iPodをより良く理解するためにソニーのウォークマンについて復習してみよう
これまでiPodとウォークマンを比較しながらこの両雄の違いと共通する面を検討してきたが、今回は純粋にウォークマンをより詳しく見ていこう。なにしろ2011年にイギリスの科学技術サイト「T3.Com」より、過去50年間で最も偉大な発明トップテンが発表されたがそれによれば第1位はアップル社のiPhoneで妥当だとしても第2位は iPod ではなくソニーのウォークマン(Walkman)初期モデルだった。それほどウォークマンは世の中にインパクトを与えた製品だった。
無論ウォークマンの復習といっても今更カセットテープによる初代ウォークマンを愛用してみようということではない。すでに35年も前に登場した製品を取り出して「良いから使ってみて」と申し上げるつもりもない(笑)。ただしもしウォークマンという画期的な製品がなかったとしたら、iPodの登場も危ぶまれるし、デジタルミュージックプレーヤーとしての登場もかなり違ったものになっていたに違いない。それだけ1979年7月1日に登場したウォークマンは世の中を変えた製品だったのだ。

※1979年7月1日発売、ソニー初代ウォークマン(TPS-L2)ファーストロット品 (当研究所所有)
iPodの素晴らしさ、凄さを文字通り正確に知っていただくにはまずその先祖と評価されているウォークマンが果たした役割と共にそれがどのような製品だったかを知っておくとより深い理解が可能になると考える。
なにしろAppleとソニーは意外と接点があった…。スティーブ・ジョブズはソニーの創業者のひとり、盛田昭夫を尊敬していたしApple最初のノートマシン PowerBook 100の製造はソニーが請け負った。またAppleがiPodのデータ転送に採用したFireWireにしてもソニーが i . Linkと名付けて採用していたことも記憶に新しい。
とはいえ後にMP3プレーヤーを共同で開発したいとジョブズがソニーを訪問したこともあったらしいが、すでにソニーにはきちんと交渉できる人材がおらずAppleを門前払いにしたことでソニーはデジタルミュージックプレーヤー開発に遅れを取ったという話もある。
ということで今回はソニーが1番輝いていた時代を証明するかのように登場し、世界を驚かせたウォークマンに肉迫してみたい。
さて先日、所有している初代ウォークマンのひとつで音楽を聴いてみようと試みた。スペックがどうの…と記述するのは容易いが、35年も前に夢中になったミュージックプレーヤーの音や使い心地がどのようなものだったかを振り返りたいと思ったからだ。とはいえすでにカセットテープによる音楽ライブラリはほとんど破棄したので残っているはずはない…。ただウォークマンに付属していたデモテープのコピーがあるのでそれを聴いてみることにした。
A面はテクノっぽいサウンド、B面は航空ショーを録音したのだろうか、ジェット戦闘機が飛び交うサウンドやサーキットを回る爆音の録音でウォークマンのステレオ感を味わうに十分なサウンドが収録されている。これはなかなかに迫力があり、すでに購入当時の感激は忘れているが当時はさぞ驚いたに違いない。
スペック的には近年聴いているデジタル機器類と比較するなら、周波数特性とかダイナミックレンジのレベルが低いはずだが、頭で考えていたよりずっと心地よい音が鳴っている。またテープ独特のワウフラッターもあるが記憶の中にあった音よりずっと良い印象なのが面白い。さらに最新のヘッドフォンで同じ音を聞いてみるとステレオ感も含めてやはりよりよく聞こえる。
昨今のノイズのないデジタルサウンドに慣れている若い方が聴いたらまた別の印象を持つとは思うが、個人的にまだまだ楽しめる音質だと考える。ということでまずは取扱説明書に記されていた初代ウォークマン(TPS-L2)の主な規格を示しておく。

※初代ウォークマン(TPS-L2)のスペック一覧
ところで初代ウォークマンと呼んできたが型番 TPS-L2 の本製品には大別して3種類あることを知っておきたい。
ウォークマンは前記したように1979年7月1日に発表されたがソニーの社史によればファーストロットは3万台製造したという。当時一番売れたテープレコーダーでも、月間1万5000台であったからこの数は思い切った数だという。陣頭指揮を取った会長盛田昭夫の意気込みが感じられるではないか…。
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※初代ウォークマン(TPS-L2)3種ロット揃い踏み。フロント(上)とバック(下)共に右からファーストロット、旧セットおよび新セット
さてその3万台が文字通りの最初のロットである。またソニーの補修部品表(1980年11月版)によれば、TPS-L2という型番には旧セットと新セットの区別があり、それはシリアルナンバーが 264,000以前とそれ以降に分けられるという。無論先の3万台も旧セットに含まれる理屈だが、だとすると旧セットにはファーストロットの3万台までとそれ以降シリアルナンバーが 264,000 までの2種があり、それ以降の新セットと合わせると初代ウォークマン(TPS-L2)には3種のロットが存在することになる。
その区別だが、当研究所では幸いその3種全てのロットをひとつずつ所持しているので比較することができる。ちなみにシリアルナンバーを記すと “15371”, “136497” そして “349538” だ。まずはボディ正面から見てみよう。
旧セットと新セットの違いは明らかだが、まずボディのフロントに記されているデザインが違う…。
旧セットは蓋に “STEREO” とあり上部に “SONY” のロゴと共に “STEREO CASSETTE PLAYER TPS-L2” とプリントされている。一方新セットでは旧セットの “STEREO” の位置には “SONY” のロゴが入り、蓋の下部には “WALKMAN” という名が入っている。
さらに背面は私の手元にある新旧セット共に上部に “STEREO” と刻印があるものの、旧セットのうちのファーストロットのみこの “STEREO” という文字が刻印ではなくプリントだ。
ファーストロットのみの仕様はまだある…。よく知られている点としては2つのヘッドフォン端子の箇所には “GUYS & DOLLS” と記されているが、ファーストロット以降の旧セットあるいは新セットには単に “A B” とあるだけだ。なおこの “GUYS & DOLLS” の表記については別途「“GUYS & DOLLS” に見る初代ウォークマンとソニーの遊び心」を参照されたい。

※2つのヘッドフォン端子部位比較。上がファーストロットで“GUYS & DOLLS” という表記になっている
そしてプレイや早送り・巻き戻しを意味する “LESTEN” , “REW/REVIEW” , “FF/CUE” という表記だが、それらは本体ボディ裏側に沿った箇所に示されており、ファーストロットはこれまたプリントだが、それ以降は金型に刻印されている。

※手前のファーストロットのみ “LESTEN” , “REW/REVIEW” , “FF/CUE” という表記がプリントになっている
さらに手元にある旧セットと新セットを比較してみたらこれまであまり明示されていない違いもあった。それはプレイボタンの三角アイコンがファーストロット以外の旧セットは緑色になっている。ファーストセットおよび新セットは他の早送り・巻き戻しのそれと同じく黒色になっている。

※ファーストロット以外の旧セットのみプレイボタンの三角アイコンが緑色の例(上)
確証はないが、プレイボタンのアイコンが緑色なのはウォークマンの原型になったといわれるプレスマンがそうだったからかも知れない…。
こうした細部について検証すると商品化の際にソニーとしても様々な意見が飛び交い、試行錯誤を続けていたことがうかがえる。
こうしたささやかな違いも含めて3種と思われる初代ウォークマンを比較するとおぼろげながら当時のソニーがどのような意図をもって事に当たっていたかが推測できるようで興味深い…。
まず3万台製造したというファーストロットだが、発売当初はマスコミや市場の反応がいまいちで、発売1ヶ月での売上はわずか3,000台に留まったという。さぞや盛田昭夫は気を揉んだものと推察するが、広告ならびに宣伝活動が功を奏したのだろう翌月8月に初回生産の3万台を完売すると、逆に供給が需要に追い付かない状態が年内いっぱい続いたという。
前記したファーストロットとその後の旧セットおよび新セットの違いは何を意味するのか…。無論想像の域を出ないが、ファーストロットではステレオ仕様である点を強調しアピールしたかったに違いない。ためにボディ両面共に目立つ表記がなされている。ただし “WALKMAN” という商品名については正規の英語文法にない和製英語であったことで当初海外では別の名で販売されていたこともあり、パッケージなどはともかく本体への刻印やプリントは避けたものと思われる。
いくつかの資料や情報によれば3万台以降の旧セットではボディの蓋下部に “WALKMAN” という歩く足のデザインが付いたキャラのシールが貼られたようだ。この時期はウォークマンという商品名が名実共にポータブル・カセットプレーヤーを意味する代名詞となりつつあった。そして新セット、すなわちシリアルナンバーが264,000 以降では会長の盛田昭夫の判断でワールドワイドにウォークマンという名で販売がなされたからか、本体蓋に誇るように “WALKMAN” という文字が刻印されるようになった。
そしてこれまた想像ではあるが、2つのヘッドフォン端子の表記がファーストロットでは遊び心ある “GUYS & DOLLS” となっていたにも関わらずその後は前記したように単純な “A B” 表記になったのは世界各国への出荷を考慮し、危なげないありふれたものにしたものと思われる。
ウォークマンは9カ国語に対応した取説を付けて世界中に出荷されていったが、それでも品切れが続く。
ソニーの社史によれば、当初マスコミたちの反応は鈍かったとあるが、彼らはウォークマンの存在意義が理解できなかったのではあるまいか。いや、批判的な意見はソニーの社内にもあったようで、録音機能のない再生専用の機器など売れるはずはないという思いを抱く人たちも多かったようだ。
しかしその生産台数は、第1号機発売から10年(1989年6月)で累計5000万台を突破し、13年間で累計1億台を達成したという。無論この数値は1機種の結果ではなく15周年記念モデルが出るまでウォークマンは実に300機種以上のモデルが登場した。さらに、1995年度には生産累計1億5000万台に達した。
ただしこの項を締めくくる最後に個人的な意見を述べるが、この初代ウォークマンはプレスマンの金型を流用したこともあってデザインがとてもシンプルだ。機能美そのままといったその直線的デザインは実に嫌みが無くて素敵だが、前記したように300機種以上にもなる現在に至る多くのデザインの中には酷いものも目立つ。それらはまるで後に登場する酷いデザインのMP3マシンがお手本にするような製品もあって、ソニーの変貌が垣間見られるようで悲しい。
さらにウォークマンの開発に関わる情報を集めている中で、ソニーの正式な社史とは異なるいくつかのストーリーに触れたが、それらの中には社史とはまったく違う側面を持った話もあった。事実「私がウォークマンを発明した」と自負する人はソニー社内に沢山いたというが、そのエピソードは別項を用意しているので別の機会にご紹介したい(笑)。
そう…私はといえば、ウォークマンという名の製品を購入したのは初代およびカセットテープ時代の3種のみであり、CDやMDになってからのソニー製ミュージックプレーヤーはまったく手にしなかった。
無論ウォークマンの復習といっても今更カセットテープによる初代ウォークマンを愛用してみようということではない。すでに35年も前に登場した製品を取り出して「良いから使ってみて」と申し上げるつもりもない(笑)。ただしもしウォークマンという画期的な製品がなかったとしたら、iPodの登場も危ぶまれるし、デジタルミュージックプレーヤーとしての登場もかなり違ったものになっていたに違いない。それだけ1979年7月1日に登場したウォークマンは世の中を変えた製品だったのだ。

※1979年7月1日発売、ソニー初代ウォークマン(TPS-L2)ファーストロット品 (当研究所所有)
iPodの素晴らしさ、凄さを文字通り正確に知っていただくにはまずその先祖と評価されているウォークマンが果たした役割と共にそれがどのような製品だったかを知っておくとより深い理解が可能になると考える。
なにしろAppleとソニーは意外と接点があった…。スティーブ・ジョブズはソニーの創業者のひとり、盛田昭夫を尊敬していたしApple最初のノートマシン PowerBook 100の製造はソニーが請け負った。またAppleがiPodのデータ転送に採用したFireWireにしてもソニーが i . Linkと名付けて採用していたことも記憶に新しい。
とはいえ後にMP3プレーヤーを共同で開発したいとジョブズがソニーを訪問したこともあったらしいが、すでにソニーにはきちんと交渉できる人材がおらずAppleを門前払いにしたことでソニーはデジタルミュージックプレーヤー開発に遅れを取ったという話もある。
ということで今回はソニーが1番輝いていた時代を証明するかのように登場し、世界を驚かせたウォークマンに肉迫してみたい。
さて先日、所有している初代ウォークマンのひとつで音楽を聴いてみようと試みた。スペックがどうの…と記述するのは容易いが、35年も前に夢中になったミュージックプレーヤーの音や使い心地がどのようなものだったかを振り返りたいと思ったからだ。とはいえすでにカセットテープによる音楽ライブラリはほとんど破棄したので残っているはずはない…。ただウォークマンに付属していたデモテープのコピーがあるのでそれを聴いてみることにした。
A面はテクノっぽいサウンド、B面は航空ショーを録音したのだろうか、ジェット戦闘機が飛び交うサウンドやサーキットを回る爆音の録音でウォークマンのステレオ感を味わうに十分なサウンドが収録されている。これはなかなかに迫力があり、すでに購入当時の感激は忘れているが当時はさぞ驚いたに違いない。
スペック的には近年聴いているデジタル機器類と比較するなら、周波数特性とかダイナミックレンジのレベルが低いはずだが、頭で考えていたよりずっと心地よい音が鳴っている。またテープ独特のワウフラッターもあるが記憶の中にあった音よりずっと良い印象なのが面白い。さらに最新のヘッドフォンで同じ音を聞いてみるとステレオ感も含めてやはりよりよく聞こえる。
昨今のノイズのないデジタルサウンドに慣れている若い方が聴いたらまた別の印象を持つとは思うが、個人的にまだまだ楽しめる音質だと考える。ということでまずは取扱説明書に記されていた初代ウォークマン(TPS-L2)の主な規格を示しておく。

※初代ウォークマン(TPS-L2)のスペック一覧
ところで初代ウォークマンと呼んできたが型番 TPS-L2 の本製品には大別して3種類あることを知っておきたい。
ウォークマンは前記したように1979年7月1日に発表されたがソニーの社史によればファーストロットは3万台製造したという。当時一番売れたテープレコーダーでも、月間1万5000台であったからこの数は思い切った数だという。陣頭指揮を取った会長盛田昭夫の意気込みが感じられるではないか…。
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※初代ウォークマン(TPS-L2)3種ロット揃い踏み。フロント(上)とバック(下)共に右からファーストロット、旧セットおよび新セット
さてその3万台が文字通りの最初のロットである。またソニーの補修部品表(1980年11月版)によれば、TPS-L2という型番には旧セットと新セットの区別があり、それはシリアルナンバーが 264,000以前とそれ以降に分けられるという。無論先の3万台も旧セットに含まれる理屈だが、だとすると旧セットにはファーストロットの3万台までとそれ以降シリアルナンバーが 264,000 までの2種があり、それ以降の新セットと合わせると初代ウォークマン(TPS-L2)には3種のロットが存在することになる。
その区別だが、当研究所では幸いその3種全てのロットをひとつずつ所持しているので比較することができる。ちなみにシリアルナンバーを記すと “15371”, “136497” そして “349538” だ。まずはボディ正面から見てみよう。
旧セットと新セットの違いは明らかだが、まずボディのフロントに記されているデザインが違う…。
旧セットは蓋に “STEREO” とあり上部に “SONY” のロゴと共に “STEREO CASSETTE PLAYER TPS-L2” とプリントされている。一方新セットでは旧セットの “STEREO” の位置には “SONY” のロゴが入り、蓋の下部には “WALKMAN” という名が入っている。
さらに背面は私の手元にある新旧セット共に上部に “STEREO” と刻印があるものの、旧セットのうちのファーストロットのみこの “STEREO” という文字が刻印ではなくプリントだ。
ファーストロットのみの仕様はまだある…。よく知られている点としては2つのヘッドフォン端子の箇所には “GUYS & DOLLS” と記されているが、ファーストロット以降の旧セットあるいは新セットには単に “A B” とあるだけだ。なおこの “GUYS & DOLLS” の表記については別途「“GUYS & DOLLS” に見る初代ウォークマンとソニーの遊び心」を参照されたい。

※2つのヘッドフォン端子部位比較。上がファーストロットで“GUYS & DOLLS” という表記になっている
そしてプレイや早送り・巻き戻しを意味する “LESTEN” , “REW/REVIEW” , “FF/CUE” という表記だが、それらは本体ボディ裏側に沿った箇所に示されており、ファーストロットはこれまたプリントだが、それ以降は金型に刻印されている。

※手前のファーストロットのみ “LESTEN” , “REW/REVIEW” , “FF/CUE” という表記がプリントになっている
さらに手元にある旧セットと新セットを比較してみたらこれまであまり明示されていない違いもあった。それはプレイボタンの三角アイコンがファーストロット以外の旧セットは緑色になっている。ファーストセットおよび新セットは他の早送り・巻き戻しのそれと同じく黒色になっている。

※ファーストロット以外の旧セットのみプレイボタンの三角アイコンが緑色の例(上)
確証はないが、プレイボタンのアイコンが緑色なのはウォークマンの原型になったといわれるプレスマンがそうだったからかも知れない…。
こうした細部について検証すると商品化の際にソニーとしても様々な意見が飛び交い、試行錯誤を続けていたことがうかがえる。
こうしたささやかな違いも含めて3種と思われる初代ウォークマンを比較するとおぼろげながら当時のソニーがどのような意図をもって事に当たっていたかが推測できるようで興味深い…。
まず3万台製造したというファーストロットだが、発売当初はマスコミや市場の反応がいまいちで、発売1ヶ月での売上はわずか3,000台に留まったという。さぞや盛田昭夫は気を揉んだものと推察するが、広告ならびに宣伝活動が功を奏したのだろう翌月8月に初回生産の3万台を完売すると、逆に供給が需要に追い付かない状態が年内いっぱい続いたという。
前記したファーストロットとその後の旧セットおよび新セットの違いは何を意味するのか…。無論想像の域を出ないが、ファーストロットではステレオ仕様である点を強調しアピールしたかったに違いない。ためにボディ両面共に目立つ表記がなされている。ただし “WALKMAN” という商品名については正規の英語文法にない和製英語であったことで当初海外では別の名で販売されていたこともあり、パッケージなどはともかく本体への刻印やプリントは避けたものと思われる。
いくつかの資料や情報によれば3万台以降の旧セットではボディの蓋下部に “WALKMAN” という歩く足のデザインが付いたキャラのシールが貼られたようだ。この時期はウォークマンという商品名が名実共にポータブル・カセットプレーヤーを意味する代名詞となりつつあった。そして新セット、すなわちシリアルナンバーが264,000 以降では会長の盛田昭夫の判断でワールドワイドにウォークマンという名で販売がなされたからか、本体蓋に誇るように “WALKMAN” という文字が刻印されるようになった。
そしてこれまた想像ではあるが、2つのヘッドフォン端子の表記がファーストロットでは遊び心ある “GUYS & DOLLS” となっていたにも関わらずその後は前記したように単純な “A B” 表記になったのは世界各国への出荷を考慮し、危なげないありふれたものにしたものと思われる。
ウォークマンは9カ国語に対応した取説を付けて世界中に出荷されていったが、それでも品切れが続く。
ソニーの社史によれば、当初マスコミたちの反応は鈍かったとあるが、彼らはウォークマンの存在意義が理解できなかったのではあるまいか。いや、批判的な意見はソニーの社内にもあったようで、録音機能のない再生専用の機器など売れるはずはないという思いを抱く人たちも多かったようだ。
しかしその生産台数は、第1号機発売から10年(1989年6月)で累計5000万台を突破し、13年間で累計1億台を達成したという。無論この数値は1機種の結果ではなく15周年記念モデルが出るまでウォークマンは実に300機種以上のモデルが登場した。さらに、1995年度には生産累計1億5000万台に達した。
ただしこの項を締めくくる最後に個人的な意見を述べるが、この初代ウォークマンはプレスマンの金型を流用したこともあってデザインがとてもシンプルだ。機能美そのままといったその直線的デザインは実に嫌みが無くて素敵だが、前記したように300機種以上にもなる現在に至る多くのデザインの中には酷いものも目立つ。それらはまるで後に登場する酷いデザインのMP3マシンがお手本にするような製品もあって、ソニーの変貌が垣間見られるようで悲しい。
さらにウォークマンの開発に関わる情報を集めている中で、ソニーの正式な社史とは異なるいくつかのストーリーに触れたが、それらの中には社史とはまったく違う側面を持った話もあった。事実「私がウォークマンを発明した」と自負する人はソニー社内に沢山いたというが、そのエピソードは別項を用意しているので別の機会にご紹介したい(笑)。
そう…私はといえば、ウォークマンという名の製品を購入したのは初代およびカセットテープ時代の3種のみであり、CDやMDになってからのソニー製ミュージックプレーヤーはまったく手にしなかった。
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