1枚の写真やイラストが喋り出す「CrazyTalk 7 for Mac」ファーストインプレッション

Macに限らないが、パソコンの醍醐味はインターネットとかウェブだけではない。遊びにしろ仕事にしろ創造的なコンテンツ作りはパソコンの有難味を再認識させてくれるわけだが、今回ご紹介する「CrazyTalk 7」はソフトウェアの可能性と凄さがあらためて身にしみてくる。



さて「CrazyTalk 7」というアプリケーションは人や動物の顔写真やイラスト、すなわち一枚物の静止画から動きのあるアニメーションを作り出すことができるソフトウェアだ。無論そのキャラクタに喋らせたり唄わせたりもできるという代物である。

CrazyTalk_1.jpg

※CrazyTalk 7 for Macのパッケージ


要するにコンピュータネットワークなどで自身の分身として使うキャラクター、すなわちアバターを作ったりプレゼンテーションでひと味違った解説者として使うなどアイデア次第でユニークな活用方法が広がる…。
無論アニメーションは専用のアプリケーションがあるし、例えば3Dアニメーションを作るツールもあるものの「CrazyTalk 7」最大の特徴は、例えば実写の顔写真1枚から目や口はもとより、豊かな表情を持つアニメーションが作れる点にある。

したがって自分自身の写真、家族の写真、愛犬や飼い猫の写真などなどが生き生きと喋り歌い出すわけだ。そしてその製作過程が基本的に容易なのが売りである…。
ただし使い方の概要に入る前に一番重要な事を記しておきたい。それはキャラクタとなるべく写真についてだ。
「CrazyTalk 7」の性格上、それらの写真は人間でも動物でもほぼ正面からのものでないと使える結果とはならないのでまずは素材の段階で選択が必要である。

では早速使い方の概要をご紹介しよう。
最初の例は基本中の基本となるべく人間の顔を素材に使ってみたい。しかし著作権とか肖像権をクリアし、かつ正面からクリアに写っている肖像写真というのも簡単に見つからなかったので3Dフィギュアソフトの「Poser」でそれらしい人の顔をレンダリングし元データとして使ってみることにした。

CrazyTalk_5.jpg

※まずはPoserでレンダリングした1枚の男性データをJPEGファイルとして保存して「CrazyTalk 7」で喋らせてみる


なにはともあれ、この1枚のビジュアルから生まれた動画をご覧いただきたいと思う。
素材は当然のことながらJPEGの静止画一点だが、こんな感じのアニメーションが容易に作れるのが「CrazyTalk 7」なのだ。



※「CrazyTalk 7」で基本的な表情と自動リップシンクを使いテキストを喋らせた例


作り方だが、まずは「CrazyTalk 7」を起動しアプリに素材となる画像を読み込み、必要なら色合いの編集やトリミングを行う。
続いて画面の指示に従い、両目と口元の両端を表示する番号が記されている点をドラッグ移動してそれぞれの位置に置く。

CrazyTalk_12.jpg

※両目と口の両端の位置を指定


続いて顔の輪郭、眉毛、目、鼻、口といった位置をコントロールポイントを操作しながらなるべく正確に輪郭上に配置する。特に両眼と口は不正確だと後でおかしな表情になるので拡大機能を使うなどして正確に作業する。なおこの機能は「基本」の他により複雑な設定が可能な「詳細」機能に切り換えて作業も可能だ。

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※顔のフィッティングエディタで各部位の位置と形をなるべく正確に指定する


なおコントロールポイント操作モードでは設定が間違いなくできているかをシミュレートできるアニメーションプレビュー機能があるので簡単な動作をさせて微調整することになる。

続いて顔の向きを十字のマスクをコントロールして合わせる。キャラクタの各位置合わせはこれで終わりだが重要な設定が残っている。

CrazyTalk_14.jpg

※顔の向きを十字のマスクで合わせる


ひとつは目の処理だ。目の処理は元データのビジュアルをそのまま使うケースと眼球を「CrazyTalk 7」のテンプレートから選ぶ方法がある。テンプレートから適切な眼球データを選択する場合は眼球のサイズや向きなどを調整できるが、本例ではレンダリングした人物の目がはっきりしているのでこのビジュアルのまま先に進むことにした。ただし口を開いた際に歯が見えないのは不自然なので、これまた「CrazyTalk 7」のテンプレートに備わっているものから適当な歯を指定し、サイズや角度を微調整する。

CrazyTalk_15.jpg

※キャラクタに歯を設定する


後は本例ではテキストトゥスピーチ エディタで喋らすテキストを入力し、イメージに合う男性のボイスモードを選んでピッチやスピードを確認すれば完成だ。またリップシンクは自動のままとした。なおマイクから録音したりサウンドファイルを読み込むこともできる。

CrazyTalk_17.jpg

※本例ではテキストトゥスピーチ エディタで英文を入力して喋らせた


勿論おかしな点があればそれぞれの機能モードに戻って手直しする。そして必要ならタイムラインを表示させて各要素のタイミングを編集したりBGMの挿入、あるいは背景をマスキングして別の写真やグラフィックと合成するなどを行うことができる。

CrazyTalk_18.jpg

※動画とサウンドの詳細なタイミング設定はタイムラインで行うことができる


最後にムービーとしてエクスポートすれば完成だ。
ただし「CrazyTalk 7」には今回触れない魅力的な機能が満載だし、正直独特な癖といったものも感じる。その辺は実際にアプリを操作し機能を追いながら身につけるしかない…。

さて「CrazyTalk 7」の面白いところは人間の顔だけではなく漫画の主人公や動物も扱えることだ。しかし特にマズルが長い犬のような場合は正面よりやや上向きでかつ口が開いていない写真がベストなのでこれまた素材を用意するのが大変かも知れない。
ここではこんな程度の事は簡単にできますよ…という意味で我が家の犬の写真を使った例をお見せしたい。

CrazyTalk_4.jpg

※この無愛想な表情の愛犬の写真がどのように動くかに注視していただきたい(笑)


本例ではあえて声、サウンドは入れていないがたった1枚の変哲も無い写真からこれだけ動きのあるアニメーションができるということをご理解いただければ嬉しい。
注意点としてはリアルな表現を求めるなら口元や目元に大げさな動きをさせないことだろうか…。大きな動き与えるとどうしても粗が目立つからだ。



※オーバーなアクションを控えればなかなか自然な動きが得られている


なお、現在当該ブログのサイドメニューに組み入れてある小さな動画はここでご紹介した作例をサイズならびにフレームレートを調整し、別途GIFアニメーション作成ソフトに渡して形成したものである。

3つ目の作例は前記したPoserでフィギュアをレンダリングしたものだが、キャラクタはリアルな人間の顔ではなくデフォルメされた人形の顔である。

CrazyTalk_8.jpg

※今度は人形の顔を例として表情を付けてみる


この作例の特長は眼球を一作目の人間の例とは違い、テンプレートから選択している点だ。したがってまつげやアイシャドーといったコスメチックも付加されている。ただし歯はあえて指定していない。

CrazyTalk_26.jpg

※コンテンツマネージャに用意されている眼球および眼のデータから適当なものを選ぶ


またテンプレートにあった適当なスピーチをこれまた適当な声に編集して使っている。オーバーな眼球の動きがなかなか面白いと思うが、いかがだろうか…。



※どこか妖しげな雰囲気が出ていれば目的通りなのだが(笑)

最後にコミック調で描いた女性の絵を喋らせてみた。この絵はもともと私の会社で開発した「エージェントメーカー」というMac版アプリケーションを商品化した際にデザイナーに描いていただいたものだが、その1枚の絵を「CrazyTalk 7」で喋らせてみたらどうなるか…。

MM.jpg

※コミック調で描いたイラストを「CrazyTalk 7」でアニメ化するとどうなるか...


ここではオリジナルな絵に「CrazyTalk 7」の眼と歯を組み入れてアニメーション化してみたが、10数分の作業でまずまず生き生きとした動きと喋りが付加されるのだから素敵ではないか。



※マリリンモンローを意識したコミック調のイラストを使った例


ということで取り急ぎ「CrazyTalk 7」で作った4つの例をご紹介したが、繰り返すが「CrazyTalk 7」の妙はたった1枚の写真やイラストから表情豊かなアニメーションが作れ、かつ音声も録音したりデータをインポートしたり、あるいはテキストを喋らせたりして、かつリップシンクも可能なことだ。できればバストアップの場合、簡単で良いからボディも動きが付けられたらより面白いと思う。
それと写真やイラストに限らず、1枚のデータから動画を作る制約上、眼鏡をかけているものは避けるべきだ。

なお、まだ試していないが「CrazyTalk 7」の最新バージョンでは作ったアニメーションをiPhoneやiPadに渡し、別途iOS版の「CrazyTalk」(有償無償アプリがある)で指で動かしたり、ガジェットを振るとアニメーションが動いたりといった楽しみ方もできるようだ。
久しぶりに一日、我を忘れて楽しんだ「CrazyTalk 7」であった :-P

CrazyTalk 7


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Author:mactechlab
主宰は松田純一。1989年Macのソフトウェア開発専門のコーシングラフィックシステムズ社設立、代表取締役就任 (2003年解散)。1999年Apple WWDC(世界開発者会議)で日本のデベロッパー初のApple Design Award/Best Apple Technology Adoption (最優秀技術賞) 受賞。

2000年2月第10回MACWORLD EXPO/TOKYOにおいて長年業界に対する貢献度を高く評価され、主催者からMac Fan MVP’99特別賞を授与される。著書多数。音楽、美術、写真、読書を好み、Macと愛犬三昧の毎日。2017年6月3日、時代小説「首巻き春貞 - 小石川養生所始末」を上梓(電子出版)。続けて2017年7月1日「小説・未来を垣間見た男 スティーブ・ジョブズ」を電子書籍で公開。また直近では「木挽町お鶴捕物控え」を発表している。
2018年春から3Dプリンターを複数台活用中であり2021年からはレーザー加工機にも目を向けている。ゆうMUG会員