写真画質を問う、ScanSnap iX100 vs. ScanSnap SV600

当研究所では一枚物の写真やカタログにしてもそのデジタル化にはScanSnap SV600を使っている。この非接触のスキャナの使い勝手は最高で、印刷物だけでなくコンピュータ基板やチップにいたるまでのイメージをデジタル化するのに役立ってくれ、その画質も驚異的なものであることを常に立証してきた。ただし今般新たにScanSnap iX100が入ったので興味本位ながら昔撮ったアナログ写真のプリントを題材にしてスキャニングのクオリティ比較をやってみた。


ScanSnap SV600の存在は私の日常業務において大きな位置を占めている。いまやScanSnap SV600なくしてはビジュアルな作業は先に進まないと思われるほどだ。これまでいくつかのレポートをご紹介したとおり、一般的な印刷物はもとより額装した絵画やプリント基板など、通常のイメージスキャナではデジタル化が難しいアイテムを驚異的な高画質でスキャニングできることを証明してきた。

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※当研究所の日常業務に不可欠となったScanSnap SV600


その非接触なスキャニングは対象物を痛めることなくデジタル化を可能にする点も誇れるものだし、立体物ではなく印刷物でも古文書や紙質が極端に薄いものや痛みが激しく一般的なドキュメントスキャナに通すのは危険と思われるものまで問題なくデジタル化を手助けしてくれた。さらにデジタルカメラで撮影するより歪みもなく、そして照明の心配もないことも特筆すべきだろう。

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※新たに使い始めた超小型で無線LANおよびバッテリー駆動のドキュメント・スキャナ ScanSnap IX100


そうしたSV600の功績を念頭に入れての話ではあるがSV600とiX100を比較したとき、あくまで用途を限った場合にiX100の方が利点が大きなケースが考えられる…。それを一言でいうならSV600が1枚の写真や印刷物を30センチほど離れて捉えるのに対し、iX100は対象物に近接したCCDでイメージをスキャンするというその差である。
常識で考えても、ことこうした例に限ってはイメージに限りなく近い位置のCCDでスキャニングする方が離れた場所からイメージを捉える場合より画質によい影響を与えるであろうことは明白だ…。それをせっかくだから確認しておきたいというのが今回のテストである。したがって今回のテストはあくまで紙焼き写真を素材としたものであり、文書のPDF化といった目的に際しての差の有無についてはまた機会を見て確認したいと考えている。

まずは可能な限り両機器の利用条件を合わせる必要がある。ScanSnap Managerで画質の選択を双方共に「エクセレント(カラー/グレー:600dpi、白黒:1200dpi相当)」に設定。さらにカラーモードの選択は双方共に「カラー自動判別」とし、ファイルサイズ、すなわち圧縮率も同程度(中間)に、そして保存のファイル形式も共に「JPEG」にしてスキャニングしてみた…。なおテストに使った原稿はかなり昔に銀塩カメラで撮りサービース版に紙焼きしたなんの変哲もないスナップ写真で、いささか退色気味の1枚である。

早速 SV600の電源をONにし、少し離れたところに無線LANで設置してある iX100の電源も入れる。まずはSV600から実行してみたがご承知のように原稿のサイズやらにスキャンスピードは影響を受けずにいつものような軽快さで取込が終わった。
続けて同じ紙焼き写真をiX100でスキャニングしてみる…。こちらは普段だと画質を300 dpiに設定しているが、今回はSV600共々最高画質でテストしようと前記した通り600 dpiにしたことでスキャニングが些か遅くなった…。

さてデジタル化した2つのデータだが、結果SV600のサイズは3010 × 1994 ピクセル(600 ppi)で iX100が2943 × 1972 ピクセル(600 ppi)になっていたが、その差は今回の比較においては誤差として良いだろう。
問題の違いだが、両者のイメージを縮小気味にして見ればSV600の方が些かコントラストが強いと感じる。それだけ一見クリアというかシャープに見えるが、イメージを拡大して細部を比較するとその画質の違いは明らかだった。

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※エクセレントモードでサービス版の写真をスキャニングした例。上が iX100で下が SV600。それぞれ【クリックで原寸に拡大】


まず写真の白雪姫の顔部分を比較…それも倍程度に拡大してみると、iX100がやわらかで自然なイメージであるのに対しSV600の方はディテールが明らかに潰れているのがわかる。
また白雪姫の背景にある文字を見ても違いは明らかだが、SV600では上下の文字間にある凸型のディテールラインがほとんど見えていない。したがって立体的な文字も黒い背景に白く平面的に描かれたようにも見えてしまう。

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※白雪姫の顔部位を拡大してみた。上が iX100で下が SV600だ


この種の違いはイメージ全体的にいえることで、男性の腰を覆っている衣装の模様もSV600では iX100と比較するとかなり潰れているのがわかる。

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※左が iX100で右が SV600【クリックで拡大】


同じように男性頭上背景にある黄金色?のローブひとつをとってみても iX100の方がそのディテールははっきりと再現されている。ただしiX100のCCDに埃でもついていたのか、拡大しないと分からないが写真原稿にはない線が1箇所右側に入っていた。無論 SV600では無い...。

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※左が iX100で右が SV600


ともかくこの違いが非接触スキャナと一般的なドキュメントスキャナの違いなことは明らかだ。ただし逆に考えれば30センチも離れた原稿をこれだけの解像度でスキャニングできるSV600の能力は素晴らしいともいえよう。要は用途によって両者の特質を活かす使い方をすべきであり、当研究所にSV600とiX100が設置してある事実もその点を考慮してのことだ。

勿論こうした差は原稿や用途によってはほとんど考えないで済むケースがほとんどだと思うが、よりよい結果・成果を得る必要のある場合にはそれぞれの特性を十分理解した上で活用したいものである。






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主宰は松田純一。1989年Macのソフトウェア開発専門のコーシングラフィックシステムズ社設立、代表取締役就任 (2003年解散)。1999年Apple WWDC(世界開発者会議)で日本のデベロッパー初のApple Design Award/Best Apple Technology Adoption (最優秀技術賞) 受賞。

2000年2月第10回MACWORLD EXPO/TOKYOにおいて長年業界に対する貢献度を高く評価され、主催者からMac Fan MVP’99特別賞を授与される。著書多数。音楽、美術、写真、読書を好み、Macと愛犬三昧の毎日。2017年6月3日、時代小説「首巻き春貞 - 小石川養生所始末」を上梓(電子出版)。続けて2017年7月1日「小説・未来を垣間見た男 スティーブ・ジョブズ」を電子書籍で公開。また直近では「木挽町お鶴捕物控え」を発表している。
2018年春から3Dプリンターを複数台活用中であり2021年からはレーザー加工機にも目を向けている。ゆうMUG会員