Macintosh 128Kのモデムポートアイコンに秘められた秘密?
1984年1月24日に発表されたMacintosh (後にMacintosh 128Kと呼ばれる)の優れていたところはいわゆるGUIといったことだけではなかった。アイコンをマウスでオペレーションすることはLisaで実現されていたが、プリンタやマウスといった周辺機器を本体に接続する際、接続箇所が分かりやすいようにとI/Oポートの各コネクタ位置にテキストではなくアイコンが配置されていた。
さて今回のテーマはかなり局所的でピンポイントのことに知的好奇心を向けてみたい。
初代Macintoshの I/O ポートをよくご覧いただきたいが、そこには各ポートに合わせて本体ケースにアイコンがある。背面向かって左側から記すと、まずマウスコネクタ、外部フロッピーディスクコネクタ、プリンターコネクタ、モデムコネクタ、そしてサウンドポートである。


※初代Macintosh(上)とその背面の I/O ポート(下)
特にプリンターコネクタとモデムコネクタはそれぞれRS-232/RS-422 といったシリアルコミュニケーションのポートでプリンタやモデム以外でも様々な外部装置をコントロールできた。
さて今回の主役なのはそのうちのモデムポートのアイコンに関してである。そのケースに刻印されているアイコンをよく見ていただきたい...。

※I/Oポートにあるモデムポートと呼ばれていたコネクタ部とそのアイコン。外枠の四角の線は一部潰れている
1984年にMacintoshを手に入れた際、何の気なしに見たときには電話の受話器とカールコードが描かれていると思い込んでいたが、すぐに受話器の右に描かれているのはカールコードではなく2進数の "1001010" であることがわかった。
当初は何の興味もわかなかったしそれはアイコン以上でも以下でもなかったが、数ヶ月たってMacintoshの細部にまで興味が増してきたとき、その2進数表記が気になってきた。
"1001010" はあらためて確認するまでもなく2進数を配置したものだろう。問題はこれがなにを意味するかだ...。無論何の意味もなく見栄えで選んだデザインかも知れないが、この頃のアップルには隅々までスティーブ・ジョブズの眼が行き届いていたし、無意味のものなどひとつもなかったと考えられていた。したがって何らかの意図があったと考えてもあながち間違いではないかも知れない...と思うようになった。

※モデムポートのアイコンを拡大。受話器の右に"1001010" の表記が...
"1001010"は8進法では "112"、12進法では"62"、16進法では"4A" を意味するが、やはり何らかの意味を含ませているとすれば10進法の "74" に注目するのが正攻法に違いない...と考えた。
ではこの "74" という数値にどのような意味があり、また当時のスティーブ・ジョブズやMacintosh開発者たちがどのようなメッセージを込めたのだろうか...。
いやそれは考えすぎで、繰り返すがたまたま2進数として見やすいからと"1001010" を採用しただけかも知れないし、記述の一部に過ぎないかも知れない。とはいえここではあえて深入りし、何らかの意味・意図があるものと考えて先に進みたい...。
さていくつか “74” という数値に意味づけができることを探してみた。とはいえ意味やメッセージがあるとすればそれは米国に関わる事だろう...。とはいえまさか原子番号 74 の元素であるタングステンが関係しているとは思えない。
また米国の歴史に関わることといえば、アメリカ合衆国の独立記念日は7月4日である。しかしこれもかなりのこじつけになってしまう。さらに強引にIT関連としてテキサスインスツルメンツ製74LS00などの74シリーズ TTL IC及び互換CMOS ICを表している...とも思えない(笑)。
ではもう少しそれらしい意味合いはないのだろうか...と考え続けた。
そういえば開発者ならずとも特にこれまで世の中になかったような革新的な製品開発に手を染めるとき一番の気がかりは当該製品が売れるかどうかではないだろうか...。良いものは必ず売れる...といえるほどビジネスは単純ではない。Macintoshも画期的な製品ではあったが当初より販売価格もかなり高くなってしまったし、メモリも128KBと少なくフロッピーディスク1台が内蔵されていたが、まだハードディスクは用意されていなかった。ために評判はよかったがすぐに在庫が膨れあがり、それがスティーブ・ジョブズの責任だとしてAppleを追われる原因となってしまった。
ただし本体ケース裏面に開発者たちのサインを彫り込むほどの拘りを見せたMacintoshはそれに携わる開発者たちのスキルは高かった。また単なる専門分野の知識だけでなく遊び心と広い見識を持った人たちだったから、こうした細部にまで何らかの意図を隠していると考えるのも無意味ではないと考え続けた。
ということでひとつそれらしいことにたどり着いた話しがある。それがランチェスターの法則を基礎にしたお遊びだったのではないかという説だ。
ランチェスターの法則(Lanchester's laws)とは1914年にフレデリック・ランチェスターによって発表されたオペレーションズ・リサーチにおける戦闘の数理モデルである。いわゆる戦略論には古代から多くの説があり、あの「孫子の兵法」もそのひとつだ。しかし戦争というものを、はじめて定量的、統計的、数学的に取り扱ったのが、イギリスのエンジニアであったフレデリック・W・ランチェスターだった。
このランチェスターをルーツにして、企業間の販売競争に勝ち残るための理論と実戦の体系として構築されたランチェスター戦略やらマーケットシェア理論に応用したものなどが提唱されてきたらしい。そのマーケットシェア理論によれば、独占的でその地位が絶対的に安全と考えられるシェアが74%という上限目標値なのだという。そして商圏内のシェアをどの様に獲得するかの戦略を立てるのにもこの理論が使われているという...。
とはいえ素人がランチェスターの理論について解説できる筈もないが、スティーブ・ジョブズたちとしても心血を注いで開発したMacintoshが揺るがぬシェアを確保することを夢見、願ってこのような細部にも "74" を意味する "1001010" を配したのではなかったか、というのが私の妄想だった...少なくともしばらくは...。
さてそのうち、もうひとつ閃いたことがあった。それは2進法の数え方に関することだ。ご承知のように10進法では馴染んでいるように "0,1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,⋯" と数えていく。しかし2進法で表すとそれは "0,1,10,11,100,101,110,111,1000,⋯" といった数え方になる。
もし "1001010" が本来 "100" , "10" , "10" と区切ったものだったとこじつけるとその10進法への変換結果は "4", "2", "2" となる。それはこのポートがRS-422インターフェースであることを意味するものではないのか...。
当時この2つの説を友人知人らに提示して意見を聞いたことがあったが、RS-422説を支持する人がほとんどだった。それにしては前振りが長かったが、あなたはどうお考えになるのだろうか(笑)。
その後、別の説を唱える方からメールをいただいた。
その方は"1001010" のビット数が一般的な8bitではなく7bitである点に注目されたという。う〜ん、言われてみればなるほど...と思うが何故そこに気がつかなかったのかが悔やまれる(笑)。
そして7bitといえばASCIIコードだ...。うん、これも納得だ。
ということで"1001010" のASCIIコードはといえば "J" なのだ!無論その意味はご説明するまでもないだろうが "Jobs" の "J" である。無論小文字ではなく大文字の "J" だ。
そんな想像をすればおのずとそうしたシーンが浮かんでくるではないか。アイコンの初期デザインはもしかしたら単純に "0101010" といったものだったかも知れないが、それを見たスティーブ・ジョブズが "1001010" にしろと指示を出したのかも...。
あるいはスタッフが "1001010" とデザイン案を出したときジョブズは「なんだこの中途半端な2進数は?」と問いただしたかも知れない。スタッフが「貴方の頭文字ですよ」と答えるとジョブズは笑顔でOKを出した...という可能性もある。
他にこんな些細なことに興味を持つ人もそうそういないだろうし、勿論アップルからの正式見解があるはずもない(笑)。したがって何が正しいかは不明だが、このスティーブ・ジョブズの頭文字説は "あり" かも知れない。
さて今回のテーマはかなり局所的でピンポイントのことに知的好奇心を向けてみたい。
初代Macintoshの I/O ポートをよくご覧いただきたいが、そこには各ポートに合わせて本体ケースにアイコンがある。背面向かって左側から記すと、まずマウスコネクタ、外部フロッピーディスクコネクタ、プリンターコネクタ、モデムコネクタ、そしてサウンドポートである。


※初代Macintosh(上)とその背面の I/O ポート(下)
特にプリンターコネクタとモデムコネクタはそれぞれRS-232/RS-422 といったシリアルコミュニケーションのポートでプリンタやモデム以外でも様々な外部装置をコントロールできた。
さて今回の主役なのはそのうちのモデムポートのアイコンに関してである。そのケースに刻印されているアイコンをよく見ていただきたい...。

※I/Oポートにあるモデムポートと呼ばれていたコネクタ部とそのアイコン。外枠の四角の線は一部潰れている
1984年にMacintoshを手に入れた際、何の気なしに見たときには電話の受話器とカールコードが描かれていると思い込んでいたが、すぐに受話器の右に描かれているのはカールコードではなく2進数の "1001010" であることがわかった。
当初は何の興味もわかなかったしそれはアイコン以上でも以下でもなかったが、数ヶ月たってMacintoshの細部にまで興味が増してきたとき、その2進数表記が気になってきた。
"1001010" はあらためて確認するまでもなく2進数を配置したものだろう。問題はこれがなにを意味するかだ...。無論何の意味もなく見栄えで選んだデザインかも知れないが、この頃のアップルには隅々までスティーブ・ジョブズの眼が行き届いていたし、無意味のものなどひとつもなかったと考えられていた。したがって何らかの意図があったと考えてもあながち間違いではないかも知れない...と思うようになった。

※モデムポートのアイコンを拡大。受話器の右に"1001010" の表記が...
"1001010"は8進法では "112"、12進法では"62"、16進法では"4A" を意味するが、やはり何らかの意味を含ませているとすれば10進法の "74" に注目するのが正攻法に違いない...と考えた。
ではこの "74" という数値にどのような意味があり、また当時のスティーブ・ジョブズやMacintosh開発者たちがどのようなメッセージを込めたのだろうか...。
いやそれは考えすぎで、繰り返すがたまたま2進数として見やすいからと"1001010" を採用しただけかも知れないし、記述の一部に過ぎないかも知れない。とはいえここではあえて深入りし、何らかの意味・意図があるものと考えて先に進みたい...。
さていくつか “74” という数値に意味づけができることを探してみた。とはいえ意味やメッセージがあるとすればそれは米国に関わる事だろう...。とはいえまさか原子番号 74 の元素であるタングステンが関係しているとは思えない。
また米国の歴史に関わることといえば、アメリカ合衆国の独立記念日は7月4日である。しかしこれもかなりのこじつけになってしまう。さらに強引にIT関連としてテキサスインスツルメンツ製74LS00などの74シリーズ TTL IC及び互換CMOS ICを表している...とも思えない(笑)。
ではもう少しそれらしい意味合いはないのだろうか...と考え続けた。
そういえば開発者ならずとも特にこれまで世の中になかったような革新的な製品開発に手を染めるとき一番の気がかりは当該製品が売れるかどうかではないだろうか...。良いものは必ず売れる...といえるほどビジネスは単純ではない。Macintoshも画期的な製品ではあったが当初より販売価格もかなり高くなってしまったし、メモリも128KBと少なくフロッピーディスク1台が内蔵されていたが、まだハードディスクは用意されていなかった。ために評判はよかったがすぐに在庫が膨れあがり、それがスティーブ・ジョブズの責任だとしてAppleを追われる原因となってしまった。
ただし本体ケース裏面に開発者たちのサインを彫り込むほどの拘りを見せたMacintoshはそれに携わる開発者たちのスキルは高かった。また単なる専門分野の知識だけでなく遊び心と広い見識を持った人たちだったから、こうした細部にまで何らかの意図を隠していると考えるのも無意味ではないと考え続けた。
ということでひとつそれらしいことにたどり着いた話しがある。それがランチェスターの法則を基礎にしたお遊びだったのではないかという説だ。
ランチェスターの法則(Lanchester's laws)とは1914年にフレデリック・ランチェスターによって発表されたオペレーションズ・リサーチにおける戦闘の数理モデルである。いわゆる戦略論には古代から多くの説があり、あの「孫子の兵法」もそのひとつだ。しかし戦争というものを、はじめて定量的、統計的、数学的に取り扱ったのが、イギリスのエンジニアであったフレデリック・W・ランチェスターだった。
このランチェスターをルーツにして、企業間の販売競争に勝ち残るための理論と実戦の体系として構築されたランチェスター戦略やらマーケットシェア理論に応用したものなどが提唱されてきたらしい。そのマーケットシェア理論によれば、独占的でその地位が絶対的に安全と考えられるシェアが74%という上限目標値なのだという。そして商圏内のシェアをどの様に獲得するかの戦略を立てるのにもこの理論が使われているという...。
とはいえ素人がランチェスターの理論について解説できる筈もないが、スティーブ・ジョブズたちとしても心血を注いで開発したMacintoshが揺るがぬシェアを確保することを夢見、願ってこのような細部にも "74" を意味する "1001010" を配したのではなかったか、というのが私の妄想だった...少なくともしばらくは...。
さてそのうち、もうひとつ閃いたことがあった。それは2進法の数え方に関することだ。ご承知のように10進法では馴染んでいるように "0,1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,⋯" と数えていく。しかし2進法で表すとそれは "0,1,10,11,100,101,110,111,1000,⋯" といった数え方になる。
もし "1001010" が本来 "100" , "10" , "10" と区切ったものだったとこじつけるとその10進法への変換結果は "4", "2", "2" となる。それはこのポートがRS-422インターフェースであることを意味するものではないのか...。
当時この2つの説を友人知人らに提示して意見を聞いたことがあったが、RS-422説を支持する人がほとんどだった。それにしては前振りが長かったが、あなたはどうお考えになるのだろうか(笑)。
その後、別の説を唱える方からメールをいただいた。
その方は"1001010" のビット数が一般的な8bitではなく7bitである点に注目されたという。う〜ん、言われてみればなるほど...と思うが何故そこに気がつかなかったのかが悔やまれる(笑)。
そして7bitといえばASCIIコードだ...。うん、これも納得だ。
ということで"1001010" のASCIIコードはといえば "J" なのだ!無論その意味はご説明するまでもないだろうが "Jobs" の "J" である。無論小文字ではなく大文字の "J" だ。
そんな想像をすればおのずとそうしたシーンが浮かんでくるではないか。アイコンの初期デザインはもしかしたら単純に "0101010" といったものだったかも知れないが、それを見たスティーブ・ジョブズが "1001010" にしろと指示を出したのかも...。
あるいはスタッフが "1001010" とデザイン案を出したときジョブズは「なんだこの中途半端な2進数は?」と問いただしたかも知れない。スタッフが「貴方の頭文字ですよ」と答えるとジョブズは笑顔でOKを出した...という可能性もある。
他にこんな些細なことに興味を持つ人もそうそういないだろうし、勿論アップルからの正式見解があるはずもない(笑)。したがって何が正しいかは不明だが、このスティーブ・ジョブズの頭文字説は "あり" かも知れない。
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