iPhoneを高性能スキャナにする、かしこい照明 「SnapLite」ファーストインプレッション

株式会社PFUが5月21日に発表したデスクライト型スキャナ 「SnapLite」を手に入れた。正直、すでにScanSnap SV600 のユーザーとしては必要ないと思ったが、日本のMac市場で最初の本格的なカラースキャニングソフトを開発販売してきた経験もあり、どうにも無視できずにオーダーする羽目となった(笑)。


今回PFUから登場したユニークなこの製品はそもそも些か変わった性格を持っているようだ。まだ発売されたばかりで不明な点も多いが、まずPFUのサイトを確認した限りではいわゆるイメージスキャナの分類に入っていない(その理由は後述)。どうやらSnapLiteという独立したプロダクトとして捉えているようだ。また他の製品、例えばSV600とかiX500などはPFUのオンラインショップ (PFU DIRECT)で販売しているが「SnapLite」は現在の所、Amazonと楽天、あるいはアシストオンやApp Bankといった取扱店から購入するようになっている。

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※PFU製 SnapLiteのパッケージ。なかなか素敵である


そもそも製品発表会等の情報を見ると、開発は女性を起用した専門プロジェクトを立ち上げたという。サイトのデザインもそうした意図を全面的に前へと出した感じで料理や食材あるいはネイルなど…ビジネス向けというより家庭のリビングやキッチンで役立つようなイメージを強調している。そして「スキャニング」といった言葉も「読み取り」と馴染みやすい呼び名にするといったコンセプトのようだから既成のスキャナという概念には捕らわれない製品と位置づけているのだろう。

そして評価のポイントは色々とあるだろうが、12,800円という本体価格はかなりリーズナブルではないだろうか…。卓上照明兼イメージスキャナとしては思い切った戦略とも受け取れる。ただしそうした第一印象もSnapLiteを理解していく過程で大きな疑問がわいてきた…。

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※SnapLiteの白色LEDを点灯した例


確かに使い方も至って簡単だ。iPhone側の専用アプリ「SnapLite」を起動し、ガイドに従いiPhoneをSnapLite本体頭上の場所に設置するだけの準備だ。

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※使い方もiPhoneアプリのガイドに従えばとても簡単


このときiPhoneの向きを逆にすると動作しないように出来ている。なぜなら原稿の撮影はiPhoneのカメラで行うためだ。また念のためだがiPad miniにiPhoneアプリ「SnapLite」をインストールして試みたがSnapLite上に乗せることができないため、一部を軽く押さえた上で読み取りを試みた結果動作した…。

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※iPhoneアプリを起動し、iPhone 5sをSnapLiteのヘッド上部に乗せると読み取り準備OKとなる


ともあれiPhoneを乗せるとSnapLiteの照明が点灯し設置場所、すなわち本体前の机上面にA4サイズの読み取り範囲を示す赤いレーザーガイドが映し出される。またBluetooth 4.0でiPhoneとの同期を図るがiPhone側でBluetooth がONになっていれば、デバイス接続の確認などせずともそのまま使えた。

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※原稿の置く位置および範囲は赤いレーザーガイドが映し出される。バード電子製SV600用リバーシブル背景マットがここでも役に立っている


後はそのガイドに従い、読み取る原稿・対象物を置き、SnapLite本体の点灯しているリスのアイコン部位をタッチすることでiPhoneのシャッターが自動的に切れ「パシャッ!」という音と共に撮影される。そしてそのデータは当然のことながら iPhoneのカメラロールに保存されるという仕組みだ。

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※名刺を2枚置いて読み込み。結果iPhoneのカメラロールに2枚別々の画像として保存される


なお読み取られた画像は自動で傾き補正やトリミングされる。このとき読み取り範囲内であれば複数枚の名刺や写真を置いてもそれぞれ1枚ずつとして認識されるし、立体物の読み取りも可能である。
ただし留意しておくべきはSnapLiteによる読み取りはすべて200 dpiほどの解像度、そしてJPEGとして保存される。より高い解像度を求めることはできないしデータを例えばPDFに変換するとか、OCRとして利用する機能もない。すべて画像としてカメラロールに保存されるわけだ。

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※雑誌の表紙をSnapLiteで読み込んだ例【クリックで実寸データ表示】


ただしボタンを押してからシャッターが切れる時間は初期値では0.5秒だが、iPhoneアプリの「設定」にあるタイマーで最長3秒までに変えることが可能である。

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※本体下部にあるリスのボタンが読み取り開始ボタンだ


さて立体物の読み込みも手軽で良いが、物によって…あるいは範囲内でも置く位置によりクロッピングが正常にできない場合がある。例として古いビデオデッキのリモコンを読み込んで見たが、1度読み込みボタンにタッチしただけなのにリモコン全体が読み込まれず、リモコン一部とジョグダイアル部の2枚の画像としてカメラロールに保存された。

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※リモコンを読み込みしようとセッティング(上)とクロッピングが誤動作し2枚の画像として読み込みが完了した例(中)(下)


なおリモコンの置く位置を少しSnapLite側に近づけたら今度は正常に読み込めた。ちなみにiPhoneアプリの設定はトリミング、台形補正共に初期値のONで実施している。
このクロッピングの誤認識はScanSnap SV600でも起こる場合があるので、現時点ではソフトウェアの問題であろう。

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※iPhoneアプリの設定画面


こうしてご紹介するとまずまず良い事尽くめのような感じも受けるが、ScanSnap SV600などを日々活用している一人としてはSnapLiteの割り切り方が心地よいと思う反面、現行機能で満足するユーザーがどの程度存在するのかが少々心配になってくる。まあ、そもそもSnapLiteを従来のドキュメントスキャナの一種として考えること自体がPFU社のコンセプトではないのかも知れないが…。

ともあれSnapLite第一の売りは本体単体で文字通りの照明スタンドとして利用できること。そしてスキャニングすなわち読み取りはiPhone5 / 5s / 5c (対応OSをiOS6以上)と連携して実現するといった点だ。
デザインは確かにデスクライト型であり、文字通り机上だけでなくキッチンや化粧台など、A4程度の平たい空間があれば気軽に設置できるし移動も容易だ。

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※SnapLiteのオレンジ色ライトを点灯した例


その照明スタンドとしての機能もニュートラルなホワイト色で明るさを最大にすればLED直下であれば本を読むのに十分な明るさだ。しかし照明部分はスキャナのヘッドでもあり動かすことができないため、明るさの方向を変えることはできないから照明器具として使い勝手は決して良くない。

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※照明色の切替や明るさ調節はiPhoneアプリで可能


最後になるが、製品キャッチコピーの「iPhoneを高性能スキャナにする、かしこい照明」という主張には正直違和感を感じざるを得ない。
なぜならSnapLiteはiPhoneをイメージスキャナに変貌させる製品ではないからだ。次のレポートでもう少し詳しく検証するつもりだが、原稿はiPhoneのカメラで撮影するのだからしてこれはスキャナではなくカメラだということになる。したがって当然のことながら読み込んだ画像データはiPhoneアプリで補正しiPhoneのカメラロールに転送するという仕組みなのだ。
ということで挙げ足取りかも知れないが iPhoneがスキャナになる訳ではなくこれは明らかにスキャナではなくカメラではないのか…。もしかすると機能を勘違いして本製品を購入する方もいるかも知れないとこれまた少々心配になってきた…。

本製品はiPhoneによる原稿撮影を支援する製品だと言うことをもっと明確にアピールする必要があると感じる。






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Author:mactechlab
主宰は松田純一。1989年Macのソフトウェア開発専門のコーシングラフィックシステムズ社設立、代表取締役就任 (2003年解散)。1999年Apple WWDC(世界開発者会議)で日本のデベロッパー初のApple Design Award/Best Apple Technology Adoption (最優秀技術賞) 受賞。

2000年2月第10回MACWORLD EXPO/TOKYOにおいて長年業界に対する貢献度を高く評価され、主催者からMac Fan MVP’99特別賞を授与される。著書多数。音楽、美術、写真、読書を好み、Macと愛犬三昧の毎日。2017年6月3日、時代小説「首巻き春貞 - 小石川養生所始末」を上梓(電子出版)。続けて2017年7月1日「小説・未来を垣間見た男 スティーブ・ジョブズ」を電子書籍で公開。また直近では「木挽町お鶴捕物控え」を発表している。
2018年春から3Dプリンターを複数台活用中であり2021年からはレーザー加工機にも目を向けている。ゆうMUG会員