ラテ飼育格闘日記(74)

毎日ラテとの散歩で多くのワンコとすれ違う。近隣にある一番大きな公園には時に新入りの公園デビュー犬もいるので楽しみなのだ。しかし目にするワンコたちの中には過酷な運命に見舞われたワンコもいる。 


先日はこれまで見たことがなかった生後6ヶ月だというアラスカン・マラミュートが飼い主のご夫婦に連れられてきた。6ヶ月だというのにすでにラテより一回りも大きいが、その行動はまさしく子犬のそれであり大変可愛いのである。そこにいた幾多のワンコやその飼い主たちに囲まれていささか興奮気味だったが、早くも先輩格のワンコに脅かされたりしてお腹を見せている姿は他人のワンコであっても何とも愛おしい。 
ともかく、そこに集まるワンコたちはそれぞれ相性があったりして喧嘩もするが皆幸せなワンコたちである。何故なら申し上げるまでもないが、飼い主自ら手間をかけ時間をかけて散歩に連れ出すわけであり、一目で愛されてることが分かるワンコたちだからだ。 
体調を壊してワゴンに乗ったまま公園に来るワンコもいるし、加齢のために足腰が弱ってよたよたしながらも飼い主に大切にされているワンコたちを見るとこちらも幸せな気分になってくる。 

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※お預けをくった大好きな縫いぐるみを見つめるラテ


飼い主のいうことを聞かないからと立木に繋がれているワンコ、お座りをしながらお母さんに叱られているワンコ、小さな子供を追いかけて泣かしてしまったので抱っこされて怒られているワンコ...などなど。しかしどのワンコも飼い主や周りの仲間たちに間違いなく愛され可愛がられていて微笑ましい。 
ラテも仲間のワンコと遊びながらもそつなくお馴染みの飼い主さんたちに迫り愛想を振りまき、時にはオヤツをいただいたりする。自分を可愛がってくれる人たちはしっかりと覚えているからだろうが、そうした人たちの足元に滑り込み、ちゃっかりと撫でてもらっている。何かその様はまるで愛情に飢えているかのようだが(笑)、可愛がっていただけることは本当にありがたいことである。 
そして人との付き合いと同じく、相手を認めることの最初は名前を覚えることだ。ラテは雑種だということもあり外見もオンリーワンであり、似たようなワンコは近隣で会ったことがない。したがってありがたいことに直接遊ばないワンコの飼い主さんたちにも「ラテちゃん」と名前を呼んでいただくことも多い。無論オトーサンも他のワンコたちの名前を覚えようと努力をしているが、ダックスフンドとかテリア系のワンコたちはとても外見が似ていることもあり見分けがつかない...。そして集まる数も多いので判別は難しく名前を間違えたりと失礼することも多い。 

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※真面目な表情をすると随分と大人びた感じがする


さて、先日もお馴染みのワンコたちが集まっていた夕刻、黒いラブラドール・レトリーバーを連れた飼い主さんが公園に入ってきた。ふとラテをはじめ数匹のワンコがそちらに注目し、短い吠え声を上げるワンコもいた。見るとラブラドール・レトリーバーとは別に小さな、実に小さなワンコがリードに引きずられながら歩いてくる。 
オトーサンは犬種の見立てに自信はないのでよく分からなかったが、どうやらペットカットされたヨークシャー・テリアのようである。集まっているワンコたちも新顔のワンコが来るとそれまでの遊びを止めてそのワンコのところに集まるものだし我々飼い主も興味を持って挨拶するのを常としているが、まあまあまるで電池で動く縫いぐるみのオモチャみたいに小さい。黒ラブちゃんは初めてではないが、その小さなワンコは間違いなく初お目見えであった。 

リードに引かれたワンコは一見元気一杯のようにも見えたが、大きなワンコたちに囲まれて些か怖がっているようで尻尾も下がっているし、人慣れもしていないようで吠え続けている。また少し震えているようにも思えた。しかしお話しを聞いた瞬間こちらの心が震える思いをした。なぜなら連れてこられた方の済むマンションに捨てられていたというからだ。聞けばこの子は5歳くらいにはなっているらしい...。 
そのマンションは去年完成した新築マンションで、ワンコと一緒に住むことをはじめから考えて設計されたマンションだった。それを知って誰かが拾って育ててくれるだろうと思ったのだろうか、別途もう一匹12歳ほどのテリアも一緒に置かれていたらしい。 

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※捨てられていた2匹のワンコ。手前のワンコが5歳でより小さな奥のワンコが12歳だという。共に近づく人間やワンコに対して吠え続ける


捨てた人にとっては事情があったのだろうが、何とか飼い主の責任をまっとうする他の方法を採れなかったのかと怒りがこみ上げてくる。もらってくれる人を探すことからはじめられないのだろうか...。 
ワンコの犬種や性格、そしてそれまでの経緯で随分と違ってくるとは思うが、飼い犬にとって飼い主は神以上の存在であるという。その飼い主から裏切られ放棄されたワンコがどのような気持ちでいるのかを考えると一愛犬家として震えが来る...。 
最愛の飼い主と別れた後、ワンコの中には人格ならぬ犬格ががらりと変わり、穏和だったのが凶暴になり餌もろくに食べなくなるのもいるようだ。事実その2匹のワンコを見ていると人間不信の固まりみたいで人にも他のワンコにも吠え続けてすぐには心を開く感じではない。 
保護されたご夫婦いわく、どうやら虐待されていたようでもあり、そもそも散歩に連れ出してもらったことがないようだ。何故なら近くの公園を少し歩くだけで肉球から出血したという。 
その小さな2匹のワンコを見ていると2匹は一緒の飼い主のところにいたように思えてくる。ともかく捨て犬だからと保健所に持ち込めばまずほとんどが早々に殺されてしまう。それを知っているからとはいえ何とか2匹のワンコが生きていけるようにとあれこれ努力をされている若いご夫婦に頭が下がる。 

そばにいたある飼い主さんは「犬って捨てられるくらいなら殺してもらいたいと思うほど飼い主絶対だというからねぇ...」とため息をつかれた。 
生後2ヶ月とか3ヶ月で捨てられ、あるいは親犬とはぐれたのか...野良犬になっていたところを保護されたラテの里親として、オトーサンはなんとも言えない重い気持ちになった。推定5歳のワンコと12歳のワンコはこの先なんとか穏やかな日々を過ごして欲しいと影ながら祈るばかりだ。 
可愛いというだけでワンコを飼ってはいけない。そして飼ったら絶対...決して捨ててはいけない...。 

我々のただならぬ様子を感じ、心配そうに寄り添ってきたラテをオトーサンはそっと抱きしめた。

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Author:mactechlab
主宰は松田純一。1989年Macのソフトウェア開発専門のコーシングラフィックシステムズ社設立、代表取締役就任 (2003年解散)。1999年Apple WWDC(世界開発者会議)で日本のデベロッパー初のApple Design Award/Best Apple Technology Adoption (最優秀技術賞) 受賞。

2000年2月第10回MACWORLD EXPO/TOKYOにおいて長年業界に対する貢献度を高く評価され、主催者からMac Fan MVP’99特別賞を授与される。著書多数。音楽、美術、写真、読書を好み、Macと愛犬三昧の毎日。2017年6月3日、時代小説「首巻き春貞 - 小石川養生所始末」を上梓(電子出版)。続けて2017年7月1日「小説・未来を垣間見た男 スティーブ・ジョブズ」を電子書籍で公開。また直近では「木挽町お鶴捕物控え」を発表している。
2018年春から3Dプリンターを複数台活用中であり2021年からはレーザー加工機にも目を向けている。ゆうMUG会員