自分で度数を変えられるメガネ「アドレンズ エマージェンシー 」を試す

その製品コンセプトに誘われ、一抹の不安もあったが「アドレンズ エマージェンシー 災害緊急用眼鏡」を買ってみた。なにしろ度数の調節が「いつでも」「誰にでも」「何度でも」可能なメガネだというから画期的な製品である。一応災害時の緊急用や一時的なスペアのメガネとして開発されたものだというが是非試してみたかった…。


私は中学時代から黒板が見えなくなり、いま思えば仮性近視だったのかもしれないものの必要に迫られてメガネを使うようになった。メガネを常用するようになるとみるみるうちに視力が落ち、毎年新しいメガネを作らなければならなくなった。
社会人になってから一時期コンタクトレンズにしてみたが、眼に負担が多くていつのまにやらまたメガネに戻っていた。
近年は近視だけでなく乱視はもとより老眼も入っているため、いわゆる二焦点レンズのメガネを愛用しているがこれとて理想的な環境ではないと思っている。

当然のことながら日常生活を考えればMacの前でモニターを見る、読書、外歩き、細かな作業などなどそれぞれ必要な距離とシチュエーションによってそれに合った眼鏡があることが理想だ。ただそれではコスト面はもとより煩雑で使いにくいというより現実的でないからこそ近視と老眼をひとつのレンズで実現する二焦点レンズのメガネを使っている。
メガネも近年はかなり安価になってきたものの、複数のメガネの使用は不便だし、視力が変わったとき新調するにもコストがかかる。

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※自分でレンズの度数調節が可能なメガネ「アドレンズ エマージェンシー」


アドレンズ エマージェンシーというメガネは度数の調節が「いつでも」「誰にでも」「何度でも」可能という利点を活かし、災害時の緊急用や愛用のメガネを壊してしまった時などの一時的なスペアメガネとして開発されたという。
視度調節が可能なのは可動式の2枚のレンズで出来ており、それらをスライドさせ組み合わせることで0.02〜0.1の近視から0.1〜0.5までの老眼・遠視に対応できるという代物である。ただし乱視の補正はできない。
調節もダイアルを回すだけという基本的に簡単なものだから災害用ではひとつあれば必要なときに複数の人に順次使ってもらうこともできるし無論、度数が変化した場合にもメガネを作り直すことなく自分で調節できるわけだ。
ただしこのメガネは常用品ではなくあくまで一時的なスペア用であり非常用としている点が残念だ。ともかくリスクの高い作業、例えば車の運転などには使用しないようにと明記されている。

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※フレーム左右のダイアルを回すことで2枚のレンズがスライドして度数が変化する仕組み


それと好みもあるだろうがもし常用可能だとしてもこのデザインはいかにもこのまま街を歩き電車に乗って通勤するには正直少々抵抗がある。
レンズの素材はポリカーボネートでフレームもTR90という弾性に優れたナイロン樹脂で、衝撃に強く壊れにくいメガネとなっているし男女、年齢を問わず万人を対象としたシンプルなデザインだという。
実はこのアドレンズ エマージェンシーは2011年度グッドデザイン賞を受賞した製品である。ただし個人的には機能第一に考えたデザインという感じもして正直優れたデザイン性というものは感じられない(笑)。そもそもがファッションうんぬんを気にするアイテムではないのだろうし限定的な用途を目指した製品だからしてデザインにも何らかの制約が生まれるのかも知れない。しかし原稿の製品は一種の眼鏡型ルーペのようでもあり、今後はより日常使用に違和感のないデザインを指向して欲しいと考える。

さて実際に手にしたアドレンズ エマージェンシーの感想はといえば、値段が値段だし高級感にはほど遠いが樹脂製のため軽いことでもありかけ心地に違和感はない。
裸眼にアドレンズ エマージェンシーをかけ、片方の眼毎に対象物がよく見えるようにとフレーム端にあるダイヤルを少しずつ回す。そして大切なのは両眼で見た結果で微調整を行うことだ。これは私のように両眼の度数が大きく違う場合には片方それぞれを合わせても両眼だと見難い場合が多いからで。最後は両眼度数の妥協点を見つける必要がある。
また私は乱視も入っているので若干ぼやける部位があるものの(アドレンズ エマージェンシーは乱視補正は不可)、最初は70センチほどの距離にある液晶モニターを見るために調節してみたが結果はまずまずだった。
続いて今度は読書を想定し、書籍を両手に持って度数を調節してみたが、これまた実用に耐えうる結果だった。

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※2枚のレンズがずれて重なっているのがお分かりだと思う


私はド近眼なため、災害時はもとより度数の合ったメガネがなければ実生活にすぐ支障がでる。したがってこのアドレンズ エマージェンシーを非常用バッグに常備しておくだけでも少しは安心できるのではないかと思う。
例えば寝ているときに災害にあったとすれば、枕元に置いたメガネの事を忘れたり、あるいは壊してしまう可能性も否定できないからである。
ただ全体的な作りは前記したスペックだとしても丈夫そうには見えないし、特にレンズは傷つきやすいはずだから付属のケースに入れ、取扱時にも十分気遣いが必要だと思う。

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※文字通り緊急用とか、一時的な利用には十分に使えることが分かった


ところでこの製品開発のコンセプトには開発途上国の人々に視力矯正の手段を提供するというビジョン・フォー・ア・ネーションという試みが意欲の根源になっているという。
アドレンズ・ジャパン社のホームページによれば、ビジョン・フォー・ア・ネーションは、眼科医にかかれなかったり、眼鏡を買う余裕のない地域の人々が、誰でも眼鏡を利用できるように創設された、革新的なプログラム。誰もが眼鏡を利用できるようにすることで、ビジョン・フォー・ア・ネーションは、ルワンダの全ての利用者の生産性、教育、雇用、生活の質に有益かつ計測可能な影響を与えられることを目標としているという。
この種の活動が文字通りの物であれば非常に素晴らしいことだが、私にはこうした人道的活動について知識と情報が足りないこともありコメントは避けるが、度数調節がユーザー側で可能なそして安価なメガネが誕生したことは意義深い。事実初回生産分から1000個を宮城県と福島県の被災地へ届けたという。さぞや喜ばれたに違いない。

また今年の12月9日には世界初の液体レンズテクノロジーによる度数調節可能なメガネ「アドレンズ p.o.v.」も登場するという。視力を調節するという目的のメガネはレンズの精度や強い近視用でも薄いレンズが作れるようになるなどの進歩はあるものの基本的には度数が変われば取り替えるしかなかった。しかしメガネにもこうした進化が迫っていることはメガネ利用者の一人としては嬉しい限りだが、後は文字通り安全で常用可能なことは勿論、デザイン性の優れた製品の登場が待たれる。

adlens(アドレンズ) アドレンズ エマージェンシー 災害緊急用眼鏡 ブラック
アドレンズ・ジャパン株式会社

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Author:mactechlab
主宰は松田純一。1989年Macのソフトウェア開発専門のコーシングラフィックシステムズ社設立、代表取締役就任 (2003年解散)。1999年Apple WWDC(世界開発者会議)で日本のデベロッパー初のApple Design Award/Best Apple Technology Adoption (最優秀技術賞) 受賞。

2000年2月第10回MACWORLD EXPO/TOKYOにおいて長年業界に対する貢献度を高く評価され、主催者からMac Fan MVP’99特別賞を授与される。著書多数。音楽、美術、写真、読書を好み、Macと愛犬三昧の毎日。2017年6月3日、時代小説「首巻き春貞 - 小石川養生所始末」を上梓(電子出版)。続けて2017年7月1日「小説・未来を垣間見た男 スティーブ・ジョブズ」を電子書籍で公開。また直近では「木挽町お鶴捕物控え」を発表している。
2018年春から3Dプリンターを複数台活用中であり2021年からはレーザー加工機にも目を向けている。ゆうMUG会員