オールドMac貸出および取材依頼にまつわる苦言

当ブログには "研究所概要" というカテゴリがあり、ブログのコンセプト説明などを記してあるが、その一番下には機材の貸出に関する注意事項がある(現在は削除してあります)。先般も貸出依頼が数件続いたが、スティーブ・ジョブズ氏の一周忌を境に、また様々な企画があったのだろう…。今回はその機材貸出と取材依頼にまつわるお話しである。


すでに1年ほども前になるが、その機材貸出に関する説明を熟考の上「有料」という形に書き直した。
友人の中には「貸出業でもやるのか」と揶揄する輩もいるが、ここに至るまでには様々なドラマがあり、やむを得ない事情があったのだ。今回はその言い訳と共に機材貸出依頼ならびに取材依頼をされる企業や担当者への苦言でもある。

そもそも私の手元にあるオールドMacはいわゆるコレクションとして集めたつもりはない。私の本業はソフトウェア開発であり、黎明期からApple IIやMacintoshに関わってきた一人として古いソフトウェアに魅力を感じ、それを動作させるために最低限必要なハードウェアを揃えたというのが本音である。したがってそれにはマシンが起動しなければならない。しかしLisaは勿論、Macintosh 128KもApple IIeやApple IIcも皆28年とか29年も昔のマシンであり、それらを問題なく起動するようメンテしてきた努力は誰のためでもない自分のためとはいえなかなか大変だった。

事実現時点でLisaもMacintosh 128KもそしてMacintosh 512KやMacintosh Plusは勿論、Apple IIcやNewton、eMate 300あるいは初代iMacも起動する…。いつまでこの状態を維持できるかは分からないが、私にとって代替え品のない貴重な機材なのである。
ではその貴重品をなぜ貸出するようになったか…といえば正直「紹介者の顔を潰さないように」という気遣いから始まったことなのだ。とはいえそもそも貸出依頼など年に1度といった程度だったから最初はそうそう問題も無かった。

しかし近年Appleという会社が、そしてそのCEOだったスティーブ・ジョブズ氏が一躍注目されるようになったことでAppleやジョブズ氏をテーマにした様々な企画が立ち上がった。それらは書籍だったりムックだったり、あるいはテレビの番組だったりするわけだが、説得力のある魅力的な内容にするためにはオールドMacの姿を写真や映像で紹介する必要が出てくることは当然であろう。そして同時に当時の状況を知る1人として私への取材依頼も多くなった。
まあ念のために申し上げれば取材を受けるのは私の本業でもあるわけだが、機材貸出は本当ならやりたくないのだ(笑)。

思うに私の所持しているようなオールドMacは確かにそこいらに転がってはいないものの、私などよりもっと本格的にコレクションされている方も多々いる筈だが、問題は急を要する企画に合うスケジュールで確実に機材を借り受けることは至難の業に違いない。
なぜなら出版社にしろテレビ局にしろ、余程事情に詳しい方がいなければまずどこの誰に当たったらよいかさえ分からないに違いない。またコレクターの方のサイトにアクセスできたとしても貴重な機材を見も知らずの相手にニコニコと貸し出すわけもない。
まあ、そうした意味では当「Macテクノロジー研究所」はお陰様で少しググればぶち当たる関連サイトの代表的なものであるわけだ。だから問い合わせも多い…。

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※貸出依頼が多いオールドマシン例


とはいえ、失礼ながらどのような貸出依頼にもホイホイと乗るほど私も暇ではないしその義理もないからしてまずはお断りするのが一般的である。貸出で生計を立てているわけではないからまずはお断りする。しかし困るのは旧知の方々を介して問い合わせがあると正直なかなか断りきれないケースもあるのだ…。
それに僭越な物言いかも知れないが、この業界で長らく飯を食わせてもらっていることでもあり、今でも熱烈なAppleフリークだからしてAppleをテーマにした書籍にしろ番組にしろ…本当に良い物を作ろうと企画しているなら正直お手伝いしたいという気持ちも持っているわけだ…。
友人知人や取引先担当者の顔を潰さないように、そしてAppleに関わる企画ならできるだけ協力しようという気持ちからこれまで数多くの貸出事例を重ねてきた。無論それらは100%ボランティアであった。

ともあれ借り主の多くは…というよりそのほとんどはオールドMacがどんなものであるかを知らずまた興味もないことが多い。ただただ仕事だからと接触を図ってきただけなのだ。事実依頼のためにコンタクトしてきた人のほとんどはMacユーザーではなかった(笑)。したがってこれまでの例でいえば、結果として本体を見るからに汚したまま返却したり、明らかに傷を付けたりはまだ良い方で、マウスやキーボードのケーブルを断線させることもあった。あるいは周辺機器や小さな部品類を紛失、資料(紙類)を折ったり汚したり、最悪は書き込みをしたり破いたりする…といったケースが多々あったのである。

こうした結果を眼前にするとさすがに自分のお目出度さ加減に目が覚めた私は貸出完全禁止にしようと思ったが、そこはそれ…前記したように友人知人や取引先の紹介だと断りにくいことに変わりは無い…。ということでそれならきちんと貸出を「有料」だと告知すれば、不用意な申込みはないだろう…これは我ながら名案だと思った(笑)。
それにまったくこちらの都合とは言え、機材を狭い棚の奥から引っ張り出し、時には周辺を片付けないと奥から目的の機材が取り出せないこともあり、関連のソフトや小物を揃えて起動のテストをするだけでも正直なかなか大変だし時間もかかるのだ。そもそも安易に考えられては困るのである…。また例えばLisaやMacintosh 128Kを貸出した際に壊したりあるいは専用マウスやキーボードといった周辺機器を紛失したとすれば、場合によってはお金を積まれても現状のように良い状態のものを再度手に入れることはすでに難しいかも知れないのだ。

勿論誤解がないように記すなら、こちらの条件をきちんと把握しご理解いただいた上で申込みをされ、無事に役目を果たされたケースも多い。
例えば昨年スティーブ・ジョブズが亡くなった当日(日本時間10月6日)夜に特別番組として放送されたNHK BS1「ワールドwaveトゥナイト」は急な申し入れではあったものの担当のディレクターがMacユーザであり、かつオールドMacのことをよく承知されていたので細かな説明も不要だった。
結果お貸し出しした3種類のマシンは無事に起動し、役割を果たすことが出来たし、トラブルもなく後日番組のビジュアルもお送りいただいた。

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※番組リハーサル中の映像。担当ディレクターより許可を得て掲載


また今年の3月から5月にかけて凸版印刷株式会社の印刷博物館 P&Pギャラリーにて「What’s 電子書籍? 新しい読書の時間がやってきた」が開催されるにあたり展示を目的にDTPの発祥に関わるマシンとしてMacintosh 128Kを期間中お貸出しし好評を博した。

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※印刷博物館の許可を得て掲載


したがって矛盾することは承知だが、ご相談いただく内容が魅力的でこちらの条件も承知していただけるならお貸出することは吝かではないことは明言しておきたいと思う。

…ということで有償なら安易な貸出依頼は来ないだろうし、もともと機材の貸出で商売をやっているわけではないのだから貸出し依頼がなくて困ることも無いと考えたが…甘かった(笑)。
特に昨年スティーブ・ジョブズが亡くなって以来、「有料」という壁など無いも同然に貸出依頼をいただいたのである。ただし確かにその多くはこちらの呈示する金額および厳格な貸出条件に驚いてぷっつりと連絡がなくなってしまうケースも多い(笑)。しかしそれはこちらの思うつぼなのだがそれでも昨今は思ったより多くの申込みをいただくのが現実なのだ。

先般もNHK 2012年11月7日(水) 放映のBSプレミアム『追跡者 ザ・プロファイラー』でジョブズ特集「スティーブ・ジョブズ “シンプルに、前へ”」という番組に機材貸出と数回の取材を受けた。その顛末は正直困惑することも多かったが、それらについては当事者からの謝罪もあり私も水に流したのでここで蒸し返すことは止めるが、いやはや大変だったのだ…。

さて本題だが、いま始まったことではないものの放送局だけでなく出版社やプロダクションなどからのこうした貸出や取材の依頼があるとき、なぜ彼らは費用というものを念頭に入れないのだろうと不思議に思う。
先日も私でさえ知っている有名なテレビ番組の制作担当者からメールをいただいた。
どうやらMac好きな若い俳優(男性)にスポットを当て、番組内でオールドMacをずらりと並べて撮影し、彼に語らせるという企画らしい。
メールには企画書が添付され、取材協力の依頼と共に取材希望日の候補などが記されていた。どうやらコンセプトとしてその若い俳優が自身のユーザー歴を懐かしむということらしいが、Macintosh Classic IIやQuadraが対象だというのでそもそもMacテクノロジー研究所はほとんどお呼びではないのである(笑)。

そして当人たちに悪意はないのだろうが、これは無知の極致ではないだろうか…。何故なら彼ら彼女らにとってこうした企画は間違いなく遊びではなくビジネスに違いない。
良い番組、魅力的な番組を作り視聴率に貢献し、より多くのスポンサーがつく番組にしようというビジネスに間違いないだろう。そのビジネスのネタ作り、情報作りに必要な取材依頼の企画書になぜ「取材費」についての記述がないのだろうか。それが業界の慣習なら改めなければならない。
いや、もし私にとって本当に魅力的な企画なら取材費など抜きに協力するかもしれないし、誤解があっては困るが是が非でも金・金・金というつもりは毛頭ない。
「取材に関して見積もりをいただきたい」とか「今回は制作費の関係でポールペン一本しか出せないが協力いただけないか」でも良いではないか…なぜ依頼の最初からそうした呈示がないのだろうか。それとも人気番組、あるいは大手メディアからの依頼なら誰でもが喜んでホイホイと依頼を受けるとでも思っているのだろうか。そうだとすればどこか上から目線を感じてしまう….。

さらにその依頼だが「出来る限り代々のMacを並べていただき、○○さんを交えての撮影をさせていただくことは可能でしょうか?」ときた。しかし自慢するわけではないが、私の仕事部屋など日常だって足の踏み場もない狭さの中に機材や資料を押し込んでいるわけで「ずらりと並べるスペース」などあり得ないしカメラ映りもよい筈はない(笑)。来客される方の為にと簡易的な椅子が2脚ほど用意しているが、せいぜいそんなスペースしかないのである。
それに考えてもみていただきたい…。もしこれが、オールドMacやAppleについてMacテクノロジー研究所の松田に…私自身に話しを聞きたいというならまだしも、悪いが身も知らずの俳優…それも美しい女優ならともかく、男優の引き立て役にボランティアで時間を割く必要などどこにあるのだろうか(笑)。やはり依頼事は相手の身になって事を考えなければならない…。
そう、考える…といえばメールに添付された当の企画書だが .doc フォーマットで送るのは止めて欲しい(笑)。せめてそれはPDFにでもすべきだろう。

ともあれ、私はいつもどおりこちらのコンセプトと条件を呈示し、こういう訳だから他に宛てがあるならまずそちらに当たっていただきたいと説明し暗にお断りのニュアンスを入れつつ、ただし条件を理解していただいた上でどうしてもという事なら1度電話をいただきたい旨のメールを返送した。
さてその結末は幸いにも?別のアテが確保できたようで、断りの電話をいただいたので一件落着となった。
それはさておき、「有料化は行き過ぎではないか」と言いやがったA君とB君(笑)、少しはその真意を分かってくれただろうか…。

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Author:appletechlab

主宰は松田純一。1989年Macのソフトウェア開発専門のコーシングラフィックシステムズ社設立、代表取締役就任 (2003年解散)。1999年Apple WWDC(世界開発者会議)で日本のデベロッパー初のApple Design Award/Best Apple Technology Adoption (最優秀技術賞) 受賞。

2000年2月第10回MACWORLD EXPO/TOKYOにおいて長年業界に対する貢献度を高く評価され、主催者からMac Fan MVP’99特別賞を授与される。著書多数。音楽、美術、写真、読書を好み、Macと愛犬三昧の毎日。マネキン造形研究中。日本シャーロック・ホームズクラブ会員。日本リュート協会会員。ゆうMUG会員