ラテ飼育格闘日記(293)

ワンコの飼い主なら愛犬が日々どんなことを考えているのか…に思いを巡らせたことがあるに違いない。オトーサンもラテが出窓のタタキから外を見ているとき、あるいはオトーサンがラテの食事の用意をしているときにじっとこちらを観察しているそのとき、その小さな頭脳にはどんな思いが駆け巡っているのかを知りたいと思ってきた…。                                                                                            
哲学者デカルトはワンコには思考力も判断力も無いと断言した一人である。デカルトはワンコを歯車や滑車を搭載した機械と同じとみなし、考える力は無いが、ある種のことを実行することはできると…考えたという。ただしこの説には裏があり、当時のキリスト教の教義を考慮したからだという話もあるという…。
さて、これまでの研究によれば、ワンコの脳内の神経細胞は人間のそれと同じような働きをすることが立証されているというし、両者は同じ化学物質で成り立っており、刺激に対する反応も似ているしその構造も大体が一致しているという。

とはいえ誰もワンコが我々とまったく同様な意識体系を持ち、同じような思考を行うとは考えていないだろう。
何しろ我々人類は言語で物事を考えるように出来ている。「始めにことばありき」である。お腹が空いたとき無意識に「ああ、腹減った」と言語で認識するはずだし時計を見ながら「いま何時だろう」という意識はそのまま言葉として心の中で反復しているに違いない。しかしワンコだって空腹を感じることは間違いないが言葉を持たないワンコは我々とまったく同じ認識ではないはずだ。

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※座り込んで動こうとしないラテ...


獣医の野村潤一郎氏は著書「犬に関する100問 100答」の中で「暇なとき、犬は何を考えているのですか?」という問いに対して「90%は飼い主と一緒に行く散歩のことで後が食べ物のこと」と答え、続けて「後はほとんど何も考えていないでしょうね」としている。確かにラテの場合を考えても散歩中は良し悪しを別にして多くの刺激を受ける。
嫌いなワンコに吠えたり、逆に吠えられたり、オトーサンに叱られたり抱っこしてもらったり、大好きな友達ワンコの飼い主さんに撫でられたり、あるいはお気に入りの女子の足を鼻先でツンとやったりとエピソード記憶に残る様々な刺激を受けているはずだから、ぼーっとしているときにそうしたあれこれを思い出しているのかも知れない。

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※ねぇねぇ、アタシと遊ぼうよ!


しかし「後はほとんど何も考えていないでしょうね」には些か異論がある。
ラテの日常を観察していると「この小さな頭はいま何を考えているのか」という疑問がわいてくる。
毎日出窓から遊歩道を行き交う人たちやワンコなどに向かって吠え、鳴き、呼びかけたりあるいはオトーサンたちに遊びを要求したりオヤツをねだったりする感情豊かなラテが、何も考えていないなどとは納得がいかないからだ。
どうにもオトーサンたちは自分たちを基準にして地球が回っているものと思い込んでいるフシがあるが、ワンコにはオトーサンたちが想像もつかないワンコ独自の世界があるように思えてならないのである。

ラテが窓際で外を眺めているとき、よく見るとそれなりの意識が働いていることがわかる。
一見ボケ〜ッとしているようでも時に耳が動きその黒光りした鼻が小さく左右に動いている。そして尻尾も時折軽く振られたり位置が変わったりしている。無論それらはラテが何かを感じ、あるいは情報を得ようとしている証拠に違いない。
言葉こそ発しはしないが、人間の数百倍以上も敏感だというその鼻は刻々と変化する窓の空気取りから入ってくる何かを敏感に感じ取っているに違いないしオトーサンたち人間には到底分からない世界を認識していることになろうか。
無論その両耳も…人が20Hzから20,000Hzあたりまでしか聞こえない音域が、ワンコは45,000Hzまでのいわゆる超音波まで認識できるわけで、これまたオトーサンが知らない音の世界に浸っているのかも知れない。

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※ボストンテリアの飼い主さんに甘えるラテ


よくワンコが何もない壁や空間に向かって鼻を動かしたり吠えたりすると、人間には見えない何かをワンコは見えるのか? と考えるが、それは視覚中心で生きているオトーサンたちの判断であり、ワンコはその一見何も無い空間に漂う臭いや音を感じているに違いないのだ。
したがって窓辺でボケ〜ッとしているからといって何も考えていないと思うのはまったくの誤りではないかとオトーサンは思う。
やはり寝ている時は別としても、そのじっとしている間、ある種の知識活動が行われていると考えた方が自然なのではないだろうか。

例えばラテがリビングの床に腹ばいになっているその瞬間「ワウッ」と小さく声を発して数メートル先の出窓のタタキに駆け上がりカーテンを鼻面で器用にかき分けて猛烈に吠え始めるときがある。
最近では何が起こったのかが分かるようになったが、最初は訳がわからなかった…。
出窓の向こうにある遊歩道をラテが出会う毎に異様に吠えるワンコが通っているのだ。他のワンコへの吠え方とは違うので分かるようになったが、問題は何故そのワンコが遊歩道を通過することをラテが察知できるのだろうか…。

そのワンコが声高らかに吠えながら、いや例え小さくても唸りながらでも通るのならそれは分かる。しかしオトーサンがこの数年の間、観察している範囲では当のワンコが吠えたということはない。
また出窓にある窓枠には小さな空気取りがあって開けてある場合もあるが、天気の悪いときには閉めている。したがって人間の感覚では遊歩道から窓まで10メートルほど離れているだけでなく、さらに窓にはレースと遮光のためのカーテンが二重に付けてある。無論ラテは室内にいるわけで視覚的にそのワンコを認識しているわけではない。
それでもラテはそのワンコが「いま、通過している」という事実を知ることができるのはどうしてなのだろうかといつも不思議に思うのだ。
当然その遊歩道は日中は多くの人たちはもとよりワンコ連れの人たちも通る道だが、ラテが大げさに騒ぐワンコは特定できるのだから訳がわからない。やはりオトーサンには不思議でも嗅覚で知るのか、あるいはオトーサンの耳には聞こえない足音や息づかいなどで判断するのか…とにかくミステリーなのである。

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※空気清浄機の吐き出し口に鼻先を突き出しているラテ。空気が美味いのだろうか(笑)


ともかくその人間には到底理解で消えない優れた感覚を総動員してラテはオトーサンたちをも観察している。どんなものを食べたのかは勿論、オトーサンの体調や機嫌といったことまでラテは “知っている” はずだとすれば、愛犬への見方も随分と変わってくるのではないだろうか。
そう考えればオトーサンたちには原因が不明だとしてもラテが吠えるにはその意味があるわけだし「無駄吠え」と一刀両断に判断しては気の毒だ。その吠え声だってよくよく聞き耳を立てれば微妙にピッチと揺れ、長さや回数などが違うわけで、何らかのコミュニケーションであることは間違いないと思われる。
どうやらラテがオトーサンたちのことを知っているほどオトーサンたちはラテのことをまだまだ知らないに違いない。
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Author:mactechlab
主宰は松田純一。1989年Macのソフトウェア開発専門のコーシングラフィックシステムズ社設立、代表取締役就任 (2003年解散)。1999年Apple WWDC(世界開発者会議)で日本のデベロッパー初のApple Design Award/Best Apple Technology Adoption (最優秀技術賞) 受賞。

2000年2月第10回MACWORLD EXPO/TOKYOにおいて長年業界に対する貢献度を高く評価され、主催者からMac Fan MVP’99特別賞を授与される。著書多数。音楽、美術、写真、読書を好み、Macと愛犬三昧の毎日。2017年6月3日、時代小説「首巻き春貞 - 小石川養生所始末」を上梓(電子出版)。続けて2017年7月1日「小説・未来を垣間見た男 スティーブ・ジョブズ」を電子書籍で公開。また直近では「木挽町お鶴捕物控え」を発表している。
2018年春から3Dプリンターを複数台活用中であり2021年からはレーザー加工機にも目を向けている。ゆうMUG会員