ピアノ演奏のようにパソコンキーボードを打鍵するにはパームレストは不要!?
過日友人たちと新しいMagic Keyboardの話題で盛り上がり、その入力スタイルまで話は広がった...。ただ「キーボードをピアノ演奏のように華麗に打鍵するにはパームレストは不要」との私の物言いが一部の人には気に入らなかったらしい(笑)。
皆さんはキーボード入力するとき、パームレストをお使いだろうか。パームレスト(palm rest)とは、ご承知のようにキーボードの手前に置いて使う、手のひらや手首を乗せるためのパッドやクッションあるいはそのスペースを意味する。その効能は手首を水平に保ち、固定・安定させることで長時間の打鍵による疲労あるいは腱鞘炎などの障害の原因を緩和させることができるというものだ。本当だろうか?(笑)。

※1990年代初頭のMacworldExpo/SF で購入した硬質ゴム製のパームレスト。すでに変色している...
確かにタイプライターが発明され、幾多の仕組みを持つ製品がしのぎを削っていた1800年代後半には大文字と小文字を別キーとした1列12キー6段のキーを持つタイプライターも作られその前面にはいまでいうパームレストと思われる台が備わった製品(例えばアメリカン・ライティング・マシン社の"Caligraph No.2" 等)もあったもののすぐに駆逐された...。
Macに限らないが、最近はキーボードも薄型になったことでもありパームレストを使わないまでも両手の手首部分を机上に置いてキーを叩く人は多い。またMacBookをお使いの方ならキーボード手前の、すなわちパームレスト部分に手首を置いて入力することに違和感を持っている人は少ないと思う。しかし私は例えMacBookでもテキスト入力中はパームレスト部分に手首はほとんど乗せない。

※Apple初代のノート型PowerBook 100のパームレスト部分
現在のほとんどのユーザー諸氏は「手首を置いて入力する方が楽だし肩も凝らず効率が良い」と思っているのではないだろうか。そして日常、デスクトップ機においてもパームレストを使っている方も多いと聞く。
しかし喧嘩を売るわけでは決してないが、よりキー入力の効率を上げたいと考えるならパームレストの利用はそれに反するのだ...と私は教えられて現在に至る。
ほとんどのパーソナルコンピュータのユーザーは、いわゆるパソコンが登場してから初めてキーボードというものを使い始めた人たちである。そしてこの方たちがパームレストを使う傾向が多い。
しかし私自身は勿論、周りを振り返ってみると時代的な違いといえば良いのだろうか、パーソナルコンピュータに至るまでの背景が違うために、その状況は些か変わってくる。
例えば Macintosh以前のApple製パーソナルコンピュータの名器としてApple II が名高いが、そのキーボード部分のデザインならびに形状をあらためて見ていただきたい。そもそもパーソナルコンピュータのキーボード部分はそれまでにあったタイプライターのそれを模したものだ。

※Apple II のキーボード部位を横から見たところ
だから、この種の黎明期のパソコンは机上面からキートップまでの高さを測ってみると、かなり距離があるのが分かる。実際に手元にあるApple II を実測してみると、スペース・バーまでの距離は約7センチほどもある。

※Apple IIは机上からスペースキーのキートップまで7センチほどもある
これはなにもApple II が特殊だったわけではなく、同時代に登場したコモドール社製パソコンPET2001も同じでApple II 同様パームレストを置くことなど想定した高さではないことが分かるだろう。

※コモドール社製PET2001パソコン。これまた同様にパームレストがどうの...という寸法ではない(1980年撮影)
私は1977年に貿易商社に入社し、マイコンとかパソコンのフルキーボードを体験する以前に英文タイプライターを練習するはめになった。また海外との通信には今のように電子メールやFAXはなかったから、テレックスという一種のテレタイプを使って海外との情報交換をしていたが、それらは皆手首を置く場所は皆無だった。 さらに手動タイプライターを使うにはキーを押すのではなく叩く必要がある。したがって力も必要であり手首を固定していては事実上使えないのだ...。

※手動タイプライターを使う姿勢の例。米国レミントン社のタイプライター広告(1909年)より
ご存じのようにこの種のキーボードで入力スピードを上げるにはタッチタイピングを学習する必要がある。タッチタイピングは古くは和製英語のブラインドタッチと呼ばれていた時代もあったが、要は入力時に手元のキートップを見ないで入力する方法だ。結果決められた指で決められたキーを打つことでもあり、両手の動きは最小となるしその分スピードが速くなると言う寸法だ。そして手元でなく画面を常に見つめていられることから入力間違いもフィードバックしやすい。
勿論タッチタイピングが出来なければならないという決まりがあるはずもない。事実いまだに両手の一本指でパソコンを使っている人を知っているが、本人は不自由とは思っていないしタイピングの検定を受ける訳でもないのだから一向に問題はないのだ。ただし繰り返すが本格的にタッチタイピングを訓練し身につけた人と比べればそのスピードと効率の違いは歴然と違ってくる。
繰り返すが、キー入力時にパームレストに手首側の掌を置くことは両手の可動範囲だけでなく両手の指の動きを狭めてしまうことになる。
だから、タイプライターで訓練をした私たち時代のユーザーは、いまだに手首を固定しない。なぜなら前後はもとより、左右に万遍なく両手と指を自由に動かすためには手首は浮かせておかなければならない訳なのだ。特に電動タイプライタが出現する前の手動タイプライタは打鍵に指の力がかなり必要であり、正確に打鍵するには手首を固定しては力が入らず無理だった...。
この事はピアノ演奏を例にすればより分かりやすいだろう。打鍵する幅がまったく違うものの、ピアノを弾くのにパームレストはあってはならない(笑)。
したがって「キー入力のときパームレストが無いと手が疲れませんか?」という問いに、いつも「私はピアノを弾くようにキーボードを叩くから...疲れない」と答えている。
事実、キーボードに対して理想的な腕の高さと姿勢を確保すれば、ピアノ演奏と同様に長時間のキーボード入力も疲れないものである。とはいえ正確にそして疲れず入力できるのならどのようなスタイルでも勝手だからして...「ピアノを弾くようにキーボードを叩く...」はちょっとキザでアナクロニズムな物言いだったのかも知れない(笑)。
皆さんはキーボード入力するとき、パームレストをお使いだろうか。パームレスト(palm rest)とは、ご承知のようにキーボードの手前に置いて使う、手のひらや手首を乗せるためのパッドやクッションあるいはそのスペースを意味する。その効能は手首を水平に保ち、固定・安定させることで長時間の打鍵による疲労あるいは腱鞘炎などの障害の原因を緩和させることができるというものだ。本当だろうか?(笑)。

※1990年代初頭のMacworldExpo/SF で購入した硬質ゴム製のパームレスト。すでに変色している...
確かにタイプライターが発明され、幾多の仕組みを持つ製品がしのぎを削っていた1800年代後半には大文字と小文字を別キーとした1列12キー6段のキーを持つタイプライターも作られその前面にはいまでいうパームレストと思われる台が備わった製品(例えばアメリカン・ライティング・マシン社の"Caligraph No.2" 等)もあったもののすぐに駆逐された...。
Macに限らないが、最近はキーボードも薄型になったことでもありパームレストを使わないまでも両手の手首部分を机上に置いてキーを叩く人は多い。またMacBookをお使いの方ならキーボード手前の、すなわちパームレスト部分に手首を置いて入力することに違和感を持っている人は少ないと思う。しかし私は例えMacBookでもテキスト入力中はパームレスト部分に手首はほとんど乗せない。

※Apple初代のノート型PowerBook 100のパームレスト部分
現在のほとんどのユーザー諸氏は「手首を置いて入力する方が楽だし肩も凝らず効率が良い」と思っているのではないだろうか。そして日常、デスクトップ機においてもパームレストを使っている方も多いと聞く。
しかし喧嘩を売るわけでは決してないが、よりキー入力の効率を上げたいと考えるならパームレストの利用はそれに反するのだ...と私は教えられて現在に至る。
ほとんどのパーソナルコンピュータのユーザーは、いわゆるパソコンが登場してから初めてキーボードというものを使い始めた人たちである。そしてこの方たちがパームレストを使う傾向が多い。
しかし私自身は勿論、周りを振り返ってみると時代的な違いといえば良いのだろうか、パーソナルコンピュータに至るまでの背景が違うために、その状況は些か変わってくる。
例えば Macintosh以前のApple製パーソナルコンピュータの名器としてApple II が名高いが、そのキーボード部分のデザインならびに形状をあらためて見ていただきたい。そもそもパーソナルコンピュータのキーボード部分はそれまでにあったタイプライターのそれを模したものだ。

※Apple II のキーボード部位を横から見たところ
だから、この種の黎明期のパソコンは机上面からキートップまでの高さを測ってみると、かなり距離があるのが分かる。実際に手元にあるApple II を実測してみると、スペース・バーまでの距離は約7センチほどもある。

※Apple IIは机上からスペースキーのキートップまで7センチほどもある
これはなにもApple II が特殊だったわけではなく、同時代に登場したコモドール社製パソコンPET2001も同じでApple II 同様パームレストを置くことなど想定した高さではないことが分かるだろう。

※コモドール社製PET2001パソコン。これまた同様にパームレストがどうの...という寸法ではない(1980年撮影)
私は1977年に貿易商社に入社し、マイコンとかパソコンのフルキーボードを体験する以前に英文タイプライターを練習するはめになった。また海外との通信には今のように電子メールやFAXはなかったから、テレックスという一種のテレタイプを使って海外との情報交換をしていたが、それらは皆手首を置く場所は皆無だった。 さらに手動タイプライターを使うにはキーを押すのではなく叩く必要がある。したがって力も必要であり手首を固定していては事実上使えないのだ...。

※手動タイプライターを使う姿勢の例。米国レミントン社のタイプライター広告(1909年)より
ご存じのようにこの種のキーボードで入力スピードを上げるにはタッチタイピングを学習する必要がある。タッチタイピングは古くは和製英語のブラインドタッチと呼ばれていた時代もあったが、要は入力時に手元のキートップを見ないで入力する方法だ。結果決められた指で決められたキーを打つことでもあり、両手の動きは最小となるしその分スピードが速くなると言う寸法だ。そして手元でなく画面を常に見つめていられることから入力間違いもフィードバックしやすい。
勿論タッチタイピングが出来なければならないという決まりがあるはずもない。事実いまだに両手の一本指でパソコンを使っている人を知っているが、本人は不自由とは思っていないしタイピングの検定を受ける訳でもないのだから一向に問題はないのだ。ただし繰り返すが本格的にタッチタイピングを訓練し身につけた人と比べればそのスピードと効率の違いは歴然と違ってくる。
繰り返すが、キー入力時にパームレストに手首側の掌を置くことは両手の可動範囲だけでなく両手の指の動きを狭めてしまうことになる。
だから、タイプライターで訓練をした私たち時代のユーザーは、いまだに手首を固定しない。なぜなら前後はもとより、左右に万遍なく両手と指を自由に動かすためには手首は浮かせておかなければならない訳なのだ。特に電動タイプライタが出現する前の手動タイプライタは打鍵に指の力がかなり必要であり、正確に打鍵するには手首を固定しては力が入らず無理だった...。
この事はピアノ演奏を例にすればより分かりやすいだろう。打鍵する幅がまったく違うものの、ピアノを弾くのにパームレストはあってはならない(笑)。
したがって「キー入力のときパームレストが無いと手が疲れませんか?」という問いに、いつも「私はピアノを弾くようにキーボードを叩くから...疲れない」と答えている。
事実、キーボードに対して理想的な腕の高さと姿勢を確保すれば、ピアノ演奏と同様に長時間のキーボード入力も疲れないものである。とはいえ正確にそして疲れず入力できるのならどのようなスタイルでも勝手だからして...「ピアノを弾くようにキーボードを叩く...」はちょっとキザでアナクロニズムな物言いだったのかも知れない(笑)。
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