ドラマ「深夜食堂」雑感
映画館に行かなくなって久しいが、この数年好みの作品と思われるものを旧作を中心に鑑賞するよう心がけている。ただし予備知識なく観ることが多いので当たり外れは激しいが、なかにはこれまでまったく知らなかった作品にはまり込んでしまうものもある。
最近では「深夜食堂」がそれだった...。はなから見たいと思った作品はDVDをAmazonなどに購入予約もするが、旧作を手当たり次第にと言う場合はTSUTAYAからDVDを定額でレンタルする中で探すことにしている。
ただし時に見たい作品が見当たらない場合もあるものの、レンタルしなくても定額料金は発生するから最低枚数は消化する必要があるのだ...。
過日もそんな感じで...つなぎの感覚でたまたま目に付いた「深夜食堂」の劇場版をレンタルして観たのがはまってしまうきっかけだった。そもそもが漫画作品らしいが、それをテレビドラマ化したものが評判良かったので映画にもなったという経緯らしい。

※劇場版「深夜食堂」DVDパッケージ
劇場版を観た後、テレビドラマの作品もDVDとなっていることを知り、三部作すべてを少しずつ借りて全部を見終わった…。今回はその感想を記してみたいが、あくまで原作を知らないのでテレビドラマあるいは映画作品に限ったお話しとなる。
多くの方がよくご存じだと思うが、「深夜食堂」の舞台は新宿花園界隈の路地裏にある小林薫演じるマスター1人で切り盛りする小さな飯屋である。午前0時から朝7時くらいまでが営業時間であることから「深夜食堂」と呼ばれている...。マスターの左目には目立つ切り傷があるが経歴や素性は不明らしい。
ドラマではこの飯屋に出入りする常連客や一見さんたちの巻き起こすトラブルや生き様がコミカルに描かれるが、土地柄あるいは深夜営業ということで個性豊かな人たちが一時の休息を求めてこの飯屋の戸を開ける。
地回りのヤクザ、ストリッパー、ゲイ歴48年のゲイバーを経営するママ、遊び人のオヤジ、フリーカメラマン、刑事や警察官といった常連たちとたまたま行き会わせた人たちの人生が交差する場所が「深夜食堂」なのだ。
まあまあトラブルの原因はやはりというか男女関係が目立つが、親子愛やヒューマニズム溢れるストーリーもある。1話毎のタイトルには「赤いウィンナと卵焼き」「猫まんま」「お茶漬け」「ポテトサラダ」「バターライス」といった食べ物がひとつのテーマになっている。
店内に貼られているメニューには豚汁定食、ビール、酒、焼酎しかなく酒類は1人3本までという制限もある。ただし客が食べたいものがあって言えば作れるものなら何でも作ってくれる店でもあるのだ。
例えば「きんぴらごぼう」の回ではきんぴらを食べているヤクザにむかって怖いもの知らずの馴染みの女性客が「ゲンさんてチンピラだからきんぴらが好きなんですか?」と口に出してヤクザにどなられるシーンは好きだ(笑)。
劇場版も基本はTVドラマと同じ形で進行するが、TVドラマは全部で30話あり、2009年10月期から2014年10月期の間にそれぞれ10話づつの三部作として放映されたという。
個人的にそれら30話の中で好きな話しはといえば、何といっても第9話「あじの開き」だ...。冒頭カウンターに座っている和服姿のオバサンを「...粋なばーさんが」とナレーションが入る。近年テレビドラマや映画あるいは芸能界の風聞に疎い私は「どこかで見た顔」としか分からなかった。それが1972年に「私は泣いてます」で大ヒットした "りりィ" だったと知るのはエンドロールを見てからだった...。
往年の一世を風靡した大ストリッパー ローズ美千代 という役柄だがすでに現役を引退して久しく、慕われた常連の若いストリッパー マリリンに大きな影響を与えることになる。その気っぷの良さと歳を重ねても失わない大人の色気はさすがだと感じた。
マスターに「ローズさんはあじの開きが好きだねぇ」と言われると「もとストリッパーだもん、開きはつきものさ」と答える姿も好きだ(笑)。
また常連客で印象的なのは地回りのヤクザで鬼島組の幹部 剣崎竜 だ。マスターやその男気に惚れているゲイの小寿々たちからは「リュウちゃん」と呼ばれている。
第1話で登場した折には舎弟のゲンと共にどうなることかとヒヤヒヤしたが、その後は常連客たちとはトラブルを生じることなく逆に小寿々の店で暴れる客を放り出すなど手を貸している。
私は幸いヤクザとは縁がないし、昨今ヤクザ同士のトラブルがニュースになっていることもあってこうした物言いは適切ではないと思うが、「深夜食堂」の「リュウちゃん」はいつもしかめっ面だがカッコイイ!
「深夜食堂」が面白いのはドラマとはいえ人間がよく描かれ、女に貢がせてお笑いやってる男、あるいは姉妹で詐欺をはたらく奴らもいるがどこか憎めない小悪党ばかりで本当の意味の悪役がいない点だろうか。
ヤクザになったには、あるいはAV男優になったのにはそれなりの理由があり悲しく辛い過去を背負って生きている人々が描かれ「深夜食堂」という小さな食堂でそれらの人々の人生が交差する面白さなのだ。
さて最後に余談だが、自分にとって行きつけの店というものを育てるのは些か気遣いも必要となることを体験している一人としてフィクションとは言え「深夜食堂」の常連たちが羨ましく感じる。
私自身は酒を嗜まないためいわゆる飲み屋といった店に縁はないが、喫茶店やレストランにそうしたお店があった...。
例えば "いきつけの店" とはよく立ち寄る店ということになる。1年に数回では "いきつけの店" とはいわない(笑)。1週間に数度、少なくても1週間に1度は立ち寄らなければ "いきつけの店" とはいえないだろう。
しかしそうなれば望むと望まざるはともかくマスターにこちらの顔を覚えてもらうことにもなるし、好みも知られることになる。
特に一昔前は常連客を囲い込む目的もあって一見のときに名前や誕生日やらを書かせられたことも多かった。したがって誕生日とか結婚記念日に無料でディナーに招待してくれる店もあった。あるいはマスターの気遣いなのだろうが頼んでもいない一品が運ばれてきたりすることも度々となる。
それはそれで嬉しいが、食後にオーダーしていない紅茶とか珈琲がサービスとして出てくる程度ならありがたくいただくものの、オーダー以外の料理が出てくると反対に気を遣い、贅沢な話しだがそうしたサービスが重荷になってくることも...。
なぜならサービスで出された品を残すのも悪いからとメインの料理でお腹が一杯なのに無理して平らげたりするときも度々あった(笑)。
常連ともなれば楽しいことだけではなかった。イタリアレストランのマスターには大変よくしてもらったが、奥様に先立たれた話しを聞いたときには慰める言葉もなかったし、転勤でその店を去ることを告げられたときも頭を下げるしか言葉も出なかった。
マスターといえば特に思い出すのは神田駿河台にある山の上ホテルのレストランのマスターだ。私が大切な人たちと一緒に悠久の一時を過ごしたレストランのマスターは素晴らしかった。サービスも接し方も最高だった。これぞホテルマンだと思わせる方だった。

※神田駿河台にある山の上ホテル
あるとき、私の会社のスタッフがホテル近隣の病院へ入院した。それをどこで知ったのか、あるいは私が話しの過程で口にしたのか...は不明だが、体に良いからとホテル特製のスープを病室まで届けてくれたという...。驚いたのは入院していたスタップだったに違いないが、もう恐縮するしかない。そのマスターが退職した後は物足りなく、次第に山の上ホテルには足が向かなくなった。
いま、常連のお店はどこか?ですって?
近所のコンビニかなあ(爆)。
最近では「深夜食堂」がそれだった...。はなから見たいと思った作品はDVDをAmazonなどに購入予約もするが、旧作を手当たり次第にと言う場合はTSUTAYAからDVDを定額でレンタルする中で探すことにしている。
ただし時に見たい作品が見当たらない場合もあるものの、レンタルしなくても定額料金は発生するから最低枚数は消化する必要があるのだ...。
過日もそんな感じで...つなぎの感覚でたまたま目に付いた「深夜食堂」の劇場版をレンタルして観たのがはまってしまうきっかけだった。そもそもが漫画作品らしいが、それをテレビドラマ化したものが評判良かったので映画にもなったという経緯らしい。

※劇場版「深夜食堂」DVDパッケージ
劇場版を観た後、テレビドラマの作品もDVDとなっていることを知り、三部作すべてを少しずつ借りて全部を見終わった…。今回はその感想を記してみたいが、あくまで原作を知らないのでテレビドラマあるいは映画作品に限ったお話しとなる。
多くの方がよくご存じだと思うが、「深夜食堂」の舞台は新宿花園界隈の路地裏にある小林薫演じるマスター1人で切り盛りする小さな飯屋である。午前0時から朝7時くらいまでが営業時間であることから「深夜食堂」と呼ばれている...。マスターの左目には目立つ切り傷があるが経歴や素性は不明らしい。
ドラマではこの飯屋に出入りする常連客や一見さんたちの巻き起こすトラブルや生き様がコミカルに描かれるが、土地柄あるいは深夜営業ということで個性豊かな人たちが一時の休息を求めてこの飯屋の戸を開ける。
地回りのヤクザ、ストリッパー、ゲイ歴48年のゲイバーを経営するママ、遊び人のオヤジ、フリーカメラマン、刑事や警察官といった常連たちとたまたま行き会わせた人たちの人生が交差する場所が「深夜食堂」なのだ。
まあまあトラブルの原因はやはりというか男女関係が目立つが、親子愛やヒューマニズム溢れるストーリーもある。1話毎のタイトルには「赤いウィンナと卵焼き」「猫まんま」「お茶漬け」「ポテトサラダ」「バターライス」といった食べ物がひとつのテーマになっている。
店内に貼られているメニューには豚汁定食、ビール、酒、焼酎しかなく酒類は1人3本までという制限もある。ただし客が食べたいものがあって言えば作れるものなら何でも作ってくれる店でもあるのだ。
例えば「きんぴらごぼう」の回ではきんぴらを食べているヤクザにむかって怖いもの知らずの馴染みの女性客が「ゲンさんてチンピラだからきんぴらが好きなんですか?」と口に出してヤクザにどなられるシーンは好きだ(笑)。
劇場版も基本はTVドラマと同じ形で進行するが、TVドラマは全部で30話あり、2009年10月期から2014年10月期の間にそれぞれ10話づつの三部作として放映されたという。
個人的にそれら30話の中で好きな話しはといえば、何といっても第9話「あじの開き」だ...。冒頭カウンターに座っている和服姿のオバサンを「...粋なばーさんが」とナレーションが入る。近年テレビドラマや映画あるいは芸能界の風聞に疎い私は「どこかで見た顔」としか分からなかった。それが1972年に「私は泣いてます」で大ヒットした "りりィ" だったと知るのはエンドロールを見てからだった...。
往年の一世を風靡した大ストリッパー ローズ美千代 という役柄だがすでに現役を引退して久しく、慕われた常連の若いストリッパー マリリンに大きな影響を与えることになる。その気っぷの良さと歳を重ねても失わない大人の色気はさすがだと感じた。
マスターに「ローズさんはあじの開きが好きだねぇ」と言われると「もとストリッパーだもん、開きはつきものさ」と答える姿も好きだ(笑)。
また常連客で印象的なのは地回りのヤクザで鬼島組の幹部 剣崎竜 だ。マスターやその男気に惚れているゲイの小寿々たちからは「リュウちゃん」と呼ばれている。
第1話で登場した折には舎弟のゲンと共にどうなることかとヒヤヒヤしたが、その後は常連客たちとはトラブルを生じることなく逆に小寿々の店で暴れる客を放り出すなど手を貸している。
私は幸いヤクザとは縁がないし、昨今ヤクザ同士のトラブルがニュースになっていることもあってこうした物言いは適切ではないと思うが、「深夜食堂」の「リュウちゃん」はいつもしかめっ面だがカッコイイ!
「深夜食堂」が面白いのはドラマとはいえ人間がよく描かれ、女に貢がせてお笑いやってる男、あるいは姉妹で詐欺をはたらく奴らもいるがどこか憎めない小悪党ばかりで本当の意味の悪役がいない点だろうか。
ヤクザになったには、あるいはAV男優になったのにはそれなりの理由があり悲しく辛い過去を背負って生きている人々が描かれ「深夜食堂」という小さな食堂でそれらの人々の人生が交差する面白さなのだ。
さて最後に余談だが、自分にとって行きつけの店というものを育てるのは些か気遣いも必要となることを体験している一人としてフィクションとは言え「深夜食堂」の常連たちが羨ましく感じる。
私自身は酒を嗜まないためいわゆる飲み屋といった店に縁はないが、喫茶店やレストランにそうしたお店があった...。
例えば "いきつけの店" とはよく立ち寄る店ということになる。1年に数回では "いきつけの店" とはいわない(笑)。1週間に数度、少なくても1週間に1度は立ち寄らなければ "いきつけの店" とはいえないだろう。
しかしそうなれば望むと望まざるはともかくマスターにこちらの顔を覚えてもらうことにもなるし、好みも知られることになる。
特に一昔前は常連客を囲い込む目的もあって一見のときに名前や誕生日やらを書かせられたことも多かった。したがって誕生日とか結婚記念日に無料でディナーに招待してくれる店もあった。あるいはマスターの気遣いなのだろうが頼んでもいない一品が運ばれてきたりすることも度々となる。
それはそれで嬉しいが、食後にオーダーしていない紅茶とか珈琲がサービスとして出てくる程度ならありがたくいただくものの、オーダー以外の料理が出てくると反対に気を遣い、贅沢な話しだがそうしたサービスが重荷になってくることも...。
なぜならサービスで出された品を残すのも悪いからとメインの料理でお腹が一杯なのに無理して平らげたりするときも度々あった(笑)。
常連ともなれば楽しいことだけではなかった。イタリアレストランのマスターには大変よくしてもらったが、奥様に先立たれた話しを聞いたときには慰める言葉もなかったし、転勤でその店を去ることを告げられたときも頭を下げるしか言葉も出なかった。
マスターといえば特に思い出すのは神田駿河台にある山の上ホテルのレストランのマスターだ。私が大切な人たちと一緒に悠久の一時を過ごしたレストランのマスターは素晴らしかった。サービスも接し方も最高だった。これぞホテルマンだと思わせる方だった。

※神田駿河台にある山の上ホテル
あるとき、私の会社のスタッフがホテル近隣の病院へ入院した。それをどこで知ったのか、あるいは私が話しの過程で口にしたのか...は不明だが、体に良いからとホテル特製のスープを病室まで届けてくれたという...。驚いたのは入院していたスタップだったに違いないが、もう恐縮するしかない。そのマスターが退職した後は物足りなく、次第に山の上ホテルには足が向かなくなった。
いま、常連のお店はどこか?ですって?
近所のコンビニかなあ(爆)。
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