APEC厳戒中の横浜にY嬢と「ドガ展」を見に行く

あれほど一所に多くの警察官を見たのは初めてだと思うが、APEC(アジア太平洋経済協力 Asia-Pacific Economic Cooperation)を目的として各国首脳が横浜地域に集結したための厳戒体制の中、私とY嬢は桜木町駅で待ち合わせ横浜美術館に向かった。「ドガ展」を観るためである...。


Y嬢とは2年ぶりの再会ということになる。前回は東京都庁の展望台でデート以来だから本当に久しぶりだ。
彼女が研修で東京に来るという連絡をもらった際、札幌に帰る当日に横浜美術館で開催されている「ドガ展」を見に行こうと誘ってくれたのである。
最近はめっぽう出不精になった私だが、彼女の笑顔を見たくて膝にサポーターをしながらも電車に乗り待ち合わせ場所の桜木町駅へと急いだ。

横浜という場所は無論初めてではないが横浜美術館というのがあることは正直知らなかった...。iPhone 4の「マップ」で確認すると桜木町駅から徒歩11分となっているから大した距離ではない。

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※桜木町駅から横浜美術館までは徒歩11分程度の距離


途中目印となるランドマークもあるしまず迷うことはないが、待ち合わせ時間が昼時なのでまずは近隣で彼女と昼食を食べてから美術館に向かおうという約束になっていた。ともかく桜木町駅の改札を出た途端、目に入ってきたのが物々しい警察官の姿だった。それも1カ所にこれだけの数の警察官を見たのは初めてである。
少し早めに着いたので周りを観察していると場所によってはデジカメを向けて警察官に注意を受けている人もいる。私も大量の警察官の姿をカメラに収めようかと思ったが...やめた(笑)。

Y嬢は出張だからして荷物を持っているはずだが駅のコインロッカーは防犯のためすべて使用禁止になっている。本来なら邪魔な荷物をコインロッカーに預けて身軽に移動したいところだが、これでは美術館まで荷物を持たなければならない...。まったくAPECも重要なんだろうがこれだけ国の予算を使い、多くの人たちに迷惑をかけているんだから我が国としても最低限の成果をあげて欲しいものである。

そんなことを考えながら改札でぼんやりしているとiPhone 4に電話が入る...。どうやら改札から出てくる彼女を見つけるはずが意識が別のところに言ってしまったのか見過ごしてしまったらしい(笑)。

久しぶりに会ったY嬢は元気そうだったので一安心。そして近くのファッションビルの7階にあるレストラン街で食事をしながらお互いの近況報告を...。
面白かったのは彼女の職場の部長という人物の口から「スティーブ・ジョブズのプレゼン」という話しが出たという。彼女は「私、ジョブズのプレゼンを実際に観ました」と言ったら羨ましがられたとのこと(笑)。

彼女は以前私の会社のスタッフだったので数回サンフランシスコのMACWORLD Expoにも一緒に行ったから状況は一般ユーザーよりずっとよく知っているのである。
「とんだところで株が上がりました」という話だったが、それだけこの業界とは無縁の方たちもAppleという会社やスティーブ・ジョブズという人物を認知しつつあることにあらためて驚きを覚えた次第。

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※横浜美術館で開催中の「ドガ展」


食事を終えた我々は一路美術館へと向かう。無論その道々にも警察官がいっぱいだ。
美術館は大変立派な建物だったが、APEC開催中ということでその近隣にある美術館への人出もブレーキがかかったのか大変空いており、我々にとっては大変よい環境だった。
Y嬢の荷物を美術館のクロークに預け、我々は早速展示会場へと進む。

今回の「ドガ展」の目玉はオルセー美術館から来たパステル画「エトワール」である。この一点を観るためにここに来たわけだが無論本作品は本邦初公開であり、そもそも油絵などと違い運送途中で剥離を含み痛みやすいパステル画はなかなか海外への貸し出しを許可してくれないというからまさに貴重な機会なのだ。

画家ドガについての説明は避けるが絵画、彫刻そして遺品など130点ほどが展示されている。そのうちオルセー美術館からの選りすぐりの名品45点が含まれている国内で21年ぶりのドガの大回顧展である。
会場は「第1章 古典主義からの出発」「第2章 実験と革新の時代」「第3章 綜合とさらなる展開」に別れて作品展示されていた。

やはり圧巻は1877年の第3回印象派展に出品されたパステル画「エトワール」である。
パステル画だからしてなのだろうが小振りな作品であり決して派手な造形ではないが今回のドガ展の主役に相応しく本作品が掛けられているエリアは何だかひときわ明るいような気がする。

エトワールとはご存じの方も多いと思うが、パリのオペラ座で主役を務める踊り子の中でも特に花形にだけ与えられる称号だが、本作品はドガが多数描いた踊り子の絵の中で稽古の場面ではない公演の場の踊り子が描かれているのも特徴だ。

見る物の視点はちょうどボックス席からオペラグラスで舞台を覗いたような高い位置にある。ために舞台を軽やかに舞う瞬間の踊り子の姿だけでなく背景や舞台の袖などで待機する踊り子たちの姿も見ることが出来るという設定である。
その色調はまさしく優雅で見る物を優しい気持ちにするがこの「エトワール」は当時の厳しい現実をも垣間見させることも忘れてはならない。

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※「ドガ展」公式カタログ。表紙は勿論「エトワール」(一部)である


それを象徴するのが舞台の袖に見える黒い装いの男性の姿だ。顔は見えないがこの人物は踊り子のパトロンと考えられているという...。なぜなら当時花形の踊り子とはいえその世界は娼婦の世界とそんなに異なるものではなく、パトロンなしにスポットライトを浴びることは難しかったからだ。

無論ドガは華やかな衣装に身をまとい美しく踊る女性たちに魅せられただけではなくその背景にあるものまでをも描こうとしたに違いない。
現代の我々はこうした絵画の名作をとかく芸術作品として崇めるだけで済ませてしまうことが多いが、写真技術が台頭するまでの絵画作品の多くは芸術の名を借りつつもメディアの役割を果たしていたともいえるのである。

一通りすべての作品を眺めた私たちはもう一度この「エトワール」の前に戻ってしばしたたずんだ...。
その後、美術館内の喫茶コーナーで一休みしY嬢が帰りの飛行機に間に合うようにと急ぎ美術館を後にしたが、途中の橋を渡るとき警察官たちが「急いでください橋の通行を封鎖します!」と叫んでいる。どうやら下の道路を要人たちが通るからだそうだが、ゴルゴ13でもいるのたろうかと茶化しながら急いで渡り桜木町駅まで小走りに進みY嬢とホームで別れた...。

車中、ドガがどんな気持ちで「エトワール」を描いたのか、そして当の踊り子は幸せだったのだろうか...などなどと埒もないあれこれを考えながら女房と愛犬が待っているという駅前のコーヒーショップに向かった。
この「ドガ展」は今年の12月31日(金曜日)まで開催されている。

横浜美術館


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主宰は松田純一。1989年Macのソフトウェア開発専門のコーシングラフィックシステムズ社設立、代表取締役就任 (2003年解散)。1999年Apple WWDC(世界開発者会議)で日本のデベロッパー初のApple Design Award/Best Apple Technology Adoption (最優秀技術賞) 受賞。

2000年2月第10回MACWORLD EXPO/TOKYOにおいて長年業界に対する貢献度を高く評価され、主催者からMac Fan MVP’99特別賞を授与される。著書多数。音楽、美術、写真、読書を好み、Macと愛犬三昧の毎日。マネキン造形研究中。日本シャーロック・ホームズクラブ会員。日本リュート協会会員。ゆうMUG会員