8ビット・マイクロコンピュータキット Legacy8080、開発秘話
「Maker Faire Tokyo 2013」の技術少年出版ブースで公開された8ビット・マイクロコンピュータキット Legacy8080だが、その後に興味深いいくつかの点を同社からご教授いただいたので続編情報としてご紹介したい。Legacy8080は38年も前に登場したAltair8800やIMSAI8080と互換性のあるマイコンではあるが、それを現在に宿らせるには並々ならぬ拘りと想像を絶する熱意が必要だったことを知っていただきたいと思う…。
先般緊急報告としてお知らせした「Maker Faire Tokyo 2013におけるLegacy8080レポート」にLegacy8080の動画を載せたが、大げさながらLegacy8080の動画が公開されたのはこれが世界初である(笑)。


※Legacy8080のフロントパネルに点滅するLEDは実に美しい!
それはともかくこのLEDが点灯するLegacy8080のフロントを覧になって、ただ単にLEDが綺麗だなあと思った方がほとんどだろうが、実はこの短い動画も知る人がご覧になればその意味がお分かりかも知れない…。
まず動画でご覧になれる動作中のモードは「オートステップモード」である。この「オートステップモード」は、ストアードプログラム方式のコンピュータとは何か、どのように動作するかを本質的に学ぶことができる動作モードであり、Legacy8080が学習用コンピュータとして利用するための目玉仕様の一つだという。ちなみにこのモードはIMSAI8080にはない。
※オートステップモードで動作するLegacy8080
これは通常数MHzの速度(切り替え可能)で動いているCPUを停止して、1秒間に2ステップづつ命令を実行するモードだ。そしてフロントパネルに実行中のアドレスバス、データバス、CPUステイタス信号が表示されるが1秒間に2ステップの動きなので慣れればどの命令を実行しているか人間の目でも大体解るのがミソである。当該動画でも一番下の16bitのアドレスバスが2進法でインクリメントしているのが見えるに違いない。
さらにその上のデータバスには実行中の8bitの命令が見え、ジャンプ命令を実行しているのもアドレスバスの動きから動画で確認できる…というがそこまで私は気がつかなかったし仔細は技術少年出版の吉崎さんからの受け売りである(笑)。
ところで動画でも判別できるかも知れないがこのLegacy8080に採用されているLEDがとても美しいのだ。ブースで実機を眺めていた私は思わず…というか、思わず「街のあかりが、とてもきれいね…ヨコハマ~」というブルーライト・ヨコハマの歌詞が頭の中を駆け巡っていたほどだ(笑)。
現在出回っているこの種のLEDは高輝度で狭ビームタイプが殆どで、正面から直視すると網膜に跡が残るくらい危険だという。さらに光のビームが狭いので正面から少しずれると光っていることが解らなくなるくらい暗くなる。
Legacy8080は、当然のことながらフロントパネルの動きを直視することが多いので、技術少年出版では危険な高輝度タイプのLEDは避けなければならないとし同時に横からでも動作の確認ができる必要があると考えたという。
一方、低輝度タイプのLEDはぼんやりと点灯するので高速で点滅するコンソールパネル用LEDとしては適していない。そして見た目も綺麗ではないが実は、Altair8800とIMSAI8080のLEDはこのタイプなのだ。高速点滅時は鈍く光るだけでパルスに見えない。
眩しくなくて、目に優しくて、高速で点滅でき、綺麗に光る「拡散型LED」を探さなければならないと拘ったものの、この難題を解決するために国内海外のLEDメーカーを探したが、当初は全滅状態だったという…。
諦めず国内外で手を尽くして探していたところ、なんと島根県にある父親の代からLEDを製造しているという小さなLEDメーカーがこの難しい特徴をもった拡散型LEDを製造していたことを突き止める。そしてサンプルを取り寄せたところ眩しくなく、真横からでも点滅が解るくらい光が拡散しただけでなく発光色もとても綺麗だった。大きな問題が一つ解決した瞬間である。
私自身が実機のLEDを眺めたときには無論こうした開発側のご苦労は知る由もなかったが、前記したように一般的なLEDでは感じない美しさを感じたことは確かだった。
Legacy8080開発の拘りはまだまだある…。「Maker Faire Tokyo 2013」のブースには参考出品として往年の名機「IMSAI8080」が展示されていたが、よくご覧になった方はお気づきになったと思うが「IMSAI8080」のフロントパネルスィッチとLegacy8080のスィツチはよく似ている。

※参考出品として展示されたIMSAI8080。そのスイッチとLegacy8080のスイッチ...実は同じものだという
実はこれ、似ているどころか色は違うものの同じスイッチなのだ。38年の時を経て同じスイッチを使うことになったのだから面白いというか奇遇というか…。
IMSAI8080に採用されたこのスイッチは1975年に日本のスイッチの老舗メーカーであるフジソク社がOEM製品として米国に輸出していたものだった。
Legacy8080のスイッチをどのようなものにするか、開発時に大いに悩んだそうだが同じスイッチを探したところ、フジソク社に既存需要家の保守用として当該スイッチが数十個だけ保管されていることが解ったものの無論これでは足りない。
フジソク社の担当者に繰り返しお願いをした結果、長年生産していなかったこのスイッチを再生産してもらえることになり、特別に生産ラインを組んでもらって製造したのがLegacy8080のスイッチなのである。
事ほど然様にLegacy8080を構成する一つ一つの部品にも興味深いストーリーがあることを知っていただくと実機により興味を持っていただけるかも知れない。というわけで今回はLEDとスイッチという二つの部品についての開発裏話をご紹介した。
こうした予備知識を念頭に再度、動画をご覧になっていただければと願う。
■株式会社 技術少年出版
先般緊急報告としてお知らせした「Maker Faire Tokyo 2013におけるLegacy8080レポート」にLegacy8080の動画を載せたが、大げさながらLegacy8080の動画が公開されたのはこれが世界初である(笑)。


※Legacy8080のフロントパネルに点滅するLEDは実に美しい!
それはともかくこのLEDが点灯するLegacy8080のフロントを覧になって、ただ単にLEDが綺麗だなあと思った方がほとんどだろうが、実はこの短い動画も知る人がご覧になればその意味がお分かりかも知れない…。
まず動画でご覧になれる動作中のモードは「オートステップモード」である。この「オートステップモード」は、ストアードプログラム方式のコンピュータとは何か、どのように動作するかを本質的に学ぶことができる動作モードであり、Legacy8080が学習用コンピュータとして利用するための目玉仕様の一つだという。ちなみにこのモードはIMSAI8080にはない。
※オートステップモードで動作するLegacy8080
これは通常数MHzの速度(切り替え可能)で動いているCPUを停止して、1秒間に2ステップづつ命令を実行するモードだ。そしてフロントパネルに実行中のアドレスバス、データバス、CPUステイタス信号が表示されるが1秒間に2ステップの動きなので慣れればどの命令を実行しているか人間の目でも大体解るのがミソである。当該動画でも一番下の16bitのアドレスバスが2進法でインクリメントしているのが見えるに違いない。
さらにその上のデータバスには実行中の8bitの命令が見え、ジャンプ命令を実行しているのもアドレスバスの動きから動画で確認できる…というがそこまで私は気がつかなかったし仔細は技術少年出版の吉崎さんからの受け売りである(笑)。
ところで動画でも判別できるかも知れないがこのLegacy8080に採用されているLEDがとても美しいのだ。ブースで実機を眺めていた私は思わず…というか、思わず「街のあかりが、とてもきれいね…ヨコハマ~」というブルーライト・ヨコハマの歌詞が頭の中を駆け巡っていたほどだ(笑)。
現在出回っているこの種のLEDは高輝度で狭ビームタイプが殆どで、正面から直視すると網膜に跡が残るくらい危険だという。さらに光のビームが狭いので正面から少しずれると光っていることが解らなくなるくらい暗くなる。
Legacy8080は、当然のことながらフロントパネルの動きを直視することが多いので、技術少年出版では危険な高輝度タイプのLEDは避けなければならないとし同時に横からでも動作の確認ができる必要があると考えたという。
一方、低輝度タイプのLEDはぼんやりと点灯するので高速で点滅するコンソールパネル用LEDとしては適していない。そして見た目も綺麗ではないが実は、Altair8800とIMSAI8080のLEDはこのタイプなのだ。高速点滅時は鈍く光るだけでパルスに見えない。
眩しくなくて、目に優しくて、高速で点滅でき、綺麗に光る「拡散型LED」を探さなければならないと拘ったものの、この難題を解決するために国内海外のLEDメーカーを探したが、当初は全滅状態だったという…。
諦めず国内外で手を尽くして探していたところ、なんと島根県にある父親の代からLEDを製造しているという小さなLEDメーカーがこの難しい特徴をもった拡散型LEDを製造していたことを突き止める。そしてサンプルを取り寄せたところ眩しくなく、真横からでも点滅が解るくらい光が拡散しただけでなく発光色もとても綺麗だった。大きな問題が一つ解決した瞬間である。
私自身が実機のLEDを眺めたときには無論こうした開発側のご苦労は知る由もなかったが、前記したように一般的なLEDでは感じない美しさを感じたことは確かだった。
Legacy8080開発の拘りはまだまだある…。「Maker Faire Tokyo 2013」のブースには参考出品として往年の名機「IMSAI8080」が展示されていたが、よくご覧になった方はお気づきになったと思うが「IMSAI8080」のフロントパネルスィッチとLegacy8080のスィツチはよく似ている。

※参考出品として展示されたIMSAI8080。そのスイッチとLegacy8080のスイッチ...実は同じものだという
実はこれ、似ているどころか色は違うものの同じスイッチなのだ。38年の時を経て同じスイッチを使うことになったのだから面白いというか奇遇というか…。
IMSAI8080に採用されたこのスイッチは1975年に日本のスイッチの老舗メーカーであるフジソク社がOEM製品として米国に輸出していたものだった。
Legacy8080のスイッチをどのようなものにするか、開発時に大いに悩んだそうだが同じスイッチを探したところ、フジソク社に既存需要家の保守用として当該スイッチが数十個だけ保管されていることが解ったものの無論これでは足りない。
フジソク社の担当者に繰り返しお願いをした結果、長年生産していなかったこのスイッチを再生産してもらえることになり、特別に生産ラインを組んでもらって製造したのがLegacy8080のスイッチなのである。
事ほど然様にLegacy8080を構成する一つ一つの部品にも興味深いストーリーがあることを知っていただくと実機により興味を持っていただけるかも知れない。というわけで今回はLEDとスイッチという二つの部品についての開発裏話をご紹介した。
こうした予備知識を念頭に再度、動画をご覧になっていただければと願う。
■株式会社 技術少年出版
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