも空しい。
2008年、ピーター・フォークはアルツハイマー症であることを公表したが昨年のニュースではすでに自身が「刑事コロンボ」を演じたことも覚えていないほどに病状が進行してしまったらしい。ファンの1人としては何とも悲しいが、DVD「刑事コロンボ」として入手できる50編にもなる作品にはいつものコロンボがいる。
私はこれからも折に触れ「刑事コロンボ」を楽しむだろうことは確かである。何しろ振り返りながら彼が言う「あともうひとつだけ...」という声が耳から離れないのである(笑)。

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Author:appletechlab

主宰は松田純一。1989年Macのソフトウェア開発専門のコーシングラフィックシステムズ社設立、代表取締役就任 (2003年解散)。1999年Apple WWDC(世界開発者会議)で日本のデベロッパー初のApple Design Award/Best Apple Technology Adoption (最優秀技術賞) 受賞。

2000年2月第10回MACWORLD EXPO/TOKYOにおいて長年業界に対する貢献度を高く評価され、主催者からMac Fan MVP’99特別賞を授与される。著書多数。音楽、美術、写真、読書を好み、Macと愛犬三昧の毎日。マネキン造形研究中。日本シャーロック・ホームズクラブ会員。日本リュート協会会員。ゆうMUG会員