Apple I のマザーボード (レプリカ) 物語
私などが「Apple I を手に入れた…」と声高に叫んでも誰も本気にしないだろう(笑)。Apple I はすでに知る人ぞ知る超コレクターズアイテムであり、事実サザビーズのオークションでは3千万円もの値段が付き、最近ではその倍の落札価格といった例もあるアイテムだ。どう逆立ちしようが縁のある代物ではない。したがって今回手に入れたのは忠実なレプリカであり、かつ部品などは一切実装されていないボードのみである。
私のライフワークの一つは子供たちはもとより、若い方々にパーソナルコンピュータの歴史に多大な足跡を残し、世界を変えたAppleという企業を軸とする歴史的なハードウェアおよびソフトウェアを知っていただくことだと考えこれまでにもささやかながら実践してきた。その時々に痛感することは話や写真だけでなく実物を示し、可能なら彼ら彼女らに触れてもらうことがとても大切だということだった。


※Apple I のプリント基板 (レプリカ)の表(上)と裏(下)
まだまだ力不足で思うような活動は出来ないが私の手元にあるApple II や Lisa あるいは初代Macintoshはもとより、それ以前の歴史的なアイテム…例えばAltair 8800用BASICインタプリタが記録された紙テープ(鑽孔テープ)などなどはそのためのに集めてきたものでもある。
すでにフロッピーディスクを知らない子供たちが存在する時代に20年とか30年前の歴史的機材の話をしたところで、写真やスライドだけで理解してもらうのはそもそもが難しいことである。
ともあれ全てとはいかないまでもできうる限り、現物を見ていただき触れて体験してもらうのが理解の早道だと確信している…。
さて今回当研究所に収納されることになったこのApple I マザーボード…プリント基板もそうした一環にするつもりである。それにまさか本物をお持ちの方だとしても貴重なApple I の実機に他人があれこれ手を触れるようなことは決して望まないだろうが、私のレプリカなら一向にかまわない…(笑)。
当該ボードに限らず、サイズや見栄え、手に取った…手に触れた感触や重さは写真とかスライドなどを見ただけよりずっと印象深く記憶に残るものだ。それが例えレプリカだとしても忠実に再現されたものなら役に立つと思っている。そもそもApple I に関して様々な情報がウェブや書籍で語られてきたが、例えばボードの縦横サイズ(後述)といったある意味で基本情報でさえほとんど知り得ないのが現状なのだ。無論これにてApple I の回路基板を思う存分に研究する良い資料となる…。今回は詳細説明は避けるが。ひとつ例を挙げればロゴ左上にある7404の箇所に "6800 ONLY" とあることなど、調べたくなる要素満載なのだ...。
当該ボードは部品の実装こそないが、そもそもApple I の誕生にはいくつかのステップがあり、ジョブズたちは最初から部品実装され完成された製品を販売したわけではないのである。
スティーブ・ウォズニアック自身が「マッキントッシュ伝説」(アスキー出版局刊)でインタビューに答えているが、Apple I 最初の発売は創業以前の1975年8月だという。当初ホームブリューコンピュータクラブでお披露目したのがきっかけで欲しいという仲間たちに配線図を無償で配布し仲間の家にまで出向いてハンダ付けを手伝ったりしていたのが始まりだ。回路基板を手にした者は自身で必要なチップやパーツを手に入れ導線でハンダ付けする必要があったのである。
そこでスティーブ・ジョブズは購入者にとって配線作業が難しいのなら配線をエッチングしたボードを作れば売れると提案する。そうして原価20ドルのボードを倍の40ドルで売ったわけで (「アップル・コンフィデンシャル」には25ドルで作って50ドルで売ったと記されている)、スティーブ・ジョブズとスティーブ・ウォズニアックは今回手に入れたレプリカのようにボードだけ…回路基板だけを販売した時期があったのだ。
ウォズニアックいわく、これが最初の営利目的の行為だったという。
そもそもジョブズたちには回路基板に乗せ完成させるための部品類を調達する資金がなかったのだ…。しかしスティーブ・ジョブズはめげず、広範囲に販売しようと画策した結果、完成品として組み立てられたコンピュータであることを条件にバイトショップから注文を得たことから事業が回り始めたのだ。ジョブズは友人らから借金し、あわせて部品供給会社から30日間の支払猶予期間を約束させて必要なものを調達しApple I の組立を急いだ。
手元にあるApple I のオペレーションマニュアルにある回路図には法人化前のAppleを創業したロン・ウェイン、スティーブ・ウォズニアック、そしてスティーブ・ジョブズの3人の名が記されている。


※Apple I のオペレーションマニュアル表紙(上)と回路図に記載されている3人の名前
ということで、まずはそのApple I (レプリカ)の回路基板を簡単にご紹介してみたい。
まず回路…すなわちApple I のハードウェア的な情報はスティーブ・ウォズニアックのオープンな思想から回路図も含めそもそもオペレーションマニュアルに詳しく記載されているし、基本情報はApple社設立以前にホームブリューコンピュータクラブなどでウォズニアックにより公開されていた。
レプリカの製作情報によれば当該ボードはオリジナルに忠実に作られ電気的にテストされているという。そして1970年代のルックスを再現するためにわざわざ時代遅れの加工技術を採用したようだ。なおApple I のボードにもいくつかのバージョンがあるが本レプリカは NTI ロゴが付いたバージョンを模している。

※Apple I の正式名称は Apple Computer 1 なのだ
まあ今のところ、このボードにパーツを実装してうんぬんするつもりは毛頭ないので動く動かないには正直興味はないが(笑)、実機に使われた各パーツが揃うのなら形だけでも部品実装後の完成品を再現できれば面白いかも知れないとは思っている。
ちなみに縦横サイズだが、約 396mm × 234 mm で、目視した限りでは大変綺麗に、そしてよく出来ている。
さてApple I の完成品は世界で数十台残存しているといわれている。そして冒頭に記したようにその完成品…特に完動品はすでに数千万円もの値段が付く場合がある超コレクターアイテムとなっているが、しかしプリント基板のままの未使用オリジナルボードは存在しているのだろうか…。
残っている可能性は低いし、例えあったとしても完成品以上に数は少ないに違いない。だとすれば例えレプリカでも子供たちや若い方々に見ていただく価値はあるかも知れないと思っているのだが。
私のライフワークの一つは子供たちはもとより、若い方々にパーソナルコンピュータの歴史に多大な足跡を残し、世界を変えたAppleという企業を軸とする歴史的なハードウェアおよびソフトウェアを知っていただくことだと考えこれまでにもささやかながら実践してきた。その時々に痛感することは話や写真だけでなく実物を示し、可能なら彼ら彼女らに触れてもらうことがとても大切だということだった。


※Apple I のプリント基板 (レプリカ)の表(上)と裏(下)
まだまだ力不足で思うような活動は出来ないが私の手元にあるApple II や Lisa あるいは初代Macintoshはもとより、それ以前の歴史的なアイテム…例えばAltair 8800用BASICインタプリタが記録された紙テープ(鑽孔テープ)などなどはそのためのに集めてきたものでもある。
すでにフロッピーディスクを知らない子供たちが存在する時代に20年とか30年前の歴史的機材の話をしたところで、写真やスライドだけで理解してもらうのはそもそもが難しいことである。
ともあれ全てとはいかないまでもできうる限り、現物を見ていただき触れて体験してもらうのが理解の早道だと確信している…。
さて今回当研究所に収納されることになったこのApple I マザーボード…プリント基板もそうした一環にするつもりである。それにまさか本物をお持ちの方だとしても貴重なApple I の実機に他人があれこれ手を触れるようなことは決して望まないだろうが、私のレプリカなら一向にかまわない…(笑)。
当該ボードに限らず、サイズや見栄え、手に取った…手に触れた感触や重さは写真とかスライドなどを見ただけよりずっと印象深く記憶に残るものだ。それが例えレプリカだとしても忠実に再現されたものなら役に立つと思っている。そもそもApple I に関して様々な情報がウェブや書籍で語られてきたが、例えばボードの縦横サイズ(後述)といったある意味で基本情報でさえほとんど知り得ないのが現状なのだ。無論これにてApple I の回路基板を思う存分に研究する良い資料となる…。今回は詳細説明は避けるが。ひとつ例を挙げればロゴ左上にある7404の箇所に "6800 ONLY" とあることなど、調べたくなる要素満載なのだ...。
当該ボードは部品の実装こそないが、そもそもApple I の誕生にはいくつかのステップがあり、ジョブズたちは最初から部品実装され完成された製品を販売したわけではないのである。
スティーブ・ウォズニアック自身が「マッキントッシュ伝説」(アスキー出版局刊)でインタビューに答えているが、Apple I 最初の発売は創業以前の1975年8月だという。当初ホームブリューコンピュータクラブでお披露目したのがきっかけで欲しいという仲間たちに配線図を無償で配布し仲間の家にまで出向いてハンダ付けを手伝ったりしていたのが始まりだ。回路基板を手にした者は自身で必要なチップやパーツを手に入れ導線でハンダ付けする必要があったのである。
そこでスティーブ・ジョブズは購入者にとって配線作業が難しいのなら配線をエッチングしたボードを作れば売れると提案する。そうして原価20ドルのボードを倍の40ドルで売ったわけで (「アップル・コンフィデンシャル」には25ドルで作って50ドルで売ったと記されている)、スティーブ・ジョブズとスティーブ・ウォズニアックは今回手に入れたレプリカのようにボードだけ…回路基板だけを販売した時期があったのだ。
ウォズニアックいわく、これが最初の営利目的の行為だったという。
そもそもジョブズたちには回路基板に乗せ完成させるための部品類を調達する資金がなかったのだ…。しかしスティーブ・ジョブズはめげず、広範囲に販売しようと画策した結果、完成品として組み立てられたコンピュータであることを条件にバイトショップから注文を得たことから事業が回り始めたのだ。ジョブズは友人らから借金し、あわせて部品供給会社から30日間の支払猶予期間を約束させて必要なものを調達しApple I の組立を急いだ。
手元にあるApple I のオペレーションマニュアルにある回路図には法人化前のAppleを創業したロン・ウェイン、スティーブ・ウォズニアック、そしてスティーブ・ジョブズの3人の名が記されている。


※Apple I のオペレーションマニュアル表紙(上)と回路図に記載されている3人の名前
ということで、まずはそのApple I (レプリカ)の回路基板を簡単にご紹介してみたい。
まず回路…すなわちApple I のハードウェア的な情報はスティーブ・ウォズニアックのオープンな思想から回路図も含めそもそもオペレーションマニュアルに詳しく記載されているし、基本情報はApple社設立以前にホームブリューコンピュータクラブなどでウォズニアックにより公開されていた。
レプリカの製作情報によれば当該ボードはオリジナルに忠実に作られ電気的にテストされているという。そして1970年代のルックスを再現するためにわざわざ時代遅れの加工技術を採用したようだ。なおApple I のボードにもいくつかのバージョンがあるが本レプリカは NTI ロゴが付いたバージョンを模している。

※Apple I の正式名称は Apple Computer 1 なのだ
まあ今のところ、このボードにパーツを実装してうんぬんするつもりは毛頭ないので動く動かないには正直興味はないが(笑)、実機に使われた各パーツが揃うのなら形だけでも部品実装後の完成品を再現できれば面白いかも知れないとは思っている。
ちなみに縦横サイズだが、約 396mm × 234 mm で、目視した限りでは大変綺麗に、そしてよく出来ている。
さてApple I の完成品は世界で数十台残存しているといわれている。そして冒頭に記したようにその完成品…特に完動品はすでに数千万円もの値段が付く場合がある超コレクターアイテムとなっているが、しかしプリント基板のままの未使用オリジナルボードは存在しているのだろうか…。
残っている可能性は低いし、例えあったとしても完成品以上に数は少ないに違いない。だとすれば例えレプリカでも子供たちや若い方々に見ていただく価値はあるかも知れないと思っているのだが。
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