火消し半纏風ジャケットに見る粋な「江戸の裏派手」物語
先日これからの季節、部屋着の1着と考えデニム製で火消し半纏(はんてん)をアレンジしたという上着を手に入れた。この機会を得て、着衣の裏地についての雑談である…。とはいっても大仰なものを持っているわけもないが裏地には気を遣う方なのだ。
歳をとるとどうしても地味で無難なものを身につけるのが一般的になってくるようだが、フォーマルな場合はともかくプライベートな場所では遊び心も加えたいと考えている一人である。
さらに昨今はある意味他人の見目には気を遣わなくなった...無関心の時代だと言われているからオヤジがピンクのジャケットを着ようが派手なパッチワークの上着を着ようが振り返る人もいないから気が楽でよい(笑)。
特に自由業の現在は相手に不快感を与えなければどのようなスタイルだとしても許される時代だし、コンピュータとかITの業界はスティーブ・ジョブズらの影響もあるのだろうが、ジーパンにTシャツで大概正装みたいな感じで動き回れるのだから面白い。
さて、これからの季節は室内でも何らかの暖房器具が必要になってくる時期だ。しかし近年部屋全体を温める暖房はなるべく使わず、適度な重ね着をし、パソコンの前に座る際には膝掛けと電気足温器で過ごすようにしている。ただし重ね着といってもセーター類は嫌いなので一番寒い季節はシャツの上に室内用に用意したダウンジャケットと裏地がフリース張りのジーンズを愛用している。

※火消し半纏をアレンジしたという江戸染めデニムジャケット
それは劇寒のときだが秋口からは脱ぎ着が楽なもの、そしてできるだけ体を圧迫しない上着を使うように心がけているが、先般はそんな主旨にピッタリかと思いデニム製の半纏を買ってみた。デザインは火消し半纏をアレンジしたものだそうで、デニム生地は藍を何度も染めることで黒色に近づける「江戸黒」といったイメージをデニムで再現したものだという。
ただしデニムというとどうしてもごわごわ感があるが、ポリウレタンを加えることでストレッチ性もあり、とても楽だし袖を通さないで肩にかけたり、時には膝掛けのかわりにもなる。
表地は黒っぽく染めたデニムだから実に地味だが、この半纏...実は裏地に色鮮やかな伝統柄が使われているのが気に入った...。
その裏地柄は6種の伝統柄を縦縞に配しており、火消半纏の背に描かれた "組" の印をアレンジした「火消組」柄の他、吉原の手引き茶屋の暖簾に使われたという「吉原つなぎ」、そして「波に千鳥」「三筋立」「小桜」「子持ち縞」という柄で構成されている。
こうした裏地が派手なことを「江戸の裏派手」などというそうだが、これには歴史的にも些か理由があった...。

※裏地には「火消組」「吉原つなぎ」「波に千鳥」「三筋立」「小桜」「子持ち縞」という6種の伝統柄が使われている
江戸時代には度々「奢侈禁止令」すなわち贅沢を禁じるおふれが出され、江戸の庶民は正絹の着物や派手な着衣を身につけることを禁じられた。それらは佐伯泰英が描く時代小説などにも多々登場するが、例えば老中首座となった松平定信(1758年 ~ 1829年)が幕府改革として行った寛政の改革なとがよく知られている。
ただし現実にはそうした禁止令は景気の悪化を招きほとんど効果はなかったと思われるが、当の江戸っ子の反骨精神をも刺激し、市井の人たちも単に大人しく令に従うはずもなかった。その一例が「江戸の裏派手」とか「「裏勝り(うらまさり)」...すなわち表地はシンプルだが裏地に金をかけたり派手なデザインを用いることだった。
特にヒーローでもあった町火消したちは火消し半纏を着て消火にあたったが、仕事を終えて凱旋する際にはその火消し半纏をリバーシブルに着て派手なデザインを示し、江戸っ子の粋と心意気を示したという。
そんな粋を貫き通した火消したちにあやかったデザインなわけだが、無論裏地に遊び心を...というのは火消し半纏だけではない。
これまでにも、例えば PAPAS のジャケットにも裏地に凝ったものが多々あり、いくつか愛用してきた。現在はこれ1着だけになったが、長い間愛用してきたために使い古された感じが加わりなかなか捨てられない(笑)。

※これまた愛用の PAPAS のジャケットも裏地が気に入って買い求めた
そう...。粋といえば半纏でもジャケットでもないが、スーツと共に着用するウェストコートを共生地では面白くないからと前身頃の左右を別々の生地を使ってオーダーしたことがある。ある種のオッドベストともいえようが、この左右の生地は未使用のネクタイを用いたためにシルクの前見頃となっている。

※20年ほども前になるが、スーツ用のウェストコート(ベスト)を特注し、前身頃を左右別々のデザインにしたものを作ってもらったことがある。世界でこれ1着のお宝である(笑)
さすがに歳を取るとそうそう無茶もできないが、いくつになっても遊び心だけは失いたくないと思っている。
歳をとるとどうしても地味で無難なものを身につけるのが一般的になってくるようだが、フォーマルな場合はともかくプライベートな場所では遊び心も加えたいと考えている一人である。
さらに昨今はある意味他人の見目には気を遣わなくなった...無関心の時代だと言われているからオヤジがピンクのジャケットを着ようが派手なパッチワークの上着を着ようが振り返る人もいないから気が楽でよい(笑)。
特に自由業の現在は相手に不快感を与えなければどのようなスタイルだとしても許される時代だし、コンピュータとかITの業界はスティーブ・ジョブズらの影響もあるのだろうが、ジーパンにTシャツで大概正装みたいな感じで動き回れるのだから面白い。
さて、これからの季節は室内でも何らかの暖房器具が必要になってくる時期だ。しかし近年部屋全体を温める暖房はなるべく使わず、適度な重ね着をし、パソコンの前に座る際には膝掛けと電気足温器で過ごすようにしている。ただし重ね着といってもセーター類は嫌いなので一番寒い季節はシャツの上に室内用に用意したダウンジャケットと裏地がフリース張りのジーンズを愛用している。

※火消し半纏をアレンジしたという江戸染めデニムジャケット
それは劇寒のときだが秋口からは脱ぎ着が楽なもの、そしてできるだけ体を圧迫しない上着を使うように心がけているが、先般はそんな主旨にピッタリかと思いデニム製の半纏を買ってみた。デザインは火消し半纏をアレンジしたものだそうで、デニム生地は藍を何度も染めることで黒色に近づける「江戸黒」といったイメージをデニムで再現したものだという。
ただしデニムというとどうしてもごわごわ感があるが、ポリウレタンを加えることでストレッチ性もあり、とても楽だし袖を通さないで肩にかけたり、時には膝掛けのかわりにもなる。
表地は黒っぽく染めたデニムだから実に地味だが、この半纏...実は裏地に色鮮やかな伝統柄が使われているのが気に入った...。
その裏地柄は6種の伝統柄を縦縞に配しており、火消半纏の背に描かれた "組" の印をアレンジした「火消組」柄の他、吉原の手引き茶屋の暖簾に使われたという「吉原つなぎ」、そして「波に千鳥」「三筋立」「小桜」「子持ち縞」という柄で構成されている。
こうした裏地が派手なことを「江戸の裏派手」などというそうだが、これには歴史的にも些か理由があった...。

※裏地には「火消組」「吉原つなぎ」「波に千鳥」「三筋立」「小桜」「子持ち縞」という6種の伝統柄が使われている
江戸時代には度々「奢侈禁止令」すなわち贅沢を禁じるおふれが出され、江戸の庶民は正絹の着物や派手な着衣を身につけることを禁じられた。それらは佐伯泰英が描く時代小説などにも多々登場するが、例えば老中首座となった松平定信(1758年 ~ 1829年)が幕府改革として行った寛政の改革なとがよく知られている。
ただし現実にはそうした禁止令は景気の悪化を招きほとんど効果はなかったと思われるが、当の江戸っ子の反骨精神をも刺激し、市井の人たちも単に大人しく令に従うはずもなかった。その一例が「江戸の裏派手」とか「「裏勝り(うらまさり)」...すなわち表地はシンプルだが裏地に金をかけたり派手なデザインを用いることだった。
特にヒーローでもあった町火消したちは火消し半纏を着て消火にあたったが、仕事を終えて凱旋する際にはその火消し半纏をリバーシブルに着て派手なデザインを示し、江戸っ子の粋と心意気を示したという。
そんな粋を貫き通した火消したちにあやかったデザインなわけだが、無論裏地に遊び心を...というのは火消し半纏だけではない。
これまでにも、例えば PAPAS のジャケットにも裏地に凝ったものが多々あり、いくつか愛用してきた。現在はこれ1着だけになったが、長い間愛用してきたために使い古された感じが加わりなかなか捨てられない(笑)。

※これまた愛用の PAPAS のジャケットも裏地が気に入って買い求めた
そう...。粋といえば半纏でもジャケットでもないが、スーツと共に着用するウェストコートを共生地では面白くないからと前身頃の左右を別々の生地を使ってオーダーしたことがある。ある種のオッドベストともいえようが、この左右の生地は未使用のネクタイを用いたためにシルクの前見頃となっている。

※20年ほども前になるが、スーツ用のウェストコート(ベスト)を特注し、前身頃を左右別々のデザインにしたものを作ってもらったことがある。世界でこれ1着のお宝である(笑)
さすがに歳を取るとそうそう無茶もできないが、いくつになっても遊び心だけは失いたくないと思っている。
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