仁科邦男著「犬たちの明治維新 ポチの誕生」はユニークな1冊で面白い!
しばらくぶりで犬に関する本を買った。一時は飼い犬のことを知ろうといわゆるトレーニング書はもとよりアカデミックな本も含めて多くの書籍に目を通したが、さすがに最近はよほど興味を惹く本の他は手にしなくなった。本書はそうした意味でも類の無いユニークな1冊だ。なにしろ犬たちの明治維新を描いたノンフィクションなのだから…。
明治維新を舞台にした小説や研究書はそれこそ星の数ほどといってよいほどある。時代が大きく変わるその舞台は創作意欲を刺激するのだろう。最近始まったNHKの新しい大河ドラマ「花燃ゆ」も黒船が襲来し国を憂う若き人びとをテーマにした明治維新の物語だ。
ヒロインは久坂玄端の妻となった吉田松陰の妹・文(ふみ)だという。そして吉田松陰のもとには高杉晋作、伊藤博文など後の世を担った人たちが集まった…。
しかし明治維新は人びとの生活を激変させ翻弄したが、犬にとっても大きな激変の時代となった…。その「犬にとっての幕末明治」をテーマにし、ペリー来航、横浜開港、文明開化、西南戦争…史料にちらちら顔をみせる犬関連の記述を丹念に拾い集めたのが本書、仁科邦男著「犬たちの明治維新 ポチの誕生」草思社刊である。

※仁科邦男著「犬たちの明治維新 ポチの誕生」草思社刊
これまで顧みられることがなかったが、人と同じように、日本の犬たちにも開国があり幕末があり、そして明治維新があり文明開化があった。ただ犬の歴史は我々人の歴史の中に埋没し、これまで犬が激動の時代をどのように生きてきたかは顧みられることはなかっただけだ。
明治維新の混乱の中、右往左往していたのは人であり、犬たちは “のほほん” と我関せずと過ごしていたわけではなかった。犬たちも江戸時代にいたるそれまでとはまったく違った扱いを受けることになり多くの犬たちが処分されることにもなった…。
ともあれ本書によれば明治維新前と後では犬の飼い方がまったく違った。詳しくは是非本書をお読みいただきたいが、本書は単に犬の歴史を追っただけではなく我々がよく知っている歴史上のエピソードに犬が密接に関係していることを紹介している点が素晴らしい。
例えば…前記したNHKの新しい大河ドラマ「花燃ゆ」に登場する吉田松陰と犬の関わり合いなどは実に面白い。吉田松陰はご承知のように黒船来航時に弟子の金子重之輔と二人で米国に密航を企て、下田村の海岸につないであった漁民の小舟を盗んで旗艦ポーハタン号に漕ぎ寄せる。一端は乗船したものの渡航は拒否されたために法を犯したと自首することになる。
実はこの密航未遂事件の3日前にも松蔭たちは横浜村の港に停泊していたペリー艦隊の舟に乗り込もうとした経緯があったのだ。したがって下田での行動は2度目だった…。
ではなぜ横浜村の港からの密航が失敗したのかといえば、それは浜辺をうろついていた松蔭たち2人に “村犬” が集まり不審者たちにつきまとって吠え続けたからだという。その吠え声に村人たちが起きだして騒ぎになればすべてが露見し計画は終わってしまう。
松蔭たちは仕方なくこの日の密航は断念するしかなかったのだ。
もしこの時、犬たちがいなかったら松蔭たちの運命も、またもしかしたらその後の日本の歴史も微妙に変わっていたかも知れないではないか…。
こうした教科書では教えてくれない明治維新と犬との関わり合が多々載っているのが本書の魅力だ。
明治維新と犬と言えば無論あの西郷の犬についても詳しい考察があって興味深い。ともあれ明治維新は人びとにとってだけでなく犬にとっても生き抜くのが難しい過酷な時代であったようだ。
犬を愛する人たちには是非ご一読をお勧めしたい1冊である。
明治維新を舞台にした小説や研究書はそれこそ星の数ほどといってよいほどある。時代が大きく変わるその舞台は創作意欲を刺激するのだろう。最近始まったNHKの新しい大河ドラマ「花燃ゆ」も黒船が襲来し国を憂う若き人びとをテーマにした明治維新の物語だ。
ヒロインは久坂玄端の妻となった吉田松陰の妹・文(ふみ)だという。そして吉田松陰のもとには高杉晋作、伊藤博文など後の世を担った人たちが集まった…。
しかし明治維新は人びとの生活を激変させ翻弄したが、犬にとっても大きな激変の時代となった…。その「犬にとっての幕末明治」をテーマにし、ペリー来航、横浜開港、文明開化、西南戦争…史料にちらちら顔をみせる犬関連の記述を丹念に拾い集めたのが本書、仁科邦男著「犬たちの明治維新 ポチの誕生」草思社刊である。

※仁科邦男著「犬たちの明治維新 ポチの誕生」草思社刊
これまで顧みられることがなかったが、人と同じように、日本の犬たちにも開国があり幕末があり、そして明治維新があり文明開化があった。ただ犬の歴史は我々人の歴史の中に埋没し、これまで犬が激動の時代をどのように生きてきたかは顧みられることはなかっただけだ。
明治維新の混乱の中、右往左往していたのは人であり、犬たちは “のほほん” と我関せずと過ごしていたわけではなかった。犬たちも江戸時代にいたるそれまでとはまったく違った扱いを受けることになり多くの犬たちが処分されることにもなった…。
ともあれ本書によれば明治維新前と後では犬の飼い方がまったく違った。詳しくは是非本書をお読みいただきたいが、本書は単に犬の歴史を追っただけではなく我々がよく知っている歴史上のエピソードに犬が密接に関係していることを紹介している点が素晴らしい。
例えば…前記したNHKの新しい大河ドラマ「花燃ゆ」に登場する吉田松陰と犬の関わり合いなどは実に面白い。吉田松陰はご承知のように黒船来航時に弟子の金子重之輔と二人で米国に密航を企て、下田村の海岸につないであった漁民の小舟を盗んで旗艦ポーハタン号に漕ぎ寄せる。一端は乗船したものの渡航は拒否されたために法を犯したと自首することになる。
実はこの密航未遂事件の3日前にも松蔭たちは横浜村の港に停泊していたペリー艦隊の舟に乗り込もうとした経緯があったのだ。したがって下田での行動は2度目だった…。
ではなぜ横浜村の港からの密航が失敗したのかといえば、それは浜辺をうろついていた松蔭たち2人に “村犬” が集まり不審者たちにつきまとって吠え続けたからだという。その吠え声に村人たちが起きだして騒ぎになればすべてが露見し計画は終わってしまう。
松蔭たちは仕方なくこの日の密航は断念するしかなかったのだ。
もしこの時、犬たちがいなかったら松蔭たちの運命も、またもしかしたらその後の日本の歴史も微妙に変わっていたかも知れないではないか…。
こうした教科書では教えてくれない明治維新と犬との関わり合が多々載っているのが本書の魅力だ。
明治維新と犬と言えば無論あの西郷の犬についても詳しい考察があって興味深い。ともあれ明治維新は人びとにとってだけでなく犬にとっても生き抜くのが難しい過酷な時代であったようだ。
犬を愛する人たちには是非ご一読をお勧めしたい1冊である。
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