Apple製品から "i" が除かれる日はいつか?

これまた無責任な初夢のひとつとしてお付き合いいただきたいが、Appleが今後どのように成長し変貌していくかを漠然と考えている。良くも悪くも「脱ジョブズ」が目立ってくるとは思うが、ひとつにはそう遠くない時期にアップルの製品名から "i" が取れる日がくるのではないかと思っているのだが...。


勿論 "i" のつくプロダクトは多々ある。ご承知のように iMac/iPhone/iPad/iPodというハードウェアだけでなくiTunesをはじめ、iPhoto/iMovie/iBooks Authorというソフトウェアも存在する。
そもそもこの "i" はスティーブ・ジョブズがAppleに復帰し1998年5月6日に発表された初代iMacから始まった。

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※1998年5月6日に発表された初代 iMac (ボンダイブルー)。当研究所所有


この命名は広告のクリエイティブ・ディレクターであり、あの "Think Different" キャンペーンに携わったケン・シーガルによるものだ。最初スティーブ・ジョブズはその名を気に入らなかったようだが結局 iMacと命名されることになった。
その "i" は小文字で表記され、インターネットを意味した。初代ボンダイブルーの iMacは簡単にインターネットへ接続できるマシンであることを強調した製品だった。

それから早くも17年となる...。その間、前記したように幾多のプロダクトの命名に "i" が付いてきたしスティーブ・ジョブズ自身も暫定CEOの時代に好んで "iCEO" と称した。無論それはインターネットの意味ではなく "interim" すなわち「暫定」といった意味で使われた名称だった。

要するに当初の具体的な意味合いから次第に離れ、Apple製品のひとつの象徴...アイコンとなっていった。スティーブ・ジョブズの iCEOは2000年のMacworld Expo San Francisco基調講演でやっと取り去られたが、プロダクトのいくつかには現在にいたるまで使われていることはご承知の通りである。

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※ジョブズの iCEOは2000年のMacworld Expo San Francisco基調講演で取り去られた


ただしAppleのプロダクトを象徴し、文具や雑貨に至るまで時代のアイコンとして真似された "i" も今となっては些か時代遅れの感は否めない。
そろそろプロダクトの名付けに変化が起きるのではないかと考える理由のひとつは無論スティーブ・ジョブズのいないアップルになっていること、そしてジョナサン・アイブの存在がより大きくなった社内においてより統一感を求めるようになるのではないかと感じるからだ。

プロダクトデザインにシンプルさと統一感を求めるアップルだとすれば、大切なその命名にそれこそ統一感がないことに気づいていないはずはない。
MacファミリーにしてもiMacの他にはMac Pro、Mac mini、MacBookというように "i" が付いているのはiMacだけだ。無論この場合の iMacは “i” を含めてのプロダクト名だからして後付けの “i” ではないのだが…。
また自社開発のアプリにしても前記したようにiTunesをはじめ、iPhoto/iMovie/iBooks Authorがある反面、GarageBand/Pages/Numbers/Keynote/Aperture/Final Cut Pro X/Motion/Logic Pro X/Safari/QuickTime等 "i" が付いていないプロダクトの方が多い。

当初はインターネットを意識しつつ個人向けの製品、すなわち “私 = I” という意味合いも含めた命名という経緯もあったようだが、例えばiMacは昨年にRetina 5Kディスプレイモデルが登場し完全にパーソナル向けと言い張るには無理がある(笑)。そしてインターネットも現在では特に冠とする意味合いはなくなったといえる。さらに "GarageBand" といった名と比べて "Photo" や "Movie" は一般名詞だからしてそのままでは商標としてふさわしくないと考えられ “i” が付けられたのだろうが、そろそろ"i" でなくてもよいのでは...。

ただし、プロダクト名を変えるといった重要なことはより良いきっかけ...機会が必要だろう。私は今年登場するとアナウンスされているApple Watchがそのよいタイミングではないかと考えた...。なぜならこのまったく新しいプロダクトはご承知の通り "iWatch" ではなく "Apple Watch" と発表されたからだ。

ただし例えば "iPad" が "Apple Pad" 、"iMovie" が "Apple Movie" ということになれば慣れないことも含めて少々その名は長ったらしい印象を与えるかも知れない。しかしAppleはここでもすでに手を打っている…。それが "Apple TV" だ。正式名称は無論 "Apple TV" なのだろうが、ハードウェア本体の刻印やマニュアル表紙などなどには "TV" と表記している。

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※Apple TVのパッケージと取説(設定ガイド)


これに習えば "Apple Pad" や "Apple Movie" は "Pad" "Movie" でよいではないか...。ただし勝手な想像だが "iPhone" のように世界中に浸透し親しまれているプロダクトは簡単に名称を変えることは難しく、しばらくは現状のままとなるかも知れない。

まあ、何の根拠もない考察でありこれまた初夢といってもよいかも知れない。とはいえ私は前に「アップルはシンプルさを失ったのか?」でプロダクトのラインナップに関して現在はシンプルさを失うほどのラインナップではないと結論づけた。しかしそれらの製品名については些か根拠が薄弱に思えるし繰り返すが “i” の意味合いも薄れてきたとも感じる…。

ただし最近発刊されたリーアンダー・ケイニー著「ジョナサン・アイブ」(日経BP社刊)によれば、ケン・シーガルの発言として "i" を外すかどうかの議論がアップル内でも持ち上がったとある...。だが iMac、iPod、iPhoneといったような統一性が優先されたと結論づけ「完璧に統一されているわけではないが、うまくいっている」と書かれている。
何がどのように「うまくいっている」のかは不明だが、曖昧のままのように思えるしこうしたプロダクト名の不統一をそのままにしておくなら、ティム・クックやジョナサン・アイブのシンプル指向も底が浅いと言わざるをえなくなる(笑)。

とはいえアップルのロゴをデザインし、アップルの黎明期は勿論、ジョブズ復帰後の時代も様々な問題時に知恵を貸したレジス・マッケナはいう...。「実は名前はあまり関係ないと思っています。名前そのものが問題なのではなく、その名前に象徴されるもの、その背景にある考えというのが最も大事なんです」と...。

これは社名について語ったものだが、商品名についても同じような考え方ができるのかも知れない。自分で主張しておいて大いなる矛盾だが、アップルが輝いているうちはどんなプロダクト名でも素晴らしい製品があるだけで嬉しいというべきか...。
さて、今年はそうした面での改革があるのかないのか、Apple Watch登場のあたりで再度占ってみたいと思う。



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Author:mactechlab
主宰は松田純一。1989年Macのソフトウェア開発専門のコーシングラフィックシステムズ社設立、代表取締役就任 (2003年解散)。1999年Apple WWDC(世界開発者会議)で日本のデベロッパー初のApple Design Award/Best Apple Technology Adoption (最優秀技術賞) 受賞。

2000年2月第10回MACWORLD EXPO/TOKYOにおいて長年業界に対する貢献度を高く評価され、主催者からMac Fan MVP’99特別賞を授与される。著書多数。音楽、美術、写真、読書を好み、Macと愛犬三昧の毎日。2017年6月3日、時代小説「首巻き春貞 - 小石川養生所始末」を上梓(電子出版)。続けて2017年7月1日「小説・未来を垣間見た男 スティーブ・ジョブズ」を電子書籍で公開。また直近では「木挽町お鶴捕物控え」を発表している。
2018年春から3Dプリンターを複数台活用中であり2021年からはレーザー加工機にも目を向けている。ゆうMUG会員