SF 映画「エクスマキナ (Ex Machina)」を観て戦慄す!
以前から観たいけれど観たくない…と、複雑な思いを寄せていたアレックス・ガーランド監督作品の SF映画「エクスマキナ(Ex Machina)」をついに観る決心をした(笑)。なにしろ興味を持ち続けてきた人工知能の悲劇を眼前にしなければならないのだから気が重い…。怖いというより実にリアルで嫌な映画なのだが、反面メチャ素敵な映画なのだ。
本「エクスマキナ」のあらすじやネタバレはネットで多々見ることができるのであまり深入りしないつもりだが、あと数十年もすればもしかして実際に我々人類が体験するかも知れないリアルな恐怖を扱った映画である。
昔から人工知能やアンドロイドがその生みの親である我々人類を壊滅させようとするストーリーは多々あった。漫画、小説、映画でそうした…いわば親殺しとでもいうようなフィクションを楽しんできたが、それらはどこかありえない遠い未来のことであり、コンテンツや映画を見終われば忘れてしまうようなリアル感が薄いものばかりだった。
しかし「エクスマキナ」は違う。明日にでも、今日にでも世界のどこかで起こっているかも知れないリアリティを感じるのだ。それも悲劇なのだから怖い...。そして映画に登場する様々な設定もいま実在する企業や状況を観るものに連想させる巧みさもあり、人間同様のアンドロイドが闊歩するという非現実(現在では)な世界にもかかわらず映画を見続けるにつれ、薄ら寒さを通り越して恐怖を感じざるを得なくなる。

※SF映画「エクスマキナ(Ex Machina)」Blu-layディスクのパッケージ。スペイン語版
設定はこうだ…。有名な検索エンジン開発で成功し巨大な企業となった IT企業 “ブルーブック” が舞台となる。こう聞けば我々はすぐにGoogleを思い浮かべるし、 “ブルーブック” という企業名もビッグブルー(IBM)とフェイスブックを合わせた名前に違いない(笑)。そうであれば我々はフィクションの筈の映画と現実とがシームレスに重なってしまう…。
ともかくそのブルーブックでプログラマーとして働いているケイレブ・スミスという若い男性は抽選でブルーブックのカリスマ社長ネイサン・ベイトマンの自宅を1週間訪問できる権利を得る。これは大変名誉なことであり、そして憧れのCEOに会うことができることにケイレブは胸を膨らませてヘリコプターに乗る。
実はネイサンの自宅は広大な山岳地帯の奥にあったが、そこは人工知能開発のための秘密研究施設だった。ネイサンは世界中で日々使われる検索ワードおよび携帯電話で交わされる膨大なデータを非合法に収集し、それを元に高度な人工知能開発を進めてきたが、それがもう一歩のところまできているという設定だ。
機密保持契約にサインを求められたケイレブはネイサンから開発した人工知能のチューリング・テストを行うよう指示される。なお、もし「チューリング・テストは何?」という方はググって予備知識を得ていただきたい…。
さてネイサンが開発した人工知能とは施設にあるガラスのスペースに閉じ込められた美しい女性のアンドロイド、エヴァだった。彼女はマシンであることを明示するため、顔と手足の先のみ人間と同じような皮膚で覆われていたが、他は内部構造を明らかにするためもあって配線や機器が透けて見えるボディを持っている。

※映画のエヴァに刺激を受けて我が研究所でも開発を始めたアンドロイド(嘘)
ケイレブによるエヴァへのチューリング・テストが始まるが、途中で原因不明の停電が起きる。その監視カメラが作動していない短い間、エヴァは「ネイサンを信用してはいけない」と奇っ怪な言葉をケイレンに投げかける。そして次第にエヴァはケイレブを誘惑する素振りを見せ始めた。しかしケイレブはそうした一連のエヴァの行動も実はネイサンがプログラミングしたものではないかと疑うが、次第にエヴァに惹かれていく気持ちを抑えがたくなっていく。
停電の最中にエヴァと交わした会話はネイサンへそのまま報告できるものではなく、エヴァとケイレブは最初の秘密を共有することになる。停電の原因をネイサンに聞くが原因は分からないという。ケイレブが作った業者に修理させればよいと勧めるがネイサンは「秘密を守るため建設作業員は全員殺した」と答える。
ネイサンのいうことがどこまで本当なのかも分からずケイレブは課せられた任務をやりとげようとするが会話のリードはすでにエヴァに移っている。もしかしたら…ケイレブはテストされているのは自分自身なのかも知れないと考え始めているようだ…。
確かにネイサンの話しは変だ。チューリング・テストをさせるため、あるいは作り上げたアンドロイドのことを話せる相手が欲しいという気持ちも確かにあるのだろうが、そもそも人の意見など聞きそうもない人物だし秘密保持契約書にサインさせたというのにケイレブの質問に真摯に答えようとする姿勢は見せない。チューリング・テストなど自身でどうにでもなるのではないか…。
それにフィクションのストーリーに文句を言っても始まらないが、13歳のときに “ブルーブック” のシステムを書き上げたほどの天才であるネイサンだとしても、人工知能研究ならびに開発を完全な秘密裏に、それもたった1人で作り上げるようなことはできようもないだろう。
ソフトウェア面はともかく、エヴァのような自律型のアンドロイドのハードウェアや人工皮膚を作るにしてもあれほど完成度の高いアンドロイドは多方面の技術を持った人たちの助けは不可欠ではないだろうか。それともここでも仕事はさせた上で秘密保護の目的から皆抹殺したのだろうか。
そう考えるとそもそもケイレブもこの研究施設から無事に出られる保証は最初からなかったとも思える。なんとも気色の悪いストーリーだ(笑)。
ともかくそんなとき近々新しいアンドロイドにアップデートするため、エヴァのシステムを初期化するつもりだとネイサンがいう。エヴァはケイレブから自分の "命" が近々奪われることを知らされケイレブに助けを求める…。
なおこの人工知能開発のための秘密研究施設ではネイサンとケイレブ、そしてエヴァとハウスメイドの日本人、キョウコの4人(?)が登場するが、ストーリーは急な展開をみせ悲劇が起こる…。
まあ、ストーリーは映画を観ていただきたいといいたいところだが、現在の所まだ日本公開には至っていない。私は日本語版が含まれているというスペイン語版のブルーレイ・ディスクを入手して映画を楽しんだ…。
ともかく、若くそして女性経験もほとんどないようなケイレブがアンドロイドとはいえ、エヴァに会った瞬間に恋に落ちることなどネイサンは最初から分かっていたに違い。いや、検索エンジンの世界的なIT企業の社長だからしてそもそもエヴァの外見や仕草、話し方などもすべてケイレブ好みに作り上げたのかも知れない。エヴァがケイレブに見せようと花柄のワンピースとショートカットのWigを着けて現れるところなどケイレブならずとも息をのむ…。

※「エクスマキナ」に刺激を受けてオリジナルなストーリーを作りたくなった...【クリックで拡大】
そうであれば結果は自ずと想像できるに違いない…。エヴァにとってケイレブを口説き落とすことなど赤子の手を捻るより簡単なことだろうから、ケイレブが手玉に取られるのは時間の問題ではなかったか…。
そもそも1960年代に開発された "ELIZA (イライザ)" を例にするまでもなく我々人間は至極思い込みの激しい生き物なのだ。
ELIZAの開発者ジョセフ・ワイゼンバウム博士本人が危険視するほど至極単純な会話プログラムの向こうに意志を持った人間がいると思い込む人が多かったのだ。ワイゼンバウム自身は “猿まね” 、 “お遊び” レベルと考えていたELIZAだったが、周りの反応に大きなショックを受け、「コンピュータにあることができるかどうかは別として、コンピュータにさせるべきでない仕事がある」ということを念頭においたうえで人工知能を扱う必要があると提唱した。
ともあれエヴァは何を考え、何を望んでいるのか、その為には手段を選ばないのか、良心はないのか、自分がアンドロイドであることを悩んでいるのか、人間になりたいと思っているのか…。何にも増して、エヴァの開発者であるネイサンはエヴァから嫌われていることは承知していたはずだから、何故最悪の結果を予測できなかったのか?
エヴァの不思議な美しさに、そして目を離せない展開に私の思考能力は停止し、ひたひたと迫る結末に底知れぬ恐怖を感じながらエンディングを迎えた。
映画は無論フィクションだが、これは起こりつつある現実なのだという気持ちが重なってあの車椅子の天才宇宙物理学者、ホーキング博士の警告を思い出した。

※人工知能に関してあらためて勉強中。これは先日届いたばかりの2015年の新刊2冊
彼は人工知能の研究開発を止めないと AI は知力で人類を上回り、人類を滅ぼすことになるといった。IT企業がこぞって人工知能の研究開発を進めている現在、この恐怖が現実のものとならないことを祈るばかりだ。
そうそう、"Ex Machina" とはラテン語で「機械仕掛けの」といった意味だそうだが、貴方の隣にいる魅力的な美女、本当に人間だろうか?
■エクス・マキナ映画予告編
本「エクスマキナ」のあらすじやネタバレはネットで多々見ることができるのであまり深入りしないつもりだが、あと数十年もすればもしかして実際に我々人類が体験するかも知れないリアルな恐怖を扱った映画である。
昔から人工知能やアンドロイドがその生みの親である我々人類を壊滅させようとするストーリーは多々あった。漫画、小説、映画でそうした…いわば親殺しとでもいうようなフィクションを楽しんできたが、それらはどこかありえない遠い未来のことであり、コンテンツや映画を見終われば忘れてしまうようなリアル感が薄いものばかりだった。
しかし「エクスマキナ」は違う。明日にでも、今日にでも世界のどこかで起こっているかも知れないリアリティを感じるのだ。それも悲劇なのだから怖い...。そして映画に登場する様々な設定もいま実在する企業や状況を観るものに連想させる巧みさもあり、人間同様のアンドロイドが闊歩するという非現実(現在では)な世界にもかかわらず映画を見続けるにつれ、薄ら寒さを通り越して恐怖を感じざるを得なくなる。

※SF映画「エクスマキナ(Ex Machina)」Blu-layディスクのパッケージ。スペイン語版
設定はこうだ…。有名な検索エンジン開発で成功し巨大な企業となった IT企業 “ブルーブック” が舞台となる。こう聞けば我々はすぐにGoogleを思い浮かべるし、 “ブルーブック” という企業名もビッグブルー(IBM)とフェイスブックを合わせた名前に違いない(笑)。そうであれば我々はフィクションの筈の映画と現実とがシームレスに重なってしまう…。
ともかくそのブルーブックでプログラマーとして働いているケイレブ・スミスという若い男性は抽選でブルーブックのカリスマ社長ネイサン・ベイトマンの自宅を1週間訪問できる権利を得る。これは大変名誉なことであり、そして憧れのCEOに会うことができることにケイレブは胸を膨らませてヘリコプターに乗る。
実はネイサンの自宅は広大な山岳地帯の奥にあったが、そこは人工知能開発のための秘密研究施設だった。ネイサンは世界中で日々使われる検索ワードおよび携帯電話で交わされる膨大なデータを非合法に収集し、それを元に高度な人工知能開発を進めてきたが、それがもう一歩のところまできているという設定だ。
機密保持契約にサインを求められたケイレブはネイサンから開発した人工知能のチューリング・テストを行うよう指示される。なお、もし「チューリング・テストは何?」という方はググって予備知識を得ていただきたい…。
さてネイサンが開発した人工知能とは施設にあるガラスのスペースに閉じ込められた美しい女性のアンドロイド、エヴァだった。彼女はマシンであることを明示するため、顔と手足の先のみ人間と同じような皮膚で覆われていたが、他は内部構造を明らかにするためもあって配線や機器が透けて見えるボディを持っている。

※映画のエヴァに刺激を受けて我が研究所でも開発を始めたアンドロイド(嘘)
ケイレブによるエヴァへのチューリング・テストが始まるが、途中で原因不明の停電が起きる。その監視カメラが作動していない短い間、エヴァは「ネイサンを信用してはいけない」と奇っ怪な言葉をケイレンに投げかける。そして次第にエヴァはケイレブを誘惑する素振りを見せ始めた。しかしケイレブはそうした一連のエヴァの行動も実はネイサンがプログラミングしたものではないかと疑うが、次第にエヴァに惹かれていく気持ちを抑えがたくなっていく。
停電の最中にエヴァと交わした会話はネイサンへそのまま報告できるものではなく、エヴァとケイレブは最初の秘密を共有することになる。停電の原因をネイサンに聞くが原因は分からないという。ケイレブが作った業者に修理させればよいと勧めるがネイサンは「秘密を守るため建設作業員は全員殺した」と答える。
ネイサンのいうことがどこまで本当なのかも分からずケイレブは課せられた任務をやりとげようとするが会話のリードはすでにエヴァに移っている。もしかしたら…ケイレブはテストされているのは自分自身なのかも知れないと考え始めているようだ…。
確かにネイサンの話しは変だ。チューリング・テストをさせるため、あるいは作り上げたアンドロイドのことを話せる相手が欲しいという気持ちも確かにあるのだろうが、そもそも人の意見など聞きそうもない人物だし秘密保持契約書にサインさせたというのにケイレブの質問に真摯に答えようとする姿勢は見せない。チューリング・テストなど自身でどうにでもなるのではないか…。
それにフィクションのストーリーに文句を言っても始まらないが、13歳のときに “ブルーブック” のシステムを書き上げたほどの天才であるネイサンだとしても、人工知能研究ならびに開発を完全な秘密裏に、それもたった1人で作り上げるようなことはできようもないだろう。
ソフトウェア面はともかく、エヴァのような自律型のアンドロイドのハードウェアや人工皮膚を作るにしてもあれほど完成度の高いアンドロイドは多方面の技術を持った人たちの助けは不可欠ではないだろうか。それともここでも仕事はさせた上で秘密保護の目的から皆抹殺したのだろうか。
そう考えるとそもそもケイレブもこの研究施設から無事に出られる保証は最初からなかったとも思える。なんとも気色の悪いストーリーだ(笑)。
ともかくそんなとき近々新しいアンドロイドにアップデートするため、エヴァのシステムを初期化するつもりだとネイサンがいう。エヴァはケイレブから自分の "命" が近々奪われることを知らされケイレブに助けを求める…。
なおこの人工知能開発のための秘密研究施設ではネイサンとケイレブ、そしてエヴァとハウスメイドの日本人、キョウコの4人(?)が登場するが、ストーリーは急な展開をみせ悲劇が起こる…。
まあ、ストーリーは映画を観ていただきたいといいたいところだが、現在の所まだ日本公開には至っていない。私は日本語版が含まれているというスペイン語版のブルーレイ・ディスクを入手して映画を楽しんだ…。
ともかく、若くそして女性経験もほとんどないようなケイレブがアンドロイドとはいえ、エヴァに会った瞬間に恋に落ちることなどネイサンは最初から分かっていたに違い。いや、検索エンジンの世界的なIT企業の社長だからしてそもそもエヴァの外見や仕草、話し方などもすべてケイレブ好みに作り上げたのかも知れない。エヴァがケイレブに見せようと花柄のワンピースとショートカットのWigを着けて現れるところなどケイレブならずとも息をのむ…。

※「エクスマキナ」に刺激を受けてオリジナルなストーリーを作りたくなった...【クリックで拡大】
そうであれば結果は自ずと想像できるに違いない…。エヴァにとってケイレブを口説き落とすことなど赤子の手を捻るより簡単なことだろうから、ケイレブが手玉に取られるのは時間の問題ではなかったか…。
そもそも1960年代に開発された "ELIZA (イライザ)" を例にするまでもなく我々人間は至極思い込みの激しい生き物なのだ。
ELIZAの開発者ジョセフ・ワイゼンバウム博士本人が危険視するほど至極単純な会話プログラムの向こうに意志を持った人間がいると思い込む人が多かったのだ。ワイゼンバウム自身は “猿まね” 、 “お遊び” レベルと考えていたELIZAだったが、周りの反応に大きなショックを受け、「コンピュータにあることができるかどうかは別として、コンピュータにさせるべきでない仕事がある」ということを念頭においたうえで人工知能を扱う必要があると提唱した。
ともあれエヴァは何を考え、何を望んでいるのか、その為には手段を選ばないのか、良心はないのか、自分がアンドロイドであることを悩んでいるのか、人間になりたいと思っているのか…。何にも増して、エヴァの開発者であるネイサンはエヴァから嫌われていることは承知していたはずだから、何故最悪の結果を予測できなかったのか?
エヴァの不思議な美しさに、そして目を離せない展開に私の思考能力は停止し、ひたひたと迫る結末に底知れぬ恐怖を感じながらエンディングを迎えた。
映画は無論フィクションだが、これは起こりつつある現実なのだという気持ちが重なってあの車椅子の天才宇宙物理学者、ホーキング博士の警告を思い出した。

※人工知能に関してあらためて勉強中。これは先日届いたばかりの2015年の新刊2冊
彼は人工知能の研究開発を止めないと AI は知力で人類を上回り、人類を滅ぼすことになるといった。IT企業がこぞって人工知能の研究開発を進めている現在、この恐怖が現実のものとならないことを祈るばかりだ。
そうそう、"Ex Machina" とはラテン語で「機械仕掛けの」といった意味だそうだが、貴方の隣にいる魅力的な美女、本当に人間だろうか?
■エクス・マキナ映画予告編
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