ラテ飼育格闘日記(409)

ラテとの散歩はその都度十分に気を遣っているつもりだから、体力は勿論気力も必要だ。あらためて申し上げることでもないが1年365日、朝晩の散歩だとすれば730回だ。それが8年となれば5,840回にもなる計算だ。ラテがいるからこその散歩とはいえ、疲れるはずだ(笑)。


ラテとの散歩はなかなか辛いときもある。オトーサンたちの体力的な問題、天気が非常に悪い場合などなど様々な要因があるものの、正直もしラテがいなければ出不精のオトーサンはまず散歩などしないだろう…。

散歩はラテの飲み水や巻き取り式のリード、あるいはこの時期は虫除けスプレーなども持ち出すので肩に斜めがけする散歩用バッグは結構重い。そして片手にはリード、またこれからの季節は日が落ちるのも早いから、懐中電灯も必要になるしその上に雨でも降れば傘もささなければならないという2本の腕では足りないほどあれこれと大変なときもある。

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※「なんですか? オトーサン!」


体力的な面はともかく1番気を遣うのはすれ違う様々なワンコは勿論、行き交う人たちとトラブルのないよう神経を研ぎ澄ましているつもりだからだ。
勿論ラテも幼犬時代とは違い、比較の問題とすれば “してはいけないこと” を理解していると思う。初対面の大人から声をかけられると警戒して吠えるものの、一昔前みたいに今にも飛びかかろうといるような態度は見せない。また拾い食いも注意をしているもののほとんど問題はなくなったようだし甘噛みはまったくしない。指先につまんだ小さな食べ物を鼻先に出しても前歯で当たりをつけながら指を噛まないよう注意をしている様は見事だ。

ともかく例えラテにとって少々不満な散歩になったとしても、人とすれ違う際にはリードを短く持ち、場合によってはラテをオトーサンの反対側にして進むといった気遣いをしながら散歩を続けている。
特に昨今はオトーサンが言うのも烏滸がましいものの、歩いている人たちは年寄りが多い。杖をつきながら歩く人、身体を揺らしながら歩く人、ゆっくりゆっくり一足毎に確認しながら歩いている人、そして紙袋など荷物が多い人など様々だが、経験的にラテはこうした年配者が気になるようで視線が合ったり、ましてや「おっ」とか「よしよし」などと声をかけてくれる人程吠えかかるから困るのだ。

特別ワンコ好きはともかくワンコに吠えられることは気持ちのよい出来事ではないだろうし、突然吠えられれば足元のおぼつかない年配者は驚いて転んだりする場合もあり得る。だからオトーサンは年寄りとすれ違うときには十分注意を払っているつもりだが、これが正直けっこう気疲れするものなのだ。
勿論散歩の途中には気苦労だけでなく楽しみなことや思いもかけない出会いがあったりもする。

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※電車の通過がよく見える場所でラテとしばし立ち止まる


それらは馴染みのワンコとその飼い主さんだったりするわけで、ほんの数分でも立ち話しするだけでオトーサンの心は温かくなる。そしてこれまた嬉しいというか、楽しいのはラテを見て近寄ってくれる子供たちを眺めることだ…。

ただし昨今は見知らぬ子供に声をかけることが憚られる世の中になってしまった。騒ぐ子供たちを叱りつけたオヤジが警察に通報されたり、通学する子供たちに朝の挨拶をと思って笑顔を向けただけで不審な大人だと騒がれたりする時代になってしまった。無論それだけ注意をしなければならない事件が起きているからこそなのだろうが、地域社会全体で子供たちを注視し見守ること自体が難しくなってきたようでオジサンの1人としては実に寂しい世の中だと思わざるを得ない。

しかしありがたいことにラテと散歩をしていると、見ず知らずの子供たちと知り合える機会ができることがある。無論ラテと散歩中だとしてもオトーサンが見ず知らずの子供たちに声をかけることはしない。前回にもご紹介したが、行き交う子供たちの方からラテに近づき「撫でていいですか?」「触っていいですか?」などと近づいてくれるのだ。

以前日々通っていた公園で知り合った子供たちも小学3年生といったときに知り合った子供たちが多い。それが中学そして高校と進学する過程で時間帯が合わなくなったり、学校に向かう道が変わったりが原因で会える機会がなくなっていく…。それでも先日盆踊りがあった公園で出会った女子は中学生のいまでもたまたま出会えば喜んで声をかけてくれる。なんだか親戚の孫の成長でも見ているような気持ちになって実に嬉しいのである。

嬉しい…といえば過日の夕方、いつものように女房と共にラテの散歩に出たときのことだ…。
ラテは高校生くらいまでの子供たちが大好きだ。大人たちと違い、初対面でもこれら子供たちなら喜び、足や顔まで舐めようとする。だから、例えば女子中学生たちが下校時に数人ワイワイと話ながら歩いているとそちらの方向に足を向けようとする。チャンスがあれば「あら、可愛い!」と頭のひとつでも撫でてもらいたいという魂胆があってのことだと推察しているが(笑)、ともかく子供たちの楽しそうな声がする方へと行きたがる。

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※ラテは中学生の話し声に誘われるようにして校門の方へと歩く


その日も中学生たち数人の姿があったからだろう、その中学校の校舎に沿った道を歩き始めた。まあ、そこなら車は通らないし桜の季節は美しい散歩道でもあるが、進行方向左側には校舎が列び、校門の向こうには広い校庭も見える。少し直進するとフェンスの向こうに校舎のひと棟が見えそのいくつかの部屋には明かりが灯り、数人の女生徒がブラスバンドの練習をしていた。
そういえば前記した盆踊りの際に浴衣を着た中学生の女子も確か部活はブラスバンドとか言っていたなあ…と女房と話しながら明かりが点いた窓を眺めながら一本道を進んだ…。

オトーサンたちの位置からフェンスを越えた向こうにある校舎1階の窓まで15メートルほど距離があるはずだからしてその教室に数人いるのが女子たちだとは分かったものの、オトーサンの視力では顔や表情が見える距離ではなかった。しかし何気にその窓に視線を送りながらラテのリードを持っていると女房がオトーサンにその窓を見るよう促している。立ち止まったオトーサンは再び校舎の窓に顔を向けた。

なんと、窓際にいる女子2人が明らかに大きくこちらに手を振っているではないか…。
一瞬オトーサンは自分たちの周りに他の人がいるのではないか、オトーサンたちと窓際の間に彼女たちの友達でもいるのではないかと確認したが誰もいない。どうやら間違いなくオトーサンたちに手を振ってくれているらしい。

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※明かりが点いている校舎1階左の窓際でオトーサンたちに手を振ってくれる女子たち


声こそ聞こえないが腕を高く上げて「あのオジサンたち分かってくれるかな…」とでもいうようにオーバーアクションの手の振り方だった。しかしオトーサンとしても相手が誰かもわからないのに手を振り返すわけにもいかないので返答のつもりで頭を下げた。それが分かったらしく、彼女たちは「やったね!」といったアクションと共にもう一度手を振り上げ、愉快そうに姿勢を変えた。

その中学校に顔見知りの子供は1人だけなのだ。最近では前記したように盆踊りがあった公園で偶然出会ったが、窓際で手を振ってくれた女子がその子供であるかは遠すぎて分からなかったものの、向こうがオトーサンたちを知っているとすればその女子しかいないし、もしかしたら部活の仲間は盆踊りに一緒に来てラテの頭を撫でてくれた友達たちなのかも知れない…。

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※オトーサンたちは夕闇が迫る帰路を温かい気持ちで歩いた...


しかしオトーサンたちのような年代のオジサンが中学校の前を通るとき、窓から女子中学生に手を振られる…てなことはまずあり得ないことだ(笑)。自分たちの孫なら別だが、名前も住まいも知らない子供たちに手を振ってもらえる幸せを噛みしめながらオトーサンたちは夕闇が迫る帰路をラテと共に歩くのであった…。


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Author:mactechlab
主宰は松田純一。1989年Macのソフトウェア開発専門のコーシングラフィックシステムズ社設立、代表取締役就任 (2003年解散)。1999年Apple WWDC(世界開発者会議)で日本のデベロッパー初のApple Design Award/Best Apple Technology Adoption (最優秀技術賞) 受賞。

2000年2月第10回MACWORLD EXPO/TOKYOにおいて長年業界に対する貢献度を高く評価され、主催者からMac Fan MVP’99特別賞を授与される。著書多数。音楽、美術、写真、読書を好み、Macと愛犬三昧の毎日。2017年6月3日、時代小説「首巻き春貞 - 小石川養生所始末」を上梓(電子出版)。続けて2017年7月1日「小説・未来を垣間見た男 スティーブ・ジョブズ」を電子書籍で公開。また直近では「木挽町お鶴捕物控え」を発表している。
2018年春から3Dプリンターを複数台活用中であり2021年からはレーザー加工機にも目を向けている。ゆうMUG会員