犬の寿命が我々人間の寿命より短いのは何故なんだと考えたことはありませんか。無論オトーサンだって長い短いはともかくもやがてラテも全ての生き物と同じように旅の終わりを迎えることは知っていた。しかし "たかだかワンコ" だというのにラテの死がこれほどオトーサンを深く打ちのめすとは思わなかった…。
このことはオトーサン自身が驚いている。まるでラテの死と一緒にオトーサンの長い人生の歳月まで失ってしまった感じなのだから。

ときにオトーサンの言うことを聞かず、我が儘なワンコだったラテ。しかし彼女が逝ってしまった後、オトーサンがどれほど深く悲しんでいるのか、辛い思いをしているのかをラテが知らずに済んだことは幸いだった…。
普段はオトーサンの存在などまるで空気のようにしか考えていないフシもあったが、いざ怖い目にあったり嫌な目にあうと抱っこを要求するラテだった。

あの3月11日の大地震の日も揺れと同時にオトーサンはラテにリードを着け玄関のドアを半開きにしたままその間にラテと立ちすくんでいた。いつものように暫くしたら揺れは収まるだろうと思っていたが揺れは一層激しくなってくる。
戸建ての家はどこからか「ピシッ」といった音がし始め、オトーサンは家が崩れてきたら外に飛び出そう、それ以外は電柱が倒れてくるかも知れないし不用意に外に飛び出さないようにと、どちらにも対応できるようにラテと怯えながらも身構えていた。
気がつくとラテは靴を履いたオトーサンの片足に自分の前足1本を乗せ、体をオトーサンの足に寄せているのがわかった。

尋常でない揺れと共にもしかしたらオトーサンの緊張が伝わったのかラテも怯えているのがわかった。「大丈夫だよラテ、一緒にいるからね」と激しい揺れにもかかわらずラテを愛しくその胴体に腕を回した思い出がある。
要は普段は無関心のようだが、いざとなれば飼い主のオトーサンを頼りにするしかないのがラテの宿命ではあるものの普段見せない態度にオトーサンはうるっと来たのだった。
それにこちらが思っている以上にラテはオトーサンや女房の言動に注視していることもわかる。女房が泣き真似をすればすぐに飛んできて口元を舐めに行く。
言葉は話せないし我々と同じ感情の表現はできないものの、ラテは我々の言うことをわかっているしその意図も理解しているように思えた。
そんなラテだが…そんなラテを残して万一オトーサンが先に死んだらラテはどうするだろうか。いなくなったことは理解できても、しばらくすれば姿を現すかも知れないと心を痛めながら待つのではないか。まさか、さすがに死というものを理解するのは無理だろうから。
有名な忠犬ハチ公の物語を持ち出すまでもなく、YouTubeなどにも最後に飼い主に会った場所に毎日出かけていきその姿を探すワンコといった話しは少なくない。

オトーサンはどうしたのか?どうして姿を見せないのか?いつ戻ってくるのか?などなどきっとラテなりの考え方で日々悲しむに違いない。もしかしたらオトーサンに嫌われ捨てられたのか…とも思うのかも。
そんなことを想像するに、オトーサンは相変わらず泣きながらではあるが「ラテ…お前が死んだのは悲しいがオトーサンより先に死んでくれてよかったんだ」と思うようにもなってきた。
ラテが居ないのは悲しいし寂しいが、オトーサンはなぜラテが居なくなったのかは理解できる。そしてラテの慰霊に毎日手を合わせ、声をかけることができるが、もしこれが反対だったならきっとラテはその命がつきるまで心のどこかでオトーサンの帰りを待ち続け、悲しむに違いない。

なにしろ15年と3ヶ月もの間、寝起きを共にし家族として慈しんできたラテだから、そのラテに必要以上の悲しみを感じ続けて欲しくないではないか。
飼い主のことは勿論、愛してくれた人間を忘れないだけでなく思いやり深いのがワンコの特徴でもある。だからきっと万物を作られた神は人の寿命よりワンコの寿命を4倍近くも短命に定めたのかも知れない。飼い主より長生きしないようにと…。
電子ピアノを手にいれて楽しむようになったが、必然的に例えばYouTubeにアクセスしてもピアノの演奏はもとより、ピアノという楽器に関する様々な情報が気になるのでよく見聞きしている。そんな中にはピアノ練習は本物のピアノでなければ上達せず…といったことを話す人もいれば、そんなことはないと電子ピアノを楽しむことに擁護する人もいて興味深い。
私事だが、当初何も考えずに安いと言うだけで88鍵の電子ピアノを手に入れた。その楽器で40年ぶりの本格的なピアノ練習を始めたわけだが、技術というかテクニックのテの字もままならないのに生意気だがタッチがどうにも気になってきた。
これがMIDIなどと接続していわゆるキーボードとしての役割なら問題なく楽しめると思うが、ことクラシックピアノの代わりとしては当然とは言え気になる点も多い。実は手に入れた製品は電子ピアノと言うよりはやはり電子キーボードというべき製品だった…。
■本物のピアノと電子ピアノの酷本的な違いとは
まず結論めくが、本物のピアノと電子ピアノの違いをおさらいしておこう…。
電子ピアノと本物のピアノの主な違いは、音の生成方法と鍵盤の感触の違いと言ってよい。電子ピアノは、サンプリングしたピアノの音色をデジタル的にシミュレートし、押された鍵盤に合わせた音がスピーカーから再生される。そして最近の電子ピアノはよく出来ており、本物のピアノのような音色を出すこともできるが、当然ながら完全に本物のピアノの音と一緒であるはずはないのだ。
なぜなら例えばグランドピアノは、弦をハンマーが打弦することによって音を生成し、弦の振動は共鳴板はもとより木製のピアノ筐体全体に共鳴することで独特な豊かで深みのある音になる。また、ピアノの鍵盤は、弦に触れる重みやレスポンスが非常に機械的でリアルであり、演奏する際に非常に感覚的な経験を奏者に提供してくれると言われている。
いまひとつ別の角度から申し上げれば、ピアノとハープシコード、オルガンは同じような鍵盤を持っているもののご承知のように別の楽器として分類されている。
それは音の出し方が違うからで、繰り返すがピアノはフェルトを巻いたハンマーで弦を叩くことで音を発するが、ハープシコードは弦を引っ掻くことで発音する。またオルガンは圧縮した空気がリードを震わせることで音を出すわけだ…。
この理屈からいっても電子ピアノと本物のピアノは音を出す仕組みがまったく別の楽器であり、ピアノの代替として電子ピアノをと安直に考えてはいけないと言うのも一理ある。
したがってとある音楽教室の先生は「電子ピアノによる練習では音楽大学への進学は無理」と言いきっているようだし自宅に電子ピアノがある場合でも本物のピアノに買い換えるよう指導する先生もいるという。
勿論これはピアノを習う当事者が音大を目指し将来ピアニストになるべく指導を受ける場合であるが、こうした点についてはもっと柔軟な考え方を持っている教師もいるようだ。
一番の問題は例え一軒家であっても都心に済む者にとってピアノを思う存分練習することは騒音の面で難しい。無論スペースと予算に余裕があれば専用の防音設備を整えた空間を作ることもできようが、誰も彼もがこうした理想的な環境を作り出すことができるはずもない。
ましてやマンション暮らしとなればなおさらで、その点電子ピアノはコンパクトで手頃な価格であるだけでなく夜間でもヘッドフォンで練習することが出来、かつ本物のピアノのように調弦といったメンテナンスもほとんど不用だ。
ということでピアノを練習し楽しむためには電子ピアノの存在はとても有り難い存在なのだ。ただし繰り返すが、本物のピアノとはそもそも音の出し方が違うため電子ピアノの音が急速に良くなってきたにしろ同じであるはずもない…。
ただし本物のピアノに拘る…拘ざるを得ないのは音楽を極め、プロになろうとする人たちでありピアノを趣味として、人生を豊かにしたいと考える人たちと同一視するのも間違っていると思う。
そういえば私自身40年程前(1981年)から近所のピアノ教室に通ったが、当時は基本的な知識もなかったため単に「なぜだろうか?」という疑問だけが残ったことがある。
それは自宅に当時として安くはないアップライト型の電子ピアノを買ってそれで練習していたが、一週間に一度ピアノ教室へ通いそこにあった本物のピアノで演奏するとどういうわけか、自宅のピアノより弾きやすいのだ。
ひとつ分かったことは自宅の電子ピアノの鍵盤はプラスチックだったが、教室のピアノは鍵盤もそのベースは木製だった。その上にどのような塗装がなされているのかは知らないものの指が滑らず、大げさに言えば鍵盤に指が吸い付く感じでとても心地よかったことを覚えている。
またいま思えば当時の電子ピアノはキーの重さは本物のピアノに似せて作ってあるもののアクションの基本はバネ式だったに違いない。
■電子ピアノにも良し悪しがある
さて、ここからは電子ピアノのアクションについて少し深掘りしてみたい。ところでグランドピアノの鍵盤がどのようなアクションで音を出すのか…といった写真や図解をご覧になったことがおありだろうか。
著作権の関係上、既存の図版を掲載するわけにはいかなかったがネットをググればピアノの構成図のようなデータは多々確認出来るので是非一度ご覧になっていただきたい。
ピアノのアクションはグランドピアノとアップライトでは大きく違うものの木材や金属製のピン、フェルトなどで構成されているがその多くの素材は木材だ。そして特にグランドピアノのそれは複雑な機構でその加工精密度はヤマハの場合5/100ミリを基準にしているという。
この微妙で精緻なアクション機構とセンサースイッチで音を出し消す電子ピアノのキータッチが同じであるはずはないが近年各メーカーが電子ピアノに "ハンマーアクション" と呼ぶピアノの機構を真似たものを研究採用するようになってきた。
ちなみに私が手に入れた前記した電子ピアノは鍵盤サイズや沈む深さ、そして重さなども実際のピアノをお手本にしているものの価格からしてその鍵盤の仕組みは一番単純なライト・ウェイト・キー方式といういわばバネで押されたキーを元の位置に戻しているものと思われる。
この他電子キーボーとのアクションとしては基本はライト・ウェイト・キーと同じながらさらに鍵盤の奏者側に慣性を付けるための重りが付けられたセミ・ウェイト・キーという方式も出て来ている。
※電子ピアノ/電子キーボードに採用されている主な三種のキーアクションを簡単な模型で説明します
そして電子キーボードのアクションとしては理想に近いものと言われているハンマーアクション方式あるいはピアノタッチ鍵盤と呼ばれるタイプが登場しているわけだが、これらはグランドピアノのタッチに近づけようと各社が力を入れている鍵盤の仕様だ。
仕組みはグランドピアノのそれと比較して大幅に簡素化されてはいるものの理屈は本物のピアノとかなり近づけて作られていて、鍵盤を押すことで重りの付いたバーへ力が加わる仕組みになっている。そして鍵盤の慣性や戻る力はすべて重り(重力)の力によるもので高速な連打など繊細な表現がしやすくなっているという。
■電子ピアノを買い換えた
最後に私自身のことをお話ししたい…。前記のことを総括すると電子ピアノは本物のピアノと同じであるはずはないことを認識した上で住宅事情などを考慮すれば電子ピアノの存在は得がたいものだともいえる。
ただ理屈が多くなるが、一般的な電子ピアノは例えばMIDIと接続して打ち込みに使うなどの際にはキーのアクションがどうのこうのといったことはあまり気にならないと思う。しかし電子ピアノを "ピアノ" としてクラシック音楽を勉強あるいは楽しみたいと考えるなら長い目で見てライト・ウェイト・キー方式ではなくピアノの感触に近いというハンマーアクション方式の電子ピアノを使うべきだということになる。
そして私の様に単にクラシックあるいはジャズピアノの演奏を楽しむならそれで良いが、もし貴方が将来ピアニストになりたいという夢や希望があるなら、日々の練習は電子ピアノにしても週に一二度、いやできるだけ多く本物のピアノに触れ、それで演奏を奏でる機会を忘れてはいけないということになる…。
さて、私の使ってきた電子ピアノは鍵盤のタッチによる強弱も実際は4段階程度にしか表現できないしバネ式の宿命か、とある刹那に音が出なかったり鍵盤の奥を押さえるのがかなり重かったり…を感じる。勿論人前で演奏することもないしあくまで自分の楽しみのためにチャレンジしているわけだし、電子ピアノのスペックをどうこういう前に己の技量が追いついていないことは十分承知だが、少しでも納得出来る環境で楽しみたいからとこの度思い切って電子ピアノを買い換えることにした。
なにしろ最初は惚け防止も含めて単純にピアノ練習をと軽く考えていたが、少し進めて行くにつれいわゆる「はまって」しまったのだ(笑)。
新しい電子ピアノへの拘りは88鍵は当然だが主に二点だ…。ひとつは無論ハンマーアクション機構を持つこと、そしてせっかくだから設置した際にアップライトピアノらしさをと鍵盤を支える左右の板に装飾的な脚部を持つデザインの製品にした。

※Donner 電子ピアノ 88鍵盤 DDP-90
そうした点を踏まえて選んだ "Donner 電子ピアノ 88鍵盤 DDP-90" はペダルがダンパーに加えソフト、ソステヌートを使うことができる3本ペダルであること、鍵盤カバーを開けると譜面立てとなり、なによりもグランドピアノのタッチを再現したという…鍵盤の重さを低音部では重く、高音部では軽くなるように、そして音域によって弾きごたえを段階的に変化させ、高い連打性能はもとより自然なタッチ感を実現した「ウェイテッド・ハンマー・アクッション」を搭載していることだ。

※蓋をした状態のDonner 電子ピアノ 88鍵盤 DDP-90
また鍵盤を保護するキー・カバーを閉じるとフラットになり、簡単な書き物テーブルとしての利用も可能な点も気に入った。なにしろ狭い部屋だ…簡易の机が増えた感じで嬉しいし、そのキー・カバーにはピアノ・フィンガーガード機構が付き、フタで指をはさむ心配がないという。

※蓋で指を挟まないピアノ・フィンガーガード機構が付いている
こうしたスペックでも奥行きはわずか35cmというスリムさなのもよい。
肝心の音だが、以前の電子ピアノがフランスのDREAM最新音源を採用してのに比べ、詳しい事は不明ながらDonner 電子ピアノ 88鍵盤 DDP-90は独自のAWMサンプリングを採用とのことで一種類のグランドピアノの音が採用されている。

※電源スイッチと音量調節ダイアル
■Donner 電子ピアノ 88鍵盤 DDP-90の実際
さて手元に届いたのはDonner 電子ピアノ 88鍵盤 DDP-90という製品。88鍵なのは当然としても一体型(組立式)のスタンドがありこの価格にしては立派なアップライト型ピアノの雰囲気を味わえる。

一番の特徴はグランド・ピアノと同様に低音部では重く、高音部にいくほど軽くなるタッチを再現したウェイテッド・ハンマーアクション鍵盤を採用している点だ。また独自のAWMサンプリング技術により一種類のグランドピアノの音源を採用しており、一般的な電子キーボードのように複数の楽器音源は持っておらず、あくまでピアノを再現することに注視している製品である。
① デザイン
簡易形の台に電子ピアノを乗せて利用していた身としてはDDP-90の家具調デザインは本物のピアノに触れているように思え、視覚的にも楽しんでいるし嬉しくて仕方ない。特に簡易形とはいえ奥行き35cmといった制約の中でも装飾の足があるのも最高。

② キータッチ
鍵盤を始めて押した瞬間に大げさかも知れないが「あっピアノだ!」と感じた。グランドピアノにせよアップライトピアノにせよ、指の記憶が宿った感じで明らかに前記電子キーボードのそれとは違う。搭載されている「ウェイテッド・ハンマー・アクッション」は期待通りだった。

③ 音
詳しいことは不明だがこれまでの電子ピアノがフランスのDREAM最新音源の採用だった。しかしDonner 電子ピアノ 88鍵盤 DDP-90は独自のAWMサンプリングで一種類のグランドピアノの音源を搭載している。為に確かに内蔵された10W×2個のスピーカーからの音は「これぞピアノの音」だと思えるリアリティを感じさせる。また念のためだがこのDDP-90はピアノ音源のみ搭載でよくある128音…といった他の楽器音のバリエーションは含まれていない。これこそピアノであることを主張しているようにも思える。
④ 蓋がある利点
これは汚れやアクシデントから鍵盤を守ってくれるだけでなく蓋を閉めると奥行き20cm程度はフラットになり、ちょっした物書き程度が可能になるので嬉しい。ただしこの上で珈琲など飲み物を飲むのは厳禁である。

またピアノの蓋はよくカタンと落ちるように締まり、ために手の指を挟んで酷い目にあった経験はおありだろうか…。しかしこのDDP-90は鍵盤内右サイドにカバーをゆっくりと閉じる特殊なフィンガーガード装置が付いているため安全である。
⑤ 3本ペダル
ダンパーに加えソフト、ソステヌートを使うことができる3本ペダルが装備されているので本格的な練習も可能。
⑥ インターフェース
MP3入力端子、MIDI端子、サステインペダル入力端子、オーディオ入力端子、オーディオ出力端子、2つのヘッドホン出力端子(6.35mm)が装備されている。
⑦ 本体サイズと重量
137×35×78cm 33Kg
⑧ 組立について
私はなんとか…なんとか一人で組み立てたが、やはり二人で組立や移動をすべきだ。組立そのものは難しくないがサイズが大きいし雑に組み立てようとすると両脚と3本ペダルのバー部位にしてもネジ留め位置の板を割ってしまう可能性もある。また台を組立後、鍵盤本体部位を乗せるにしても重さは25kg以上はあると思うので一人だと腰を痛める可能性大。
なお同梱のマニュアルは英語で日本語表記は無いが、Amazonの製品ページから日本語マニュアル(PDF)をダウンロードすることが可能。
■総括
こうしてコスパも超良い電子ピアノの賛美ばかり書くと「本物のピアノも知らずいい気なものだ」とか「本物のピアノで練習できない者の物言い」などと思われるかも知れない。しかし私はグランドピアノを知らないで物言いしているわけではない。若い時代に1年半ピアノ教室に通いそこにあったグランドピアノやアップライトピアノで練習した経験も持っている。それに確かに私だって自宅にグランドピアノを置けるものならそれに越したことはないが、無いものねだりしても何の益もないし物事には常に「上には上が」あるものだ。したがって己が実現可能な範囲、できる範囲のことで人生を楽しむのが正解だと考えている…。
というわけで、鍵盤の感触や力の入れ具合がこれまでとは大きく違ったので練習してきた曲も最初から指使いを含めて練習し直す必要性を感じている。またピアニッシモからフォルテに至る音の強弱もこれまでとは格段の違いで表現できるようだし、まったく使いこなせていないものの、ペダルはダンパーに加えソフト、ソステヌートを使うことができる本格的な3本ペダルなのもこれから様々な曲を練習する際に違和感なく楽しむことができるに違いない。
それほどDonner 電子ピアノ 88鍵盤 DDP-90は良い意味でこれまでの電子ピアノとは違いグランドピアノのそれを思わせるタッチにはゾクゾク感が止まらない(笑)。これは期待以上であり長い付き合いになりそうだ…。
オトーサンが毎日朝起きるとまずはラテの慰霊に「ラテ、おはよう。今日もいい子でなっ」などと声をかけてコップの水を取り替えるという毎日だ。ラテの姿は見えないがそこに腹ばいになっているかのように「これからオトーサンたちのご飯だ。おいで…」などとも声をかける。
バカらしいと笑われようが、それだけオトーサンの心の中にはいまだにラテの生々しい姿が生きづいているのだから仕方がない。
ワンコの飼い方にも飼い主の都合や考え方によりそれこそ様々なバターンがあるだろう。大別すれば「外飼い」と「室内飼い」ということになるか…。

ともあれ戸建てにしろマンション住まいにせよオトーサンたちにとってラテを家族に迎えるにあたり、当然室内飼いとして考えていたし事実その形を最後まで貫いた。まあベランダに犬小屋を作って…という例もあるそうだが、何しろオトーサンたちはラテを飼うために埼玉から多摩の地に引っ越し、それに相応しいであろう住居も探したのだ。
最初は二戸が繋がっている戸建て形式の賃貸住宅だった。二階建てだったことでもあり一階のリビングすべてはラテのテリトリーとして解放した。広さは8畳程度はあったはずだ。
物の本によればワンコにとって広いエリアは落ち着かないとあったが、そこの窓際に排泄シートとクレートを置き、常に新鮮な水を補給しておくことに注視した。

※ビーグル犬のハリーちゃん、コーギー犬アポロちゃんと
ただしリビングからキッチンに至る箇所には柵を置き、普通はリビングから出られないようにしていた。そして二階および其処に至る階段は使用禁止とした。
ひとつには狭い急勾配の階段はワンコ、特に子犬にとって簡単に登れるものではなかったし上り下りさせると足腰に負担がかかると物の本にも書いてあったからだ。
また当初はすべておいてワンコを飼うと言うことがどのようなことなのかについて経験が無かったから、室内を綺麗にするという意味においてもラテの入室を禁止するエリアがあった方が良かろうと考えていた。したがって日中はもとより夜寝る際にもラテは一階のクレートに入り寝ることにしていたし、我々夫婦は二階で寝ていた。

※時に激しい遊び方も…
ただしご想像いただける通り、いつもいつもラテが大人しく一人で寝るとは限らず、寂しいのか不安なのか…鳴き声を上げることがあるとオトーサンは昼夜に限らず二階から階段を降りてラテの様子を覗きに行くこととなる。とにかくラテのテリトリーの範囲には危険な物は置かないようにしていたが、物音を立てたり声を上げればやはり気になるので実際にはかなりの頻度でオトーサンは階段の上り下りをするはめになり、事実そのために左膝を痛めてしまってこともあった。
ということで当時すでにオトーサンは退職の身であり、昔の仲間や知人たちからの仕事の依頼にしても特別の場合を除いて自宅でやっていたので文字通りラテとは24時間常に同一空間で生活していた。ただしそれだけに当初心配したことのひとつに「分離不安」があった。

※落ちていたフリスビーを大切に咥えて公園まで持ち込もうとする
飼い主と離れて過ごす不安から、精神的・肉体的に不調になり、そのストレスが原因で様々な問題行動を起こしてしまう状態を「分離不安症」や「分離不安障害」と言うそうだが、ときに食欲が低下し、下痢や嘔吐をするだけでなく部屋の中を荒らして物を壊したり自分の肉球などを囓る…などなどといった問題を起こすという。
特にラテはそもそもが保護犬であり、捨てられたのか迷子になったのかはともかく新たな飼い主として巡り会ったオトーサンたちの動向には敏感だった。
推察するに散歩中に念のためとどこかの手すりにリードを繋げたりすると異常に不安を見せるワンコだった。また捨てられるのか…と心配になるのかも知れない。
そこで家族に迎入れた最初期から分離不安に対する訓練をすることにした。

※散歩途中の拾い食いも多く、マズルをこじ開けて吐き出させるのに苦労した
訓練というと大げだが、要はオトーサンが玄関のドアを開けて外に出ても必ず戻ってくると信じ込ませるわけだ。その具体的な方法は物の本にも書いてあった。
ラテの注意を引いた後にオトーサンは玄関のドアを開け「ラテ、行ってくるよ」と声をかけてドアを閉める。最初は15秒程度の短い時間でドアを開けて「ただいま」と室内に入る。無論ラテは猛烈に吠えた…。
それが次第に30秒、一分、五分と少しずつ繰り返しながら不在の時間を延ばしていくというやり方だ。
結果だが、ラテはオトーサンは戻ってくる事を学習し安心ようで、後を追ったり吠えたりはしなくなった。しかし「必ず戻ってくる」という信頼も度を超すと飼い主にとって面白くないことになった。なにしろ四歳とか五歳頃になると例えば数時間留守にして戻り、玄関のドアを開け「ラテ、帰って来たよ」と声をかけても、リビングに腹這いになっているラテは起き上がる気配もなく、ましてや顔をこちらに向けることもなく平然としているではないか。これまたオトーサンとしては少々寂しいものがある(笑)。
この三月、40年ぶりにピアノを再開した。音楽、それも楽器を演奏するのが好きでクラシックギターをはじめフメランコギターを好んでいたが腱鞘炎のためフレットがきちんと押さえられないときがあり諦めざるを得なくなった。その後弦の張りが弱いリュートを楽しんできたがどうしたことか急にピアノをやりたくなった。

クラシックギターは高校時代から独学だったが、実は1981年から1年半ほど近所のビアノの教室に通っていた時代があったのだ。そのとき、先生はポピュラー音楽を勧めてくれたが私は頑なにクラシックを選んだ。ためにバイエルを終えツェルニーの半分ほどまで行ったところでパソコンの仕事が優先せざるを得なくなってピアノは埃をかぶることに…。

※1981年に手に入れたローランド製電子ピアノ
なんで今年後期高齢者になる歳なのに今更ピアノをやりたくなったのかは自分でもよく分からない(笑)。
ただし前記した弦楽器が指の腱鞘炎のため、思うように動かないのがひとつの原因で、キーボードなら問題なく打鍵できるからでもあるに違いない。
そしてYouTubeなどで時折見てきた魅力的な演奏に惹かれたということもある…。
またやはりこの歳になるとボケになるのが怖い。本人はともかく女房に多大な迷惑をかけることになるだろうし、自分にしても可能な限り知的な生活はしたいものだ。
廻りの人たちは「多趣味で常に好奇心を持っているお前なら惚けないよ」と言ってくれるが、本人が一番危機感を持っているわけで承知のように指先を使うピアノは惚け防止にも効果があるものと信じているからでもある。事実ピアニストの多くは高齢になっても矍鑠としている例が多い。
ともかくピアノを…といってもまさかマンションに本物のピアノという訳にもいかないし一時の気の迷いという可能性もある。そして何よりも予算があるので当然?の結果として電子ピアノをと考えて探して見た。
その昔はアップライト型のローランド製電子ピアノを使っていたが、機械だらけの作業部屋には入らないだろうとまずはコンパクトな製品をと考えたが、驚いたことに一昔では考えられない安価で良さそうな製品が多々あることに気がついた。
そんな折り、Twitterで松尾公也氏が紹介されていた電子ピアノが良さそうだと即買いした次第。

※専用台にセットしたNikoMaku 電子ピアノは88鍵。背面にあるのは空気清浄機
なにしろこのNikoMaku 電子ピアノは88鍵、鍵盤のサイズも本物のピアノと同じでそのタッチも良いしダウンウエイトもそれなりの重さを持っている。しかも2万円以下なのだ…。
これを狭いとは言え、メインコンピュータの席の左側に設置し、思い立ったらすぐに弾けるようにと工夫した。
また内蔵スピーカーは小さいが音もなかなかに良いし利用時のほとんどはヘッドフォンを使うのでほぼ問題はない。

※左右にあるスピーカーもまずまずの音だ
ただし当然のこととは言え完全無欠であるはずはなく、MIDIなどを通してキーボードとして使うにはまったく問題ないと思うがこと私の様に「ピアノの代用品」として考える向きには多々問題もある。
一番の問題はこの種の安価な電子ピアノの鍵盤の多くはバネ式のはずだし本物のピアノはダンバーとハンマー等から構成される複雑なハンマーアクションなので本製品が12レベルの指力感知レベルを持っているというものの本来はタッチはもとより微妙なニュアンスはピアノと比べようがない。また連打をする際に音が出ないケースもあり得るし鍵盤の中央から奥を押さえるには些か力が必要であり弾きにくくなる。
繰り返すが要はピアノの鍵盤はハンマーアクションが基本。しかし安価な電子ピアノなどは簡便なバネを使っているからだが。今少し…後2万円ほど出せば簡易電子ピアノでもハンマーアクションの製品もあったのでちょっと早まったかも知れない。ただし私の力量では例えグランドピアノがあったとしてもその魅力とスペックを行かせるはずも無く、ここしばらくはこの電子ピアノで練習し、可能な範囲で早めに少しでもピアノのタッチに近づきたいこともありハンマーアクション式鍵盤の製品に買い換えようと考えている。
まあ、別に人に聴かせようとかコンサートを開くとかを考えているわけではなくあくまで己自身の楽しみのためなので懲りすぎは要注意かも(笑)。
で、電子ピアノそのに関してはまずまず満足しているし実はそれ以上に思わなかった成果が出た。それはiPadの活用である。
iPadは昨年、別の用途で手に入れたが、電子ピアノがBluetooth対応でiOSアプリをサポートしているという事を知り早速手元にiPadを電子楽譜として活用しようと試みた。

NikoMaku 電子ピアノ 88鍵盤 SWAN コンパクトとiOS App「楽譜スキャナ」で紙の楽譜をiPadのカメラ(別途フラットベッドスキャナ等を使う方がクオリティが高くなる)で読み取れるだけでなくその曲をNikoMaku 電子ピアノで自動演奏してくれる。
いまどきのAIの時代、驚く事ではないかも知れないが、これは素敵だし例え機械的な音出しだとしても音の流れを確認出来るのは心強いし、さらにこのiPadがあればいちいち閉じられた楽譜を取り出す必要もなく好みの楽曲を多々納め、必要時に簡単に表示利用が出来る。
当初いまさらクラシックでもないからと簡単なジャズを弾きたいと練習をはじめた。そして何とか簡素に編曲された「枯葉」は弾けるようになると身の程も知らぬ思いが膨らんでくる。それは生涯一度でよいから…何の曲でも良いから…ショパンの曲を弾きたいという願望だ。

※ジャズの楽譜とショパンの曲集らの楽譜を揃えてみたが…
ということで駄目で元々…との覚悟でショパン前奏曲ホ短調Op.28 No4(パデレフスキ版)に取り組みはじめた。短い曲なので二週間ほどでいわゆる譜読みはでき、たどたどしく、突っかかりながら音出しが出来るようになったが、さてこれが音楽となるにはまだどれほどの時間が必要なのか…分からない。
ともあれ、大昔のこと…朝、目が覚めると狭い部屋の片隅に置いたMacintoshが眼に入りほっこりし意欲が湧いたものだが、昨今は起きて仕事部屋に入ると設置した電子ピアノがまるで歓迎してくれるように鎮座していて「Wishing you a good day !」と語りかけているように思えて嬉しい。


寒さが緩んできたと思ったらここのところ天気が悪く散歩の機会がなくなったせいか、足腰の具合がよくない。日常歩くと言えば近所に食料品や日用品を買いに出かける程度だから一日の歩数をiPhoneで確認しても3000歩程度でしかない…。
思えばラテがいたときには台風だろうと雪だろうと、ともかくは一緒に外へ出ていたわけで今更ではあるがよくもまあ続いたなあと思う。
ラテの体力が弱った晩年はともかく天気がよければ1時間は歩いたものだ。いや、歩くだけでなく時にはラテと一緒に走った走った。

※好奇心旺盛なラテでした
物の本によればワンコとの散歩は飼い主とワンコのコミュニケーションの基礎を確立する一番大事なことだとあったのでオトーサンはラテが我が家に来た日からしばらく朝昼そして夕方と一日三回の散歩を己に課した。
しかしオトーサンはワンコを飼うのは初めてであり、幾冊かの本からの知識しかなく生身の子犬がどのようなものなのかも知らなかった。

※乞田川沿いの散歩
いまでもラテとの最初の散歩を覚えている…。
首輪にリードを付け、飲み水と排泄処理のアイテムをショルダーバッグに入れ勇んで自宅を飛び出した。ものの本によればリードの捌き方のページがあり、ワンコを飼い犬の脇にぴたりとつけて同じスピードで歩く訓練をしろとあったが、道路に出た途端にそんなことは忘れた!
なぜならラテがいきなり走り出したからだ。
まだ体重が9kgほどだったが、その力は想像以上のものでありリードを引いて止まらせるのにしばし時間がかかった。そして子犬は皆そうなのかは知らないがまあまあ好奇心旺盛で鳥の声が聞こえれば後ろ足立ちして電線を見上げるかと思ったら舞ってきた落ち葉を追いかけるといった有様で一時もじっとしていない…。

※引き取ってから2ヶ月ほどのラテ
一番困ったのは 拾い食いが激しかったことだ。好奇心と直結しているのだろうか、道端に落ちているものなら何でも口に入れてしまうほどで煙草の吸い殻やガラスの破片を口にしたときオトーサンは決死の覚悟でラテのマズルを押し開けて吐き出させ水でウガイさせた。
オトーサンが散歩途中、廻りの風景などに目が行かず路面ばかりを見る癖がつき、それはいまでも後を引いているのはこうした理由による。

※散歩に持参するゴムボールは一瞬でパンク!
ともかくパワフルで気に入らないとオトーサンの腰を後ろ足立ちし、両前足で突き飛ばすこともした(笑)。しかしオトーサンはリーダーシップを取るべしとの本を頼りにまずは良い意味でラテの制御を試みたが一番の悩みは甘噛みだった。家中の木製で口にしやすいものなら何でも囓ったしフローリングの床にまで歯を立てた。無論オトーサンの両手は傷だらけだった。

※目を離したスキにオトーサンのノートパソコンバッグを囓る…
さすがに噛みつくことはしなかったが歯を当てられただけで両手は無残なことになっていた。あるとき乞田川の散歩で知り合ったビーグル犬の飼い主さんに愚痴を言うと「小一年すれば自然に止む…。後でその頃が懐かしくなるほど大人しくなりますよ」と慰められた。
そんなことになるのかは半信半疑ではあったが、確かにいま…その頃を懐かしく思い出しながらこの原稿を書いているオトーサンでした…。