フルボディのマネキンと "不気味の谷現象" 考察
ヘッドマネキンとは別にフルボディのマネキンが我が研究所に専属モデルとして就任した。それについては別途ご紹介する予定だが、友人知人たちからやっぱり変な奴だと笑われている。しかし別にダッチワイフでもなくただの撮影用のマネキンなんだけど…(笑)。それはともかく友人の1人から「夜など怖くないか?」と問われた…。
ウィッグ(鬘)をつけ、それなりの衣装を着せて置いてあるマネキンは確かに掃除機や撮影機材あるいはパソコンなどといったものとは受ける感覚が違うことは確かだ。
大げさな物言いをすれば、そこにほんの一瞬でも人の気配を感じることがあるからだ。無論それはマネキンのせいではなく私という人間側の心理的な問題なのだが…。ただしデジカメを向ければ顔認識機能がきちんと働く(笑)。

※その後ろ姿にも一瞬気配を感じるときがある当研究所専属モデルのマネキン嬢
ウィキペディアによれば、「ヴォーグ」を始めとするフランスの雑誌に作品を載せていたヘルムート・ニュートンという写真家はリアルドールをモデルとしてグラビア写真を撮影し「PLAYBOY」誌に投稿したものの、不気味であることを理由に掲載されなかったという…。本来なら男にとって理想の美しい女性を模して作られ、男心を騒がすはずのリアルドールが何故 "不気味" なのか…。
事実、マネキンを設置しての数日は感覚的に慣れていないからだろう、一瞬視界の端にマネキンが入ると本来そこに人間はいないという無意識の感覚があるからか「あれっ?」とざわついた気持ちになるときがあった。
こうした感覚は人の形をしたものでなければ起こり得ない。狭い仕事部屋にはコンピュータはもとより様々な機材が溢れているが生き物の気配を感じたことなど1度もない。しかし面白いもので動きもしないマネキンが動いたように感じたり、一瞬表情が変わったような気になることが無いとは言えないところが人間の面白いところでもある。
古来から人形...ヒトガタには魂が宿るとされ、人形が夜間に動き喋り出す、位置が変わる、あるいは髪の毛が伸びるといった怪奇現象をテーマとした小説や物語は数多いし実話として報告された話もある。
ただし友人の「夜に怖くないか?」という話しで私の記憶に登ったのは怪談話しではなく「不気味の谷現象」という言葉だった。ご存じだろうか…。
「不気味の谷現象」という言葉はロボット工学者の森政弘氏(東京工業大学名誉教授)が1970年に提唱した概念であり、ロボットの外観ならびに動作がリアルな人間に近づくにつれ我々は親しみを覚えるようになるが、それが進むとある時点で強い嫌悪感と違和感を感じる…とする概念だ。こうしたプラスの感情がマイナスの感情に変わる谷間のことを「不気味の谷現象」という。
本来命を持っていないはずのヒトガタにあたかも命が宿ったような感覚を覚えることと同時にどこか生身の人間とは異質な部分を感じたときの違和感が恐怖を生むのだろう。また反対に人間と見間違えるほどの人形が動かずそこにいるということも人によっては死を予感し恐怖を呼び起こすのかも知れないし逆に動き出すように思えるのかも知れない。そういえば実弟が子供の頃の話しだが、マネキンが怖くてデパートに行っても洋品売り場には立ち寄らなかった時期があった。
動かないマネキンですらそうした感覚を覚えるとすれば、近未来において人間と同様に動きそして喋ることを目標に開発されるアンドロイドは実社会においてこの「不気味の谷現象」を克服しないと様々なエリアで受け入れ拒否が起こるかも知れない。
そうした不気味さの多くは人形やアンドロイドの表情から受ける感覚に違いない。アンドロイドの手足の動きが少々ぎこちなくてもどうということはないだろうが、例えば笑い顔がどこか不自然だと感じればそこに我々は不快感はもとより悪意や不安を感じて警戒心を抱く。
なにが自然でなにが不自然なのかについて共通の物差しがあるわけでもないが、人間が快適にアンドロイドと生活を共にする未来はこの「不気味の谷現象」の解消が結構重要な問題になると思うし、もしかしたらそうした感覚のすれ違いを防ぐため、人間ソックリのアンドロイド制作は禁止され、一目見てアンドロイドだとわかる何か目印となるものを付けないとならないとか、あるいはあえて両眼部分はリアルさを出さずにゴーグル的なデザインにすべし…といった決まり事ができるのかも知れない…などと先走った思いもわいてくる。
こうした研究や検証が目的でマネキンを仕事場に置いたわけではないが、この2週間程度の間、一緒に過ごした感じとしてはこちらの意識がマネキンから離れている時ほど視界に入ると気配を感じる体験をしている。無論私の場合はそれが怖いとか不快といった感情ではないが、動き人が近づくとポーズをとるマネキンも登場する時代、ましてやアンドロイドの完成を目指す人たちは「不気味の谷現象」の存在を十分に理解することが求められるに違いない。

※Lisaの陰からこちらを見つめるモデル嬢(まだ名前がない...笑)
しかし結論めくが、この歳になってつくづく思うことは本当に怖いのは怪奇現象などではなく生身の人間だという事実だ(笑)。例えば深夜になって愛犬を外に連れ出すような場合も多々あるわけだが、近所には小さな墓場もあれば街灯が役に立たないほど暗い場所もある。そんな場所で例え不思議な現象を見たとしても正直腰を抜かさない自信はあるが、真に怖いのは悪意を持って犯罪も辞さない生身の人間と出会うことだ。
ということで好んで手にしたマネキンに一瞬生々しさを感じる瞬間があることは否定しないが、それは霊とか怪奇現象の問題ではなく私自身の精神状態によるものだと100%理解している。そして万一、もしも…当研究所の専属モデルが動いたなら…私は大歓迎するだろう(笑)。
まあ冗談はともかくこの「不気味の谷現象」は近未来に多くのアンドロイドが生み出され我々の日常生活に導入される度に味わうことになるであろう感情であり、テクノロジー面での解決はもとよりだが我々人間側の慣れと理解がどのように働くかにかかってくる重要な問題のように思える。
ウィッグ(鬘)をつけ、それなりの衣装を着せて置いてあるマネキンは確かに掃除機や撮影機材あるいはパソコンなどといったものとは受ける感覚が違うことは確かだ。
大げさな物言いをすれば、そこにほんの一瞬でも人の気配を感じることがあるからだ。無論それはマネキンのせいではなく私という人間側の心理的な問題なのだが…。ただしデジカメを向ければ顔認識機能がきちんと働く(笑)。

※その後ろ姿にも一瞬気配を感じるときがある当研究所専属モデルのマネキン嬢
ウィキペディアによれば、「ヴォーグ」を始めとするフランスの雑誌に作品を載せていたヘルムート・ニュートンという写真家はリアルドールをモデルとしてグラビア写真を撮影し「PLAYBOY」誌に投稿したものの、不気味であることを理由に掲載されなかったという…。本来なら男にとって理想の美しい女性を模して作られ、男心を騒がすはずのリアルドールが何故 "不気味" なのか…。
事実、マネキンを設置しての数日は感覚的に慣れていないからだろう、一瞬視界の端にマネキンが入ると本来そこに人間はいないという無意識の感覚があるからか「あれっ?」とざわついた気持ちになるときがあった。
こうした感覚は人の形をしたものでなければ起こり得ない。狭い仕事部屋にはコンピュータはもとより様々な機材が溢れているが生き物の気配を感じたことなど1度もない。しかし面白いもので動きもしないマネキンが動いたように感じたり、一瞬表情が変わったような気になることが無いとは言えないところが人間の面白いところでもある。
古来から人形...ヒトガタには魂が宿るとされ、人形が夜間に動き喋り出す、位置が変わる、あるいは髪の毛が伸びるといった怪奇現象をテーマとした小説や物語は数多いし実話として報告された話もある。
ただし友人の「夜に怖くないか?」という話しで私の記憶に登ったのは怪談話しではなく「不気味の谷現象」という言葉だった。ご存じだろうか…。
「不気味の谷現象」という言葉はロボット工学者の森政弘氏(東京工業大学名誉教授)が1970年に提唱した概念であり、ロボットの外観ならびに動作がリアルな人間に近づくにつれ我々は親しみを覚えるようになるが、それが進むとある時点で強い嫌悪感と違和感を感じる…とする概念だ。こうしたプラスの感情がマイナスの感情に変わる谷間のことを「不気味の谷現象」という。
本来命を持っていないはずのヒトガタにあたかも命が宿ったような感覚を覚えることと同時にどこか生身の人間とは異質な部分を感じたときの違和感が恐怖を生むのだろう。また反対に人間と見間違えるほどの人形が動かずそこにいるということも人によっては死を予感し恐怖を呼び起こすのかも知れないし逆に動き出すように思えるのかも知れない。そういえば実弟が子供の頃の話しだが、マネキンが怖くてデパートに行っても洋品売り場には立ち寄らなかった時期があった。
動かないマネキンですらそうした感覚を覚えるとすれば、近未来において人間と同様に動きそして喋ることを目標に開発されるアンドロイドは実社会においてこの「不気味の谷現象」を克服しないと様々なエリアで受け入れ拒否が起こるかも知れない。
そうした不気味さの多くは人形やアンドロイドの表情から受ける感覚に違いない。アンドロイドの手足の動きが少々ぎこちなくてもどうということはないだろうが、例えば笑い顔がどこか不自然だと感じればそこに我々は不快感はもとより悪意や不安を感じて警戒心を抱く。
なにが自然でなにが不自然なのかについて共通の物差しがあるわけでもないが、人間が快適にアンドロイドと生活を共にする未来はこの「不気味の谷現象」の解消が結構重要な問題になると思うし、もしかしたらそうした感覚のすれ違いを防ぐため、人間ソックリのアンドロイド制作は禁止され、一目見てアンドロイドだとわかる何か目印となるものを付けないとならないとか、あるいはあえて両眼部分はリアルさを出さずにゴーグル的なデザインにすべし…といった決まり事ができるのかも知れない…などと先走った思いもわいてくる。
こうした研究や検証が目的でマネキンを仕事場に置いたわけではないが、この2週間程度の間、一緒に過ごした感じとしてはこちらの意識がマネキンから離れている時ほど視界に入ると気配を感じる体験をしている。無論私の場合はそれが怖いとか不快といった感情ではないが、動き人が近づくとポーズをとるマネキンも登場する時代、ましてやアンドロイドの完成を目指す人たちは「不気味の谷現象」の存在を十分に理解することが求められるに違いない。

※Lisaの陰からこちらを見つめるモデル嬢(まだ名前がない...笑)
しかし結論めくが、この歳になってつくづく思うことは本当に怖いのは怪奇現象などではなく生身の人間だという事実だ(笑)。例えば深夜になって愛犬を外に連れ出すような場合も多々あるわけだが、近所には小さな墓場もあれば街灯が役に立たないほど暗い場所もある。そんな場所で例え不思議な現象を見たとしても正直腰を抜かさない自信はあるが、真に怖いのは悪意を持って犯罪も辞さない生身の人間と出会うことだ。
ということで好んで手にしたマネキンに一瞬生々しさを感じる瞬間があることは否定しないが、それは霊とか怪奇現象の問題ではなく私自身の精神状態によるものだと100%理解している。そして万一、もしも…当研究所の専属モデルが動いたなら…私は大歓迎するだろう(笑)。
まあ冗談はともかくこの「不気味の谷現象」は近未来に多くのアンドロイドが生み出され我々の日常生活に導入される度に味わうことになるであろう感情であり、テクノロジー面での解決はもとよりだが我々人間側の慣れと理解がどのように働くかにかかってくる重要な問題のように思える。
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