ScanSnap SV600による紙焼き写真のスキャニング画質考察

非接触で離れた位置から原稿を読み取ることができるカラーイメージスキャナ「ScanSnap SV600」の能力をテスト中だが、まず気に入ったのは紙焼き写真の取り込み結果がとてもよいことだ。それを認識した上でScanSnap S1100および些か以前の機種になるがCanonのインクジェットプリンタ複合機 MP-990のフラットベッドスキャナとの3機種比較をやってみた。


最初にお断りしておかなければならないが、本来比較となればその条件を同じく揃えた上で実施しなければならない。しかしScanSnap SV600、ScanSnap S1100およびMP-990でまったく同一の読み取り環境を作り出すのはまず難しいのでここではあくまで設定値は参考値としてお考えいただければと思う。またコンセプトも価格も違う機種の比較にどれだけ意味があるのか...に関してはテストしている私自身も少々疑問に思うものの、本稿はV600の評価のひとつとして非接触なのにこれだけ良いスキャニングができますよ…というメッセージと受け取っていただければ幸いである。

v600imagescan_1.jpg

ScanSnap SV600 正面から


さて比較テストだが、手元にあったA6サイズの紙焼き写真を前記した3機種のイメージスキャナで読み取り、その結果を比較してみようと試みた。また今回の目的だが、ScanSnap SV600という原稿から離れた位置でスキャニングする結果が他のCCDに接触する…近接する形でスキャニングする結果とどのように違うのか、あるいは同じなのかを確認したいということだ。
まずはそれぞれの3機種における設定の概要とスキャニングしたファイルの数値上のクオリティを記してみたい。

① ScanSnap S1100
「カスタマイズ」「読み取モード」
スーパーファイン(カラー/グレー:300dpi)
「ファイルサイズ」「圧縮」
弱く1に設定
「結果のファイルサイズ」
1188×1737 ピクセル 606KB JPEG

ScansnapS1100.jpg


② PIXUS MP990
「写真」 カラー 300dpi
「結果のファイルサイズ」
1204×1736 ピクセル 492KB JPEG

MP990.jpg


③ ScanSnap SV600
「カスタマイズ」「読み取モード」
スーパーファイン(カラー/グレー:300dpi)
「ファイルサイズ」「圧縮」
標準2に設定
「結果のファイルサイズ」
1174×1738 ピクセル 467KB PDF経由JPEG

v600side.jpg


少々説明をさせていただくと、いわゆる読み取りの解像度は3機種とも300 dpiに設定した。ために読み取りした結果としてのピクセルサイズがほぼ同一であることに注視していただきたい。
問題はファイル保存時の圧縮の問題だが、完全なる微調整ができないので上記のようなばらつきのある結果となったが、そうした点を考慮しながら読み込み結果としての画質に注目してみよう。なお写真はすべてJPEGファイルとし、読み込み後に補正などはしていない。

v600imagescan_4.jpg

※SV600でスキャニングした紙焼き写真(無論リサイズしてある)【クリックで拡大】


まずは3つの画像を100%のサイズに表示し並べて目視してみると最初に気がつくことはScanSnap SV600とScanSnap S1100のスキャニング結果が大変きれいなことだ。特にSV600は一番上に位置している「Macworld EXPO」というバルーンにある文字のエッジが素晴らしくクリアに見える。

v600imagescan_7.jpg

※SV600とS1100の比較。左がSV600だ【クリックで拡大】


SV600とS1100では弱冠色味とコントラストが違うし、両機種のソフトウェアアルゴリズム…例えばアンチエイリアシングやシャープネスの手法に違いがあるのかどうか等々は不明だが、圧縮率はS1100の方が低かったものの、目視的にはSV600の方がきれいに見える。またScanSnapと比較するとMP-990のそれはかなりぼけている。

これはVIテクノロジーと呼ばれているV600搭載の新しいテクノロジーやCCDなどの性能による結果なのだろうが、これが非接触のスキャニングで得られたイメージだということに感動を覚えている。

僭越ながら私はMacintoshによる…特にコンシューマー市場におけるカラースキャニングについては先駆者のつもりでいるし、1990年代にColorMagicianというカラースキャニングソフトとEPSON GT-4000フラットベットスキャナで作り出したカラーグラフィック市場はいわば私の創業した会社が発展させたものだと自負している。さらに大手メーカー各社にもこのスキャニングソフトはOEM化し様々な形で供給させていただいた。

v600imagescan_2.jpg

※1990年代に一大ヒットしたカラースキャニングソフト「ColorMagician」


その文字通りフラットベッドスキャナ、ハンディスキャナ、ビデオスキャナなどなど様々なハードウェアとソフトウェアを知り尽くし体験してきた1人として今回手に入れたScanSnap SV600の画質の良さに驚いている…。

さて続いて向かってバルーンの左側の空間をご覧いただきたい。ここは建物の構造が写っている部位だが遠方でありかつ暗いために鮮明ではない。しかし右のS1100と比較して左のV600では上部鉄骨パイプが確認できるのに対してS1100ではかなり闇に潰れているのがお分かりだろう。
同様にほぼ全体共にV600の結果がクリアなのだが完全ではないこともまた事実だ。

v600imagescan_8.jpg

※背景の暗部の比較。左がSV600で右がS1100


それはSV600で撮った写真の下部が上部から中程と比較して些か…僅かにクオリティが落ちているようだ。本例は上がS1100で下がSV600だが、共に写真の一番下の部分である。

v600imagescan_9.jpg

※被写体(紙焼き写真)の最下位部位の比較。上がS1100で下がSV600


例えば左右に貼られている横断幕にプリントされている “Macintoshで中国語” といった部位を比較すると弱冠だがS1100の方が鮮明でありSV600はボケが認識できる。これはSV600の読み取りの場合、V600の読み取りヘッドがV600から見て手前…すなわち写真の上部から下部へと移動しながらスキャニングを行うわけで…すなわちこの場合、写真の下部はヘッドからの距離が遠いことが影響しているのではないか…。
無論これは粗探しのレベルの話で、一般的な使い方では何の問題もないと思うが、あくまで比較するとこうした違いが分かるのが面白い。
このことは原稿の置き方にも関わってくることを認識せざるを得ない。どういうことかといえば、例えばA4判の写真をスキャニングするときSV600に対して縦に置くより横に置いた方が僅かな違いではあるだろうが画質は均一になるのかも知れない。

ともあれScanSnap SV600をあれこれといじくり回していて気がついたことだが、この製品の使い勝手は難しい点はないものの機能やスペックの癖を考えると奥が深い。それだけにユーザー側の工夫でよりよい結果を生むように思える。それがまた楽しい!



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Author:mactechlab
主宰は松田純一。1989年Macのソフトウェア開発専門のコーシングラフィックシステムズ社設立、代表取締役就任 (2003年解散)。1999年Apple WWDC(世界開発者会議)で日本のデベロッパー初のApple Design Award/Best Apple Technology Adoption (最優秀技術賞) 受賞。

2000年2月第10回MACWORLD EXPO/TOKYOにおいて長年業界に対する貢献度を高く評価され、主催者からMac Fan MVP’99特別賞を授与される。著書多数。音楽、美術、写真、読書を好み、Macと愛犬三昧の毎日。2017年6月3日、時代小説「首巻き春貞 - 小石川養生所始末」を上梓(電子出版)。続けて2017年7月1日「小説・未来を垣間見た男 スティーブ・ジョブズ」を電子書籍で公開。また直近では「木挽町お鶴捕物控え」を発表している。
2018年春から3Dプリンターを複数台活用中であり2021年からはレーザー加工機にも目を向けている。ゆうMUG会員