映画「マイ・インターン」を観て思うこと

新作映画の公開を楽しみにしていたのは久しぶりのことだ。その作品は「マイ・インターン」。その一番の魅力はロバート・デニーロとアン・ハサウェイの競演でもあるが、すべてにポジティブなストーリーとトラブルはあってもいわゆる悪役が登場しないストーリーは秀悦だ。


なんといっても見所は20代で成功した女性社長の会社に社会貢献という名目で生き甲斐を目指す70歳の男が社長付のインターン(新人)として入社する…というストーリーが素敵だ。
社長のジュールズ(アン・ハサウェイ)は年寄りとの付き合いは苦手だと最初は敬遠するものの部下となったベン(ロバート・デニーロ)のユーモア精神と誠実で的確なアドバイスで会社の大小の問題やプライベートな悩みを解決していくというストーリーだ。

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※ナンシー・マイヤーズ監督「マイ・インターン」


本作はアン・ハサウェイのファッションにも注目されているようで鑑賞者の多くは若い女性なのかも知れないが、我々のようにベンに近い年齢のシニアたちにも励みになる映画ではないだろうか。
映画とはいえベンが皆に好かれるのは人生の先達として多くの経験を背景にジュールズや同僚たちのトラブルや日常生じる様々な問題に的確なアドバイスを与えて働きかけるからだが、大切な事はそうした際に年上だから、人生の経験者だからといった上から目線やふんぞり返った態度でことに当たるのではないことだ。

ファッションのネット販売ビジネスで大成功を収めたジュールズ。愛する夫と子供もいるが限られた時間のほとんどはビジネスに終始してしまう毎日でまともに食事もとれず睡眠もとれない日々が続く。それに会社にしても大成功を収め、いまでは200人以上の社員を抱えるまでになったが、大きくなった故の諸問題も表面化しつつある。その悩みを同じ1人の人間として理解し、役に立とうとするベンにジュールズも次第に心を開いていく。そのベンだっていまだに努力の人でもある。好印象を与えようと自宅の鏡の前で笑顔の練習をしている(笑)。



※映画『マイ・インターン』予告編(120秒)


とかく年寄りは「今の若者は...」という目線で若い人たちを見がちだし、ましてや働く女性の気持ちや心の葛藤を理解しようとしない傾向にある。
ベンと張り合うつもりはないが、大切なのは若い人たちにアトバイスすることではない。若い人たちも年配者のアドバイスは耳タコだろうしそれらが的確で最良の選択、考え方であるかはこれまたわからない。若い人だって多くは聞いているフルをしているだけだ。でないと年寄りは五月蠅いから(笑)。

シニアに利点があるとすれば文字通り一日の長...長く生きたからこその経験豊富なことだ。ただしそれは若い人たちがひとつの問題に対処する引出が三つしかないとき、シニアたちには六つとか七つの引出を持っているということに過ぎない。あとは時間の使い方や問題解決への姿勢、人生で何が一番大切かを身をもって体験していることだろう。

しかしたとえ引出の数が多いと言ってもそれらのどの引出がその時の問題解決にとって的確か、あるいは問題解決のために最適な引出があるかどうかを判断できるかについては別問題だから、シニアの考え・判断が常に正しいとは限らない。もしシニアにそれこそどのような問題にも的確に判断でき、未来への取り組みに間違いない能力があるとすれば、それこそ本人は大成功して億万長者になっているに違いない(笑)。

私たちシニアにできることは若い人たちをいつも視野に入れ、暖かくて見守っていること。そしてもし頼られたら彼ら彼女たちに一歩でも二歩でも前に進む自信を取りもどしてもらうことに注視すべきなのではないか。人生の決断は当人の責任でしかなし得ないし、その結果に責任を持つことができるのもこれまた本人だけだ。

そう...あまりにジュールズが忙し過ぎ、会社の成長に向き合えなくなったからと社外からCEOを入れるべきという動きの中でエンディングを迎える頃、ベンがジュールズにいう「経験豊富な人が来ても 君には及ばない。長く生きたって たいていの人は 君ほど素晴らしいものを生み出せない」と。その言葉を聞いてジュールズが決断する…。

本作品の監督および脚本はナンシー・マイヤーズだが、全体に良い意味で女性監督特有の暖かさときめ細かな演出が山盛りだし、どのシーンの絵もとても綺麗だ。
例えばエンディング近く...朝にベンの家にジュールズが決心した背中を押して貰おうと出向くシーンがある。
一通り会話が終わり、2人で会社に向かおうとする際にベンが「それでは...」とスーツの上着を羽織る動作をジュールズが眩しいような表情で見つめる場面なども女性こその感性でないと気がつかない演出ではないだろうか...。

「マイ・インターン」は理屈抜きで楽しめるコメディ映画だが、我々シニアにも多くの示唆を与えてくれる素敵な映画なのだ。



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主宰は松田純一。1989年Macのソフトウェア開発専門のコーシングラフィックシステムズ社設立、代表取締役就任 (2003年解散)。1999年Apple WWDC(世界開発者会議)で日本のデベロッパー初のApple Design Award/Best Apple Technology Adoption (最優秀技術賞) 受賞。

2000年2月第10回MACWORLD EXPO/TOKYOにおいて長年業界に対する貢献度を高く評価され、主催者からMac Fan MVP’99特別賞を授与される。著書多数。音楽、美術、写真、読書を好み、Macと愛犬三昧の毎日。2017年6月3日、時代小説「首巻き春貞 - 小石川養生所始末」を上梓(電子出版)。続けて2017年7月1日「小説・未来を垣間見た男 スティーブ・ジョブズ」を電子書籍で公開。また直近では「木挽町お鶴捕物控え」を発表している。
2018年春から3Dプリンターを複数台活用中であり2021年からはレーザー加工機にも目を向けている。ゆうMUG会員