2003年発刊「マッキントッシュその赤裸々な真実!」に見るMacユーザーの葛藤物語
時代は変わる...。半世紀以上も生きていればこの言葉を身にしみて感じさせる出来事はいくつかあったが、そうした中でもMacintoshとWindows両陣営の価値観が大きく変わった事実はガチガチのMacユーザーにとっても信じられないことだ…。
文字通りガレージからスタートしたAppleが世界一の企業となり、破竹の勢いで巨大化してきたマイクロソフトに陰りが出てくるとは誰が予想しただろうか...。
街に出ればアップルロゴのついた iPhone や iPad を手にしている人々がワンサカいる。電車に乗り回りを見渡せばスマートフォンを操作しているその7割...いや8割ほどが iPhone だったりする世界が現実に来ようとは、筋金入りのMacユーザーも想像だにしなかったことだ。
何しろ私がMac専用のソフトハウスを起業した1989年でも「マッキントッシュ」といってもそれがパーソナルコンピュータの名であると知る人は回りにほとんどいなかった。略して「マック」といえばそれはまずマクドナルドのことを意味したし6色のアップルロゴを初めて見た多くの人たちの第一印象は「ダサイ…」だった(笑)。
そもそもApple II はもとよりだが、Macintoshのユーザーはよほどの変わり者と見られていたフシがある…。Macユーザーは異端児であり、その抗しがたい魅力は宗教と揶揄された。特にWindowsユーザーからは極小シェアでしかないMacintoshに拘る変人と考えられていた面もあり、そうしたある種のプレッシャーは次第にMacユーザーに「MacはWindowsとは違うんだ」という意識と共にパソコンといえばWindowsマシンしか念頭にない市場やWindowsユーザーたちにイライラを感じるようになる。
しかし問題は…大問題はその何の変哲も面白くもないWindowsマシンが市場を席巻した事実である。Macユーザーにとってその現実は実社会の理不尽さを思い知らされることになった。ましてや1990年半ばからAppleの業績は急激に悪化し1996年になると「買収」と「倒産」の2文字はAppleの代名詞みたいになり、マスコミを日々騒がすことになった。それでも我々Macユーザーは新製品を買い続けた(笑)。
知的自転車と称され、コンシューマ向け製品としてGUI とマウスを装備したパソコンは明らかにMacintoshの方が優れていたがそれを説得力ある形で訴える力が当時のAppleには欠けていた。そうした現実に業を煮やしたユーザーやユーザーグループはメーカーの力を当てにしない独自の催事に手を染め啓蒙活動に勤しんだが、そうした理不尽さの矛先は自然とWindowsとMicrosoftに向いた…。
スティーブ・ジョブズがAppleに復帰した翌年の1997年8月、Macworld Expo/Bostonにおいてジョブズはマイクロソフトとの提携を発表しスクリーンにビル・ゲイツの姿を映し出して紹介した。その際会場からはあからさまなブーイングが響いたが、ジョブズは「アップルが勝利し、マイクロソフトが敗北するという考え方を捨てなければならない」と聴衆をたしなめた...。


※1997年8月開催、Macworld Expo/BOSTON基調講演でスティーブ・ジョブズはスクリーンに支援を受けたビル・ゲイツを呼び出した(上)。その瞬間聴衆はブーイングと共に落胆や嘲笑する者が多かった(下)
ではMacユーザーにとってWindowsは当初どのような印象だったのだろうか…。
LisaはともかくMacが登場した1984年、マイクロソフト陣営はまだMS-DOSの時代だったから我々Appleユーザー、Macユーザーにとっても比較する対象ではなかったし正直対抗意識も確執もなかった。第一私にしてもApple II やMacを使いつつPC-9801やPC-100、IBM5550ではMS-DOSを使っていたのだから...。


※筆者1986年当時の仕事部屋。正面にMacintosh 128K そして右脇にPC-9801が置かれている(上)。また1983年にはIBM5550も導入した(下)
MacユーザーがWindowsを意識し始めたのはやはり1995年に登場したWindows95からではなかったか。それまでのWindows3.0とか3.1は出来が悪すぎて批判するに値しないものだったし(笑)。
なぜMacユーザーはWindowsおよびWindowsユーザーを意識し嫌うようになったのか、いまさらではあるがこうした考察はこれまであまりなされたことがなかったのではないだろうか。
まあ、いまとなってはどうでもよい話しかも知れないが(笑)、2003年5月に毎日コミュニケーションズから発刊されたスコット・ケルビー著/大谷和利訳/藤原鉄頭絵「マッキントッシュその赤裸々な真実!」を参考に当時の状況を振り返ってみたい。

※スコット・ケルビー著/大谷和利訳/藤原鉄頭絵「マッキントッシュその赤裸々な真実!」毎日コミュニケーションズ刊
さて…最初にお断りしておくが、本書はおふざけの限りを尽くしてAppleやMacintoshそしてMicrosoft やWindowsに関して筆を走らせているが、本書冒頭に「本書を読む上でのご注意」にある通り、「一部の人々(たいていはWindowsユーザー)に不快感を与える可能性のある語句が含まれています。(中略)本書の内容の8割から9割(当社比)は事実ですが、残りは著者であるスコット・ケルビー一流のジョークですので、本当に思い当たるフシがある部分以外は、笑って水に流して下さい...」とあることを念頭に入れていただきたい(笑)。
無論ケルビーはAppleやMacに対しても辛辣な批判もしているがWindowsとの比較/対比がこれほど面白可笑しく書かれている本は他にないに違いない。
まさしく勝手な言いぐさだが、どこか真理に触れているように感じて思わずニヤリとしてしまう…。少し抜粋してみよう。
・Mac人間(ユーザー)は、MicrosoftのMacintosh部門は好きなんだ。
・だいたい、Microsoftのことを好きだと明言するWindowsユーザーにはお目にかかったことがない。
・MacユーザーはMicrosoftのことが好きじゃないとしても、ビル・ゲイツが何をしようとあまり気にかけない。ところが、Windowsユーザーは本当にビルのことを目の敵にしているらしい。
ではMacユーザーがMicrosoftを嫌う理由は何だろうか...。ケルビーは「MicrosoftがApple社を食い物にしているようにかんじるからさ」という。
無論その最たるものはGUIだ。Appleもそのすべてのアイデアを自前で作り出したわけではないが、初めて市販のパソコンレベルでGUI を完成させたメーカーはAppleだった。これは間違いない。その当時Microsoftが誇るOSは繰り返すがMS-DOSでしかなかった。アイコンもなければフォルダもウィンドウもマウスもなかった。

※NEC PC-100で使っていたMS-DOS 2.01版
ところが、しばらくしてMicrosoftはWindows OSを発表した。驚いたことに、それはアイコンやプルダウンメニュー、フォルダ、マウスによるポイント&クリックなど、つまりグラフィカルユーザーインターフェイスを備えていた...というわけ。
さらにだ...。それ以降のバージョンアップのたびに、Windowsは「Macライクな」仕様を付加していった。例えば、Macのコントロールパネルに相当する機能をMicrosoftがなんて呼んでいるか知っているだろうか?
答えは…「コントロールパネル」そのまんまだ(笑)。
だが何といってもMacユーザーのイライラを増幅させるのは、今日に至るまでほとんどのWindowsユーザーたちが、これらを発明したのがMicrosoftだと心底信じ込んでいることだ...とケルビーは独白する。確かに私にもそんな経験は多々あった。
Macでプレゼンしている画面を指さして「あっ、それってWindowsと同じじゃん」だと何度言われたことか(笑)。
ケルビーは続ける。「Mac OSのチープな模造品」としか思えない製品が、コンピュータの世界を支配しているという事実、これがMacユーザーをジリジリさせるのだと。WindowsユーザーはWindowsが「宇宙の中心」にいると信じて疑わないのだ。
実際にビジネス上の取引相手にしろ個人ユーザーにしろ、文書入力はMicrosoft Wordしかこの世にないと信じている...いやそれすら考えたこともないユーザーが多々いた。
なにしろ困るのはMacしか持っていない生粋のMacユーザーと知っているにもかかわらずメール添付で送られてくる文書のほとんどはWordのファイルなのだ。マジで、こうした文書を読むためだけに安物のWindowsマシンを買ったMacユーザーもいたし、私も不安定さを甘んじて受けながらも「VIRTUAL PC」という当時の仮想化ソフトを使ってWindows 95からはき出され送られてきた文書を苦労して読んだ...。

※当時は現在のOS XようにオフシャルにMacでWindowsは走らなかった。しかし必要に迫られて「VIRTUAL PC」といったある意味イレギュラーなツールを駆使しWindowsと互換を模索していた
それにMacユーザーは私がそうであるように少なからずWindowsを知っていることが多い。それはこれまで見てきたように必要に迫られて...だ。しかし当時はそのMacユーザーから見てWindowsユーザーの歯痒い点はMacをまったく知らなかったことだ。
こうしたことはケルビーの想像だけでは済まされない。実際私も数多くの体験がある。
1989年にMac専門のソフトウェア開発会社を起業し、幸い多々注目される結果となったが、私らが開発したデジタルビデオのアプリは勿論、イメージスキャナのアプリ、縦書き原稿用紙ワープロなどへの取材で我が社に取材に来られた当時のライターの多くはMacユーザーではなくMacの初歩すら知らなかった。そんなライターたちにMacライクでユニークなアプリケーション解説の記事など書けるはずはないではないか。そして彼ら彼女らが最後に必ず問う質問は「これはWindowsでも走るんですか?」だった(笑)。
Macユーザーがもっとも困るのはパソコン市場の90%以上を席巻した感のあるWindowsマシンだとはいえ公的責任も存在するはずの銀行や役所のシステムがWindows対応だけでMacをずっと蔑ろにしてきた事実である。そんなわけだから魅力的なアプリケーションの中にもWindowsしか対応していない製品は星の数ほどもあった。したがってWindowsユーザーの多くはPhotoshopもExcelもMacintosh版が最初だった事実など知ろうともせず、それらはWindowsのために存在すると考えているフシがあった。

※MacとPC (Windows)をコミカルに比較したAppleのTVコマーシャル "Get a Mac" の記憶もまだ新しい...
そんな事実の積み重ねがMacユーザーのフラストレーションを大きなものにしてきたわけだ。
しかし世界は変わった。なにしろMacintoshでWindowsが走る時代になった。銀行のオンラインサービスもMac対応が多くなったし先日の国税調査もタコなシステムではあったがMacで回答ができた。正直黎明期からのMacユーザーで今日の様子を想像した人は誰もいなかったに違いない。
iPodが、iPhoneが、そしてiPadが広く認知された結果、Mac自体の販売数も伸びているという。MacユーザーとてAppleやその製品が非の打ち所のない完璧なものだとは誰も思ってはいない。ただWindowsよりはずっとマシだと信じているだけだ(笑)。とはいえ世界はMacとWindowsを対比させて面白可笑しく揶揄する時代ではなくなってきたことは間違いない。
それは良い事だと思うし、ひとりのMacユーザーとして、最古参のAppleユーザーとして喜びたい反面、どこか寂しい気もする昨今でもある。ライバルがいなくなった寂しさ、空虚感といえばよいのか…。あっまだWindowsは存在していたんだ(爆)。
本書「マッキントッシュその赤裸々な真実!」はすでに古書扱いではあるが、MacとWindowsがお互いにどのように見られていたかを知る上で大変面白く貴重な1冊だという気がする。
Amazonを確認したら本書の中古本がただ同然で手に入るようだが、出版社からのコメントがとても要領よく本書の内容を紹介しているので転載させていただこう...。
【内容紹介】
本書は、「...赤裸々な真実!」というタイトルから連想されるようなApple社の歴史や裏話が書かれた本ではありません。米「Mac Today」誌の創立者で、Photoshopなどの解説書の著者として知られるScott Kelbyが、Windowsに支配された世界でMacユーザーになるとはどういうことか、すべてのパソコンユーザーがMacを使うべき理由を説いたものです。
饒舌で、ジョークがちりばめられた文章は、一見軽い読み物にも感じられますが、その実、圧倒的シェアをもち、誰もが何のためらいもなく「Windows」を選んでしまう多数のユーザーに対する痛烈な批判、いかにMacが使いやすく、優れてるのかという“裸の真実”が語られています。
ともあれ、本書は今だからこそより意味のある一冊なのかも知れない。それはハードウェアやソフトウェアあるいはOSといった記録は何らかの形で後世に残るだろうが、人々の思いや当時の考え方といったものは次第に薄れていくだけでなく、誰も...何も対処しなければその痕跡さえ残らない性質のものだろうから...。
文字通りガレージからスタートしたAppleが世界一の企業となり、破竹の勢いで巨大化してきたマイクロソフトに陰りが出てくるとは誰が予想しただろうか...。
街に出ればアップルロゴのついた iPhone や iPad を手にしている人々がワンサカいる。電車に乗り回りを見渡せばスマートフォンを操作しているその7割...いや8割ほどが iPhone だったりする世界が現実に来ようとは、筋金入りのMacユーザーも想像だにしなかったことだ。
何しろ私がMac専用のソフトハウスを起業した1989年でも「マッキントッシュ」といってもそれがパーソナルコンピュータの名であると知る人は回りにほとんどいなかった。略して「マック」といえばそれはまずマクドナルドのことを意味したし6色のアップルロゴを初めて見た多くの人たちの第一印象は「ダサイ…」だった(笑)。
そもそもApple II はもとよりだが、Macintoshのユーザーはよほどの変わり者と見られていたフシがある…。Macユーザーは異端児であり、その抗しがたい魅力は宗教と揶揄された。特にWindowsユーザーからは極小シェアでしかないMacintoshに拘る変人と考えられていた面もあり、そうしたある種のプレッシャーは次第にMacユーザーに「MacはWindowsとは違うんだ」という意識と共にパソコンといえばWindowsマシンしか念頭にない市場やWindowsユーザーたちにイライラを感じるようになる。
しかし問題は…大問題はその何の変哲も面白くもないWindowsマシンが市場を席巻した事実である。Macユーザーにとってその現実は実社会の理不尽さを思い知らされることになった。ましてや1990年半ばからAppleの業績は急激に悪化し1996年になると「買収」と「倒産」の2文字はAppleの代名詞みたいになり、マスコミを日々騒がすことになった。それでも我々Macユーザーは新製品を買い続けた(笑)。
知的自転車と称され、コンシューマ向け製品としてGUI とマウスを装備したパソコンは明らかにMacintoshの方が優れていたがそれを説得力ある形で訴える力が当時のAppleには欠けていた。そうした現実に業を煮やしたユーザーやユーザーグループはメーカーの力を当てにしない独自の催事に手を染め啓蒙活動に勤しんだが、そうした理不尽さの矛先は自然とWindowsとMicrosoftに向いた…。
スティーブ・ジョブズがAppleに復帰した翌年の1997年8月、Macworld Expo/Bostonにおいてジョブズはマイクロソフトとの提携を発表しスクリーンにビル・ゲイツの姿を映し出して紹介した。その際会場からはあからさまなブーイングが響いたが、ジョブズは「アップルが勝利し、マイクロソフトが敗北するという考え方を捨てなければならない」と聴衆をたしなめた...。


※1997年8月開催、Macworld Expo/BOSTON基調講演でスティーブ・ジョブズはスクリーンに支援を受けたビル・ゲイツを呼び出した(上)。その瞬間聴衆はブーイングと共に落胆や嘲笑する者が多かった(下)
ではMacユーザーにとってWindowsは当初どのような印象だったのだろうか…。
LisaはともかくMacが登場した1984年、マイクロソフト陣営はまだMS-DOSの時代だったから我々Appleユーザー、Macユーザーにとっても比較する対象ではなかったし正直対抗意識も確執もなかった。第一私にしてもApple II やMacを使いつつPC-9801やPC-100、IBM5550ではMS-DOSを使っていたのだから...。


※筆者1986年当時の仕事部屋。正面にMacintosh 128K そして右脇にPC-9801が置かれている(上)。また1983年にはIBM5550も導入した(下)
MacユーザーがWindowsを意識し始めたのはやはり1995年に登場したWindows95からではなかったか。それまでのWindows3.0とか3.1は出来が悪すぎて批判するに値しないものだったし(笑)。
なぜMacユーザーはWindowsおよびWindowsユーザーを意識し嫌うようになったのか、いまさらではあるがこうした考察はこれまであまりなされたことがなかったのではないだろうか。
まあ、いまとなってはどうでもよい話しかも知れないが(笑)、2003年5月に毎日コミュニケーションズから発刊されたスコット・ケルビー著/大谷和利訳/藤原鉄頭絵「マッキントッシュその赤裸々な真実!」を参考に当時の状況を振り返ってみたい。

※スコット・ケルビー著/大谷和利訳/藤原鉄頭絵「マッキントッシュその赤裸々な真実!」毎日コミュニケーションズ刊
さて…最初にお断りしておくが、本書はおふざけの限りを尽くしてAppleやMacintoshそしてMicrosoft やWindowsに関して筆を走らせているが、本書冒頭に「本書を読む上でのご注意」にある通り、「一部の人々(たいていはWindowsユーザー)に不快感を与える可能性のある語句が含まれています。(中略)本書の内容の8割から9割(当社比)は事実ですが、残りは著者であるスコット・ケルビー一流のジョークですので、本当に思い当たるフシがある部分以外は、笑って水に流して下さい...」とあることを念頭に入れていただきたい(笑)。
無論ケルビーはAppleやMacに対しても辛辣な批判もしているがWindowsとの比較/対比がこれほど面白可笑しく書かれている本は他にないに違いない。
まさしく勝手な言いぐさだが、どこか真理に触れているように感じて思わずニヤリとしてしまう…。少し抜粋してみよう。
・Mac人間(ユーザー)は、MicrosoftのMacintosh部門は好きなんだ。
・だいたい、Microsoftのことを好きだと明言するWindowsユーザーにはお目にかかったことがない。
・MacユーザーはMicrosoftのことが好きじゃないとしても、ビル・ゲイツが何をしようとあまり気にかけない。ところが、Windowsユーザーは本当にビルのことを目の敵にしているらしい。
ではMacユーザーがMicrosoftを嫌う理由は何だろうか...。ケルビーは「MicrosoftがApple社を食い物にしているようにかんじるからさ」という。
無論その最たるものはGUIだ。Appleもそのすべてのアイデアを自前で作り出したわけではないが、初めて市販のパソコンレベルでGUI を完成させたメーカーはAppleだった。これは間違いない。その当時Microsoftが誇るOSは繰り返すがMS-DOSでしかなかった。アイコンもなければフォルダもウィンドウもマウスもなかった。

※NEC PC-100で使っていたMS-DOS 2.01版
ところが、しばらくしてMicrosoftはWindows OSを発表した。驚いたことに、それはアイコンやプルダウンメニュー、フォルダ、マウスによるポイント&クリックなど、つまりグラフィカルユーザーインターフェイスを備えていた...というわけ。
さらにだ...。それ以降のバージョンアップのたびに、Windowsは「Macライクな」仕様を付加していった。例えば、Macのコントロールパネルに相当する機能をMicrosoftがなんて呼んでいるか知っているだろうか?
答えは…「コントロールパネル」そのまんまだ(笑)。
だが何といってもMacユーザーのイライラを増幅させるのは、今日に至るまでほとんどのWindowsユーザーたちが、これらを発明したのがMicrosoftだと心底信じ込んでいることだ...とケルビーは独白する。確かに私にもそんな経験は多々あった。
Macでプレゼンしている画面を指さして「あっ、それってWindowsと同じじゃん」だと何度言われたことか(笑)。
ケルビーは続ける。「Mac OSのチープな模造品」としか思えない製品が、コンピュータの世界を支配しているという事実、これがMacユーザーをジリジリさせるのだと。WindowsユーザーはWindowsが「宇宙の中心」にいると信じて疑わないのだ。
実際にビジネス上の取引相手にしろ個人ユーザーにしろ、文書入力はMicrosoft Wordしかこの世にないと信じている...いやそれすら考えたこともないユーザーが多々いた。
なにしろ困るのはMacしか持っていない生粋のMacユーザーと知っているにもかかわらずメール添付で送られてくる文書のほとんどはWordのファイルなのだ。マジで、こうした文書を読むためだけに安物のWindowsマシンを買ったMacユーザーもいたし、私も不安定さを甘んじて受けながらも「VIRTUAL PC」という当時の仮想化ソフトを使ってWindows 95からはき出され送られてきた文書を苦労して読んだ...。

※当時は現在のOS XようにオフシャルにMacでWindowsは走らなかった。しかし必要に迫られて「VIRTUAL PC」といったある意味イレギュラーなツールを駆使しWindowsと互換を模索していた
それにMacユーザーは私がそうであるように少なからずWindowsを知っていることが多い。それはこれまで見てきたように必要に迫られて...だ。しかし当時はそのMacユーザーから見てWindowsユーザーの歯痒い点はMacをまったく知らなかったことだ。
こうしたことはケルビーの想像だけでは済まされない。実際私も数多くの体験がある。
1989年にMac専門のソフトウェア開発会社を起業し、幸い多々注目される結果となったが、私らが開発したデジタルビデオのアプリは勿論、イメージスキャナのアプリ、縦書き原稿用紙ワープロなどへの取材で我が社に取材に来られた当時のライターの多くはMacユーザーではなくMacの初歩すら知らなかった。そんなライターたちにMacライクでユニークなアプリケーション解説の記事など書けるはずはないではないか。そして彼ら彼女らが最後に必ず問う質問は「これはWindowsでも走るんですか?」だった(笑)。
Macユーザーがもっとも困るのはパソコン市場の90%以上を席巻した感のあるWindowsマシンだとはいえ公的責任も存在するはずの銀行や役所のシステムがWindows対応だけでMacをずっと蔑ろにしてきた事実である。そんなわけだから魅力的なアプリケーションの中にもWindowsしか対応していない製品は星の数ほどもあった。したがってWindowsユーザーの多くはPhotoshopもExcelもMacintosh版が最初だった事実など知ろうともせず、それらはWindowsのために存在すると考えているフシがあった。

※MacとPC (Windows)をコミカルに比較したAppleのTVコマーシャル "Get a Mac" の記憶もまだ新しい...
そんな事実の積み重ねがMacユーザーのフラストレーションを大きなものにしてきたわけだ。
しかし世界は変わった。なにしろMacintoshでWindowsが走る時代になった。銀行のオンラインサービスもMac対応が多くなったし先日の国税調査もタコなシステムではあったがMacで回答ができた。正直黎明期からのMacユーザーで今日の様子を想像した人は誰もいなかったに違いない。
iPodが、iPhoneが、そしてiPadが広く認知された結果、Mac自体の販売数も伸びているという。MacユーザーとてAppleやその製品が非の打ち所のない完璧なものだとは誰も思ってはいない。ただWindowsよりはずっとマシだと信じているだけだ(笑)。とはいえ世界はMacとWindowsを対比させて面白可笑しく揶揄する時代ではなくなってきたことは間違いない。
それは良い事だと思うし、ひとりのMacユーザーとして、最古参のAppleユーザーとして喜びたい反面、どこか寂しい気もする昨今でもある。ライバルがいなくなった寂しさ、空虚感といえばよいのか…。あっまだWindowsは存在していたんだ(爆)。
本書「マッキントッシュその赤裸々な真実!」はすでに古書扱いではあるが、MacとWindowsがお互いにどのように見られていたかを知る上で大変面白く貴重な1冊だという気がする。
Amazonを確認したら本書の中古本がただ同然で手に入るようだが、出版社からのコメントがとても要領よく本書の内容を紹介しているので転載させていただこう...。
【内容紹介】
本書は、「...赤裸々な真実!」というタイトルから連想されるようなApple社の歴史や裏話が書かれた本ではありません。米「Mac Today」誌の創立者で、Photoshopなどの解説書の著者として知られるScott Kelbyが、Windowsに支配された世界でMacユーザーになるとはどういうことか、すべてのパソコンユーザーがMacを使うべき理由を説いたものです。
饒舌で、ジョークがちりばめられた文章は、一見軽い読み物にも感じられますが、その実、圧倒的シェアをもち、誰もが何のためらいもなく「Windows」を選んでしまう多数のユーザーに対する痛烈な批判、いかにMacが使いやすく、優れてるのかという“裸の真実”が語られています。
ともあれ、本書は今だからこそより意味のある一冊なのかも知れない。それはハードウェアやソフトウェアあるいはOSといった記録は何らかの形で後世に残るだろうが、人々の思いや当時の考え方といったものは次第に薄れていくだけでなく、誰も...何も対処しなければその痕跡さえ残らない性質のものだろうから...。
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