Apple Musicがスタート、そのファーストインプレッション

6月に開催されたApple WWDCの基調講演において発表されたApple Musicだがやっと提供開始になった。正直すべての機能というか全容を理解したわけでもないが、まずは第一印象をお届けしたい。


Appleに言わせれば、Apple Musicは音楽を楽しむ最良の方法を組み合わせて、すべてを一つに集約し、直観的に使えるアプリケーション…。そして革新的なストリーミング型音楽サービスで、1日24時間、Appleから全世界に向けて生放送する先駆的なラジオステーションでもあり、音楽ファンにとってはお気に入りのアーティストとつながるためのすぐれた新しい方法でもあるということになる…。

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※Apple Musicは音楽の新しい楽しみ方だ


我々がApple Musicと相対するには難しいことはない...と言いたいところだが、特にiOS版の UI は直感的とはいえずに考えてしまう場合も多い。ともかく iOS なら「ミュージック」を、Macなら「iTunes」を起動すればアップデートしたそれぞれのアブリはApple Musicを統合した形で使えることになる。

ところで iTunesやiPodあるいはiPhoneによる音楽の楽しみ方は確実に我々の日常を大きく塗り替えてしまった。しかし最初のiPodが発表されたとき、スティーブ・ジョブズがいった「我々は1,000曲を持ち歩くことができる」という説明を嘲笑したアナリストやジャーナリストもいた...。1,000曲もの音楽を持ち歩いてどうするのだと。

いまやiTunesやiPhoneのプレイリストにはiCloudも含め桁違いの曲をそれこそ自分の好むままにインストールして楽しむことができている。それらの曲は有償でダウンロードしたものであり、あるいは自身で買ったCDをコピーしたものだ。しかし音楽の世界は深淵である...。

iTunesのすばらしい点は、お気に入りの曲を好きなときに再生できることだが、同時に世界中にはそれこそ星の数ほども未知の音楽が存在する。そして意欲と興味があればそれらの膨大な中から新しい魅力をたたえた曲や演奏家と出会えることができる。

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※ iOSの「ミュージック」よりApple Musicを使い始める


これまでにも新しい曲と出会う機会はあった。友人知人たちからの情報はもとよりだが iTunesで検索すればこれまで知らなかった様々な曲がワンサカとリストアップされた。しかしそれらの再生はあくまで試聴であり、全曲を聴きたければ当然ながら購入する必要があった。

しかしApple Musicは月額980円ですべてではないものの、iTunesで管理されている3,000万曲以上で構成されるApple Musicをいつでも試聴ではなくフルに楽しめることだ。
無論Apple MusicにはApple Music Radioなど新しい魅力的なコンテンツがあり、たまたま流れた曲に心を奪われたり、友人知人たちと共有もできたりもするが、やはり一番の魅力は検索するなりした任意のアーティストや音楽にシンプルに出会える事ではないだろうか。

例えば旧来の iTunesで「アランフェス協奏曲」と検索すれば当該曲名の検索結果としてマッチングしたものがリストアップされる。それらは表示された範囲において一曲ずつ、あるいはアルバム単位で購入できるものの試聴はあくまで各曲ごとに90秒と決まっている。

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※これまでのiTunesで検索した結果の楽曲は購入前には90秒間の試聴しかできなかった


片やApple Musicで同じ検索をしたとすればマッチングした多くの「アランフェス協奏曲」が試聴のレベルではなくフルで聴くことができるし、各アルバムやアーティスト毎に些細なプレイリストを確認でき、これまた全てではないものの大半の曲をフルで再生可能なのだ。とはいえこのApple Musicの始まりは iPodの役割が終焉を迎えたことにも通じる。少し寂しい気もするが、世界がまた動いたということか…。

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※Apple Musicでは検索結果のリストの多くをフルで再生可能になった


Apple Musicで気に入った曲に出会ったなら iTunesの場合曲名の右にある "…" をマウスプレスし表示するポップアップメニューから「マイ ミュージックに追加」を選択すれば文字通りマイミュージックに追加される。

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※Apple Musicで気に入った曲はマイミュージックに追加できる


さて、繰り返すがこのApple Musicのサービスは無料ではない。Appleの大盤振る舞いでスタートから3ヶ月間は無料となっているが、9月末が終わった時点から月額980円が加算される。まあ課金が嫌なら自動更新をOFFにしておくことをお勧めするが、音楽を楽しみ、これからも楽しんでいくつもりなら月額980円は安い!絶対に安い。

その昔、レコード店の中を行ったり来たりして目的の棚からジャケットを引き上げたり元に納めたりと購入を迷い…またべつの日に出かけて同じ事をしたものだ(笑)。何故なら1,800円とか2,300円のLP1枚を買うべきか我慢すべきかで迷いに迷ったのである。何しろそれを買えばこれから1週間昼飯は食パンだけになる...。しかし大概は買った。

大げさに思えるかも知れないが、給料が手取で2万円程度の時代だったのだからレコード1枚でその1割が飛んでいくことは本当に決死の覚悟だった(笑)。その上に試聴というものができなかった。レコード店で流れていたり店頭用の十数枚を別にして、売り物のレコードをプレーヤーにかけてくれという話しはありえなかった。だから知っている曲はともかく、ジャケット裏の解説などで興味を持ったレコードを買っても後悔することもあり得たのだ。

それがいまApple Musicは月額980円で聞き放題だ。3,000万曲すべてが全曲聴けるわけではないが、それでも大半は楽しむことができる。
Apple Musicは世界中の曲を、これから出会うであろう曲たちをAppleのレコード棚に預けているという感覚か...。いつでも懐かしい曲に涙を流し、初めて出会った曲に思わず膝を打つ楽しみがある...。

ただしApple Musicの利点はそのまま問題点ともなる。いくばくかのジャンル別やお気に入りの重み付け機能もあるが、そもそも3,000万曲という実感できない膨大な楽曲の海をどう泳げば一番効果的に自分が漠然と望んでいる音楽に出会えるかは...なかなか難しい。まあ泳ぐそのことこそ楽しいのかも知れないが。

さらにApple Musicの機能面ではまだまだ必要と思われる機能が付いていない。音楽は音楽として純粋に楽しめれば良いという考えもあるだろうが、"すべてを一つに集約し" と宣うなら個人的にはアルバムのライナーノートといった情報も欲しい...。まあ今回は最初の一歩だからしてまずは楽しむことに専念しようか...。



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Author:mactechlab
主宰は松田純一。1989年Macのソフトウェア開発専門のコーシングラフィックシステムズ社設立、代表取締役就任 (2003年解散)。1999年Apple WWDC(世界開発者会議)で日本のデベロッパー初のApple Design Award/Best Apple Technology Adoption (最優秀技術賞) 受賞。

2000年2月第10回MACWORLD EXPO/TOKYOにおいて長年業界に対する貢献度を高く評価され、主催者からMac Fan MVP’99特別賞を授与される。著書多数。音楽、美術、写真、読書を好み、Macと愛犬三昧の毎日。2017年6月3日、時代小説「首巻き春貞 - 小石川養生所始末」を上梓(電子出版)。続けて2017年7月1日「小説・未来を垣間見た男 スティーブ・ジョブズ」を電子書籍で公開。また直近では「木挽町お鶴捕物控え」を発表している。
2018年春から3Dプリンターを複数台活用中であり2021年からはレーザー加工機にも目を向けている。ゆうMUG会員