Appleの組織変更に見るティム・クックの決断を評価

すでにご承知のようにAppleは10月29日、これまで iOS デバイスのソフトウェア全般を一貫して担当してきた上級副社長スコット・フォーストールの退社を発表し、同時にエグゼクティブらの組織変更を発表した。当該ニュースに接した際、私に驚きも違和感もなかったしCEOのティム・クックはきちんと仕事ができているな…と感じた。                                                                                      
無論事の是非は我々には分からないが、今回の人事はジョブズがCEO退任以来の大きな出来事でもある。何しろ一時は次期CEO候補ともいわれたスコット・フォーストールが辞めさせられたというのだから…。
ただしこれまでにも幹部らの間でフォーストールが浮いた存在だったという噂は漏れ伝わってきていた。しかしスティーブ・ジョブズ亡き後、Appleの舵取りに必要な幹部たちの流失を食い止めるためにティム・クックは多大なストックオプションを与えて例えば一端退社を発表したボブ・マンスフィールドを手放さなかったことも記憶に新しいわけで、会社の好調さとは別問題として人事の問題にどれほどティム・クックが力を発揮できるかを実は危惧していたのである。

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※AppleのCEO ティム・クック氏


もともとスコット・フォーストールはNeXT社時代からジョブズの腹心であり、紆余曲折を得てiOSプラットフォーム開発の責任者となった人物である。ジョブズもスコット・フォーストールを高く評価していたからこその出世であったが、回りから見るとまるでジョブズ二世…ミニ・ジョブズのようだったという話もある。
個人的には壇上に登場するときの彼の笑い顔(笑顔のつもりか)は嫌いだったのだが…(笑)。
ともかく他の幹部から見ればフォーストールは協調性もなく「虎の威を借る狐」のようで、ジョブズがいたからこそ能力を発揮できたと思われていたらしい。

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※辞任の発表があったスコット・フォーストール氏


ウェブの情報によればデザイン観の対立とかマップ問題の責任を取らされた…といったことに終始するようだが、それらはあくまで表に出てきた象徴的な出来事なのだろう…。ただしAppleのエグゼクティブらにしても仲良しクラブでは大企業の舵取りは難しい。したがって他の役員たちと意見が違うといったことも当然多々あり得ることだが、創業者のスティーブ・ジョブズは別格としていかに上級副社長に登り詰めたとは言え企業の方針として決めた事、あるいはCEOの指示はAppleに在職する限り、きちんとこなし成果を出さなければならない。
結局スコット・フォーストールはそれが出来なかった男だったのだろう。もっと分かりやすくいえば、ジョブズに仕え染みこんだあれこれがティム・クックにも通用すると思ったのだろうか。

私はスコット・フォーストールをいたずらに悪者にするつもりは毛頭ないが、彼は地図問題に関しクックらの命に逆らったとしても、まさか辞めさせられるとは考えていなかったように思える。
エグゼクティブらはことに職歴を重く見る。なぜなら彼らの多くもいずれはAppleを辞め別の道に進むことになるだろう。その際には自身で起業するのであればともかく、前職でいかに実力を発揮し貢献したかを売り込む必要があるわけだ。即生活費に困るという人たちではないものの、そうした点では我々と同じだと考えて良い…いや我々以上にプライドも含め、職歴は大事にするのが普通だ。ましてや自主的に、そして円満退社ではなく辞めさせられたとなればそれは間違いなく汚点となる。

フォーストールはクックらとマップ問題解決の討議の際にいち早く空気を読み、自ら辞表を出すべきだったのだ。
それがAppleの発表を見る限り「同社の世界最高レベルのハードウェア、ソフトウェアそしてサービスチームの間でこれまで以上に協力を奨励するためのエグゼクティブマネジメントの変更を発表」としながらも「スコット・フォーストールが来年Appleを離れ、それまでの間、CEO(最高経営責任者)ティム・クックのアドバイザーとなる」とだけしか記されていない。あきらかに「協力を奨励するため」にはフォーストールがいない方が良いという理屈が覗く…(笑)。
発表はこれまでの功績や職歴の紹介もなければティム・クックの謝辞もないという異例の発表であり、そこから見え隠れすることは今回の問題はAppleにとって意外に大きなトラブルだったということと、温厚に見えるティム・クックの怒りの大きさが見えてくるように思える。

とはいえ疑問がひとつある。それは「スコット・フォーストールが来年Appleを離れ、それまでの間、CEO(最高経営責任者)ティム・クックのアドバイザーとなる」という発表だ。
即刻首ということではさすがに問題がより大きくなるからと猶予期間を置いたのか、あるいは日本企業でもよくあるようにいわゆる未消化の休暇を消化するための策なのかは不明だが、”ティム・クックのアドバイザー” とは名ばかりで体の良いCEOにその身を預けられたということのように思える。そしてまたフォーストールにしても大人しくアドバイザーなどに甘んじるはずもないだろうから、この処遇は両者にとってあくまで表向きの発表に違いない。

私はまだスティーブ・ジョブズがCEOだった頃に「“Apple University” は成功するのか?!」というアーティクルを書いた。
それは良くも悪くもジョブズ退任後、ジョブズ・カラーは…一部はともかく、疎まれることはあってもそのまま後継者らに引き継がれることはないと書いた。良し悪しではなく、それが歴史から学べることだし必然なことだと考えるからだ。
今回のお家騒動の結末が今後のAppleにどのように影響するかは私などに分かるはずもない。しかしAppleの新しい舵取りに就任したティム・クックはやるときはやる人物なのだという事実を社内外に示した好例となったことは間違いないのではあるまいか。
最後にスコット・フォーストールが真にAppleを愛し、Appleで先進的な仕事をやりたいなら、かつてのスティーブ・ジョブズのように一回りも二回りも大きくなって戻ってくればよい。Appleという企業文化はそれを許してくれるに違いない。
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Author:appletechlab

主宰は松田純一。1989年Macのソフトウェア開発専門のコーシングラフィックシステムズ社設立、代表取締役就任 (2003年解散)。1999年Apple WWDC(世界開発者会議)で日本のデベロッパー初のApple Design Award/Best Apple Technology Adoption (最優秀技術賞) 受賞。

2000年2月第10回MACWORLD EXPO/TOKYOにおいて長年業界に対する貢献度を高く評価され、主催者からMac Fan MVP’99特別賞を授与される。著書多数。音楽、美術、写真、読書を好み、Macと愛犬三昧の毎日。マネキン造形研究中。日本シャーロック・ホームズクラブ会員。日本リュート協会会員。ゆうMUG会員