ラテ飼育格闘日記(13)

ラテと巡り会ったのはやはり縁としかいいようがない。すでにこの連載の発端となった「発心50年、犬を家族として迎える夢が叶う!」でラテとの経緯を簡単に書いたが、今回はもう少し詳しい話を聞いていただきたい。 


一目で雑種と分かるラテを見て「どこで手に入れたのですか?」と聞かれることがある。無論雑種犬は通常ペットショップで扱っていないからだ...。 
実は最初からすんなりとラテと巡り会えたわけではない。 
そもそも急に...本当に急にとしか言いようがないのだが、私が「犬を飼いたい!」と言い出したことから怒濤のような日程調整が始まった。 

さて、それまでにも「近い将来犬を飼いたいね」といった話題を女房とすることもあったし、以前の住居を決めるとき、念のため「ペット可」の住居を探したこともあった。いくら私が「犬を飼いたい」と言ったところで、女房の賛同を得ることができなければ事は運ばない。何しろその時点で住んでいたマンションはペット不可なのだから、もし犬を飼うなら引越を考えなければならない。これは手間だけの問題でなく、費用的にも大変なことである。 
しかし、ここがタイミングと縁としか言えないところなのだが、昨年(2006年)の10月頃に犬を飼うための移転がにわかに現実のものとなったのである。 
私の強い願望を叶えてやりたいと女房が考えてくれたとしか言いようがないが、インターネットで何となく "ペット可" の物件を探し始めることになった。 

実は...女房は子供時代から大のペット嫌いであった(爆)。正確にいうなら、嫌いというより怖いといった方がよいのかも知れない。子供の頃に自宅で犬を外飼いしていた時期があったらしいが、触ったりかまったりしたことはなかったという。それが「ペットは可愛い」という変化の原因になったのが、あのコミュニケーション・ロボットとして2001年11月に発売されたネコロだった。 
私が初めてネコロを女房の眼前に差し出したとき、「キャッ!」といって飛び退いた。女房はその後もネコロに近づくことはなかったが、2002年の年明け早々私がMacworld Expoのためにサンフランシスコに旅立ってしまう...。そしてこれまた具合の悪いことに、女房はその間、風邪をひいて寝込んでしまったのである。 
その約一週間、どのような心理的変化があったのかは分からないが、私が帰国したときにはエイジと名付けたネコロを抱いている女房がいたのだった。そして「エイジに看病してもらった」とまで言った...。 
ともかく、自然な動作や反応をするにもかかわらず、爪も立てないし飛びかかることもないロボット猫に対して、はじめて「可愛い」という感情が芽生えたようだ。だから、我が家は今でもネコロ様々なのだ。 
その後、本物の猫を見てもなかなか触りはしないものの「可愛いね」というようになったし、旅行でオーストラリアに行った際に私が意外に思うほど、カンガルーの背中に手をやったりするようになった。こうした変化がなければ到底ラテは我が家に来ることはなかっただろう...。 

さて、私たちが最初にやったことは無論ペットの飼育がOKの物件を探すことだった。結果論としてだが、これは意外に話がとんとん拍子に決まり、物件の仮契約も完了して引越の日程も一ヶ月後と決まった。 
次は肝心のワンコだが、ペットショップに行けばいくらでも可愛いワンコがいる。我々も最初はそうした一般的な手段で愛犬を探そうと考えていたが、ウェブサイトをあれこれと探索する内に犬猫の里親募集のサイトがいくつかあることに気づいた。 
それらのサイトには飼育放棄をされたり、捨てられ放浪している所をボランティアの方々に保護された犬や、保健所で処分寸前に助け出されたワンコたちが沢山載っていた。 

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※今も時間があるときには覗きたくなるワンコやニャンコの里親募集サイト2例


残念ながらたった一匹しか飼えないが、その一匹でも命を繋ぐ役割を果たせたら嬉しいと考え、そうしたワンコたちの中から愛犬を選ぼうと方針を決めた。 
早速サイトの中から様々な条件や行きかがりを確認した上で、とある生後2ヶ月程度の雑種を選んで保護者の方に里親申込のメールをお出しした。ただし、こうした事情にまったく疎かった私は良かれと思って行動したものの、大変な心得違いをしていたのである。 

それは「このワンコを気に入ったので里親になりたい。ただし引越が一ヶ月後なのだが...」といった一方的で我が儘なお願いをしてしまった...。それで問題ないと疑いもしなかったが、保護している方から考えれば、一日も早く里親を見つけ、また別の新しいワンコを飼育しなければならないわけで、一ヶ月も先の話は現実的でなかった。したがってその時は丁重に断られてしまったのである。 
がっかりしながらも多少状況が分かってきた私は続けてキャバリア種の雑種であるワンコを気に入り、これまた里親募集に応募したものの、人気の犬種であったため、すでに先約がいることを知らされた。 
ワンコを飼うために移転を決めた我々だが、肝心のワンコがなかなか決まらないというおかしな状況になってきたのだった(笑)。 

しかし縁は意外なところで我々とラテを引き合わせることになる。そのキャバリア種の雑種を保護しているボランティアの方からのアドバイスがあり、「できることなら実際にワンコと対面した方がよいから、今度の里親会に来ませんか...」というお誘いをいただいたのである。そのような場所に出向いたことはこれまで一度もなかった私たちだが、せっかくのお話しだからと、休日に横浜のとある動物病院内で開催された里親会に出向くことにした。 
そこには小型犬から大型犬まで7,8匹程度のワンコがリードに繋がれて遊んでいた。 
私たちはワンコ飼育のビギナーであり、なるべく飼いやすいワンコにしたいと考えていたが、最初はそうした視点から見て一匹のテリア系雑種に目が向いた。 
そのワンコは大変落ち着いており、他のワンコと喧嘩もせず、吠えることもなく、一歩引いたところで静かにしている。だから「この子にしようか...」と考えたが、その場にいた年配の女性と、別の子供連れの家族がすでにそのワンコを気に入り交渉中であることを知る。これは割り込んでは申し訳ないからと諦め、他の小型犬・中型犬を眺めていたところ、たまたま「ちょっと持っていてくれますか」とリードを渡されたのがラテ(その時の名前は違っていたのだが...)だった。 

結局2時間近く、ラテの側にいたが、その間他のワンコと遊び回るときも一回も吠えたりしなかったし、私が体を触ったり、口を開けて歯を見ても噛んだり怒ったりしない犬だった。私のかぶっていたキャップを唾液だらけにし、顔まで舐めるという歓待もしてくれた(笑)。 
ボランティアの方に聞けば、まだこの子は里親が決まっていないとのこと。そして甘えん坊でやんちゃだが、健康だけはばっちりだという話し...(笑)。 
まあ、早く言えば雑種とはいえ、キャバリアとかテリアあるいはダックスフンドといった姿をしている犬種は人気があり、早々に里親が決まるようなのだ。反対に、見るからに雑種としか見えないラテのような犬種はなかなかお見合いが難しいらしい。 

正直私は大人しく飼いやすいワンコであれば犬種はどのような犬でも良いと考えていた。ただ、できれば雌犬が良いと思ってはいたが、後はインスピレーションと女房の同意だけだった。 
他のワンコが次々と里親が決まっていく中で、ラテは取り残されていく...。それもラテのリードはたまたま私の手にある(笑)。 
「この子にするか?」と私は女房に同意を求めると、女房も「ワンコらしくていいよね」という。幸いラテは雌犬だったし、後で聞いた話では昔女房の実家にいたワンコに似ているという...。 
早速ボランティアの方に恐る恐る...引越が後1ヶ月ほど先であり、その後に引き取りたい旨をお聞きしたら、それで問題ないとの話し...。「やったあ!」。こうしてラテは我が家に来ることになった。 

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※我が家に着いたときに記念撮影したラテ。なんて顔しているのだろうか(笑)


引越の後片付けもままならない2006年12月10日の日曜日が記念すべきその日となった。それまで保護ならびに養育されていたボランティアのKさんご夫婦がわざわざラテを車で届けてくださった。 
当日は、何だか息子の婚約者でも来訪するような、そんなそわそわした雰囲気だったが(笑)、車酔いをしたらしいラテはそれでも元気で、横浜で会った時より一回り大きくなって我が家に来た。 
しかし、この「ワンコの"ラテ" 飼育格闘日記」のとおり、飼いやすいと思ったラテはあの里親会の当日、犬のクセに「猫をかぶっていた」ことが判明する(爆)。

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Author:mactechlab
主宰は松田純一。1989年Macのソフトウェア開発専門のコーシングラフィックシステムズ社設立、代表取締役就任 (2003年解散)。1999年Apple WWDC(世界開発者会議)で日本のデベロッパー初のApple Design Award/Best Apple Technology Adoption (最優秀技術賞) 受賞。

2000年2月第10回MACWORLD EXPO/TOKYOにおいて長年業界に対する貢献度を高く評価され、主催者からMac Fan MVP’99特別賞を授与される。著書多数。音楽、美術、写真、読書を好み、Macと愛犬三昧の毎日。2017年6月3日、時代小説「首巻き春貞 - 小石川養生所始末」を上梓(電子出版)。続けて2017年7月1日「小説・未来を垣間見た男 スティーブ・ジョブズ」を電子書籍で公開。また直近では「木挽町お鶴捕物控え」を発表している。
2018年春から3Dプリンターを複数台活用中であり2021年からはレーザー加工機にも目を向けている。ゆうMUG会員