今更のApple II plus幻想
巷では過日Appleがスペシャルイベントで発表した iPad Air やMac Pro、そしてアップデートされたRetinaディスプレイモデルのMacBook Proなどの話題でもちきりだ。しかし私はそれらに目もくれず、世界最初のパーソナルコンピュータと称されるApple II スタンダードとApple II plusをお馴染みのVintage Computer社から入手し頬ずりしたいほどに喜んでいる。
まず今回は少々マニアックな…そして今更の話題かも知れないが、Apple II plusをご紹介してみよう…。
私が1980年前半手にしたApple II は “Apple II J-plus” という製品だった。これはApple II plusのF8ROM一部をカナ表示用に書き換えたバージョンだったため、一部ソフトウェア互換に問題が生じることもあった。その後登場した最新機種 Apple IIeを机上に置いてからは埃を被りそして処分してしまった…。
近年Apple IIシリーズの製品としてはApple IIe およびApple IIcのみを所有してきたが、その素敵なフォルムは勿論、歴史的な製品として是非Apple II スタンダードとplusを手に入れたいと考えていた。それが今回縁があって叶ったわけだ。

※Apple II plusの筐体は現在の視点からも美しい【クリックで拡大】
ただしこれらのマシンを動作させて楽しむつもりはいまのところない(笑)。可能ならBASIC辺りを起動してみたいがあくまでパーソナルコンピュータ史に残る歴史的な製品としてそのビジュアルを楽しみつつ細部を再勉強してみようかと考えているところである。
1980年代、私はこのApple IIに夢中だった。ハードウェアの限界まで様々な新しいことを試したくて大枚をはたきApple IIでビデオデジタイザ、シンセサイザー、カラーアニメーション、ライトペンシステム、3D、音声認識と音声合成、表計算、ワープロ、パソコン通信そしてCP/Mを走らせPascalやLOGO、LISPといった言語を体験していった。

※1983年12月における筆者のApple II J-plusとライトペンシステム環境
いま考えればバカげていると笑われようが、当時Apple IIとその周辺機器およびソフトウェアはべらぼうに高かったから小さなマンションを買えるほどに投資した。そして大げさにいうならハードウェアおよびソフトウェアの隅々まで知ろうと努力したし、そのひとつの成果としてアダルトゲームまで開発して製品化することにもなった…。さらにパソコン通信やAppleコミュニティに参加することになり、後に雑誌への投稿からライターへの道が開けMacintoshへのシフトをスムーズにし、それまでの知識と経験および人脈はビジネスへの礎となった。
私にとってApple II は原点であり、まぎれもなく青春であったし人生を転換させるスイッチとなった。
しかし時が流れ、新しいマシンの台頭でApple II は埃を被りそしていつしか忘れてしまった。
今回Apple II を再度調べ直してみたいという試みは些かノスタルジックな気持ちもあるものの、ほとんど忘れかけたApple II のスペックや魅力を再評価したいと考えたからに他ならない。
さてApple II というパーソナルコンピュータを考えるとき、避けて通れない機種は何といってもApple II スタンダードとApple II plusである。
一般的にApple II スタンダードと呼ばれる最初期のApple II は後にApple II plusがリリースされ、それと区別するために付けられた名称である。そしてApple II plusは急速に市場が拡大したことに対応し、disk IIというフロッピーディスクドライブを接続すれば自動的にブートするようになったと共にスタンダードの6K整数BASICから10K実数BASICとなるなど改良されApple IIシリーズを代表するマシンとして支持された名機である。

※Apple純正5インチフロッピーディスクドライブ「disk II」
その見知ったつもりの旧友に30数年ぶりに出会ったわけだが、このApple II plusは長い間製造販売されたこともあり数多くのバリエーションが存在しいささかスペックが分かりづらいのである。ただし各部位を確認し、手元のマシンがどの時期に製造されたどんなバージョンなのか…といったあれこれを調べるのもこうしたオールドマシンを扱う楽しみのひとつとなる(笑)。
事実私の手元にあるApple II plusはFCC基準対応のためバックパネル内側に金属板処理がなされていたり、蓋の縁に網板が張られている。さらに蓋の留め具などを見ると本機は明らかに後期型を示す筐体だが、キーボードはスカルプチャータイプではなくノーマルキーボードであり初期型と考えられる。ただしパワーランプキーの刻印がないことなどから最初は修理の際に純正ではないキーボードを使ったのか…と考えたが、キーボードの基盤を確認するとそこにはきちんとApple Computer Inc.の銘が入っている。ということは純正品に間違いないはずだが、当時は様々なバージョンがあつたし可能性としてはキートップの刻印が無いバージョンが存在したのかも知れない…。
手元のキーボードをさらに詳しく確認してみると面白いことも分かる。
Apple II のキーボードには大別して2種類のものがあるとされる。それぞれAタイプ、Bタイプと呼ばれるのが一般的だが、Aタイプは細かな点でいくつかのバリエーションがあるものの基板が1枚仕様で発売当初からJ-plusに至るまで使われてきたものだ。

※Apple II plusのキーボード部位
対してBタイプはApple II plusおよびスタンダードにのみ(J-pusは不可)使用可能なタイプでエンコーダー基板と呼ばれる孫基板がキーボード基板に付加されているタイプである。
そのエンコーダー基板にはリセットガード・スイッチとテンキー用コネクタが取り付け可能になっている点が特長だ。
私のApple II plusのキーボード基板を確認しようと本体の底板を外してみるとそれはBタイプのものでエンコーダー基板が付いていた。

※キーボード基板を裏側から確認。エンコーダー基板が付いているBタイプのものだった
ともあれ30年も前のパーソナルコンピュータに再会してみると、現在の高性能マシンとはまったく別の親近感が湧いてくる。それは…繰り返すが懐かしさとかノスタルジーといった感情もあるのだろうが、やはりApple II は当時のマシンとしては飛び抜けて美しい製品だったに違いない。そして何といっても蓋に貼られている6色アップルロゴと製品名のエンブレムは現在でも眩しい。

※蓋に貼られている6色アップルロゴと製品名のエンブレムは現在でも魅力的だ
またキーボードの位置は机上から高く、キートップまでは約8センチほどもある。したがって現在の薄いキーボードにパームレストなどを使ってキーを打っているユーザーはかなり戸惑うに違いない。しかしそもそもパソコンのキーボードは当時のタイプライターの模倣であった訳で、Apple II ならずとも似たり寄ったりだったのである。
Apple II plusを横に置き、マザーボードは勿論のことだが解体して電源や実装されているチップひとつひとつを確認し始めている…。
次回はApple II シリーズの真打ち、Apple II スタンダードのお話しをさせていただく予定である。
まず今回は少々マニアックな…そして今更の話題かも知れないが、Apple II plusをご紹介してみよう…。
私が1980年前半手にしたApple II は “Apple II J-plus” という製品だった。これはApple II plusのF8ROM一部をカナ表示用に書き換えたバージョンだったため、一部ソフトウェア互換に問題が生じることもあった。その後登場した最新機種 Apple IIeを机上に置いてからは埃を被りそして処分してしまった…。
近年Apple IIシリーズの製品としてはApple IIe およびApple IIcのみを所有してきたが、その素敵なフォルムは勿論、歴史的な製品として是非Apple II スタンダードとplusを手に入れたいと考えていた。それが今回縁があって叶ったわけだ。

※Apple II plusの筐体は現在の視点からも美しい【クリックで拡大】
ただしこれらのマシンを動作させて楽しむつもりはいまのところない(笑)。可能ならBASIC辺りを起動してみたいがあくまでパーソナルコンピュータ史に残る歴史的な製品としてそのビジュアルを楽しみつつ細部を再勉強してみようかと考えているところである。
1980年代、私はこのApple IIに夢中だった。ハードウェアの限界まで様々な新しいことを試したくて大枚をはたきApple IIでビデオデジタイザ、シンセサイザー、カラーアニメーション、ライトペンシステム、3D、音声認識と音声合成、表計算、ワープロ、パソコン通信そしてCP/Mを走らせPascalやLOGO、LISPといった言語を体験していった。

※1983年12月における筆者のApple II J-plusとライトペンシステム環境
いま考えればバカげていると笑われようが、当時Apple IIとその周辺機器およびソフトウェアはべらぼうに高かったから小さなマンションを買えるほどに投資した。そして大げさにいうならハードウェアおよびソフトウェアの隅々まで知ろうと努力したし、そのひとつの成果としてアダルトゲームまで開発して製品化することにもなった…。さらにパソコン通信やAppleコミュニティに参加することになり、後に雑誌への投稿からライターへの道が開けMacintoshへのシフトをスムーズにし、それまでの知識と経験および人脈はビジネスへの礎となった。
私にとってApple II は原点であり、まぎれもなく青春であったし人生を転換させるスイッチとなった。
しかし時が流れ、新しいマシンの台頭でApple II は埃を被りそしていつしか忘れてしまった。
今回Apple II を再度調べ直してみたいという試みは些かノスタルジックな気持ちもあるものの、ほとんど忘れかけたApple II のスペックや魅力を再評価したいと考えたからに他ならない。
さてApple II というパーソナルコンピュータを考えるとき、避けて通れない機種は何といってもApple II スタンダードとApple II plusである。
一般的にApple II スタンダードと呼ばれる最初期のApple II は後にApple II plusがリリースされ、それと区別するために付けられた名称である。そしてApple II plusは急速に市場が拡大したことに対応し、disk IIというフロッピーディスクドライブを接続すれば自動的にブートするようになったと共にスタンダードの6K整数BASICから10K実数BASICとなるなど改良されApple IIシリーズを代表するマシンとして支持された名機である。

※Apple純正5インチフロッピーディスクドライブ「disk II」
その見知ったつもりの旧友に30数年ぶりに出会ったわけだが、このApple II plusは長い間製造販売されたこともあり数多くのバリエーションが存在しいささかスペックが分かりづらいのである。ただし各部位を確認し、手元のマシンがどの時期に製造されたどんなバージョンなのか…といったあれこれを調べるのもこうしたオールドマシンを扱う楽しみのひとつとなる(笑)。
事実私の手元にあるApple II plusはFCC基準対応のためバックパネル内側に金属板処理がなされていたり、蓋の縁に網板が張られている。さらに蓋の留め具などを見ると本機は明らかに後期型を示す筐体だが、キーボードはスカルプチャータイプではなくノーマルキーボードであり初期型と考えられる。ただしパワーランプキーの刻印がないことなどから最初は修理の際に純正ではないキーボードを使ったのか…と考えたが、キーボードの基盤を確認するとそこにはきちんとApple Computer Inc.の銘が入っている。ということは純正品に間違いないはずだが、当時は様々なバージョンがあつたし可能性としてはキートップの刻印が無いバージョンが存在したのかも知れない…。
手元のキーボードをさらに詳しく確認してみると面白いことも分かる。
Apple II のキーボードには大別して2種類のものがあるとされる。それぞれAタイプ、Bタイプと呼ばれるのが一般的だが、Aタイプは細かな点でいくつかのバリエーションがあるものの基板が1枚仕様で発売当初からJ-plusに至るまで使われてきたものだ。

※Apple II plusのキーボード部位
対してBタイプはApple II plusおよびスタンダードにのみ(J-pusは不可)使用可能なタイプでエンコーダー基板と呼ばれる孫基板がキーボード基板に付加されているタイプである。
そのエンコーダー基板にはリセットガード・スイッチとテンキー用コネクタが取り付け可能になっている点が特長だ。
私のApple II plusのキーボード基板を確認しようと本体の底板を外してみるとそれはBタイプのものでエンコーダー基板が付いていた。

※キーボード基板を裏側から確認。エンコーダー基板が付いているBタイプのものだった
ともあれ30年も前のパーソナルコンピュータに再会してみると、現在の高性能マシンとはまったく別の親近感が湧いてくる。それは…繰り返すが懐かしさとかノスタルジーといった感情もあるのだろうが、やはりApple II は当時のマシンとしては飛び抜けて美しい製品だったに違いない。そして何といっても蓋に貼られている6色アップルロゴと製品名のエンブレムは現在でも眩しい。

※蓋に貼られている6色アップルロゴと製品名のエンブレムは現在でも魅力的だ
またキーボードの位置は机上から高く、キートップまでは約8センチほどもある。したがって現在の薄いキーボードにパームレストなどを使ってキーを打っているユーザーはかなり戸惑うに違いない。しかしそもそもパソコンのキーボードは当時のタイプライターの模倣であった訳で、Apple II ならずとも似たり寄ったりだったのである。
Apple II plusを横に置き、マザーボードは勿論のことだが解体して電源や実装されているチップひとつひとつを確認し始めている…。
次回はApple II シリーズの真打ち、Apple II スタンダードのお話しをさせていただく予定である。
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